326話 人の不幸は蜜の味
◇同刻・Sランクダンジョン【紅染まる血の孤城】◇
「あら色欲ヴィオラ、また来たの?」
「だって暇だも〜ん! 教会は今日はお休みだしね」
いつもこのお城で血のように紅いワインを飲んでるだけのイメージだし、あれって本当にワインだよね血じゃないよね?
「私も暇じゃないのよ? 部下の統治……はもういないけれど、そろそろ確保しても良いと思っているし」
「部下? あぁ全員ただの魔物化してたんだっけ。私はもう前線にはあんまり行かないと思うし鍛えるのはそんなにかなって感じかな?」
「いざと言うときに何もできないわよ?」
いざと言う時、私はもう大罪を辞めて戦えた由来のスキルも実質封印状態になってる。
教会に働いてる時だけは私の過去を、罪を忘れて許された気分になってとても気分が良い。
みんなも私を求めてくれて、私の悪魔生の中でも幸福度が高く幸せだ。
正直もう前線は避けて余生を緩やかに暮らしていきたい。
「でもそう行かないのが悪魔生だよね」
「でしょうね。さてあの子は知り合い?」
「残念ながらそうだよ。七つの大罪第2柱、嫉妬を司る嫉妬」
よく整えられた紫の長い髪、無駄に陰湿でそれでいて目元はいつも気怠そうに半分だけ開けた瞼。
その癖に私にも匹敵するスタイル、いつも損してるってアドバイスしてたっけ?
素が良いのに性格で損してるって、そんな彼女が何で大罪をやめた私に今更?
「恋をしたからそのアドバイスに、って感じじゃないよね」
「当たり前でしょう? 私は貴女が、いや嫉妬の対象になり得る女が嫌いなんだから」
「でしょうね、知ってた」
さてさてどうする私……!
まともに使える固有スキルっつ何か残ってるかな、【慈愛の天秤】は格上相手には無意味だし【色欲】の殆どは使える状態じゃ無い……!
「帰して、血槍之牢獄」
「何それかっこいい。酷いよねそれ、恨ミ嫉ム燃ユル焔
黒い骸骨型の焔、それは女王の魔法を模倣するべく隅々まで観察、じっくりと蝕むそれは魔法を食らうたびに肥大化する。
それを察したのか女王は魔法を強制中断、飛散した血を再度操り槍と化した鮮血を嫉妬の左手に突き刺す。
「あぁもうやるしか無いじゃんッ! 慈愛の天秤出力最大右足集中……ッ!」
ーーブヂィッ!
「ッ……?! それ諸刃の剣でしょ、自分より仲間優先? あぁそんな精神私にあれば、羨ましい……欲しいッ!」
格上に【慈愛の天秤】を喰らわせる唯一の手段、それは自分の限界を超えたバフを自身に付与、流石にそれほどの過度なバフなら嫉妬でも体が崩壊する!
もちろん治すのは普通の欠損より時間かかるし私も再生困難……
「ストック少ないんだから勘弁してよねッ!」
「あるだけ良いじゃない。普通の悪魔にはそんなの無いんだから、人の不幸は蜜の味」
「ッ?! 【吸肉】が発動しない……!」
強制的に魔法やスキルを不発に終わらせる魔法、何それ強すぎるってもんじゃないでしょそれ!
初手に使わなかったってことは何かしらの条件があったりするのかもだけれど……
でも右足はまだ欠損させてる、レイヴがどうにかしてくれたり期待が……
「紅染まる赫の花園、その不発にする魔法単体にしかできないのでしょう? なら人数不利は厳しいんじゃないの」
「そっちだけ2人……酷いと、卑しいと、可哀想だと思わないの? 私の、私だけの仲間が欲しい。表裏の影人」
ーーズズズ……
陰から出現したそれは紛れもない私とレイヴ、世界から色が消えたように漆黒を纏うだけで色の無い影の存在。
それでも発する気は衰える方を知らずにこちらを睨み返している。
「これで3体2、これで安心」
「そう、良かったわね。でも間違ってるわよ? 3対100」
それに対するように血溜まりから発生したのは紅の騎士、個々の実力は推定Aランク上位クラス、それが約100体。
「さて、始めましょうか?」
「はぁ……鬱ってきた」




