308話 各々の動き方
◇ギルド【アイアンメイデン】野外拠点◇
ここはギルド【アイアンメイデン】の初期ワープ地点であり、同時に野外拠点として活躍している要塞跡だ。
かつての冒険者が休息に利用したこの場所は地形に優れており、周りは山々に覆われていて敵が来る場所は一箇所のみ。
攻めるのにも防衛するのにも適した場所だ。
「皆聞け! 今日【ツクヨミ】を落とすぞ!」
そう豪語するするのは【アイアンメイデン】のギルドマスターである【魁蕾】、先日の戦闘で脱落したギルドメンバーは多く、ギルドメンバーからの不満も溜まっている。
個々の実力自体は【ツクヨミ】に負けている。
だが勝っているのは圧倒的な物量、その観点だけで見れば全ギルドの中でも有数の数を誇る大手ギルド、流石にこの数で押せば勝てる。
そう皆が確信していた。
「決行は今日の昼、残り3時間ほどだ。しっかり休息して英気を養え!」
◇ギルド【魔導研究会】野外拠点◇
ギルド【魔導研究会】が拠点にしているのは魔力が籠る泉、ここは空気に魔力が満ち満ちていて、魔法の威力を高める効果と同時に魔力の回復速度が上がる。
その泉自体にも多量の魔力が含まれており、泉の水を飲めば魔力回復ポーションに、浸かれば魔力回路を癒す秘水となる。
「ギルマス! 流石に黙って行けないですよ! 【ツクヨミ】を潰しましょう!」
「ん〜、あそことは仲良くしていたいんだけど……まぁ潰すかぁ?」
このギルドも【アイアンメイデン】程では無くても甚大な被害を受けたギルドの一つ、ギルドマスターである【始魔り】が争うのを拒んだとしてもメンバーが黙ってはいない。
そしてこのギルドも数で【ツクヨミ】を圧倒、それに圧倒的な殲滅力を誇る魔導兵が集えばSランク魔法の防壁だろうと貫き、逆にSランク魔法でも貫かれない防壁を作り出すことも可能だ。
「じゃあ決行はお昼にしよっか。それまではおやつタイムで〜」
残り3時間ほどの猶予、その間に魔導者などのマジックアイテムの管理や魔法兵の術式準備、全てが整う。
万全な状態で新参の、しかも数で大幅にこちらが勝っているギルドとの対抗、皆勝つと信じきっていた。
◇ギルド【六花】野外拠点◇
ギルド【六花】が選んだ拠点場所は静かな花畑、森林の中に突然木々の無い空間、そこには色取り取りの花が咲き誇り、凛と咲いている。
そこにテントを設置、攻められるにしても攻めるにしても不利を取るだろう。
だがギルドマスターの圧倒的な広範囲殲滅力を誇る【銀色世界】がある限り即敗北は無い。
「そろそろ蓮兎達に喧嘩売りたくない?」
「急にどうしたんですかノエル、流石になにか根拠はあるのですよね?」
「……楽しそうじゃん? 良いじゃんそれで」
ノエルの発言に呆れるように額に手を当てるエチル、だが本人もそろそろ動かなければならないと感じていた。
ギルド【六花】が初日に獲得したポイントは0、最初に個人戦で獲得したポイントはあるものの誰も倒していない。
このままでは最下位濃厚、流石にそれはギルドとして、いや個人としては許せることでは無かった。
「俺は良いと思うぜ? 前回は勝ってるんだ。余裕だろ」
「ウォルフは負けてたくせに〜」
「はぁ?! ティア! テメェも負けてただろうが!」
「ぐッ?! そ、それは……あれじゃん?」
「まぁお昼くらいに行こっか。それまでは……寝る」
個人個人の能力自体は互角、いや少し勝っている。
だが前回の模擬戦やノエルの蓮兎だけの戦いでも全て勝利を飾っている。
順当にいけば今回も勝利で終わる、そう思うものも少なくは無かった。
◇ギルド【勇者の集い】野外拠点◇
ここは巨木の幹、所謂ツリーハウスのようなものだ。
戦闘において情報と高所を得る事は勝利に直結する。
それを同時に獲得できるこの場所は理想だろう。
「そろそろ俺たちも動かないか?」
「た、確かに初日のポイント稼げてないし……」
「私も賛成! 美穂ちゃんは?」
「まぁせっかく参加してるんだ。私も賛成だ」
満場一致、こちらのギルドも初日に獲得したポイント数は0に等しく、多少は稼いでいるがそれでもまだ足りない。
このままじゃ確実に最下位、それは何としても回避したい、皆がそう考えている。
「狙うのは……やっぱり師匠のいるギルドがいいと思うんだ」
「……それは蓮兎さんを敵視しているわけでは無くてか?」
「流石に俺もそこまで馬鹿じゃ無い。確かにまだ俺は蓮兎さんが嫌いだ。まだ納得していない、だが根っからの悪党でないことは分かっている」
真っ直ぐな目、まさに勇者と言って良い目をする光義に怯んだ美穂はそれ了承した。
「じゃあ決行は昼だ。それまでに武器の手入れをしておいてくれ」
これで3つのギルド全てが【ツクヨミ】を壊す選択で満場一致、1対1対1対1だったこの対抗戦は今ここに1対3の構図が完成した。




