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11|悪魔っ娘、ラスボスを荷物持ちにしてみた☆.

 今日はパパとのお出かけ〜♪

 そしてアタシの命日かもな日〜♪


 鼻歌を歌いながら、ラムズが用意した服に着替えた。高級商家の娘ってくらいのワンピース。アイツはやっぱりセンスがよくて、アタシの好みばっちりの服を選んでいた。

 いつもの悪魔(アタシ)流ヘアアレンジをしてから、ラムズとタウンハウスに転移する。王都のタウンハウスと、辺境の地である公爵家の屋敷と、魔法円を刻んで転移できるようにしているらしい。もちろん、使えるのはパパだけだ。



「王都に〜! 着いた〜!」


 逃亡生活中、何度かここには来たことがある。でも監視を気にせず歩くのは初めてだ。


「危ないから離れないで」


 パパに腕を引っ張られる。


「おまえまで子供扱いすんな」


 屋敷でガキっぽく振る舞ってるのは、そのほうが許してくれる人が多いからだ。別に中身はガキじゃないもん。ワガママなだけだもん!(永遠ブラックモードシェリンちゃんだったら、おまえらが眺めるのも疲れるでしょ? アタシの気遣いに感謝しろ?)


「子供扱いじゃなくて、俺の娘だから危ない目に遭ってほしくねえの」

「あっそ」


 急に甘いこと言ってくるとかキモ。ほっとこ。


 それより、コイツはもう初っ端から素で話すことにしたんだな。アタシも口悪いから対抗してんのか? ふーん?




 王都の大通りは、活気に溢れ、琥珀色に輝く石畳できらきら光って見えた。蜂蜜やバター、スパイス、いろんな匂いで混ざり合い、屋台が所狭しと並んでいる。


「どれが美味しいかな〜?」


 あれほしいこれほしいと次から次に指さして、食べ飽きたものは全部パパに寄越した。アイツはあまり食べ物に関心がないらしいけど、胃の大きさに限界はないみたい。


「シェリン、これは?」

「ん〜? 棒がチョコに刺さってる、美味しそーかも」


 ケーキポップスというらしい。種類の違うミニケーキがかわいくデコレーションされて、チョコレートが上からかけられている。


「アタシこれ好きー。美味しい」


 この店の味、気に入った。


「シェリン、食いながら歩かないで」

「なんで? こんなところで行儀悪いとか言う?」

「そうじゃなくて」


 口にくわえていた棒を抜き取られる。銀髪を揺らし、アタシを覗きこむように見下ろした。


「お前さっきつんのめってただろ。棒咥えたまま転んだら怪我する」

「アタシガキじゃ──」

「ガキじゃなくて、シェリンが心配だから言ってんの」


 はいはい、キモイキモイ。婚約破棄で断罪予定の娘に何を心配してんのよ。ああそっか、娘が今ここで怪我しちゃったら婚約破棄イベントできないもんね〜? パパは婚約破棄イベントに命懸けてるんだもんね〜?


「うっさいカス」

「なんでそんなに当たりが強いんだよ……」


 ラムズがあまりにしつこく危ない危ないと言うので、仕方なく座って食べてあげることにした。




「あ。アップルパイだ〜。食べたい」

「じゃあ店に入るか」


 彼は何か言いたげにしながら、カフェの扉を開いた。


 ショーウィンドウに飾ってあったアップルパイを注文する。食べたことのないお菓子なんてあったんだな。公爵家はケーキやお菓子の数が豊富だし、ないと思ってた。

 ラムズはコーヒーを頼んだだけらしい。


 ナイフでアップルパイを器用に切って、一口食べた。


「……アタシこれ好きじゃない」


 ぱさぱさしてて口の中が乾いちゃって、なんか鬱陶しい。


「なんで頼んだんだよ……」


 アタシがラムズのほうに皿を滑らせると、彼は呆れながらアップルパイを食べはじめた。代わりにチョコタルトを選んだ。ガナッシュ・ビターのタルトと、オランジュ・ノワゼットのショコラ・オ・レ・タルトだ。


「ビターのほうが好き〜」


 半分残ったショコラ・オ・レ・タルトはまたパパに寄越した。





 それから街を歩いている最中、アタシは普段の癖でこそっと人の財布を盗んでしまった。あとは、黒魔術に使えそうなアミュレットや指輪も。……たぶんラムズにはバレてないから大丈夫だと思うけど。

