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悠々の対義語は難しい字 ー7



 鍾乳洞のような道を進んでいると、道が二手に分かれている。

 右か左か、見た目では特に違いがないように見え、どうしたものかと一行は顔を見合わせた。


「どっちにいく?」

「まあ、どっちに行こうとも最終エリアに繋がってると思うから、俺はどうでもいいんだけど」

「どうせなら安全な方向に行きたいです!」


 シロハの問いにこだわりなさそうにディーが返すと、ツワシは担がれたまま手を挙げて意見を述べた。

 それに同意するようにラムダもめえーと鳴く。


「んじゃ、偵察いってきて」


 そう言ってクロハはツワシを降ろした。


「え……僕が……???」


 まさか自分にそういった役回りが来ると思っていなかったツワシは、まるで信じられないものを見る目でクロハを見つめた。

 彼女は何もいわず壁にもたれると、ふう、と息をつく。


「今のとこほぼ歩いてないじゃん。すぐそこだし行ってきなよ」

「ええ、非戦闘員だよ僕」

「隠密の経験詰めるね」


 シロハにそう言いくるめられ、口をとがらせながらも「しょうがないなあ」と渋々歩き出す。


「ではもう一方の道は私が見てきますね」

「ライラがいくなら、俺もいくかな。リボンで引っ張られるし」


 そういってライラ、ディーのコンビももう一方のほうへ歩ていく。

 久しぶりに二人っきりになった双子は仲良く並んで座る。


 少し沈黙の時間が流れた後、シロハは突然うるるッと瞳を潤ませると、クロハの顔を覗き込んだ。


「シスター死んじゃうのお……?」

「何を言うかと思えば」

「だあってだってー! だっでええええ」


 いつもより覇気のない片割れの首をつかみ揺らしながらぎゃあぎゃあと喚く白い女


「全然いつもと雰囲気が違うんだもん、いつもの触れるものすべてを傷つけるナイフみたいな圧はどうしたのさー」

「んな特殊な圧かけてた覚えないんですけど」

「みんなそう思ってるよー、怒りごりごりゴリラ魔獣女ってーっ」

「適当に言ってない?」


 心配してくれてるのかもしれないが、そこそこな暴言を吐かれている気がするのを今は一旦忘れて、大泣きするシスターの頭をなでる。


「うあああん髪型崩れるから触るなぁぁ」

「二重の意味でうるせえな。とりあえず汚ねえナミダふけよ……」


 うわんわんうおんおんと滝のように泣くシスターにドン引きしながら、クロハは異次元からハンカチを取り出した。


「ん?」


 瞬間、キラキラ光る何かがハンカチと一緒にくっついてきた。


 蝶と宝石を組み合わせたような不思議な生き物。

 ひらりとどこかに飛んでいこうとしたのを見逃さず、一瞬で氷漬けにするシロハ。

 泣いていても光るものには反応するらしい。


「……なにこれ」

「さあ?」

 

