リウとユキ
感想ありがとう、ありがとう!
――ある日のこと。
「お前のその耳、本当に可愛いなぁ」
「あぅう、うぅ!」
さっきまで爆睡だったのだが、目を覚ましてしまったリウを、俺はあやす。
ちょいちょいと耳を弄ってやると、嬉しそうに笑って手足をばたつかせるリウ。天使か。
リウはもう、大分感情表現が出来るようになった。
おもちゃでも、叩いたりつまんだり転がしたり噛んだりなど、しっかり認識して遊ぶことが出来るようになっており、俺達の方が見ていて飽きない。
身体も大きくなってきたし、ハイハイも出来るようになったし、我が子の成長著しいことこの上ないだろう。
いやはや、セツの成長も早かったが、こうして見るとリウとサクヤの成長もやっぱり早いように思う。生活リズムも整ってきて、昼夜関係なかった一日のサイクルも、もうほとんど俺達と同じものになってるしな。
我が子の成長は嬉しいが、しかしどんどん大きくなるのが寂しいような、二律背反な気持ちだ。
このまま成長して、しっかりと意思疎通が出来るようになってほしい。だが、小さく可愛い、この赤ん坊という状態の彼女達の世話をもっとしていたいという気持ちも、胸の中にあるのだ。
まあ、サクヤ並に振り回されるとちょっと困ってしまうのだが、リウくらいならただただ可愛いものである。
我が息子はもう、大したモンだ。あれだけ大人を振り回す赤子というのも、なかなかいないだろう。末恐ろしいというのは、アイツのためにあるような言葉だな。
ただ、サクヤよ。残念ながら我が家は女所帯だ。
お前には母が四人と、姉が七人と一匹いる。大きくなったら、きっとお前はおもちゃにされるだろう。振り回す側から振り回される側になるのは確定事項だ。
強く生きろよ……。
「リウ、ウチの家族は変なのがいっぱいだ。特殊属性持ちばっかりで、弟のサクヤも相当特殊だ。むしろ、サクヤは我が家で一番かもな。ただ……お前は普通の子だ」
魔王の血は継いでいる。
だが、それだけだ。俺の血とレフィの血を継いで、なんかおかしな風に超進化してしまったサクヤとは違う。
「けど、そんなことを気にする必要は一切ないからな。身体の特殊性は、物珍しいだけでそれ以上の意味を持たない。『珍しい』って情報があるだけだ。大事なのは、持ってる手札で何を為すのか、だぜ」
この世界を生きて、今は特にそう思う。
俺は、色んなヤツを見てきた。
能力は凄まじいのにポンコツの龍から始まり、頭脳一つを武器として使い、ついには世界の盟主とでも言えるだけの立場となった魔族や、覚悟と決意を以て、祖国のため世界を相手に戦争を起こした人間。
他にもまだまだ色んなヤツらがいたが、そんな彼らと比べて俺は、『魔王』というとりわけ強い肉体を持って、生まれることが出来た。
レフィとかの超生物は抜きに考えるとしても、それは他者よりも強いカードなのは間違いなく、俺が今日まで生きることが出来たのも、その力のおかげだ。俺がただの一般人だったら、とっくにくたばっていたことだろう。
しかし……それだけではダメなのだ。そんな身体的優位は、手札が一枚か二枚多いというだけでしかない。
それでも十分に強いのは強いが、ただ強いカードをポンと場に置いただけで勝てる程、世界とは単純じゃないのだ。
俺は、そのことを痛感した。だから、足りない頭を捻ってどうにかこうにか知恵を絞り、あるいは知恵ある者に力を借りて、今日までを生きてきたのだ。
ヒトという種において、一番の武器は『考えること』じゃないかと、最近思う。
足りないのならば、どうすれば足りるのか考える。
これ以上手札が増えず、それが乏しいのならば、カードの切り方を工夫して戦う。
無いものは無い。ならばその前提条件の上で、いったいどう立ち回れば良いか。
強いというのは、そういう思考が出来るヤツだ。
戦い方を確立出来れば、弱い手札でも、覚悟を決めて場に出すことが出来る。
俺がこの世界で出会い、手強かったヤツらは皆、漏れなくそういう戦い方をしていた。各々が大事にするもののため、譲れない一線を守り通すため、どうすれば勝てるのか、考え続けていた。
思考することは、ただそれだけで強い武器なのだ。
「うぅ?」
「だから、リウ。この世界で強く逞しく生きるには、いっぱい考えることだ。それさえ出来れば、日々を生きることも楽しくなってくるってもんだぜ」
「――カカ、赤子に人生論を聞かせても、理解出来んぞ」
なんて、リウをあやしながら語っていると、隣から聞こえてくるレフィの声。
他の女性陣の姿はない。レフィだけである。
ポフンと隣に座る我が妻。
「いいさ。そういう風に育ってほしいって俺が思ってるだけだからな。ちょっとでも覚えていてくれれば、それでいいんだ」
「考える、か。そうじゃな、その通りじゃ。ヒトは、魔物より弱い者が大半であるが、今まで生き残り、さらには繁栄しておる。爪や牙が無いのならば武器を作り、皮膚が柔らかいのならば防具を作り、魔力が低いならば、それを補う戦術を生み出してきた」
足りないものを考え、足りるように努力し、そうして生きてきたが故に、人類は繁栄した。
考える葦。昔の人は、良いことを言うもんだ。
「対して、儂ら龍族などは、強い。生まれながらの圧倒的な強者じゃ。それ故に『必要』が生まれず、文明を生み出すことが出来ない。一枚の最強の手札がある故、工夫をしない。考えることをしない人生とは、淡泊でつまらんものじゃ。……まあ、お主も以前は、基本的に考え無しじゃった訳じゃが」
「は、反省してんだよ。だからそうなってほしくないと思ってだな……」
「カカ、ま、儂も人のことは言えんでな。それに、今のお主は前よりは幾分かマシじゃろうの。種族進化ではないのじゃ、何でもかんでも一足飛びに成長、とはいくまい」
「そうだな……よし、リウ。一緒に、一つずつ成長していこうな。まずは……大きくなるために、好き嫌いをなくすところか。リウ、食べ物はバランス良く食べるんだぞ。こんなお菓子好きになっちゃダメだ。マジで太るし、虫歯になるからな」
「いやいや、まずは思慮深さを身に着けるべきじゃろう。リウ、こんな阿呆になってはならんぞ。遊ぶのが好きなのも結構、冗談が好きなのも結構、じゃがユキ程になってはいかん」
「いやいや、人生を楽しむコツこそ、おふざけだ。笑いとは誰もがハッピーになれる要素! 俺のようになれば人生はハッピーだぜ!」
「いやいや、リウは女の子じゃ。似るなら儂のように、強く逞しい、夫の無茶ぶりにも平然と耐え得る女になるべきじゃな!」
「いやいや、レフィは――」
「いやいや、お主は――」
そうやって、俺達が「いやいや」言いまくっていたせいか、リウは耳をピコピコと動かしながら、俺達の真似でもするかのように、「いあいあ!」みたいな笑い声を漏らした。
クソ可愛いんだけど、それ邪神召喚されちゃうがな。
発売日が近付いてきたので宣伝をば。
今作16巻、9月8日発売!
いつも通りに本編の書き足しと、書籍限定の特別編と、マジで毎回素晴らしく神過ぎるイラストがあります!
何度も言ってるような気がするけど、イラストが素晴らし過ぎて、神過ぎて、イラストレーターさんに足を向けて寝れんわ。
どうぞよろしく!




