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二十七日目(1) リオと周囲

 今日は魔法術式の授業でまたリオと組むことにしている。正直、リオと組んだ方が他の人と組むよりもよほどやりやすいだろう。リオは術式を組むのも上手いし、自然と息が合う。ここまでやりやすい相手はほとんどいないかも。そんなことを思いながら食堂で朝食を待っていたら、リオが来た。


「レイ。今日もよろしくお願いします」


「うん、リオ。今日も一緒にやろう。……ところで、昨日の薬学の暗記大変じゃなかった?」


 短い物を言ってから長い物を言ってくるなんて‥‥。


「ええ、あれによって大部分が撃沈しましたね」


「リオは大丈夫だったの?」


「ふふ。当然ですよ。あれくらい、簡単に覚えられます」


「あんなに長い文章を丸暗記してるんだ……」


「いえ、効果や中身だけ覚えて正確に書いてあるものを出しているんです。本来なら不合格にしたい、でも書いてある事自体は正解、なので渋々合格にする。そんなメリシア先生を見られるんですよ」


 それって反則技じゃん‥‥。


「良いんですよ。だって、私は非常に優秀な生徒として扱われていますしね。さすがに、丸暗記が出来ているわけではないのでトップには立てませんが」


「はあ……。まあ、それで通れるんなら僕も何とかなったかも……」


 効果や中身だけは覚えていられるし。


「恐らく、レイなら大丈夫でしょうね」


「……それでまた落ちるのかな?」


「ああ、そろそろ間引きの時期らしいですね。メリシア先生もまた落ちこぼれに生徒を落とすために成績を調べていましたよ」


 間引きって。いや、確かにそういう表現が近いけど‥‥。


「それよりも、今日の授業が終わったらまたレイに頼みがあるんです。対価は、その術式でどうですか?」


「ん?……良いよ。どうせ終わったら暇になるしね」


「ありがとうございます」


 まあ、リオの術式がどんなものかは知らないけど、使えそうだね。‥‥あ、朝食が運ばれてきた。


「じゃあ、食べたら行きましょうか」


「うん」


 さて、今日はどうなるのかな?


ーーーー


「よし、今日も二人一組でペアになれ。今日は術式の解読をしてもらう」


 術式の解読?‥‥楽勝じゃないかな?


「きっとすぐに解読できるものでしょうね」


「どうだろ?」


 そんなことを言っていたら、クライズ先生が術式を書いた紙を配っていった。一枚取って後ろに回す。


「一枚で良いんですか?」


「うん。どうせ写す時間はあるだろうし」


「ですよね。……これは、攻撃魔法ですか?」


 そうこうしているうちに全員に渡ったようだ。


「よし、今日のノルマはそれの解読だ。早速はじめろ!」


 さて、何だろう?


「はい、レイ」


 リオが真ん中に置いたので、二人で見る。‥‥攻撃魔法で間違いはない。でも、この術式は欠点だらけだ。というか、ダミーが多くて無駄に容量を食っている。こんなダミーだらけの術式を何に使うんだろう?


「レイ。これは無駄だらけで使い物になりませんね」


「うん。こんなに無駄な術式をどうして作るんだろ?」


 そんなことを喋っている間も術式の中身を解読し、簡単に纏める。‥‥攻撃魔法、ダークスピア。コスト12の闇魔法で、手から高速で黒い槍を飛ばして攻撃するらしい。その内、無駄な部分の合計コストは10!こんなゴミ術式を一体何に使うんだろ?


「クライズ先生、これで良いでしょうか?」


 リオがクライズ先生を呼び止め、僕たちが纏めた結果を渡す。


「合格だ。まあ、当然か」


 ああ、これでよかったみたい。


「よし、なら、これもやってみろ」


 あれ?まだ続くの?まあいいや。


「これは……補助魔法?」


「対象を指定し、体を頑丈にする魔法みたいですね……」


 僕たちが渡された術式「プロテクト」はバリアで攻撃から身を守る魔法とは違い、唱えた相手の身体を強化して頑丈にすることにより身を守る術式だった。‥‥ただのバリアでは駄目なのかな?


