悠々の対義語は難しい字 ー5
分厚い雲がゆっくりと空の中を流れている。
初心者向けダンジョン踏破から数日、しばらく無難になにもない旅が続いた。そのころにはお互いの性格などがわかるようになっていき、多少なら相手を罵っても大丈夫だな、という謎の信頼関係が生まれていた。
「今更だけど、どこに向かってんの」
「本当にイマサラだね」
クロハの問いに呆れたようにディーは返す。
「大首都マンデムーンにむかっているんです。三人の故郷の町の管理している領ですね」
「へー知らね」
「自分のとこの領の名前も知らないの?」
三人は首を横に振った。
「信仰の歴史ばっかりやって地理は全く触れなかった」
「町の外出てほしくなかったんだと思うよ」
双子の言葉にディーはあきれたように言った。
「閉鎖的だねー。さすがにこの国の名前はしってるよね」
「……」
「うそでしょ」
適当にそこら辺にある木の棒をヘしおり、ディーはライラに渡した。一瞬困惑した顔をみせたが、地面を指され意図を理解してしゃがむ。
「伯爵が治めるこの地がマンデムーン領ね」
「僕たちの町はここらへんかなー。スターダスト」
「じゃあ頭おかしい女のいる町はここらへん?」
「ルミナスロスだっけ」
地面に文字が増えていく。
双子が書いた町の名前のさらに北へ線を伸ばすと、大首都マンデムーンにつながった。
「とはいえ、ここからまだ距離あるし。道中いろんな町村にお世話になると思うんだけど」
ディーは三人を見て、はあ、とため息をついた。
「大首都までの道のりの情報なんにも知らなさそうだよね」
「「知らない」」
双子は一言一句ぴったりと声を揃えた。そんな双子とは違い、ツワシは手を挙げた。
「道のりのすべてはしらないけど、このままいけば『ザアストーラ』につくのは知ってるよ」
「ザアストーラ?」
ツワシは頷いた。
「険しくて高い山脈の先にある村だよ。かつて邪悪な気が漂うこの地を、守り清めた聖女の霊廟がある村でね。その聖女の名前にちなんでホーラ霊峰って呼ばれてるんだ」
「「へー」」
興味なさそうな相槌をうった双子とは違い、『聖女の霊廟』に反応したライラはそわそわとディーのほうを見た。
「ホーラ様……ご存じありませんが、きっとこの地方で身を尽くした素晴らしい聖女様なんですね」
「行きたいの?」
「よければぜひ」
ディーがいいよの「よ」を言い終える前にシロハが「えーーー」と遮った。
「いったことないけどあれでしょ、あの山の上ってことでしょ!?」
シロハの指差す先には山が見えた。
その山の道中は緑多く見えるが、中腹からはごつごつとした岩ばかりに見え、最終的には白い雪がつもり、さらに上には雲に覆われてどうなっているかすら見えない。
「雲の中に村があるらしいよ」
「なんで知ってるの?」
「姉ちゃんが民俗学者でいったことあるから」
あー、とクロハは納得した声を出した。
「ホコタテ姉ちゃんがすごく素晴らしいところだったって大興奮してたやつね」
「そのあと三日三晩高熱出して寝込んでなかった?」
シロハのジト目にツワシは気まずそうに目をそらす。
「まあ、いいじゃん。行ってみようよ」
珍しくすすんでいく気のクロハに、断固拒否中のシロハは目をひんむいた。
「シスターは私の味方じゃないとヤダッッッッ!!!!」
ヤダヤダと地団駄を踏み出したシロハにそっと近寄ると、ゴッっと鈍い音で後頭部を殴って黙らせる。
力なく倒れこむシスターを担ぐと、何事もなかったかのようにクロハは三人に目を向けた。
「行くならさっさといけるとこまでいって寝泊りしたほうがいいだろ」
「そ、そうだけど……珍しいね」
「ちょっとね」
すたすた歩きだしたクロハの背中を見ながらツワシは驚いた声でつぶやいた。
「シロハのいうことだけ聞く、心のないモンスターだと思ってた」
クロハは振り返ってツワシの目を潰す。
悲鳴をあげて床に転がるツワシを無視して再び先を進むクロハとディー。
おろおろしながら手を差し伸べるライラは治療しながらツワシに一言。
「その、余計なことを言う癖は治したほうがいいと思います」
「え、なんのこと……?」
無自覚の発言だったという事実にライラは呆れた顔を見せた。
双子がヤバいことは十分理解しているが、彼も結構ヤバいなと改めて考え直す。
