314話 乱入者はお怒り
【無冠の帝王】とか言ったか、あれはあくまで使用者が不利になった状況だけに適応されるスキル。
今の状況はあったが有利よりだし発動は不可だ。
本当に負けそうな時に一撃返す専用って事か、でもそのスキルがあれば有利、もしくは拮抗に持っていける。
あれ、それって実質不利な事なくないか?
「気づきました? 実は私ノエルにも勝率5割をキープしてるんですよ」
「後衛職とかもうわかんねぇな……」
後衛職のくせに出会った頃から近接を主体としてきた蓮兎に今目の前にいる後衛のくせにノエル相手に勝率5割、俺の周りは化け物しかいないのか?
「それでどうしますか? 逃げても良いですよ」
「逃げる? 何で勝てる戦いで逃げないとダメなんだよッ!」
不利な状況にさせたらあの魔法がくる。
だから狙うは速攻一撃粉砕、【凶華月蝕】の腐食効果を直に当てれれば1番早いんだがそれを簡単にさせてくれる相手では無いし純粋に殴るのが早い。
「殴るしか脳がないんですか?」
「それが1番強いからなぁ!」
ーーボンッ
唐突に左から鳴った爆発音、嫌な感がするがそれを気にせずに振り向くとそこにはくの字になって吹き飛ばされてくる憤怒の姿があった。
「は……?」
「え、暴食?! 何でここに?!」
互いに衝突、暴食は憤怒から離れようと頭を手で押し返してあるが憤怒は逆にくっつこうとしていた。
「あれれ、こっち方面だったのか! いや〜衝突どんまいだね」
「お前も確か【ツクヨミ】の……何をしている」
歩きながら倒れた暴食に話しかけるエフィナと【魁蕾】、先ほどまで七つの大罪第七柱と戦っていたとは思えないほどに緊張感が無い。
「何をしてる、はこっちの台詞だ……! てか何でエフィナお前はこっちまで来た?! 作戦に従っとけよ!」
「そっちだって従ってないじゃん! 本来はここじゃないでしょ?」
「……それはそれだ」
正論を言われて黙る暴食、それを膝の上で傍観する憤怒はどこか幸せそうにしていた。
よほど膝の上が心地よいのだろうか?
「えっと……エフィナさんにSランク冒険者【魁蕾】、どういうご関係で?」
「敵! 共闘してるけど」
「これが終わったら断ち切る。だが今は味方だ」
◇数分前◇
「い、良いから私と戦え!」
「照れ隠し〜」
「うるさいぞ! 別に私が意識して何が悪い……!」
「……?」
1人置いていかれる【魁蕾】を横目に唐突に戦闘は開始、鳴り響く剣撃の数々に鳴り響く弾丸を受ける盾の音。
エフィナの剣を片手の剣で止め、もう片方の手で銃を手に持ち【魁蕾】の盾を穿つ。
どちらも最高峰の矛と盾を持ち合わせるがそれは大罪の前だと意味をなさなかった。
「可愛い顔して化け物じゃん!」
「な?! か、可愛いとか言うな!」
「あれ、もしかして照れてる? お姉さん妄想膨らんじゃうよッ!」
ーーゴォォンッ
轟音鳴り響かせ放たれるのは腹部に向けた鋭い足蹴り。
それは蓮兎が扱うものも同系統ではあるが威力はSランク神聖魔法と死して手に入れたい不死身の体を使うことで跳ね上がる。
「痛たた……流石にこの体で神聖魔法使うと痛むね」
魔法を施した足からはジュゥゥと肉の焼ける音、アンデットに転じた肉体ではSランク神聖魔法に耐えることは不可能だった。
元々の魔法耐性が高くなければ今頃足は吹き飛んでいる。
「くふふ……くははは! 良いぞ! 素晴らしい蹴りだ。もっと、もっと私に見せてみろ!」
「ドMな憤怒ちゃんにはお仕置きが必要だね!」
「え、は? ち、違う! そう言うことじゃ……ッ?!」
ーーガァァァンッ
「何を遊んでいる。真面目にやれ真面目に」
繰り出されたのは単純明快盾によるシールドバッシュとタックル、助走の勢いをそのまま盾に変換、魔法による筋力補助は行っているが元々片手で待つなど不可能なほどに重厚な大剣と大盾を片手で持つ怪力。
魔法による強化と不意打ちが合わされば憤怒の小さな体なら暴食の元に吹き飛ばすことなど容易だ。
「うへぇ……女の子に容赦無いね」




