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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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264話 感覚の違い


 イレギュラー討伐から一週間が経過した。

 前代未聞の五十階層イレギュラー出現に加え、討伐後に入手したドロップアイテム。

 その事実はギルドを騒然とさせた。


 というのも、あのイレギュラーは今までドロップアイテムを落としたことがなかったらしい。

 危険性の確認のため、調査の対象として一時的に回収されることになってしまった。


 人の記憶を盗み取り、トラウマをついてくるモンスターだ。

 それ相応の能力が予想されたのだが、結果は予想外に高性能で有用な魔道具だった。


 ドロップアイテムは背面にピエロの模様が描かれている手鏡と、片眼鏡(モノクル)の二種類の形態変化を持っている。


 それぞれ形態ごとに能力が違い、手鏡状態は持っていることで、ある程度の威力の魔法を跳ね返すことができ、片眼鏡(モノクル)に変化させれば簡易の鑑定能力と、一部のダンジョントラップを見分けることが出来る優れもの。


 下層で使うには片眼鏡(モノクル)状態の性能の方がありがたいそうなのだが、この魔道具には使用制限があった。


 片眼鏡(モノクル)状態だと三時間、魔法反射は二回使えば上限に達する。

 上限に達すれば武器にもならないおもちゃに成り下がり、何故か重さが三百キロに増加してしまうのだ。

 泊まり込みでダンジョンに潜ろうとする時には少し頼りなく、売ろうとしようにも重量に制限があるアイテムボックス持ち相手だと買い手が少ない。


 なので現在の使用用途としては、エアリアルで手に入れた魔物の肉を鑑定することに使われていた。





「……それ、凄い気持ち悪いね。でも食べられそう。今のうちに解体しておこうか」


 場所は調理場に備え付けられている一室。

 亜空間から取り出した魔物を見て、紬は嫌そうな顔をしながらも、装着した片眼鏡モノクルで毒がないことを確認して許可を出す。

 今回取り出した魔物は、エアリアルで熊蜘蛛と呼ばれている多脚生物だ。

 密林に生息し、そこまで強くはないが捕食者の部類に入る魔物である。

 この体躯で木々を登り、獲物を奇襲する。

 中級者あたりの探索者も、油断してこいつにやられることが多いらしい。


 これが大丈夫なら、と俺は追加で魔物を取り出すが……

 

「これはどうだ? さっきのやつと見た目が似てる……」


「それは駄目」


 紬は取り出した魔物を、親の仇のように睨みつけながら却下する。

 どうやら大蜘蛛の魔物は受け付けてないらしい。


「……一応言っておくが、この魔物は不味くはないらしいぞ。結構な熱で身を焼けば、肉に持つ微弱な毒も消えると聞いたことがある」


「それはレオさんの感覚で言ってるでしょ! 僕の片眼鏡(モノクル)には、その蜘蛛は真っ赤に写っているんだからね! 鑑定役変わってよかったよ本当に……」


 この魔道具の欠点は、装着者の耐性によって有害か無害か判断してしまうことだ。

 これは俺が鑑定していた時に、全て無害と表示されていることを不信に思った紬によって発覚した。

 耐性を貫かなければ全て無害。

 その効果は一人で行動するには十分すぎるほどの性能だが、複数人で行動している俺にとって無用の長物に成り下がった瞬間だった。


「……そうか。なら他の大蜘蛛も試しに――」


「大蜘蛛は一旦おいておいて、僕は普通のお肉が食べたいかなあ〜。レオさんだってお肉好きでしょ?」


 紬がぎこちない笑みを浮かべて問いかけてくる。

 俺はその笑みに謎の圧力を感じて静かに頷いた。


「肉が好きならそっちだけ先に出していけばいいか。まだ(さそり)とか百足(むかで)とかいっぱいあったんだけどな」


「うん。それは後回しだね。……一生出番が来ないことを祈ってるよ」


 強くなりたいと頑張っている紬だが、それでも昆虫型の魔物を食べるのは抵抗があるようだ。


「そうか。じゃあこの魔物は俺が処理するとしよう。似たような蟹とか海老も、ここの魔道具を使えば俺でもそれなりに……」


「それは大丈夫! というより大好物です!」


 食い気味に反応する紬に首を傾げる。


「いや、蟹だぞ? 蟹も蜘蛛も変わらんだろ?」


「レオさん、それは食事に対する冒涜だよ! 蟹と蜘蛛なんて月とすっぽん。一緒になんてしたら怒られるよ!」


「本当に大丈夫なのか? 結構大きいんだが……」


 認識のズレを確認すべく、俺は蟹の魔物を取り出す。

 部屋いっぱいに蟹の足が広がり、四方の壁にはさみや脚がぶつかる音が響いた。

 そんな巨体を見て紬は……目を輝かせている。


「――こんなに大きかったら何食分作れるんだろ! 蟹クリームコロッケ作って、蟹のパスタも捨てがたいね。蟹鍋はもちろんいるでしょ? 本当夢みたい!」


「なあ……紬? 毒はどうだったんだ?」


「へ? 毒? うん。大丈夫! 無毒ってなってる。同じ魔物は残ってるの?」


「まだあるが……紬は獣の肉が好きなんじゃ――」


「ありがとう。レオさん大好き! それならじゃんじゃん出しちゃって! 美味しく料理してあげるから」


 興奮した紬が抱きついてくる。

 そのテンションの上がりように困惑しながら、俺は大蜘蛛と蟹を見比べる。

 どちらも足は太く、食べ応えもありそうだ。

 ……俺にはその違いがわからなかった。


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