徒歩2時間弱、やっとのこと山のふもとまでたどり着く。
「ねえ、なんかあるよ」
さすがに気絶から目覚めたが、ずっとクロハにおんぶしてもらっている状態のシロハが指差すところに目をむければ、これを見ろと言わんばかりの看板が一つ立てられていた。
「この先のザアストーラにつながる、ホーラ霊峰にご用の方は下記の文章をよくをご覧ください」
という指示に従い、視線を下げる。
- 警告 -
耐寒装備および氷系の魔獣に対するスキルを十分にお持ちでない方は引き返してください。
登山経験のない方はガイドを雇ってください。遭難しても救助はいきません。
頂上まで最低一か月かかります。食料など寝床のご用意を怠ると死にます。
最短で安心安全に村に行きたい方はお隣のホーラガイド局をご利用ください。
以上を守っていても死ぬときは死にます。
よい旅を
「……シロハの言う通りやめたほうがいいかも?」
ツワシの気弱な言葉にライラも同意した。
「正直認識が甘かったです。ごめんなさい」
「え。いかないの?」
全然気にしてなさそうなディーに二人は首を横に振った。
ついでに、看板に書かれていたホーラガイド局が目にはいる。
「こんちゃーっす」
クロハが無言で扉をあけ、シロハが気の抜けた挨拶をする。
「参拝の方ですかー?」
奥からにこにこと優しそうなふくよかな女性が現れた。
「ホーラ聖女様の分堂がこちらにありますので、お祈りならここでもできますよー」
「もう上ることを諦めさせる方向にもっていかせようとしてる」
「ザアストーラ村のおみやげもここで売ってますよー。両方だとセット割でお安くなりますよー」
「しかもお土産まで買わせようとしてくる」
商売上手に感心している双子を横にライラは料金表をみて唸った。
「お祈りは8900銭、お土産セットで8000銭」
ちなみにお土産はもふもふのキーホルダーとセーターやマフラーなどの冬物
あとは度数の高そうなお酒となんかの干し肉
これからの旅にあってもいいようないらないような
「ライドお願いしたいんだけど」
「あらあ、今は冬じゃないからまだ安いけどねえ。村までなら一人片道2万銭ですよ、みなさんお若いけど大丈夫かしら?」
ディーは無言で腕につけていた通行手形をおばさんに見せた。
おばさんは「まあ」と驚いた声をだして慌てた様子で裏に引っ込んでいく。
しばらくしていかにもパイロットって感じのおじさんが出てきて、ごますりポーズでへらへらしだす。
「通行手形をもつ高貴な方々が、こんなところに寄るだなんて、えへえへ、光栄ですなあ」
「貴族の気まぐれ共がこんな辺鄙なところになんでくるんだよ、めんどくせえ。っていう心の声が聞こえてくるね」
ぎくっと肩をゆらしながらも、男は「やややあ滅相もないッ」とあわてて否定した。
ディーはいたずらな笑みを浮かべてにやにやしている。
「あいつもたいがい性格悪いな」
「このパーティーで性格いいのなんてライラだけでしょ」
「え。僕は?」
双子の会話に入り込むツワシだったが、双子は無視をした。
「準備いたしますので、少々おまちください」
と言って男は逃げるように外にでていった。
それといれかわるようにふくよかレディが戻ってきてお茶菓子をふるまってくれる。
あったかいお茶に、味のついたノリのついているせんべい。
ボリボリと食べていると、息を切らせて男が戻ってきた。それについていき、外に出ると天高くそびえそうな櫓に目を向けた。
「どうぞ。この梯子でおあがりくださいませ」
「ジャンプ台……?」
下から見上げれば、梯子の上には平らな板が一枚外に向かってあるだけ。
きょとんとしていると、男のそばの空間が光りだし、そこから巨大な魔獣が現れた。
もっふもふなおひげを蓄えたクジラっぽいやつ。
穏やかな性格なのか、その動きもどことなくゆったりおっとり。
「ヒゲーラという魔獣で、あっしの相棒のカエルムといいやす」
「おっさん召喚士なんだー」
「ライドってだいたい召喚士なんだよ」
シロハの無礼な態度を窘めずに、ディーは情報を付け足した。
平らな板の向こう側にカエルムの背中がある。乗れということだろうが、誰も動かない。
「あの……?」
一足先に頂上に到達したが誰も来ないことに困惑しているおじさん。
ツワシはシロハを見る。
「いや、いつもだったら『私いっちばぁあーん』とか言いながら真っ先に行くと思って」
