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悪役令嬢はアクマでテンシだけどタイヨウにもなれる  作者: みやっこ
私が悪事を働くためには

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回想その15

 頭の中がぐちゃぐちゃだ。

 それに体が変だ。


 気持ちの問題じゃなくて、本当に全身が冷たい。心臓だけがさっきの熱を帯びたまま。体の関節が痛くて、歩くのが辛い。頭も痛い。


 青い屋根の家の付近まではどうにか帰って来れたけれど、このままじゃまた倒れるかも。


 もしかして、さっきの能力が影響してるのだろうか。いつものもうだめだ体力限界ってのとは違う辛さだ。


 ヤバイヤバイ唱えながら、一歩一歩足を進めていると、何かが目の前に立ちふさがった。

 重い頭を持ち上げると。


「あんた。いっつも体調悪いのね」


 フスタフだった。

 今日は黒髪ポニーテールに、銀色のタイトなワンピース姿。パーティじゃないのに超派手。


「せっかくこの間の話しにきたのに……まあ使妖精呼ぶくらいはするけど」


 私は、嫌そうな顔で片手を上げたエイラスの腕にしがみついた。

 なんでそうしたかっていうと……。


「何?」


「誰も呼ばないで。騒ぎにしないで。二人の邪魔になる」


 イベントの邪魔になるからだ。私が倒れたと知れば、イファンは自分がどんな状況であろうと走って来てしまうに違いない。

 エイラスとの大切な時間が消えてしまう。せっかく作った時間……あんなひどいことをして作ったのに。


「二人ってまさか、エイラスとイファン?」


 私は、頷いた。頭が回らない。

 なんかいい匂いがする。


「私を部屋に連れてって。こっそり運んで。誰にもバレないように。一階の一番広い部屋。窓開いてる」


 あわわどうかしてるよ。何言ってんの?


 働いているはずの理性が表に出せない。


 私は、逞しいフスタフの腕に全体重をかけ、ぐわんっと顔を上げた。


「頼むよフスタフ」


 目で必死に訴えかけた。もういろいろ限界で、頼るしか術がなかった。

 それなのにフスタフは、一瞬笑いそうな顔をした。


「そのお願いを叶えたら質問に答えるってやつ?」


「質問による」


 私は、言い逃げした。

 いや。言い倒れ……だ。


 限界がきて目を閉じ、体の力を抜いた。


 がしかし


 一向に気は失わなかった。


 フスタフは、腕にぶら下がっている私を軽々持ち上げて俵担ぎし、気配に気を配りながらなのか、早かったり遅かったり、指定した窓へたどり着くと、担いだまま器用に部屋の中へ入り、私をベッドへ転がした。


 ミッションコンプリート。ありがとうございます。このご恩は暫く忘れません。

 

「着替え取ってくれぃ」


 私の頭は完全に茹っていた。

 フスタフは、おもいっきりため息まじりに、クローゼットへ向かい、部屋着を掴んで投げた。部屋着はふわっと浮いて、私の顔にかぶさった。


 ナイス。


 顔の上に手を伸ばして着替えようとしたが、体が動かない。

 あとちょっとなんだけども、全身が痛くて腕が上がらない。起き上がれない。


「それで? 今日は何したの?」


 ベッドが揺れた。

 フスタフが座ったのだろうか。


 私は、部屋着を被ったまま、フスタフが居るであろう方を見た。


 何したって。


 何……。


「ひどいこと……ひどいこと……した」


 叫び声が生々しく耳に残っている。


 体もつらいが、気持ちもつらい。


 実際目の当たりにしたら、全然違っていた。ひどいことをしてしまった。すごく。すごくひどいことを。

 成功した喜びなんて欠片もない。やめておけばよかったっていう後悔しかない。


 何かしたかったって後悔と、やらなきゃよかったって後悔。

 なんでやりたいことをやらずにやりたくないことをやるのか。


 わかってるんだけど、気持ちがついていかない。


 私は、たぶん、つらつらとフスタフに愚痴のようなものを零した。何を言ったのかは覚えていない。文章になっていなかったような気がする。

 延々としゃべり続けて、喉が渇いて。


「喉乾いたっ水!!」


「よっぱらいかよ……」


 顔の上の部屋着を取られた。

 外気に触れて、目元と頬が特にヒヤっとした。鼻がツンと痛い。

 

「…………」


 フスタフは、私の顔を見ておもいっきり顔を顰め、立ち上がった。


「回線切った使妖精置いて行くから適当に使っていいわよ。他に誰か呼んだりしないから。面倒だし」


 彼が手を動かして小さく何か口ずさむと、何もなかった空間に光の粒が現れて収束し、一人のメイドが現れた。目と鼻と口があるというだけでなんの特徴もない、女性の形をした妖精の塊、使妖精だ。


「ふぁぁ」


 初めて妖精の力を近くで見た。そのたった数秒の声と仕草に、一瞬体の辛さを忘れるほど魅了された。


「何喜んでんだよ」


「もう一回」


「はぁ?」


「もう一回」


「じゃあ今度…………はちゃんと話聞かせて貰うわよ」


「……話…………」

  

 私はお礼を言うのも忘れて、いちヨウヨルファンとして、窓から出て行くフスタフを見送った。

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