お土産。
南部のお土産がある、と、デボラ先生からブリア語の手紙が届いた。
お手本のような整った字体だ。先生は…いったいどんな教育を受けてきたんだろう?
手紙を広げて、アルバンはふとそんなことを考えた。
お土産は嬉しい。それ以上に、先生に会えるのがウキウキするほど嬉しい。
アルバンはブリア語で書かれた医学書を閉じて、手帳に先生と会う日にちを書き込んだ。
***
「今回の仕事先のゴーチェ家の奥様にお土産を頂いてきました。」
先生が僕に手提げ袋ごと渡してきた。入っていたのはオレンジとオレンジマーマレードの瓶詰。待ち合わせしたのは、下町の、あの靴屋の近くの食堂。
「あと、これですね」
綺麗にラッピングされた袋に入っているのは?クッキー?
「上手にできたところを奥様が持たせてくださいました。お友達によろしく、とおっしゃっていましたので。」
…お友達?
先生が僕のことをそう思ってくれたのなら、とてもうれしい。望むところだ。
僕は久しぶりに会った先生に、この次の春から留学が決まったブリアのアカデミアの話をした。医学部だ。もちろん、先生には手紙では知らせていたが。
「僕は、子供専門の医者になろうと思っています。フールにはまだ確立した小児専門医がいないので。」
「そうですか。伯爵家の跡継ぎとしての責務はどうなさいますか?」
「うん。父と母とよく話し合って、弟に頼むことにしたんです」
「そうですか。」
先生は特に驚くこともなく…運ばれてきた紅茶を上品に飲んだ。おそらく…肯定でも否定でもない。…人に興味がない、というより、表現が苦手、なのかもしれないと僕は思い始めている。
「今回のアルバン様のアドバイスは大変興味深く、役に立ちました。ありがとうございます。」
「では、その子はよく話せるようになったんですね?」
「ええ。私の功績というよりは…母親の…力だと思いますが。」
そう言った後、先生は何か考え込んでいる様だった。
寮に帰ってから、ラッピングされた小さな袋を開けると、クッキーが入っていた。
「これは?うさぎ?…いや、猫、かな?」
アルバンは一枚取り出して齧ってみた。思ったより硬くて、それが何だか先生らしくて、少し笑った。