「……これは問題点も見つからないですね」


 リオがそう言ったので、僕も見てみることにする。


「本当だ……どこにも穴が無い……」


 僕たちが渡された術式「プロテクト」はどこを探しても改良する点が無い。その上、コストも2と非常に低かった。‥‥改良のしようが無いよ。


「ええと、先生。解読はしました」


 穴は全く見つからない理想的な術式だったけど。


「やはり、これの穴は見つからなかったか。まあ、穴が無い物を渡したしな」


「そうだったんですか?」


「ああ。まあ、お前たちには教えられることが少なすぎるからな。クラスの都合上仕方ないんだ」


 そう言えば、闇学科は出来ない子に合わせた授業をして、出来る子には自習させるって‥‥。


「そうですか。じゃあ、終わっても良いのでしょうか?」


「……そうだな。次は4人でやってもらうが、構わないか?」


 え?‥‥出来ない奴に教えろって事?リオも僕もそんなのは嫌だよ?


「お断りします。出来ない人に教えるだけなど、損失しか生みません」


 リオが思いっきり僕の思っていることを代弁した。だって、本当に損失しか出さないよ‥‥。


「はあ、やはりか」


「それに、光学科に教えてもらうなど……いえ、なんでもないです」


 多分リオは、光学科に教えてもらうなど、闇学科の生徒のプライドが許さないのでは?と言いたかったのかな。


「まあ、そうだったな。お前たちはそういう物を毛嫌いしている奴らだったな」


 そういう物とは技術の提供だろうね。毛嫌いも何も、教えてあげても損しかしないもん。


「ええ。嫌いです。出来るからって縋ってくるハイエナは嫌悪していますよ。目障りです」


 ‥‥しかし、よく闇学科や出来る人に集まる人間の前でこんなことが言えるよ。リオって本当に強いね。


「ね、ねえ……教えて……」


 青いローブを着た気弱そうな男の子がリオに近づいてきた。


「お断りします。教えてほしいなら対価を出しなさい」


 ‥‥僕もこれと似たようなことをしようとしてたのか‥‥。反面教師で改善した方が良いかな‥‥。


「た、対価?……そんな……何を払えば……」


 青いローブの子は完全にあたふたしている。‥‥こんな子最初に居たっけ?まあいいや。


「術式の1つも作れないんですか?使えないですね。さっさと戻ってください。あなたと話すことはありません」


 うわあ‥‥。言い方が酷いからか、ものすごく酷いことをしているみたいに見える‥‥。


「うっ……ごめん……」


 そのままトボトボと戻っていく水学科の生徒。


「はあ。落ちこぼれが無償で技術提供を求めるなど……私を馬鹿にしているんですか?せめて、術式の1つは出さないと駄目ですね。使えない人です」


 僕も使えない側だとこういう目に遭うんだろうか‥‥。怖‥‥。ん?さっきあの子が戻って行った方から更に二人出てきた。


「はあ、こんなんに物頼むのも出来ないのか、お前は?」


「だ、だって……」


「はは、使えない奴だな!おい、お前!俺たちに勉強教えろ!」


 うわ‥‥。それが頼む態度なの?さすがに、そんな奴には僕も教えないよ?