 泣き止んだシロハは目をこすりながらそれを近寄って拾い上げる


「宝石でできた蝶々?」

「虫なのか石なのか」


 二人は凍ったソレをまじまじとみると、手足の部分が人間の指に酷似していることに気が付き、シロハは悲鳴を上げてクロハにそれを放り投げた。


「きしょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい」

「いつの間に紛れ込んだんだ……って思ったけど、そういえばツワシから零れ落ちた宝石あったな。あれ……卵だったのかな」

「やだぁ、きしょおい、捨ててえ、うげえ、ばっちい」

「価値ありそうだからしまっとこ」


 えぇーとドン引きしているシスターを無視して、氷漬けしたソレを異次元に戻すのと同時に、不思議そうな顔をしたツワシが戻ってきた。


「何をわめいてたの?」

「おかえりどうだった」

「えーっとね、敵はいなかった……けど、ほかの冒険者がいたよ、9人ぐらい」


 基本の冒険者は3~6人だったりするので、9人だとすると結構な大所帯のチームなようだ。


「会話した?」

「いや?」


 ツワシは首を横に振った。


「休憩中の会話を聞いたんだけど、なーんかホコタテ姉ちゃんのこと知ってそうだったんだよね。だから声かけようと思ったんだけど」


 ツワシはうーんと腕を組んで思案するような顔を見せた。


「チュートリアルの町のボスがバグってるらしいとか、新規はいま入れないだの、メンテナンスがどうのって、よくわかんなかったからやめた」


 シロハはふーんと興味なさそうに返した。

 するとちょうどライラチームも帰ってきた。ツワシは先ほどの内容を簡潔に伝えるとディーも首を傾げる。


「まあ、ベテラン冒険者なら、俺たちの知らない何かを知っててもおかしくはないよね」

「ところでそっちはどうだった?」

「猛吹雪のエリアでした。魔物も複数潜んでいたようでしたし、苦戦を強いられるかと」

「楽すんなら冒険者たちがいるほうだね」


 どっちでもいいよとディーが言うと、ツワシは何かを思い出したように手を叩いた。


「あ。そうそう向こうも花鳥三姉妹が目的みたいだったよ」

「えー、どうする?」

「どうするって?」

 

 シロハは杖を構えながら悪い顔でほほ笑む。


「勝負しかけちゃう~~?」

「えー、すごい装備だったし、返り討ちに合う可能性もあるんじゃ……」

「でも先に行かれちゃうと、せっかくここに来た意味ないじゃん」

「僕たちの倍人数いるんだよ、レベル差だってすっごいと思うし」


 二人の言葉に「一理ある」とディーは頷く。


「じゃあ多数決とる?」

「えー、ツワシとライラはどうせ否定派でしょー。んでどうせディーとクロハはどっちでも派なんでしょ?」


「あのさ」


 クロハが小さく手を上げる


「ようは先に行かせなきゃいいんでしょ?」

「まあそうだね。でも足止めするには行動不能にしなきゃいけない」


 ディーの言葉に、うんうんと頷くとツワシを見る 


「ツワシ、そいつらのいるエリアってどんな感じだった」

「え? えーと、この鍾乳洞の続きって感じのエリアだったよ」


 ふむ、というとクロハはシロハを見た。


「ん?」

「奇襲、いけるんじゃないかな」







 ここら一帯の敵を一掃し、HPやMPを回復して談笑している様子のベテラン冒険者一行

 人数が多いとこういったゆっくりした時間も長くなるようだ。


「お昼休憩終わったー? 今日中にココ踏破しましょー」

「すいません、最後にトイレいってきます」

『武器変えたら全然攻撃当たらなくて焦りましたw(;'∀')』

「ここ終わったらもう一度ザアストーラ周辺の魔物狩りいっていいですか?」

「色違いラムダ探し、もう一度します?」

『おそろいの衣装♡』

 

 人数は9人、瞬きもせず固まっている人もいたり、衣装や武器を一瞬で次々と変えている人がいたり

 人間以外にも獣人、有翼人、そもそも何の種族? みたいな者もいる。

 なんだか異様な雰囲気を醸し出している集団だ。

 何処かのお抱え守護騎士団というわけでも、組織というわけでもなさそうだが、統率はとれているように見える。


「ツワシの言った通り、なんか変な会話してるね」

「っていうか、あの人たちの中の数名のアレなんだろうね」

「口から発してる声の代わりみたいな、吹き出し? 文字を視認できる魔術とかあるのかね」

「さあー、新しい人種なのかな」


 会話から察するにそろそろ休憩終わらせて、攻略に動こうかという感じだったので、急いでこそこそと次のエリアの入り口近くに移動する。


「そういえば聞きました? あまりにもバグがひどいから運---……」


 シロハは杖を構え、小声で呪文を唱えた


「煌めき星」


 閃光が放たれると一行は次のエリアの道をすすみ、ディーは謎の一行のいる入り口を塞いだ。

 もちろん、戻りの道の入り口も塞いである。


 完全に油断していたのだろう、何が起きたか分からないのだろう。中から悲鳴が聞こえるが、想定内なので気にせず駆け足で進んでいく。

 目くらましと攻撃にうってつけの煌めき星はなお暴れまわっているのか、何かが弾けまわる音がまだ聞こえる。 


「いっそげ、いっそげ」


 追いつかれないように敵を蹂躙しながらさっさと休憩もなく進んでいく。


「あれ、クロハいつもの調子戻ってきた?」


 担がれているツワシがそういうと、同じくライラをお姫様抱っこで走っているディーが同意した。


「確かに、生気を感じるね」

「元気になってよかったです」


 後ろから飛んできた魔獣をモーニングスターで撃ち落とすクロハ。

 何かを思いついた顔を見せた後、ぼそりとつぶやく。


「あの虫か……?」

「虫???」


 どんどん進んでいると、シロハが感心したように頷いた。


「偉そうな態度とってるだけあって、ディーって結構やるじゃん」


 魔法剣士なので本来は前衛ポジションにつくのが妥当なのだが、いつもはクロハが主に前衛としてたっており、本人は後衛で司令塔としてライラの近くにいつもいる。

 ゆえに、彼が手練れなのだろうことはなんとなくわかってはいたが、本気をださずのらりくらりとしているところしか知らなかったので、こうしてライラを抱きかかえながらも、サクサクと敵を瞬殺していく様をみるとシロハも認めざるを得なかった。


