320話 最後の夜
暗い暗い棺の中、そこは永遠に続くと錯覚するような痛みと闇、体を貫く鎖や蝕む混沌から成る痛みは想像を絶する事となる。
それ耐える器では無いはずの勇者、だが強引に大罪の加護で耐え抜いていた。
「タフだね〜、弟くんも酷い事しますなぁ」
「ッ?! びっくりしたエフィナかよ。いつから来たんだよ」
「ん〜? 今さっき」
気配を感じる前に隣にいるの怖いんだよマジ……
気配察知の能力もそれなりに育ってるとは思うんだがエフィナのガチ潜伏を見破れる気がしない。
「それで、殺すの? この勇者くん」
「殺さねぇよ。少なからずこいつは大罪と繋がってる。人質、いや普通に見捨てられるだろうし情報源だな」
こいつが人質として機能するなんて微塵も考えていない。
普通に使い捨ての駒だろうしな。
それよりどうやって情報を吐かせるのかが問題、黒魔法になんか良さそうなのあったかな?
暴食の固有スキル【寄蟲総操】ならいけるだろうか。
ーードンッドンッ
「ん? 抵抗する余力がまだあるのか」
棺を内側から叩いてる音、あの棺の中って結界だから想像の何倍も広い空間なんだけどよく端にたどり着いたな。
でもまぁそろそろ抵抗されるのも面倒だし憤怒の方も確認したい、眠ってもらうとしようか。
「あ……が……?」
ーーバタンッ
力を強めた途端に気絶、やっぱり結構無理してたんだろう。
ギリギリ収まっている与えられた力、中途半端なその肉体で行使するのはまだまだ未熟すぎて収まりきらないのは当たり前だ。
俺だってはじめは少しずつ力を与えられてかろうじて使えた程度、今も完璧には扱えないけどな。
「エフィナは鏡花と合流、こいつの治療を頼んだ」
「りょーかい! 弟くんはどうするの?」
「決まってるだろ? 狩りだよ」
現在時刻は夜11時ほど、張られた結界の影響であまり暗くは無いがシンプルに制限時間が迫っている。
ギルド対抗戦のタイムリミットは朝7時まで、つまりあと8時間程度で出来るだけポイントを稼がないとならない。
こんな混乱状況になっても対抗戦は継続、不慮の事態でもそのまま継続するようになっているのだろう。
なら俺はこの混沌に乗じてさらにポイントを稼がせてもらうさ!
◇次の日◇
結局朝までに狩ったのは34人、ポイントにすると結構なんじゃないだろうか?
それに勇者を倒したことでギルド【勇者の集い】か獲得していたポイントは全て【ツクヨミ】に移動、それだけで結構なポイント数だ。
タイムリミッドまであと30分程度、俺たちは優雅にティータイムを楽しんでいる。
「師匠、そっちの砂糖を取ってくれないか?」
「良いよ! 美穂ちゃんって結構甘党なの?」
「甘党と言うよりは苦いのが少し苦手で」
何故か勇者達とティータイムだ。
もちろん光義はまだ拘束中、て言うかまだ意識を取り戻していない。
ちゃんと鏡花の治療は受けたし嫉妬から与えられた加護、いやどっちかと言うと呪いに近かった力も取り除いた。
なのにまだ起きないのは身の丈に合わない力を使った反動なのだろうか?
『なぁ暴食、あれって加護とは違うのか? てか呪いってまずまず何だよ』
加護は俺も暴食から貰ったものがあるし理解がある。
加護を与えた者が死ぬまで他の者には加護を与えられず、加護を与えた側は何かしらの命令を聞かせたり与えた者の力の一部を使えたりする。
互いの合理の上に使われる一種の信頼の証、だが呪いってなんだんだ?
よく聞くが実際に目の前で呪いを使ってたのは初めて見た。
『あ? そんなのも知らないのかよ。呪いは一方的に他者に渡すその名の通りの呪い、力を扱えるようになるのもあるが大体の場合は特定の行動が不可能になったりデメリットがほとんどだ。今回の場合は意図して力を扱えるように渡したタイプだろ』
『いつも一言余計だけどなるほど、理解した』
やっぱり暴食は一言余計ではあるけど便利だな、なんやかんや教えてくれるし。
脳内に百科事典を飼ってるみたいな感じ……
「痛ッ?! おい踏むなよ暴食!」
「お前が悪い」