 座ってロリポップキャンディを舐めていたら、ラムズに話しかけられた。


「シェリン?」

「なに〜」

「さっきなにか盗っただろ?」

「え。盗ってないよ」


 すぐにカバンを奪われ、中身を確認された。

 ラムズの細い指が、盗んだばかりのアミュレットを摘み上げる。


「……あるじゃん」

「癖で〜……ごめんなさい」


 すると急に彼の手が伸び、頬を軽く抓られた。彼はどこか面白そうにくつくつと笑う。


「なんで謝んの?」


 今更もう……触られることには驚かないけどサ。

 演技の方向性を変えたのか……? 実際、アタシも相手のタイプに応じて別の性格を演じることはある。


 ひとまずあまり気にしてない素振りで返事をした。


「怒られると思ったから?」

「怒んねえよ。盗った瞬間は俺もわからなかった」


 彼はそう言ってアタシの髪をくしゃくしゃと撫でた。


 ……ん、ん? コイツ頭バカになってる? アタシのご機嫌取りたすぎて、なんでも褒めとけばいーだろって思考?


「ナニ褒めてんの? またご機嫌取り? そんなに王子とアタシをくっつけたいワケ?」


 急にアタシが刺々しく尋ねたので、ラムズは目を瞬いた。


「……なんでそうなる?」

「物盗んで褒めるとか頭おかしーじゃん。とにかく褒めればいいと思ってんでしょ」

「おまえ……」


 彼の目がすぃと細くなる。それから視線を逸らし、小さく言った。


「なんでもない」





 途中で寄った服屋では、アタシの好みに合うものを選んだり買ったりしてくれた。センスもいいし、こっちの趣味もよくわかってるし、ほんとスパダリなパパだ。超便利〜♪

 オーダーメイドの服はひとつ頼んでおいて、既製品のものを試着してラムズに見せる。


「見て〜」

「かわいい」


 ほんとに思ってんのか〜?

 ほぼ無表情に近い眼が、からかうように細まっている。まあ、今までみたいに胡散臭い柔和な微笑じゃないのが救いか。


「こっちは? どう?」

「全部かわいい」

「ダメだよ、それ一番嫌われるやつ。選ばなきゃ」

「えー。だって全部かわいいもん」


 アタシの頬を抓り、起伏のない声でまた零す。


「世界でいちばんかわいい。俺のかわいい娘」


 なんだコイツ……?

 ほんとに壊れたのか?


 まあ、かわいいと言われて悪い気はしない♪ アタシはお洒落が大好きだし、褒められるのも大好きだ。だからもっとかわいいって言え。


「聖女は? 聖女とも仲良いじゃん」


 彼の目が一瞬陰り、睫毛がすっと瞳を狭めた。


「まあ……。どうかな。シェリンのほうがずっとかわいいよ」


 まあここでわざわざ聖女のほうがかわいいとか言うワケないんだけどさ。


「なんで? どこが?」

「すべて」

「雑か?」

「自分の娘のほうがかわいいに決まってんだろ?」


 おまえにもそういう価値観あんの?


「ほんとにそう思ってんの?」

「ん〜。肌の色、髪の色、髪の質感、目の開き方や笑い方。睫毛が銀色なのも、眼が俺と同じように青くて鮮やかなのも好き。手指が細くて綺麗だし、口元から覗く牙もかわいい。今の髪型もかわいいし、シェリンがたまに冷たい顔で威圧するのもかわいいよ。俺や使用人にあざとく笑いかけてんのもかわいい。口が悪くて我儘なのもかわいい」

「………………」


 親バカ……? 急にコッワ……。

 表情筋が伴ってないけど大丈夫か? 能面みたいな顔してるぞ。


「アタシのことちょー好きなんだね……」


 口が悪いのも好きなんだ。冷たく威圧って……前に使用人の前で「おまえに言う必要ある?」とかって暴言吐いたときのこと? あれ見てかわいいって思ってんの?

 斜め上すぎる褒め方されて、シェリンちゃんは戸惑い中です。


「パパって呼び方のほうがいいって言ったのも、かわいいからなの?」

「……というか、前にそう呼んでただろ。俺はそのほうが好きなんだ。変えてほしくなかった」


 拗ねるみたいに言うじゃん。文句は〝シェリン〟に言ってよね?




