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第52話:ルルブ

さくっと

「その格好スゴいよね」


「旅や冒険するときは楽なんですよぉ」


大胆にも荷台入り口の幕を閉じ中で着替えを済ませ先日見た過激な冒険者スタイルのリリーナが答える。


「んじゃカバオの操縦宜しくー」


「変な名前付けないでもらえますかぁ?絨毯って名前を付けてあげてるんでぇ」


「どっちも酷いだろ…リリーナちゃん、頼んだぜ」


荷台のマットで仰向けになるレンゴ。


「落ちたら言えよー」


「お前もな…」


クスクスの上は絨毯らしく寝心地が悪くない。


「それではぁ出発でぇす」


絨毯は中々のスピードで力もあり荷車を楽々引いて進む。


「ヤト!付いてこれるか?」


「ピィ!」


宙を舞い余裕な黒龍はまた少し太く、長くなっている。


「おっ、ヤト!ゴブリンだ!倒してこい!」


「ピィ!!」


広い街道の端に見える小鬼達を食らい燃やす。


「ピィ!」


「おい!血だらけで頬ずりするな!!」


可愛く甘えるヤトを撫でる。


「全く微笑ましくない光景ですねぇ…」


「よっと…あー、ヤトは主人に似て荒いとこあるかんな」


レンゴが顔を出し呟く。


「誰が荒いんだよ」


「ピィ!!」


のどかな風景が続き川の近くで昼食をとることにした。


「お昼は私が作りますねぇ」


「んじゃ弁当も皆で分けようか」


荷台の大きな袋からリリーナが赤い魔石の付いた簡易コンロの様な物と食器を幾つか、材料を取り出しテキパキと簡単な炒め物とスープを作ってくれる。


「いただきます」


「いただきます」


「なんですかそれぇ?」


「セイラの故郷の儀式らしいぜ?」


「かわってますねぇ」


シンプルな料理だったが美味しく頂けた。


「二人ともルルブには行った事あるの?」


「俺は無いな…デカイとこらしいぜ?」


「何度かありますよ、男の人は好きな街なんじゃないですかぁ?」


「色街でも栄えてんのか?」


「色街って…言い方よ…」


「レンゴさん困ってるなら私がお相手しますよぉ」


「からかうなよリリーナちゃん」


「ふふふ…」


本気の目をしている気がするが…首は突っ込まないでおこう。そこから三日、盗賊に2度会い、モンスターに襲われている行商を助け、レンゴが可憐な少女と出逢う等トラブル無く順調に進み四日目の昼前、西の都ルルブへと何事も無く到着。