「君たちに認められるのは悪くないね」

「珍しく素直に受け取るんだ」


 また余計なことを言うツワシに、ディーは深く頷く。


「双子は自分より劣ってる人間のいうことは絶対聞かないからね」

「「まあねー」」

「いやいや誰の言うことも聞かないじゃん」

「そんなことないよ、これまでの旅を思い出してみな」


 素直に今までのことを思い出すと、割方ライラとディーの言葉には素直に耳を傾けていることが多い双子。


「ん? ってことは、僕の話をいつも聞いてくれないのは、僕のこと見下してるってこと……?」

「「当たり前」」

「なんでだよー!」

「今の自分の姿見て言えばあ?」


 クロハに抱えられたままどんどん進んでいくと、キラキラと虹色に輝く扉の前に立ち止った。

 ここまでくればもう抱える必要はないと言わんばかりに捨てられるツワシ。


「一言声かけるか、優しくおろしてよ……」


 腰を抑えながらツワシは扉に手をかける。

 そこには三匹の鳥と花の模様が描かれていた。


「何の鳥だろ」

「とりあえず、追いつかれたら面倒だからさっさと入ろう」

「これって早い者勝ちなのかな」


 ディーが扉を開くと、黄金の光が一行を包み込んだかとおもうと視界が一瞬で真っ黒になった。

 長い静寂の中、ぱっっと目の前に強い光が現れた。

 状況に理解が追い付いていないまま、光の中に浮かぶ人物が揺らめく。



「静謐の白鳥 歩く姿は百合の花 優美なる我こそが大精霊白百合」


 クラシック・チュチュのような恰好をした女性が決めポーズをとると、ぶわっさあ……と白い羽とユリの花が周りに舞い散る。

 暗闇からの光に一同目を細めて唖然としていた。

 何か言おうと口を動かそうとした瞬間、ぱあっと再び別のところがスポットライトに照らされる。


「情熱のフラミンゴ 立てば芍薬 華美なる我こそが大精霊シャクヤク」


 美しい赤のフラメンコの衣装を着た女性が、タンバリンを鳴らし軽快に踊るのと同時に、シャクヤクの花と赤い羽根が舞い踊る。

 また何か言おうと口を開こうとしたが目の前に強い光がぱっと現れる。

 イラついたクロハは舌打ちした。


「魅惑のダチョウ 逃げない、退かない、諦めない 美しき花には棘あり茨の女王。我こそが大ッ精ッ霊ッ黒薔薇ブラックロォォーズ

「座らねえのかよ……」

 ぼそっと呟いたクロハの声は仁王立ちの筋肉ムッキムキのsmの女王みたいな恰好をした男が仁王立ちしながら叫んだことで打ち消された。


「我ら大地の大精霊 花鳥三姉妹 今ここに見参しせり」

「突っ込みどころ多くて忙しいな」


 スポットライトが上を向いたかと思うと、ミラーボールが天井から現れていろんな小さな丸い光が奥行きの意味わからないことになっている謎空間を照らしている。

 謎の音楽と歌が流れた上に、目の前の情報量と一致せず脳が動かない一行。


「で? 誰と契約するのぉーん?」


 ムッキムキの胸を寄せながら魅惑的な動きをするブラックローズ

 一歩前に出たクロハはブラックローズの顔を平手打ちした。


「ちょちょちょちょちょ」


 ツワシが急いでクロハを引きずって後ろに下がる。


「すみませんねうちの子反抗期でして」

「なんか殴った瞬間に〈Hit90〉 って出たの面白かった。コンボ決めたい」

「やめなさいッめっ、めっ!!」


 平手から拳をにぎるクロハ必死に止めるツワシ。

 頬を抑えながらおよよポーズで泣いているブラックローズを二人の姉妹が慰めている。


「契約すると、どんな効果が得られるの?」


 シロハが首をかしげると、三人はぴんっと本人たちがかっこいいと思っていそうなポーズをとった。


「説明しよう」


 白百合がしなりっとあでやかな動きを魅せた。

 