「悪意ある言い方にイラついた、頂上ついたら突き落としてやる」
「なんでっ」
「ツワシの言い方はともかく、私もそう思った」
「だって……」
クロハの言葉にシロハはスカートをぎゅっと握った。
「だって……見えるじゃん」
「なにが」
ちょっとだけ頬を染めた後、小さい声で絞り出すように言った。
「パンツ」
男組が「あぁ」と声を漏らす。
小さい声でディーが「しょうもな」と呟いたのを聞いたシロハが睨む。
そして2本の指を立てると、それを一気に下にするジェスチャーを見せた。
意味:二人まとめて落としてやる
「でもお前下着の上にかぼちゃパンツ履いてるじゃん」
「かぼちゃパンツじゃなくて、パニエ!」
ぷんぷんと怒るシロハに、心底どうでもよさそうな顔をするクロハ。
「パンツ見えないならいいじゃん」
「よーくーなーい! 乙女はいつだってスカートの中みられたくないのッ」
「ライラなんてタイトスカートだぞ」
三人がライラのほうを見ると、頬を赤く染めながら目を伏せる。
「めんどくせえな、さっさと男ども登れよ」
クロハに追い立てられ、二人はさっさと梯子をのぼりクジラの背中に座った。
次にクロハが行こうとしたら、ぎゅっっと服の裾をつかまれ振り返る。
すこし照れた顔と申し訳なさそうな顔をしたライラが小さい声で言った
「この靴で上がるの怖くて……ごめんなさい」
ハイヒールというほど高くはないが、明らかに運動向きではない靴。
旅してるのに何でそんな靴履いてきてんだよ、と色々口にしたかったが、常日頃「女の子はお洒落して当然、侮るなかれ」と片割れに躾けられてきたのでグッと飲み込んだ。
クロハは諦念の至りの表情を見せたあと、紐をとりだしライラと自分を縛った。そしてシロハのほうをみると、何も言わずにライラの背中にのっかる。
ただ黙って二人を背負って、のそのそ上までいくクロハを見ながらライダーのおっさんは感心した声でつぶやいた。
「すごいパワーの持ち主だ」
「うちの唯一の前衛なんで」
「しかも壁にもなる」
「「頼りになるぅう」」
完全に上がってきたのをみて男たちがここぞとばかりにクロハをほめる。
それを白い目で見ると何も言わずライラを下ろした。
「えーっと、では発進します。ご案内させていただきますはあっし、ホゲイと相棒のカエルムです。よろしくおねがいしゃす」
「おねがいしゃーす」
シロハの声を聴き、カエルムは大きく浮上した
頭から白い黙々とした煙を放出すると、それが背中に乗った全員を纏う。
「この靄の中にいれば敵からは視認されずらくなるうえ、寒さも軽減されます」
「すごーい。ツワシもいつかこんなでっかい子となかよくなってよ」
「それには僕のスキルがたりないよ」
「雑魚」
「ひどいッ」
しばらく空の旅を楽しんでいると、飛行型の魔獣とすれ違うこともあったが、全く気付かれず
雪もふぶいていたが、ほんのり風が冷たいぐらいで耐えられる寒さだった。
ヒゲーラの煙は中々の快適空間をつくってくれている。
「わーい」
景色もよく普通に観光気分で楽しんでいた。
「わーい、わーい。ここからこいつらを突き落としたらもーっと楽しいんだろうな」
にっこにこしながら前のほうに座る男どものことを指した物騒な言葉を吐くシロハ。
それを聞いたツワシはラムダを前面に盾に出しながら首を横に振る。
「この高さから落ちたら死にますぜ」
「それはそう。でも彼女の目は本気だ」
ガイドの忠告に同意するディー。しかしシロハの性格を把握しているので同じく剣を出してけん制しあっている。
「ええっと、仲間……なんですよね??」
「一応」
ドン引きの声で「えぇ……」と声を出しながら、変な客を乗せたことを過去一後悔しているホゲイ。
そんなこともお構いなく、仲間内でけん制しあっていると、山の頂上付近まで近づいてきた。
「そろそろつきますので、戦闘態勢を解いてくだせえ。村の人が驚きますので」
「だってさ」
と、シロハがいうが、もちろん警戒を解かない三人にクロハは拳を握って呟いた。
「誰から殴ろうか」
全員同時に武器を下げる。
ライラがホゲイに代わりに謝罪したところで、無事村について地に降り立つことができた。
慣れているのか、カエルムを見て村の人たちがわらわらと集まってくる。
