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遺物扱いされる私と、遺物マニアの皇子殿下  作者: 月食ぱんな
第五章 百五十年後の世界に出会えてありがとう
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091 古代魔法フェスティバル4

 古代魔法フェスティバルの本祭は、昨日と比べ物にならないほど多くの人で溢れていた。


 家族連れは勿論のこと、カップルに友人などなど。隣を歩くパートナーの関係性は様々でも、皆思い思い楽しんでいる様子だ。


 そんな中、私達が開く『魔法使いの館』も大盛況。私はフローラ様に、シャローゼ様、それからジュディまでもを巻き込み、てんてこ舞いの忙しさでテント内を駆け回っていた。


「お姉さん、写真を撮ってもいいですか?」


「あら、喜んで。ララルーラ!」


 シャローゼ様は、ノリノリな性格が功を奏したのか、本格的なカメラを持った男性相手に大人気。


 朝から撮影待ちの行列が出来るほど、彼女の周りには人だかりが出来ている。そんな看板娘として忙しい彼女の代わりに働くのは、普段その存在を一切私に匂わすことのなかった、自称「友人だ」という男性陣三人。もちろん、もれなくあざとかわいい系男子君たちだ。


「お待たせしました、こちら花咲く魔法のジャスミンティーです。見てて下さいね。上手くいくといいな。よしっ、ララルーラ!」


 あざとかわいい君が振るのは、先がボールペンになったマジックワンド。彼はそれを透明なグラスの上で振りつつも、もう片方の手でグラスにお湯を注ぐ。すると透明なグラスの中にジャスミンの花がふわりと咲いた。


