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第八話 「彼女の闘い」

 「──さて。エイリアスさんのパーティも頭数が揃ってきた訳ですし。いい加減お仕事の話でもしましょうか」


 瞬間、僕は自分の耳を疑った。何故ならその言葉が他ならぬ、ギルド随一のサボリ魔受付嬢のものだったからだ。

 どういう心境の変化なのか──いや、彼女が真面目にならざるを得ないほど、急を要する仕事が舞い込んだのか。

 同じ事を考えたのか僕以外の面々もその『お仕事』の話に警戒を見せる。

 僕の考え過ぎかもしれないが──普段彼女がおちゃらせて見えるのは、いざという時にメリハリをつけることで事の重大さを冒険者達に感じさせる為かもしれない。いや、本当に考え過ぎかもしれないが。


「……そこまで警戒されなくてもいいと思うんですけどね。まぁ、自業自得なんですけども」

「や、そーは言うけどねサッちゃん。あんた、『私が少しくらい遊んだりサボったりして出る時間のロスなんて誤差の範疇。寧ろ私は目一杯遊んで楽しんだりしてもらってから、みんなの行きたい時に依頼に行ってもらう』ってのが信条で、だから自分から依頼の話を切り出したりはしないってのが矜持だったでしょう。まして此処には行きたい時に行きたい依頼に自分でいける依頼板、なんて便利なものもあるんだし。そりゃ、よっぽど急を要するんだろうなって思いもするよ」

「ええ。私も受付嬢(あんた)から依頼の説明を受けたり、まぁ受けるにあたってのサポートとかはいくらでも受けた事はあるけど、仕事の提案や『是非これを受けて欲しい』みたいな頼みを受けたことも全く無い。私クラスともなれば緊急の依頼も結構受けた事があるけど、それでもね。だから今、私もそこそこ動揺してる」


 付き合いの長そうなユカリさんが追求し、『白金』クラスで長くお世話になっているサリアさんがそれに同調する。


「か、考え過ぎですよ……だってほら、さっきまで私、いつも通り普通に遊んでいたじゃないですか」

「ええ。だから私は、それも演技だったんじゃないかって勘繰っているのよ」


 受付嬢が困惑したような素振りを見せ困ったような笑顔で弁明するが、その弁明をサリアさんがばさりと切って捨てた。受付嬢の笑顔が凍る。


「もともと、あんたがやけにはっちゃけている理由って肩の力を抜かせたい(・・・・・・・・・)からでしょう。冒険者っていうのは紙一重で、いつ死ぬかわからない。だから当然依頼前になったらどれだけ覚悟をしてるつもりでも緊張するし、それは時に取り返しのつかないミスを呼ぶ。一度あんたのノリに乗っかってから冒険に出た冒険者はみんなそれがわかってるから、あんたがサボってても文句を言わないわけ。だから此処で、あんたがいきなり依頼の話なんてしたら、あんたが一番望まない結果になるのをあんた自身が一番よくわかってた。だから一秒を争うこの状態であんたは一芝居打った……ってのが私的に、一番しっくり来るんだけどね」

「ゆっちんも同意ー。サッちゃんくらい周りがちゃんと見えてて、冒険者の事も気を遣ってくれる受付嬢、他にいないしにゃー? だって冒険者なんて、自分から命捨てて金に替えようって馬鹿の集団よ? 上から見たら使い捨ての道具以上に見えないのが普通なんだからね。だからサッちんは自分のやり方だけは変えない。『一人でも多く、冒険者を無事に帰す』──これがサッちゃんの闘い。火急の用事でもおちゃらけて、必要以上に動揺させようとしない努力くらい平然とやると思うかな」

「…………」


 黙りこくる受付嬢。どうやら、図星だったらしい。たしかに、受付嬢の優しさと視野の広さは僕も唸るところだった。僕に友人のメメルさんやユカリさんを連れ出させ、真っ当に働かせようとさせていたのも彼女の気遣いに違いなかった。

 彼女は誰よりも優しく、だからこそ獣を倒し帰ってきた僕に(手荒い)歓迎をしてしまったのだろう。帰ってきて、嬉しかったから。


 そして、俺は──そんな優しい彼女の、力になりたいと思った。


「話はわかりました。その依頼の話を、詳しく聞かせて貰えますか」


 受付嬢は少しだけ躊躇った後、観念した様に少し息を吐いて小さく口を開いた。


「依頼は……この街の連続殺人です。──文字通り、現在進行形の(・・・・・・)

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