その手には売りつける気満々の村の名産があり、防寒系のものが多く見えた。そしてそこで気が付く。
「え、まって、ねえ、カエルムから降りたらくっっっそ寒くない?」
雲よりも高い位置にある村。
澄んだ空気、というよりもさらに凍てつく空気が一行の肺を攻撃する。
「今日は寒いですねえ」
カエルムから降りないままおじさんはのんびりとそういった。
「防寒着ありますよ」
「毛皮ありますよ」
わらわらとぜひうちのをと群がってくる村人を見ながらディーは袖から『通行手形』を見せて一言。
「ありがとう」
村人たちは何とも言えない表情を見せながら防寒具をくれた。
「通行手形、最強過ぎない?」
「これもらえる条件が、身分か相当な実力ないともらえないからね」
「そういや私たち結局もらってないままだね」
ふとシロハの視線の先にもっふもふの生物が目に入る。
「ぅわお! もふたんがいっぱい!!」
「あ、ほんとだラムダと同じ種類の魔獣の群れだね」
ころころまるまるふわふわめえめえ
愛嬌たっぷりの顔でこちらをみる羊の魔獣 フルモフ。
にっこにこで見ていると、羊の世話をしていた村人の少年が手招きしてきた。
「さわっていーよー。大人しいから」
「うっひょー、ふわふわー」
「そういやもふたんは?」
フルモフの群れにつっこんでいったシロハを見送りながらクロハはツワシに尋ねる。
「ここにいるよ。いっておいでラムダ」
仲間の群れを見て嬉しそうに鳴いて輪に飛び込んでいく。
「ツワシの色違いなんだね」
「たしかに一匹だけ金色だね」
他のは白か黒なのだが、ラムダだけ金色。
しかし同族ということには変わりはないので気にせず受け入れられているようだ。
「ねえちゃんがここにきたとき、ついてきた子がラムダなんだよ」
「へえ。なんでよりによってツワシと絆結んだんだろ」
「どういう言う意味??」
わん、という声が聞こえ視線を下げると、犬系の魔獣が愛嬌たっぷりの顔でしっぽを振っている。
「かわいいね」
ツワシがそいういうとワン、と元気良く吠えるとお手をした。
「おやつあげるー?」
村人の少女がひょっこりおやつをもってやってきた。
「えーあげたーい」
「250銭だよ」
ツワシは渋い顔をしながら財布のひもを緩めた。
クロハはきょろきょろと周りをみると、ディーとライラがいないことに気が付いた。
「あれ二人は?」
「他の二人ならねー、じいちゃまと霊廟にむかったよー」
そもそもの目的地がそこなので、それはそうか。と納得しながら、クロハはついでにともう一つ少女に尋ねた。
「ちなみに『花鳥三姉妹』について知ってる?」
「何それ」
満足にもふったシロハがクロハに抱き着きながら首を傾げた。
少女はにっこにこしながら両手を出す。
「……」
「……」
クロハとシロハは目を合わせる。
少女は微動だにしない。
「出すもん出さないとお話しできないよね」
「そういう行動とるってことは知ってるってことだろ。ってことは、噂は本当ってことかな」
「何の話?」
今度はおやつをあげ終えたツワシが参戦する。
「花鳥三姉妹だよ」
「なんだっけ」
「ほこたて姉ちゃんが教えてくれたの、おめーは覚えてろよ」
てへ、とかわい子ぶるツワシにシロハは白い眼をむける。
「このホーラのどこかにいるっていう『大精霊』だよ。それぞれ高スキルをもっているらしくて、名前が花だから花鳥三姉妹っていうらしい。契約するとそのスキルの恩恵も受けれるし、属性もチェンジできるらしいよ」
「へーっすごーい。どこにあるの?」
「それは……ほら、出すもん出さないと、ね」
頬を膨らませていた少女のほうをみると、再びにっこにこ笑顔になる。
忍耐の強い子である。
双子はツワシのほうをみる。ただしくはまだ仕舞われていない財布を
「え、僕が払うの」
「だって私たちおこづかいもらったことないし」
不満そうな声を出しながら財布のひもを緩めた時、誰かが割り込んできた。
「大精霊の話をしましたか」
声のするほうを見れば、いかにも偉そうな青年が仁王立ち腕くみで立っていた。
「その場所、しっているなら教えてもらいましょうか。ほら、金ならいくらでも渡しすので」
少女が目をお金に変えながら青年のほうに走っていく。
「わあい。三姉妹はね」
ごにょごにょと耳打ちする少女、なるほどと頷く青年。
