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第4話 新しい家庭教師。

「アルバン、ようやく次の家庭教師が見つかったのよ!」

自分の勉強部屋で本を読んでいた僕に、部屋に入ってきた母が嬉しそうに話しかけてきた。

「今年の家庭教師協会の試験をトップで合格した方で、お勉強もマナーも教えてくれるそうよ。」

「母上、ありがとうございます」

「うふふっ、良い方だといいわね?」


母は、思っていることを何でも口にするタイプだ。顔にも出る。分かりやすいが…僕のことを話すときは辛そうで申し訳なく思っている。


母とそんな話をしてから1週間ほどした頃、新しい家庭教師が来た。

「初めまして、アルバンと申します。よろしくお願いいたします。座ったままで失礼します、先生」

僕がそう言うと、

「アルバン様、初めまして、デボラと申します」

そう言って、黒のワンピース姿のその人は、お手本のようなお辞儀をした。


…なるほど…マナー講師も、ね。

付いてきた母も、頬を染めて眺めているところを見ると、伯爵夫人から見ても上手なお辞儀だったのだろう。


「まあまあまあ…よろしくお願いいたします。今までの先生はもう、うちの子に教えることが無くなったと申しましてね…。」

「そうですか。」

自慢のように聞こえないのは、さすが我が母だと思う。新しい先生はそれを聞いても、動じないし、世辞も言ってこない。

「それでですね…うちのアルバンは、その…左足が不自由でして…。この子が小さい頃に私がほんの少し目を離して…」


そう、僕は左足が少し不自由だ。小さい頃に骨折して…どうもうまくくっつかなかったらしい。ほんの少し左足が短く、ほんの少し細い。歩けなくはないが、歩くときは杖を使っている。

その話をするときの母は…いつも辛そうだ。その怪我以来…こうして母は僕につききりだ。二つ違いの弟がいるが、父と領地にいることが多い。いろいろと…いろいろな人に気を使われている。僕としては…。


「お坊ちゃまは来年、学院に入学したいと伺っております。その準備でございますね?」

「え?ええ…」

先生が今後の話をし出したので、わかりやすく母がうろたえる。

進学は僕の希望だが、母はどうも反対らしい。ずっと家にいてもいいのではないかと、そう思っているらしい。

「その…この子は足が不自由でしょう?学院生活はどうかと思いまして…。全寮ですし…。」

「はい。では、勉強を進めながら、日常生活の訓練、と言ったところでしょうか?そういう認識でよろしいですか?」

「…え?ええ…」


朝早く僕が中庭を散歩をしていただけで、コートを持って走ってくるような母。もちろん感謝はしているが…。


「では、先生。よろしくお願いいたします」


僕がそう言うと、その新しい先生は、お手本のような微笑みを浮かべた。

母はほんの少し戸惑うような、寂し気な顔で、僕らのやり取りを眺めていた。



***


「では、朝8時から12時まで座学をして、お昼休みを取って、13時から16時まで日常生活の訓練ということでよろしいですね?」

「ええ、先生。よろしくお願いいたします」


そんなことを先生と僕で打ち合わせしていると、母がうろたえる。

「まあ、先生、昼食後にお昼寝の時間は?」

「お母様。時間割を調べてまいりましたが、学院にはお昼寝の時間はないようです。」

「朝も、そんなに早い時間からお勉強が始まりますの?」

「はい」


顔色一つ変えずに、先生が母の質問に答えているのを見て、申し訳なくなる。

「お母様?大丈夫ですよ?僕は体も以前より丈夫になりましたし。」

「でも…アルバン…」


有無を言わさず、先生の授業が始まった。

今までのおさらいから、僕の勉強の進捗状況を確認している。

「いいですね。ブリア語とイリア語は大丈夫なようですので、イング語は?」

「…まだ習ったことがありません」

「そうですか。では、教科書は明日までに用意します」


自慢ではないが…13歳にしては十分な勉強量だと思う。まあ、足が不自由だった分、本を読むのが楽しみだったこともある。何人かの家庭教師の先生も途切れずに来てくれていたし。


こうしてデボラ先生との毎日が始まった。基本、日曜日は休みで、先生は通いで僕の家まで来てくれる。毎朝、かっきり8時。


午前中は勉強をし、一緒に昼食をとり、午後は運動を兼ねて軽い散歩から始まった。









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