「わたくし、白百合と契約しますと『自動微回復・防御力大アップ』が付与され、属性が水になり、水魔

法が達者になります」


 ライラの目がキラキラと輝く。


「聖女様と契約した精霊様たちとこんな近くに……」

「微回復かあ、微妙だねえ」


 シャクヤクが蠱惑的な動きで魅せる。


「あたくし、シャクヤクと契約するとん『スタミナ継続・耐久力大アップ』が付与され、属性が炎となり、炎技の威力があがりますわん」


 ディーが腕を組んで頷く。


「無難でいいと思う」

「攻撃魔法って言ったら炎だしね」

 


 うっふんポーズで筋肉を魅せながらブラックローズは自分をアピールする。


「あちきと契約すると『超スピードアップ』するわよおん。属性は岩」

「それだけ?」

「のんのん、あちきは特別なスキルを与えることができるのよ。ずばり」


 だんだんだん、だーん。と謎のリズムでライトがブラックローズに集中する。


「そおう、『即死でなければ、どんな状態でも ド忘れ でなかったことにできる』よ!!」

「何それクッソ面白いじゃん」

「ズルいぐらい楽しそうじゃん、契約したいしたい」

「何がお二人にそんなにささったのですか……?」

 

 興奮気味の二人にドン引き状態のライラ。

 

「誰でも契約できんの?」

 

 クロハの言葉に花鳥三姉妹が反応する。


「「「お前は無い」」」


「もぎりつぶすぞ。私の話じゃなくて、一人ずつ契約できんのか、一人だけなのかってことだよ。潰すぞ」

「二回言わなくても」


 どうどうとなだめるツワシ。しかし怖かったのでラムダをクロハの顔に押し付ける。


「そおねえん。本来なら一人だけだけど……あなた達と姉妹一人だけ連れて行かせるのは不安だから、一人ずつ契約してあげてもいいわあ」

「じゃあ誰がどれいく?」


 シロハの言葉にディーは小さく手を挙げた。


「ライラから決めてもらおう」

「え、いいんですか?」


 いつも遠慮して後手になるのに珍しいと思っていると、ディーとシロハは目を合わせて頷く。

 

「どうせ俺とシロハはダチョウ狙いだし」

「確かに」

「ローズちゃんってよんで。んでそこの聖女候補ちゃんはあ、だ・れ・を・選ぶのお」

「大精霊様と契約できるだなんて……光栄です。よろしければ、白百合様にお願いしたく」


 ライラの回復方法が自傷のため、微回復のスキルと相性が良い気がしたので彼女を選ぶと、白百合もにっこりとほほ笑んだ。


「わたくしと回復とは相性がよいので、あなたの回復の加護の範囲と効果が上がることでしょう」

「そっちの二人はどうするのん」


 武器を構えている二人をみて、争いは厳禁よおと無力化される。


「この空間はあちきたちの領域、戦いはできないわよお。なんでさっき殴られたか意味わかんないけど」

「魔法クラッシャーってこういうのも無効化できんの?」

「殴っただけだから」


 ツワシの言葉にクロハは首を横に振った。


「争いじゃない。一方的な暴力」

「もっと質悪い……」

 