「なるほど、この山脈のどこかにあるダンジョンの中ですか! この私なら見つけるのは簡単の極み」
自信満々に大声で話す青年。せっかく少女が配慮したというのにまったくの無駄にするという。
「あいつマヌケだな」
「独り占めすればいいのにね」
「う、うるさい」
ひそひそという双子に顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「ふん、見たところ低レベルの冒険者でしょう。そんな程度ではこの山脈のダンジョンはおろか、道中の魔物すら倒せないでしょう。私の敵ではありませんね」
どこか威張り散らしている青年にシロハはポツリ。
「そんな雑魚にいきってて恥ずかしくないのかな、あと極み極み連呼しててくそダサいし」
「しっ……! 一人で冒険してるから久しぶりに人と会話できてうれしいんだよ」
「ツワシのそれフォローのつもりなんだろうけど、とどめさしてるだけだからな」
三人でこそこそ会話していると、憤怒の温度が限界を超えたのか青年は武器を構えた。
銃の先に鋭い剣がついた銃剣
「大貴族の息子であるこの私、天才ロネス・アッロガンスになんたる無礼の極み! 許せんッ」
「もおシロハが失礼なこと言うからッ」
「本気?」
ツワシはさっと双子の後ろに隠れた。
シロハは呆れた顔でやれやれと首をふる。
「ねー落ち着いてよ。こんな村のなかで暴れたらだめじゃん」
「珍しくシロハがまともなこと言ってる」
「お前だけぶっとばすぞ~? だってこんなとこで暴れたら、もふたんズがかわいそうじゃんっ」
背後で草を食べていたフルモフが一斉にめぇ~と鳴いた。
それをみてかわいいとにっこりシロハ
「ふ、私としたことが少し熱くなりすぎたようですね」
「でしょ。だから……」
シロハは村の外に続く門のほうを、くいっっと親指で示した。
「外でやろーよ」
「やるんかい」
ツワシの突っ込みにシロハは悪い笑みを浮かべた。
「売られた喧嘩は買わないとね~。大貴族様なんでしょ? さぞよい金品をお持ちなんでしょうね」
「追いはぎする気満々だッ。逃げてぇ!」
「えー、武器構えといて逃げんのぉ?」
ロネスはとんでもない悪童にかかわってしまったと思っていたが、なめられたままでは貴族としての沽券にかかわると勝負にのってしまった。
村の外にでると、より一層寒さが増した。
「さっっっむう」
「どうやら村に防寒の陣刻まれてたみたいだね」
微妙に村の門の内側にたって、外に出ていないツワシがそう説明すると、とことこシロハはツワシのところにいくと、くるりと振り返り腕を上げた。
「がんばれシスター!」
「なんでだよ」
煽るだけ煽った当事者二人は門の内側で応援ムードをだしていた。
「ふ、相手が誰であろう、雑魚には変わりない」
「あ?」
「こてんぱんに負けて泣いて詫びるがいい」
ロネスは銃剣を空に向けて銃弾を放った。
「篠突ク玉雨」
激しい雨のような弾が集中して轟轟と音を立て、まるで空を飛ぶように降ってくる。
クロハはそれをみつめたまま仁王立ち
「ちょ、クロハっ」
心配の声をあげたツワシ。
弾が当たる瞬間クロハはモーニングスターを取り出し、気合いの一振りで無数の弾丸を弾き飛ばした。
「はっ……はあっ……はああ?! そんな強引に、あり得ない。魔法の弾丸ですよッ、それを……力技で吹き飛ばすなんて。……なんて、なんて野蛮の極み!!」
クロハはあまりの衝撃に戦意を消失しているロネスに向かって走り出した。
モーニングスターを大きく振りかぶり、勢いをつけてぶっ飛ばす。
「命中大当りーい」
直前に防御魔法を展開していたが、勢いを殺すことができず全身を打たれ、はるか遠くまでぶっとんでいったロネス。
その姿が見えなくなるまで見送っていると
「なにしてんの」
参拝を終えたディーとライラが怪訝な顔で三人を見つめていた。
「変な奴に絡まれてた」
「へえ。ところで霊峰の途中でダンジョン見つけたけど行く?」
「「いくー」」
ディーに興味すらもたれなかったロネス。
きっと数時間後には彼のこと記憶からすっかり消えてるんだろうなと思いながら、何も言わずツワシも仲間のもとに合流するのだった。
「あ、追いはぎできなかったじゃん」
思い出したように文句だけはいうシロハ。
クロハ何も言わず肩をすくめるだけで終わった。