「確かにデカイな…」


「おぉ…凄ぇ…」


鉄製の壁に囲まれた壁は端が見えず、高く巨大な扉は開かれており中は蒸気が所々上り今まで見てきたどの街並み、どの風景にも当てはまらないSFチックな街を想像させる。


「西の都、迷宮都市として知られていますが他にも工学都市や機関都市としても有名なんですよぉ」


「男が好きそうな街ってのが分かったよ」


「早く入ろうぜ!」


門の横に設置されたテントの衛兵にギルドカードを見せる。


「ラハブからAの冒険者が三人か…通れ」


レンゴの事を一瞬怪訝そうに見ていたが問題無い様だ。


「場所は分かりますかぁ?」


「なんも聞いてないな…あーこれがあるよ」


ゼンジの紹介状をリリーナに渡す。


「これは…有名な人ですねぇ…」


「ゼンジさんの師匠って事しか聞いて無いんだけど」


「西では三本の指に入る名工ですねぇ…」


「ふーん、まぁ場所分かるなら宜しくー」


「しっかし格好良い街だなセイラ!」


「分かる!」


巨大な工場の中を進んでるみたいだ。何故か興奮する。


「空気の悪い街なだけなんですけどねぇ」


ごちゃごちゃとした印象な大通りだが店と店、建物と建物の間の道は広く荷台を引くクスクスも邪魔ではないようだ。


大通りを離れ出店や屋台も少なくなり、人通りも無くなってきた辺りで一軒の巨大な建物の前でリリーナが手綱を離す。


「着きましたよぉ」


建物に比べると入り口は小さく、扉もひとつしか無かった。レンゴを車椅子に運び中へ這入る。


「誰も居ないね」


中は広く少し暗い。剣や弓なんかの武器は樽や木箱に入れられ鎧なんかの防具も無造作に置かれている。カウンターらしき場所へ行き声を上げる。


「誰か居ませんかー!?」


「開いてるよな?」


「えぇ…多分ですけどぉ」


「誰かー!!誰かー!!」


「聞こえてるようるさいな…」


奥から金髪でツナギを着た女性が表れる。


「えーっと、ゼンジさんの師匠?」


「私がそんな風に見える?つか誰?」


女性に紹介状を渡す。この女、下着の上はツナギしか着てない…。


「成る程ねぇ、まぁ期待しないでね?お父さんが気に入るか次第だから」


「あぁ、呼んでもらえる?」


女性が一旦奥へ行く。


「作戦とかってあるんですかぁ?」


「別に?ただ、向こうから頼んでくるくらいの物はあるよ」


「んな事あんのか?頼むのはこっちだろ?」


「まぁ見てろって」


奥から金髪の禿げ上がった男性が表れる。体はデカく腹は出ているが脂肪では無さそうだ。髭も金色で長くちぢれ延びている。


「何の用じゃ?」


「戦闘用の義足を作ってもらいにきました」


「ふん…2億ネル」


「はぁ!?んな金…」


身を乗り出すレンゴを止める。


「なぁアンタ…えっと…」


「名前も知らず訪ねたのか?礼儀のなってない小僧じゃな」


「必要なのは腕だけだからさ、アンタの腕が本当に良いか分かんないけどね」


「ふん、まぁ良い…金が払え無いんならワシが唸るモノでも持ってくるんだな」


「待ってました!」


自分以外の全員が驚いた表情になる。


「いやー話が早くて助かるよジイさん、んじゃ交渉と行こうか?」


一振りの魔剣を取り出す。赤紫の禍禍しい形の刀身を持ったヴァンパイアの真祖から得た剣。


「こ、これは…!」


目の色が変わるジイさん。


「そして…」


先日手に入れた竜の魂。虹色に輝くモノ。


「後は…」


・金獅子の鬣(タテガミ)