 ふとディーとシロハのほうを見るとじゃんけんを無言でしていた。

 何度かあいこが続いて、ディーが勝ったようだ。拳を天に突きあげている。


「あいつら楽しそうだな」

「僕たち完全に蚊帳の外だもんね」


 ということで、シロハがシャクヤクになり、ディーがブラックローズと契約する手筈だが、三姉妹は不易な笑みを浮かべて宙に浮いた。


「あーらあらあらあらー」

「もしかしてー? ここに来ただけであたくしたちと契約できるとでもぉ?」

「ふふ、そうは問屋が卸しませんわ」


「戦闘でわからせるっとこと……?」


 迷わず杖を構えるシロハだが、ブラックローズはのんのんと指を横に振った。


「レッツだぁぁぁーーーーんす」

「「「「は???」」」」


 投げつけれそうな石を探していたクロハ以外唐突な提案に唖然とする。


「あちきたちがあなたたちの中に溶け込むためにシンクロ率を上げる必要があるのよ」

「あたくし達の動きをよおく見て」

「最後までおどりきってくださいませー」


 三人が指を鳴らすと軽快な音楽が流れ始めると、足元が丸いステージ上にせり上がり、精霊たちの背後に謎の縦線と光る何かが上から降りてきた。


「あ、さあ、さあ、さー」

「コマンドどおりにおどりなさあーい」

「あっそーれ」


 上 上 右 下 下 左 上 


「はっはっ……私得意ではないかもしれません……」

「私にまかせてーだんすぃーんぐ」


 シロハが指を鳴らすと、キラキラとライラの目に光が入る。


「杖なしで洗脳支配できるの?」

「十八番だから」

「怖」

「でも洗脳支配じゃなくて今のはただの超強化付与(コンジョウガッツ)だよ」


 上から降りてくる指示通りに踊ると、足元がキラキラと輝いて、GOODとポップな文字が浮かび上がる。

 ダンスをしないクロハとツワシは下で座ってその様子を無表情で眺めていた。


「暇だね」

「見てみて、ラムダの体に手ぇつっこんだら永遠に沈む」

「うわ、ほんとだ。知らなかった。あれ、でも僕抱っこしてるときはちゃんと密度感じたよ……?」


 肩までラムダの体に突っ込んでいるのではたから見るとホラーだ。


 右 左 上上 下 右 左 右


「さすがに疲れてきた」


 基本的に身体能力は高いが、根性がないシロハは飽きてきたこともあり、疲労の表情を浮かべる。


「ライラなんて顔真っ青だよ。終わったら倒れるんじゃない?」


 まだ余裕そうなディーがライラのほうを見れば、汗をかき真っ赤になっていた顔がそれすらも通り越して酸欠のように真っ青になっていた。そのうち白くなりそうだ。

 リズムに乗ってダンスをしているのを見ていると、どんどん楽しくなってきたのか手拍子をしてにっこにこで鑑賞しているツワシ。


 その横でラムダを枕にして虚無顔で寝そべっているクロハ。


 上 上 下 下 左 右 左 右 × ○


「ばつまる?!?!」

「ひいひい、×〇って何ですか?!」

「ノリで乗り切ろう!」


 必死に大精霊の動きを見切り、同じような動きをして完璧に踊り切った。


 finish ★合格☆


 キラキラ光る文字が現れると音楽がやむ。



 ぱあんっとクラッカーが鳴り響き、どこから鳴り響いているかわからない拍手喝采の嵐。

 汗だくで倒れこむ三人の前にそれぞれの色の光となり、迷わず契約者の体の中に溶け込んだ。


契約者(あなた)が契約解除するか、死ぬまでよろしくねん」


 ぽん、とポップなミニキャラの姿になった花鳥三姉妹がほほ笑む。

 それどころじゃないライラは肩で呼吸し、今にも死にそうな様子だったが、契約してからは息が整い、シロハと同じぐらいまでには回復していた。


「これが回復の力……すごい」

「えー、実感できるのいいなあ。私もなんかないかな……」


 と、周りを見ていると、扉が開いた。


 煌めき星をぶち込んだ冒険者がどうやらここにたどり着いたらしい。

 あきらめて帰るかと思ったが、9人もいればあの程度やはり問題なかったのだろう。


「イベントが発生しないんですけど」

「これもバグ?!」

『いったんログアウトします?』


 など、口々に会話しているが、まだこちらに気づいていないようだったので、シロハは杖を構えた。


「シロハさん?」


 ツワシが困惑の顔で声をかけるが、とってもにっこにっこしながら標準を構える。


「し、シロハさん?!」


 肩をつかんだが、一足遅く呪文を唱えた。


豪爆炎(タケキホノヲ)


 炎の竜巻が爆音を放ちながら入り口で困惑している冒険者一行を焼き払う。

 しかしレベルが高かったのか、先頭にいた二人しか火だるまにできなかった。


「わあ、すごい。この距離でも威力が落ちずに高レベル二人ロストできたー」


 きゃっきゃと喜ぶシロハにドン引きのツワシとシャクヤク。


「怖いって! なにもされてないのに攻撃するのもはやただの快楽殺人鬼じゃん」

「試したかった」

「人ではやめてね!! サイコパスすぎだよ」

「あたくし契約する人間を間違えたかも……」


 後悔しているシャクヤクに同情的な目を向けるほかの大精霊。

 ダンジョンをクリア認定になったのだろう、突如目の前に現れた帰還の魔法陣。


「撤退するよ」


 というディーに従い、その場を後にした。

 

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