229話 王都襲来の元凶
「ちょっと光義! いきなりお店に入ってどうしたのよ!」
「ここから師匠の気配がするんだ……!」
勢いよく店に入ってくる客は勇者御一行の声そのものだった。
直接会ったことは俺は無いがな。
「急にお腹痛くなっちゃったからお手洗いにでも……」
「あ! 師匠!」
その場を切り抜けようとする鏡花だったが席を立ち上がった瞬間に勇者に見つかり諦めたように席に戻った。
そんなに勇者たちと会いたく無いのか?
いやどちらかと言えば光義ってやつに会いたく無いのか。
「はぁはぁ……早いと美穂ちゃん……」
「すまん雅、この光義が勝手に動き出してな」
「俺は師匠を発見したからついてきただけだ!」
さっきから俺の後ろに隠れてため息をする鏡花、俺がいない間に何があったのだろうか?
暴食の悪巧みで鏡花が勇者達の師匠になったのは聞いているがそれ以外は全くの無知、何があったかは分からない。
「蓮兎君も道連れだからね?」
「は? 急に何言って──」
ーーバッ
急にその場に立ち上がり勇者達に話しかける鏡花。
「今日からSランク冒険者【吸魂】の異名を持つ蓮兎君も師匠ね! 錬金術師だから鶴野君にも教えられるし剣術もいけるよ!」
「はぁ?! 何言ってんだよ急に!」
慌てて鏡花を止めようとするが止まらない、勇者達は光義以外は何かを悟ったような顔をしているがなんだ?
地雷でも踏んだ?
「すみません師匠、俺はその人とは仲良くできません」
急に声のトーンが変わり無表情で話し出す勇者。
店の空気が変わり冷たく鋭く皮膚を突き刺す。
「その人は王都を地獄に陥れた元凶だ。憤怒さんの件は理解しましたが俺はまだその蓮兎さんが悪いと思っている」
「俺は狙われただけだ。あいつらとは接点無いし」
「狙われた原因があるのに何故人の迷惑がかかる場所で争いを始めた? あの騒動で何人が死んだか分かってるのか……!」
◇◇
どうしよう蓮兎君と光義君がバチバチだよ?!
これ私が悪いないや悪いよね私が話振ったんだもんね……
「鏡花さんすみません。私たちは蓮兎さんは悪く無いと分かっているんですが光義が聞かなくて……」
「まぁ納得できないのは正直わかりますし……」
耳打ちをしてきた内容を聞いて少し分かった。
確かに急に名指しされその後に亜天使が襲来、王都を地獄に陥れてその騒動が終わったと思ったら次は憤怒さんの軍勢がやってきてさらに混乱。
そんな中首謀者と疑われていた蓮兎君は魂の欠損が理由とは言っても誰とも話せる状況では無く弁解の余地を逃した。
ルノアちゃんとノエルちゃんの呼びかけもあったけどそれでも全員が納得したわけじゃ無い、家族を失った人はまだ恨んでいるだろう。
「あまり言いたくは無いが貴方は悪魔だ。同じ転移者として人を殺し魂を奪うやり方は理解しかねる。だから俺は貴方とは仲良くしない」
「別に俺はお前と仲良くしたいわけじゃ無いしどうでも良い。それに俺が、俺たちが今までどんな状況にいたか理解してないくせに口を開くな、お前らはどれだけ楽をしてした? 仲間を失ったことはあるのか? 流した血の数は?」
珍しく怒っている蓮兎君は殺気を込めて話し出す。
ある日突然転移させられクラスメイトが大勢死に、生きるためにその亡骸を食べてスキルを奪って戦ってきた。
灯火ちゃんも快君も死んじゃって流した血の数なんて数知らない、腕も足も無くなった。
治っただけであの時の痛みは、悲しみは消えない。
何があっても。
「選ばれ勇者だとか崇められて楽に装備を揃えて低ランクのダンジョンでレベルを上げて経験を積みここまでやってきたお前らと俺らは違う。突然ランダムで選ばれSランクダンジョンに戦い方も知らない学生が遊びだのくだらない理由で何人も死んだ。鏡花も死んだ。それをお前は理解できるのか?」
「ッ……! だ、だからなんだ! 俺たちも苦労してきた! 血も流してきたし苦労して倒した強敵だっている!」
事実勇者達はこれまで火龍の討伐や幾度もSランクモンスターの討伐にも成功、冒険者のランクで言えばほとんどがAランク上位の実力を持っている。
「血を流した? 仲間は何人死んだ? 失った腕の数は? そんな生ぬるいイージーモードの転移を楽しんでたんだろうよ」
「お前……! Sランクだろうが師匠の何でも構わない、お前は絶対にこの手で……!」
「何だ殺るのか? かかってこいよ生ぬるい者」