 これはただ、蕾状態にして凍らせた花を半解凍し、それにお湯をかけただけという、インチキマジックだ。


「わー綺麗!!」


「とっても映えそう。写真とろっと。あ、あなたも一緒に」


 注文した女子は、可愛いお茶と、あざとかわいい男子君に大喜び。

 幸せがテーブルを包みこんでいる事に私は満足する。


 実は女性たちに大人気の『花咲く魔法のジャスミンティー』はエメル殿下が考案したお茶の一つだ。


『東方ではかつてこうして花を咲かせて飲む風習があったそうだ。見た目に綺麗だし、どうだろうか?』


 そんな風に目を輝かせ、私の前で実演し、楽しそうに説明してくれた愛しい殿下はもういない。


「フローラ様、夢見る魔法使いのパフェを二個、五番テーブルにお願いします」


「分かりましたわ。ところでジュディ、五番テーブルってどちらかしら」


 フローラ様はジュディから渡されたトレイを持って立ち尽くす。


「あーもう、こっちです」


 ジュディはフローラ様から渡したばかりのトレイを奪う。


「フローラ様、五番はこっち。着いてきて下さい、あ、四番のも私がもってく」


 ジュディはトレイに料理をテキパキと載せる。


「ジュディ、私もお手伝いをしますわ」


 フローラ様が料理に手を伸ばそうとした腕を、ガシリと掴むジュディ。


「はい、これ。フローラ様はおしぼりをお願いします」


「かしこまりました!」


 おしぼり片手に、嬉しそうなフローラ様。


 フローラ様とジュディも手分けして、接客や行列の整理などをしてくれている。


 フローラ様に至っては邪魔してるとも言えなくもないが、ジュディが二人分以上の働きをしてくれているおかげで、何とか捌き切れているという状態だ。


 そして問題はこっち。


「エメル殿下、お写真ご一緒してもよろしいですか?」


 流行りのミニスカートで膝を出し、髪の毛をくるりんと可愛らしく巻いた女の子達。


 その中心にいるのは私の婚約者、エメル殿下だ。


「はいはい、勿論いいですよー。じゃ並んで下さい。殿下、笑顔でお願いしますよー」


 殿下の従者と化したデミアン君が女性のエーテルフォンで「はいチーズ」と写真を撮る。


「わ、ありがとうございます!この写真待ち受けにしますね」


 女の子達は嬉しそうにエーテルフォンを受け取り、きゃぴきゃぴと去っていく。その後ろ姿を見送る殿下の笑顔は満更でもない様子。


「私達もエメル殿下と写真いいですか?」


 新たに現れたこれまたキラキラオーラを放つ、お洒落な女の子達。


「どうぞーはい、殿下、笑って笑って」


 デミアン君はこれまた爽やかな笑顔で、先程と同じような台詞を再び口にする。


 普段研究所にいる事の多いエメル殿下だし、一般人とこんな風に関わる機会がないから、女の子達が殿下に群がってしまうのは仕方がないのだろう。


 そう大人びて自分に言い聞かせるも、私はイライラしている。

 何が嫌って、殿下もちょっと浮かれているところだ。


「ティア、ほらサボってないで。これ八番テーブル。ティアの担当でしょ。それから七番にも新しいお客さんが席についてるから、帰りにオーダー取ってきて」


 カウンターの影に隠れながら、こっそり殿下を観察していたのが、我らが司令塔ジュディに見つかってしまったようだ。


「はい。八番いきまーす、帰りに七番のオーダーとってきまーす」


 私は銀のトレイの上に『魔法の精霊サラダ』と『魔法の四大元素プレート』を乗せ、席までスイスイ移動する。


 因みに『魔法の精霊サラダ』は、自然界に生息する魔法の精霊が宿るとされる、新鮮な野菜と果物を使ったサラダで、『魔法の四大元素プレート』は魔法の四大元素である土、風、火、水をイメージした多彩なパンの盛り合わせとなっている。


 八番テーブルについた私は、商品説明と共に華麗に料理を提供し、そのまま滑るように七番テーブルへ。


「ララルーラ、いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」


 杖をフリフリ一回転。最後の「お決まりですか?」の所で杖を両手に持ち、頭をコテンと横に向けるという、くっそはず……とても恥ずかしいポースを決めたところ、私はお客様の顔を見て固まる。


「昨日ぶり、って言うか、わりとノリノリじゃん」


 ニヤニヤとしているのは、採掘の先輩だ。


「ユアンさん、来てくれたんですか?」


 昨日はサクッと断ったわりに、再度足を運んでくれるなんて、やっぱりいい人だと感動する。


「実はリサイクル品を出店してる友人に、お昼の店番を頼まれてさ。それが終わって、こっちにきたら、丁度入れそうだったから。しかし、大盛況だねぇ」


 ユアンさんはお店をぐるりと見回す。確かになんだかんだ、有り難いことに席は埋まっている。


「あ、こっちはカフェで働く仲間のロイド。彼女が噂のエメル殿下の婚約者のティアリスさんだよ」


 ユアンさんは連れの男性を紹介してくれた。


「初めまして。何だか有名人に会った気分」


 ロイドさんは、一見すると地味で平凡な容姿をしているが、よくよく見ると顔のパーツは整っており、なかなかのイケメンさんだった。


「ティアリスです。私はただの人ですよ。有名なのはあっち」


 私はウイッチワンドの先端で、群がる女子の中心にいるエメル殿下を指す。


「あー、確かに。女の子がみんな殿下に吸い寄せられてるね。まるで魔導掃除機に吸い込まれるみたいだ」


 ロイドさんは苦笑いする。私は彼の例えに「わかる」と、クスクスと笑ってしまう。


「長居させちゃ悪いよな。オススメはどれ?」


 流石フランケンシュタインカフェの店員さんだ。ユアンさんは忙しく働くこちらに配慮し、即座にメニューを決めようとしてくれる。


「えーと、『魔法使いの秘密のサンドイッチ』ですかね。これ私が監修したんですよ。あとは、『呪文シナモンロール』も美味しくて、個人的にはオススメです。お飲み物は『魔法ポーションコーヒー』がただのコーヒーですが、売れ筋です」


「うちの店のネーミングセンスもやばいけど、これも恥ずかしいね」


「でもそっちと違って、ここでは無理やりメニュー名はお客様には、言わせませんよ?」


 前回お店で『無罪放免サラダ』と『不完全な生き物』をちゃんと言えと叱られた時の事を思い出し、意地悪く伝える。


「ははは。まだ根に持ってるんだ。じゃ、俺は『魔法使いの秘密のサンドイッチ』と『魔法ポーションコーヒー』をお願い」


「かしこまりました。ロイドさんは?」


「俺はそうだな。『幻想の月光ティー』と、『魔法の輝きフルーツサンド』で……って、確かに言わされる方は恥ずかしいんだな」


 ロイドさんは赤くなる。


「では少々お待ち下さい。ララルーラって、こっちもわりと恥ずかしいですよ?」


 ウィッチワンドを振り、思わず赤面すると、二人は「わかる、その気持ち」と同意してくれたのであった。

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