312話 小さな教育
◇◇
エフィナが憤怒と交戦、俺も急いで向かってるけど先に厄介なんだよなぁ。
「なぁ俺用事ができたんだけどどいてくれない?」
「断る。この混乱を作り出した張本人をここで倒さないとなんだ! 勇者の名にかけて!」
単独で走ってきたと思ったら急に俺を悪者扱い、これ前もあったよな?
混乱を作り出した張本人とか言われてますけど純粋な作戦だし人を殺してるわけでも無いのに何か言われる筋合いは無い。
セーブ役の佐伯はどうした?あいつがいたら止めてくれるだろうに1人できたのか?
「別に俺は悪いことしてないぞ? 作戦の範疇だ」
「いいや違う。ギルド同士が1番を決める神聖な場を荒らしたんだぞ! 悪いに決まってる!」
「はぁ……話が通がない」
「それはこっちのセリフだ」
俺はこいつが嫌いだ。元々分かってたけどこっちの意見を聞かずに自分が常に正しいと認識しているタイプの人間。
それに合わせて俺の種族にまでいちゃもんつけてくるし……
勇者向いてなくないか?
「人の意見を聞かずに決めつけて、それで相手が納得するとでも?」
「ッ! 納得するしないの話じゃ無いだろ! お前が止めれば終わる話だッ!」
「それが決めつけだって言ってんだよっと」
ーーゴギィッ
急に飛び出し、斬りつけてきたのでそれを難なく回避、ついでに腹部に蹴りを与えた。
鈍い音したし今せっかく気分よかったのにそれを害されたからか手加減忘れたから本気でやっちゃったし。
まぁ別に平気だろ、天下の勇者様なんだから。
「かはっ! 血が……!」
「ほら立てよ。俺を止めるんだろ?」
この勇者には少し教育が必要なのかもしれない。
「ほら勇者気取りの凡人、こいよ。相手してやるから」
「凡人だと……? 俺は勇者、魔王を討伐する勇者だぞッ!」
「肩書だけの勇者が喚くなよッ!」
ーーギィィィィィィ
聖剣と妖刀の鍔迫り合い、本来相性不利だろう妖刀がその拮抗の勝者となる。
力の弱い聖剣、エフィナが言うにまだ非覚醒とでも言うのだろうか?
その程度の力に破れるほど俺の鍛えた剣は弱く無い。
「ほらほらどうした! 聖剣なんだろう? 勇者なんだろう? 悪しき悪魔に勝ってみろよ!」
「クソ……! 俺は勇者で、力が強いはずなのに……個人戦と言い何故こんなに俺は……!」
吹き飛ばした先で地を這い、地面に拳をぶつける。
この程度の挫折は経験しておかないと後々困るからな、自分の力量不足で死ぬならそれで良いが周りを巻き込むのだけは許さない。
佐伯とかもっと強くなりそうだし。
「お前みたいに生ぬるい異世界生活を暮らしてるからその程度の力しか出せねぇんだよ」
「生ぬるいだと?! 俺らは転生してから努力してここまで来たんだ! それの何がお前にわかるッ!」
俺には分からない?転生位置が王都で食事も、寝床も、服も確保されたこいつよりSランクダンジョンに召喚されて初めにクラスメイトが目の手で餓狼に食い殺された俺が分からない?
「あぁそうかそうか。お前はクラスメイトの死も、背中を痛めながらモンスターに怯えて寝る夜も、最愛の人が目の前で死ぬのも経験してるのか。そりゃすごいしゃないか! 確かに俺より悲惨な転生人生かもなぁ?」
「……ッ! 何が言いたい」
「最高の環境が揃ったお前がこんなに弱いのはおかしいって言ってんだよ」
ーードンッッ
地に伏せた勇者をもう一度蹴り飛ばす。
手加減はしない、バフをかけるまでには行かないが素の身体能力を使った全力の蹴りだ。
後衛職の蹴りと侮っていたらレベル差と【暴食】によるステータス上昇、【天脚】による蹴り補正にやられて即死する。
「かはッ……?!」
「もう一度言う。立て、俺を止めたいのならその程度の挫折で、痛みで足を止めるな」
「俺は……お前を許さない……ッ?!」
喋ってる途中の頭を踏みつけ、頬を地に擦り付ける。
俺は今とても機嫌が悪い。自分が短気なのも、やりすぎなのも頭ではわかっているのにやめられない。
こいつと話していると今までの俺の人生が全て馬鹿にされたような気がして苛立ちが隠せないんだ。
平然と自分の方が苦労したと言い、相手の話を聞かずに決めつけ、種族が違うからと罵る勇者。
いない方が世界のためなんじゃないか。
「あぁ気分が悪い。闇堕ちってこんな気分なのかもな」
「許さな……い……!」