・我王牙

・白髪鬼の爪


「まぁこんなもんか?」


3つはイベントリの肥しになってた物だがレア度も釣り合う。


「す、全て一級…!」


「ジイサン、アンタ腕に自信があんだよな?だったらこれで刀を打ってくれ、誰にでも使える刀を」


「刀じゃと?あれは達人が扱う事で初めて…」


「何だよ、使い手を選ぶ武器しか作れねーのか?」


「な、ワシに向かって…!見ておれ!小僧!貴様が息を飲む刀を打ってやるわ!!」


「んじゃ俺が気に入ったらレンゴ…コイツの義足も作ってもらうよ」


「試すと言うのか?上等じゃ!!チコ!チコー!」


「聞こえてるっての…」


先程の女性が表れる。


「暫く店は休む!お前はその足のない男の測定を終わらせておけ!その男にも最高の物で驚かせてやる!ワシは工房に行くぞ!」


渡した物を丁寧に抱え奥へ行くジイさん。


「なにあれ?アンタ達なにしたの?」


「別に?まぁ分かりやすい職人で良かったよ」


チコがレンゴの足回りなんかを計り終える。


「どのくらいで終わるか分かんないよ?連絡はどうしたら良いの?」


「冒険者ギルドに言って頂ければ大丈夫ですぅ」


「分かったわ…私も忙しくなるから頻繁には行けないけどそれで良い?」


「オッケー」


「あぁ、悪いな…コイツの故郷の言葉らしくてな。大丈夫だ」


「そ、そう…それじゃまた連絡したら来てよ」


店を出て荷台にレンゴと乗り込む。


「セイラさん、さっきのアレ…金額的にもとんでもない物ばかりだったんじゃ無いですかぁ?」


「まぁそこそこだけど良い物が出来るなら…」


「悪いなセイラ…恩に着る」


「着るな着るな、俺の…つか先の為に欲しいもんでもあった武器だかんな」


「セイラさんが使うんですかぁ?」


「俺は拳しか使えないよ」


「ルインちゃんか?」


「正解!」


「奴隷にあんな良い素材の…私もセイラさんが買ってくれませんかぁ?」


暫く街中を進み大きな建物に着く。門を通り広い敷地にクスクスを停めて建物の中へ。中も広く幾つもの受付が見える。


「ルルブのギルドですよぉ、一応登録と挨拶をしないとなんでぇ」


リリーナに付いて行き美人だがつり目のお姉さんの受付へ。


「ラハブから来た冒険者、等級は三人共にAです。暫く滞在させて頂きますね」


仕事モードのリリーナが手続きをしてくれる様子だ。


「女に連れられて恥ずかしくねーのか兄さん方よ?」

「おいおい言ってやんなよ!あれじゃ小便も出来ないぜ?」

「しけた格好だしよ、どーせ田舎から出て来たんだろ?」


この街の冒険者のガラは中々良い様だ。煽り(マナー)もまぁまぁ。レンゴは全く気にしてない様子。


「お前らランクは幾つだ?」


「全員Aだけど?」


「はぁ?お前らみたいなのが?アッハッハ!」


何かツボッたようでギルドの冒険者達が一斉に笑い出す。


「あのぉ、あまり面倒は起こさないで下さいねぇ?」


手続きを終わらせたのかリリーナが戻ってきた。


「女に心配されてんぜ?なんなら俺達が守ってやろうか?」

「女は付いてくるだけでいいぜぇ」

「冒険者じゃなくて娼婦代わりに持ってこいな体だしな!」


「コイツら…」


「大丈夫ですよレンゴさん、セイラさんも行きましょうかぁ」


車椅子を押しギルドの入り口の扉へ向かうリリーナ。


「ま、困ったら言えよ。俺達はお前ら底辺と違って高ランクだからな!自分より下の面倒は見てやるよ!」


爽やかに告げ自分もリリーナ達の後を追おうとするとギルド内が静まりかえる。


「誰が下だって?」「てめぇどっから来やがった!」「田舎者が!」「名乗りやがれ!!」


皆武器を抜く、連帯感のある素晴らしいギルドなのかしれない。


「早速稽古でもつけて欲しいのか?やめとけやめとけ、怪我するぞ?」


「新米に教えてやれーーー!!」


合図と共に冒険者が押し寄せて来た。



「リリーナちゃん、中が五月蝿いみたいなんだけど?」


荷台に板をかけ車椅子を押して貰いながら尋ねる。


「面倒起こさないでって頼んだんですけどねぇ…」


「あいつの二つ名ってリリーナちゃんが考えたんだよな?」


「そうですよぉ?ピッタリじゃありません?」



30人程の冒険者を一撃に沈める。


「全員ハズレかぁ…」


「ああ、アンタいったい何もんだよ…」


「あ?あぁ、名乗って無かったな」


視線が集まる。


「ランクA、闘争者のセイラだ」


ギルド内はとても静かで声がよく響いた。



「闘い争う者、か…まぁピッタリなのか?」


「ピッタリですよぉ、あ、戻って来ましたね」


「なんかうるさくなかったか?」


「そうか?それより早めに宿探して休もうぜ」



この街のご飯も美味しければ嬉しいな。面倒事が起こる前にはそんな事しか考えて居なかった…。



さくさくっと

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