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第二十一話 「スカル」

「ここか……」


 念のため防具を除いて武装し、足を運んだ先は少女に教えてもらった彼女の自宅だ。

 高級住宅街にある、大きめだが少し古い一軒家。

 来客を装って押し入るというのは少し無理がありそうだったため、ギルドに居てもらっている少女からあらかじめ鍵を借りてきている。

 不法侵入ともいえるため少し後ろめたさがあるが、場合が場合だ。そんなことは言っていられない。

 人通りが少なくなったタイミングで誰にも見られないように家の中に体を滑り込ませる。

 侵入した家の中は明かりもまったくないので暗く、不在を疑うほどだ。


「あの女の子は絶対いるって言ってたけどな……」


 そういえば、少女の名前も聞き忘れていた。帰ったら聞こう。

 

「取り敢えず……【梟の目(フェックス・サワシュ)


 暗視アイテムを起動させて一通り家探しをしてみるが本当に何もなく、父親どころか人っ子一人いない。

 落胆しつつ一応耳を澄ませてみるが、家の中に物音はない──いや。


「なんだこれ……? 下から何か……?」


 奇妙な音がする。声らしいが、それにしては言葉に規則性がない。言語じゃない(・・・・・・)

 それにしても、下から音がするなんて……?


「いや──地下か!」


 それに気づくと同時。背後からナニカが飛来する。

 気配を察知して剣を抜いてそれを受け止めるが、重量と勢いに負けて壁まで押し切られる。

 それは、僕の全長に匹敵する巨大な頭蓋骨(スカル)。後頭部に蒼い炎を伴って浮いている。


「やっぱりいるか……くそっ!」


 悪態を吐きながら右足で頭の側面を蹴り、軌道をずらすことで壁から脱出。頭蓋と壁にサンドされるという最悪の事態を回避する。

 悪魔を使役できる人間の根城だ。何もいないと思うわけがない。

 恐らくは悪魔。下級悪魔でも『金』クラス冒険者をしのぐ脅威であるという理屈から考えれば、単独の僕が勝てる道理はないということになるのだろうが──生憎、鎧以外は万全だ。今の状態の僕は、自分よりちょっと強い程度の敵には負けない。


四重起動(メルクト・デミート)。【鋼鉄斬糸(デルミット・ガタンダ)】、【磁力世界(シャトレ・アウス)】、【百万の小刀サメージ・ダルムクルス】、【動かない座標(ハメル・インブーク)】」


 暗闇の中、僕の身体の随所を淡い光が包み込んだ。



  ◇◆◇◆◇◆



「あれ? エイリアスは?」


 冒険者ギルドをいつも通りに訪れたサリアは、いつもとは違ってエイリアスがいないことに驚いていた。

 エイリアスは、毎日自主訓練以外の時間は大体此処(ギルド)に居るはずで、サリアはエイリアスの自主訓練の時間を大体把握していた。この時間で言えば、エイリアスの自主訓練は一通り終わってギルドで飲み物でもあおりながら休憩しているくらいか。よくエイリアスが利用しているギルド中庭の訓練場にもいなかったと思うが──?


「エイリアスさんならー、なんかさっきどっかいきましたよー?」


 受付嬢に聞くと気の抜けたそんな返事しか返ってこなかった。

 どっか、とは……また曖昧なことだ。


「……一人で行動しようとしてるなら止めておきなさいよ。一応あんた、事情はわかってるんでしょ。闇討ち化軟化されるかも……」

「大丈夫ですって。エイリアスさんも【日輪騎士団】に一時期籍を置いていた人なんですから」

「【日輪】に……? エイリアスもそれなりにすごいとは思うけど、【日輪】は無理でしょ。『白銀』クラスがごろごろいて、数人『白金』クラスもいる……騎士団長に至っては『白金』の一つ上、『金剛』クラスをも優に越す、なんて言われてるのに」

「いやいや、私もぶっちゃけると自分で調べた時疑ったんですけどね? 何でも、負け越してるらしいですよ?」

「……何が?」

「だから、その騎士団長が。完全武装した(・・・・・・)エイリアスさんに、ですよ」


 ──耳を疑うとはこのことだ、と。

 サリアは思った。

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