第38話:勇者様
キャラが増えてきたので読みにくいかもです
ギルドに近付くにつれて人が増えてくる。
「なんか多くないか?」
「この時間だと少なくなってくる頃なんだけど…」
日は既に沈みかけ申し訳程度に街を赤く染める。
「珍しい事でもしてんのか?」
「さぁ?」
『どんどん増えていますね…』
ギルドへ着くと人で溢れかえっていた。
「おいおい、なんの騒ぎだよこれ」
「うーん、すごい人だかりだね」
「邪魔くせーなー」
人だかりを掻き分ける様に中へ這入る。
冒険者よりも一般人の方が多い。
ぎゅうぎゅうのギルド内の受付では人が殺到しておりリリーナの所へ並び順番を待つ。
「ですから…まだ分からないんです!」
「皆さん落ち着いて!落ち着いて下さい!」
「面倒ですねぇ、まだ分からないって言ってるじゃないですかぁ」
押し交う人々を宥め対応する受付嬢達。
ようやく自分達の順番が回ってくる。
「なんか忙しそうだね、明日にしようか?」
「いえ、大丈夫ですよぉ…依頼の確認…って!居たーーー!」
そう叫び、リリーナが指差した先にはジンが居る。
ギルド内に響き渡る程の大きな声で叫んだ事に依り辺りがシンと静まる。
「えーっと…僕?」
この騒ぎの原因らしき男は自分でも分かっていなかった。
「そうですよ!探したんですから!ギルドカードを貸して下さい!ファラはフレアさん呼んで来て!」
直ぐに言葉使いを作るのを忘れるリリーナさんに呼ばれた女性がギルドの階段をかけあがる。
「えーっと、はいコレ」
「あれだけクラスチェンジしてたのに村人のまんまなんですね…更新します、少々お待ちを」
そう言いリリーナがギルドカードに手をかざす。
一瞬手元が輝く。
「これは…神父さんが言ってたとおり…」
「ジンさんが戻ってきたのは本当ですか!?」
「フレアさん!これを」
当の本人を置き去りにして話が進む。
「これは…皆さんお聞き下さい!静かに!」
少しざわついているが皆落ち着く。
「皆さんが噂している通り…この街で新たなる勇者様が誕生しました!その者の名前はジン!ジンさんです!」
「「「「おおおおおお!」」」」
拍手喝采、場が一気に盛り上がる。
「後日ギルド、又、教会から正式な発表を致します!皆さん興奮しているでしょうが本日は抑えてお引き取り下さい!」
ギルド員総出で野次馬を払う。
「なんで俺達まで…」「ジン!本当に勇者になったのか!?」
「お前はいつかやる奴だと思ってたぞ!」
冒険者達も帰らされた。
そして残った冒険者は俺とルイン、ジンとレンゴだけになった。
「上でお話しましょうか、どうぞ」
まるで尊敬し、畏まるフレア。
「やっぱ凄ぇ事になりそうだな!」
「うん…ちょっと緊張しちゃうな…」
『お祭りもあるかもしれませんね!』
「帰りてぇ…汗も流して無いのに…」
自分だけが文句を良いながらギルド4階へ上がる。
何故かリリーナも付いてきた。
「どうぞお席へ」
促されドカっと席へ、ルインが隣に座りその対面のソファーにフレア、ジン、レンゴの順で座る。空いたルインの隣にリリーナも座る。フレアが口を開く。
「あの…普通ジンさんがルインさんの居る席では?」
『そうなんですか?』
『いや、知らない…』
「なんで?」
「その…勇者様ですから…私の隣は…」
「ん?ジン、嫌われてんの?」
「えっ…そうなんだ…」
「そんな事ありません!」
「いや、形式の話だろうよ…」
「ふーん、で、どんな話をするの?」
「セイラさんが仕切るんですね…」
「あ!私お茶を出しますねぇ」
口調を作ったリリーナが席を立つ。
「それで…ジンさんどうやって突然勇者に?」
「それは…」
「ジンの努力が実ったんだろ?何か不満か?」
驚いた表情でこちらを見るジンに軽く首を振る。後から面倒に巻き込まれそうな雰囲気だ、そんな事に時間を使いたくない。