「シェリン、スモアは? あれも買おう」

「スモア?」

「最近屋敷で出してなかったもんな」


 ラムズが買ってきたのは、クッキーのあいだに焼いたマシュマロとチョコレートを挟んだお菓子だった。一口食べて、アタシは目を輝かせた。


「……わあ、なにこれ〜! 超好き〜」


 ラムズの服を引っ張り、上目遣いで尋ねた。


「ね。なんでアタシが好きだってわかったのよ」

「俺の娘のことなんだから当然だろ?」


 彼は悪戯っぽく目を細めて頭を撫でた。

 そうじゃなくてさァ? ……アタシ、味覚まで(からだ)に引っ張られてんのか?




 一緒にだらだらすんのも飽きてきた。アタシはベンチでぶらぶら脚を揺らしながら、間延びした声で言う。


「ねえパパ〜。アタシさっき食べたケーキポップスがほしい〜」

「じゃあ食べに行こう」

「アタシ疲れちゃった。買ってきて? ここで待ってるから」


 今日一日、パパというより、……公爵というより、アタシお付きの使用人ってくらいなんでも言うこと聞いてるから、今回も叶えてくれると思ってた。


「ひとりにできない。お前が動きたくねえなら別の者を呼ぶしかない」

「やだ! 今日はふたりきりなの!」


 ぞろぞろ護衛を付けて歩きたくなんてない。

 そうそう、ふたりきりってことは、事故死に見せかけて殺されるって可能性はほぼ消えた気がするんだよね。だってこのタイミングでアタシが死んだら、コイツが疑われるし。


「なら一緒に行くか、お菓子を諦めて」

「やだ〜。おねがい!」

「絶対俺が行ったらどこか行くだろ。だめ」


 なんでバレてる?


「おねがい!」


 同じやり取りを十回くらい繰り返して、ラムズが別の提案を出しはじめた。


「なあ、疲れてるなら抱き上げて連れて行くんじゃダメか?」

「やだ〜」

「背負うのは?」

「嫌〜」


 そんなガキじゃねーし。


「じゃあこのベンチに鎖で繋いでおく」

「ナニ言ってんの? 絶対嫌だから! とゆーかなんで持ってんだよそんなもの」


 ラムズはとうとう諦めて、アタシに何度も「このベンチで座ってろ。絶対いなくなるな」と釘を刺していなくなった。


 ま、そう言われて? 座ってるシェリンちゃんではないので?


 アタシは彼が進んだほうとは逆の道を歩きはじめ、ひとりのお買い物を楽しみはじめた。お金はそんなに多く持っていなかったので、特に気に入ったものはこそっと盗んで鞄に入れた。

 悪魔だもん、スリくらいデフォルトで搭載されてる。しかも超上手なので、今まで捕まったことがない。



 どこかで肩がぶつかった背の高い男が、立ち止まってアタシの腕を掴んだ。


「ねぇ君! どこかで会ったことない?」


 は? 知らねーし。


「知らない。消えて」


 淡々とした声で冷たく言い落とし、腕を振り払おうとする。彼はむしろ両肩を掴み、きらきらした緑色の瞳を丸く見開いた。


「絶対知ってると思うんだ。話を聞いてほしい」


 ただのナンパでしょ? でもワンコ属性の男ってちょっと興味あるかも。今回のループくらい遊んじゃってもいいかな〜。


「わかった」


 彼は目を輝かせて早速腰に腕を回しはじめた。手早っ。

 アタシはずっと低い声で冷たく相槌を打っていたけど、ワンコ属性男(仮)はまったく気にした素振りなくお喋りを続けていた。話し上手だし、しょっちゅうナンパしてるのかもしれないな。



 それから気づいたら、人気のない薄暗い路地まで来てしまっていた。アタシ好みの妖しい店が並び、黒魔術に使えそうな道具を売っている露店をいくつか見かける。


 男の目を盗んで必要なものをアレコレ盗っていると、急に目の前に大男が三人現れた。後ろに太陽を背負い、筋肉隆々の体を見せつけるように仁王立ちをしている。

 あ〜。そういう系?