「はあ、落ちこぼれの次は屑ですか。うるさいのでさっさと戻ってくれませんか?」


 そこまで言う‥‥?確かにこいつは頼み方も知らない屑だけど‥‥。


「あ!?誰が屑だ!」


 先生は向こうの方で生徒に教えてるからって、よくこんな大胆なことが出来るよね‥‥。


「あなたたち二人ですよ。ただで私に術式の技術を教えろとか、ふざけていますよね?」


 ‥‥‥‥怖い。リオ完全に怒ってる‥‥。


「ああ!?勉強できるなら教えろよ!」


「ふざけないでください。あなたみたいなゴミが一番嫌いなんですよ。さっさと死んでください」


 ‥‥死んでくださいって‥‥‥‥。さすがに僕もそこまでは言えないよ。


「なっ!教えろって言ってるんだから教えろよ!」


「対価は?」


「はあ?対価?」


「ええ。「わざわざ」「ゴミに」私が教えてあげる対価です。先払いでお願いします」


 酷い‥‥‥‥。「わざわざ」「ゴミに」って‥‥。思ってても言っちゃ駄目でしょ‥‥。


「ふざけんな!そもそも!誰がゴミだ!お前の方が中身はゴミだろうが!」


「そうだ!女だからって調子にのんな!」


 ‥‥止めるべきでしょうか。リオの周りの空気が凍りついてきたような錯覚が‥‥。


「下種が調子に乗らないでくださいね?叩き潰しますよ?」


 ‥‥敵意むき出しで言ってる。


「光学科だからって調子に乗るな!叩き潰されるのはお前だ!」


「そうだそうだ!」


 ‥‥これは典型的な小物だ。一度叩き潰されても良いかもしれないけど‥‥。


「……良いですね。その腐った考え、私が叩き潰してあげますよ。ハイエナとゴミは焼却しなければ」


 あ。完全に怒ってる。というか、リオ。約束は良いの?


「ね、ねえ……」


 誰かに呼ばれた。とりあえず向くだけ向いてあげるか。


「ん?……何?」


 さっきの水学科か。何の用なの?


「あ、あの……ここを教えて……」


 ああ、ダミーか。これは分からないかも‥‥。仕方ないか。


「じゃあ、教え」


「その必要はないですよ、レイ」


 ‥‥はい?


「このゴミに教えてあげるのは私なんです。レイはおとなしく待っていてください」


「そうだ!部外者が余計な事すんじゃねえ!」


「お前は関係ないだろ!引っ込んでろ!」


 ‥‥‥‥はあ。この子と君ら二人、リオは何の関係があるの?


「言われなくてもこの子以外には教えないよ。特に、そこの頼み方も知らない二人には」


「何だと!」


「お前も喧嘩売ってるのか!?」


 もう鬱陶しいから無視しよう。


「あ、あの、やっぱり」


 やっぱりいい。とでも言うのかな?でも


「ああ。今更撤回はさせないよ」


 そんな自己中は許さないから。クズに脅されてるだけかもしれないけど、それは僕には関係ない。


「ええ!?」


「だって、ちゃんと頼みに来たし。今更撤回は許さない」


「は、はあ……」


「お前!後で覚えとけよ!」


「この生意気な女潰したら、次はお前だ!」


「はいはい。その子を倒してから言ってね……」


 何か面倒事に巻き込まれた予感が‥‥。まあ、とりあえずこっちを先にしよう。


「えっと、これはダミー。要するに、あっても意味が無いやつ。そこの二人組みと同じでただの無駄」


「……無駄なんですか、これ?」


「そう、ただのゴミ。あっても無駄な部分。そこの二人組と同じ」


「あ、ありがとうございます……」


 そう言って戻って行った。‥‥もう来ないよね?


「おい、さっきから黙って聞いてれば……!」


「はあ、うるさいゴミだな。リオ、手伝おうか?」


 ああ、うるさい。耳障りだなこの喋るゴミ‥‥。


「いえ、レイは見ていてください。こんなゴミ、すぐに潰せます」


「おいおい。さっきからやけに騒がしいと思ったら、何をしているんだ?」


 まあ、怒られるよね。


「いえ。この大きなゴミ二つを処理したくて」


「お前の方がゴミだろうが!」


「そうだそうだ!」


「はあ、仕方ないな。決闘でもさせてやるか……レイ、お前も来い」


 ‥‥はいはい。分かりました‥‥。

レイとは互いに技術の取引をしている関係だから至って普通に接するリオ。でも、他の人にはほとんどこんな態度です。

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