「上々の女じゃねぇですか」

「だろう?」


 隣のワンコ略がにっこりと笑みを深めた。


「死にたくないなら消えて」


 アタシが低く吐き捨てると、男たちがげらげらと笑った。


「そんな細っこい体で何ができるんだか。ほら、来いっ!」


 奴隷にされるのか? それともこのままお持ち帰りされるのか?♡ 後者なら楽しめそうだけど、初めてがコイツらっていうのはちょっと不服だな……。ワンコ属性(偽)の男だけでよかったのに。


 黒魔術を使えば、たとえ三人でも簡単に屠れる。でも万が一あとからパパに見つかった場合、アタシに黒魔術が使えることがバレてしまう。


 ひとまず超危機的状況になるまではいいかと思って、両腕が掴まれるのを黙って受け入れた。……ただ、そうなると今度はパパに探し出してもらうしかない。アタシはもう一度、服についた色石の飾りを地面に落とした。



 それからアタシは、ちょくちょく「あの店が見たーい」とか「この店に寄りたーい」とか能天気に言って時間稼ぎをした。殴られそうになったときは、しおらしく「ごめんなさい」と謝る。

 そうして怪しい路地を何度か曲がり、ついに傾いた小汚い家の中に突っ込まれそうになった。


「嫌」


 アタシは体を揺すった。


「いい加減にしろ! お前はこれから売り飛ばされるんだ! まずはその荷物を……」

「触んないでよ」


 せっかく盗ったのに、無駄になんじゃん。

 体を捻って抵抗すると、片方の男がアタシの五倍くらいある掌で手首を掴んだ。ミシミシと音がする。


「痛いっ、いた。痛ッ!」


 黒魔術が使えて中身が悪魔でも、ただの人間の(からだ)だ。骨を折られたら痛い。


「折られたくねぇなら抵抗すんな!」

「おまえらこそ死んでも知らないよ」

「なに言ってる? 生意気叩くようなら今度こそ……」

「痛いッッ!」


 ぎゅっと掴まれた腕に思わず叫ぶと同時に、目の前の男がどろどろ溶け落ちるように倒れた。


 やっと来てくれたー。


 大男は、水分を抜かれた脱け殻みたいな体で地面に落ちている。残りの二人の大男は死体に恐れ戦きながらも、アタシに掴みかかろうとした。すぐさま後ろから細い腕がアタシのお腹に回り、冷たい体に引き寄せられる。


「……シェリン」

「誰だお前! どこから湧いてきた!」


 一寸の躊躇いなく、巨大な氷柱が大男の腹に突き刺った。


「ま、ま。待ってください。旦那、これにはワケがあるんです……。金ならあります、どうか命だけは」


 件のワンコ属性(偽)男が手を擦り合わせて近づいてくる。


「死ね」


 ワンコ略の足元の影がうねうねと伸び、歪な手の形をした何かが脚を掴んだ。体にみるみるまとわりつかれて影に喰われていく。どこかで口に黒い影が入ると、彼は白眼を向いて倒れた。


 アタシはくるりと振り返ると、にこっと微笑んだ。


「遅いじゃん?」


 パパの長い腕が伸び、すっぽりと抱きすくめられる。


「……なんで消えるの。待ってろって言っただろ」


 不満と悲痛をすり潰したような声が聞こえる。……演技でしょ? まさか本気なのか?


「別に死なないし」

「俺が見つけられなかったらどうするつもりだったの」


 低い掠れ声が鼓膜を揺らす。


「目印落としておいたでしょ? 探しにきてくれるってわかってたよ?」


 これまでのループで、あんなに隠蔽魔術を重ねがけしたアタシのことですら見つけ出していたのだ。今回だってラムズがずっと探しているのはわかっていた。いざとなったら黒魔術もあるし、何も危険はない。

 彼は体を離し、アタシの手首に指を当てた。


「さっき痛いって叫んでただろ。怪我したのか?」

「今もちょっと痛いけど……大丈夫だと思うよ?」


 彼はアタシの頬に手を当て、覗き込むように瞳を合わせた。


「……頼むから、危ないことはしないで。シェリンに怪我してほしくない」


 はいはい。演技乙。


「それより、殺しちゃっていいの? こういうのって警吏に突き出すもんでしょ?」

「いいよどうでも。証拠は消すから。……あとここもか」


 アタシが招き入れられそうになっていた家に魔法を放ち、扉をバラバラにぶち壊した。中にいた男たちが何事かと思って席を立ち、めいめいに魔法や剣で応戦しようとする。

 でもラムズが足を踏み入れたところから一瞬にして部屋が霜に覆われ、氷柱ができた。全員氷漬けになって固まっている。


「わ。こわっ」


 やっぱ凄まじい魔法の使い手だな……。王宮直属の魔法士でさえ、ひとりずつ凍らせるだけで精一杯だ。それも、数十分かけてようやくといったところ。

 アタシってこんなバケモン相手にしてんの?


「ねーね。一緒に捕まってた人たちまで凍っちゃってるよ?」

「あー……見てなかった」


 彼は軽く手を動かし、簡易牢の中の氷を溶かした。でも、とっくに凍死してしまったのか、青白く固まった死体がばたばたと床に落ちただけだ。


 え〜、と? アタシはどんな反応すればいい?


 迫ってきた男たちはアイツらの仲間だから悪人だとして、捕まってた人間はタブン……ただの一般人だよね? 人間的にはこれ、アウトなんじゃない?


 でもここで今更〝シェリン〟のようなまとも人間のフリをするのはな……。しかもパパ、慌ててる素振りがゼロだ。


「死んでるみたい」


 ラムズは淡白に言い落とした。超他人事。


「パパ?」


 アタシは腕を引っ張った。ラムズが見下ろし、銀髪の隙間で影になった眼が小さく光っている。


「パパって悪いやつだったんだね?」


 銀の長い睫毛が、三度落ちる。こちらに向き直って首を傾げた。


「……シェリンは?」

「…………んー。アタシも悪い子」


 今更いい子とは言えないだろう。たぶんいい子なら、悠長にパパの腕なんて引っ張らず「どうして殺したの!?」とか「死んでるよ……早く治して!」とか、死体に駆け寄って泣き真似をしなきゃいけない。


「だよな」


 ラムズはどこか満足気に、アタシの頭をくしゃくしゃと撫でた。それから証拠隠蔽のために死体を燃やし、魔法痕跡を消して回っている。


 コイツって……コイツって。ほんとに悪人だったんだ!


 元々腹黒でクズだな〜とは思ってたけど、まさかこんな飄々と人を殺していたとは。娘のことは何か事情があるから仕方ないんだと思ってたけど(仕方なくはないか、フツーに)、なんの罪もない人間をあんなあっさり。


 人の命をどうとも思ってないんだな。さっきの、善良な市民を「あ、いたんだ」くらいのノリで殺してたもんね?


 あははっ。愉し。超嬉しい。

 危険度が上がったのは間違いないけど、ますますコイツが好きになってきた。この悪魔であるアタシ様のパパとして、一次試験合格には申し分ないぞ?



 アタシは駆け寄って後ろから抱きついた。


「ねーパパ。血は飲まないの?」


 たしか吸血鬼って亜人は、単に人の血を飲んで自分の魔力に変換するという能力を持つだけの種族だ。でも一応、血を飲むと美味しいとは思っているらしい。生きるのに飲む必要がなくても……飲んだっていいじゃんね?


「死体の血を飲むのか?」


 これはつまり、生きたやつならいいってこと?♪


「生きた人の、吸う?」

「滅多に吸わねえけど……吸いたいのか?」

「ん〜、んー!」


 このシェリンはハーフだからな、吸いたいと言ってもたぶん不自然じゃないはずだ。悪戯心に目を歪ませて、アタシはパパに尋ねた。


「ねえパパ、一緒にしたいことがあるの。あのね────」









親子の絆を深めるのに犯罪行為とはいったい……? と思いながら私も書きました。でもシェリンがラムズのことを信用(?)するためにはこうするしかなかった……。


この小説は、共感や同意をしながら読む物語というよりは、「こいつらやばい」「人間とは違うんだな」と思いながら楽しんでいただけたらと思っております。

作者自身は、現実における犯罪行為や、虐待などは非常に苦手です。この小説は、悪人すぎる人外たちによる、今私たちが生きる世界とは違う世界の物語と認識してこそ、深く味わえるかなと思います。


歪み要素が多いですが、絆らしきものとか…感動もある…かもしれません。私は最終話付近は泣きながら書いてました笑。

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悪役人外との歪愛を執筆しています




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