「そうですね…いえ、私も少々興奮しておりまして…ジンさんが努力していたのは知っているのですが…」
リリーナが紅茶と大量の生クリームが山になった皿をそれぞれに配る。
「ふふん、取って置きですよぉ?ギルドの魔道具に隠しておいたんですぅ」
「リリーナ…いえ、今は良いでしょう…」
ジンとレンゴは微妙な顔をしているがルインは目を輝かせさっそく食べはじめている。甘いものは大好物なので躊躇無く頂く。生クリームの中からは5段に重ねられたパンケーキが出てくる。
「うっま!リリーナさんありがとう」
「どういたしましてぇ、ルインさんも甘いものはお好きみたいですねぇ」
クリームを口の回りに付けたルインが頭を下げ礼をしている。
「ルインさん、僕のもどうぞ」
瞳がより輝きを増したルインがジンにも礼をする。
「俺の分はリリーナさん食べるか?」
「いえー、流石に太っちゃうんでぇ」
「んじゃセイラ、俺のも食ってくれ」
「おっ、んじゃ遠慮なく…ヤト!」
「ピイィ!」
「わっ!使い魔…ですか?」
「あれ?フレアには見せた事無かったかな…」
「セイラ君フレアさんを呼びすて!?」
「ん?ダメ?」
「私は問題無いので…」
「なら良いんですが…」
ヤトも顔をクリームまみれにしながら食べ始める。
「コホン、少し話が逸れましたが、ジンさんこれからどうするおつもりですか?」
「当然、魔王を倒しに行くつもりです」
「やはり…正義の心をお持ちなんですね…」
「はい!世界を救う為に努力をしてたんで!」
「勇者なら王都に行けばそれだけで凄ぇ待遇になるらしいぜ?俺なら遊んで暮らすけどなぁ」
「レンゴ…何言ってるんだよ…困ってる人達が居るんだよ?」
「まぁお前ならそう言うよな!」
「それにしてもぉ、ジンさんって前から思ってたんですけどぉ素敵ですよねぇ」
「えっ!照れるなぁ…」
「我がギルドから他のギルドにも連絡を致します、ラハブの勇者が立ち寄った際にはくれぐれも失礼無いようにと、困った事があればギルドを頼って下さい、ラハブの勇者と言うのを忘れずに…」
「感謝します!」
「あのさぁ」
ここで空気を読まず口を開く。
「盛り上がってるとこ悪いんだけど、魔王って何?」
その場の全員、ヤト以外、ルインでさえもあれだけ一心不乱に動かしていた口と手を止めてこちらを見る。
「えーっとセイラさん…いくら何でもそれは…」
「お前…遠いとこから来たって言ってたけどそれは無いぞ」
「うん、流石に…」
「どんなとこから来たんですかぁ?魔王を知らないなんてぇ」
『ご主人様、本当に知らない事もあるんですね…』
いやいや、そんなもんゲームの中でしか知らんわ!闘争者達の宴でもそんな敵は出てこない。
「では私が説明しますね…魔王とはその名の通りあらゆる魔物の王、人に害を加える魔物…魔王を倒せば魔物は居なくなり、平和な世界が訪れるとされています」
「ん?されてるって事は分かんないの?」
「正確には…まだ完全に倒された事が無いので、ですが100年前、ある勇者が魔王を倒し一時的ではありますが魔物達の姿が消えたのです」
「どれくらいの期間」
「30年です」
「短っ!意味あんのか?」
「短くてもその間は平和なんだよ!それに困ってる人が居るんだ!意味なんて要らないよ!」
「ふーん…」
「話を戻しますね、確かに短いかもしれませんが強大な力を奮う魔王に依って蹂躙された地を復興させるには十分な時間でした、そして70年前、再び魔王が現れたのです」
「で?」
「その時には既に勇者様はこの世にはいませんでした、が人類はこの70年耐えて来ました」
「ううん?そこまで危ない感じしないんだけど」
「この街は魔王軍との戦いの前線から離れていますからね…」
「あぁ、南の方は激戦区で死者の数も…」
「放っておけないよね…」
「はい、ですのでこの100年現れなかった勇者様が再臨された事はとてつもない希望に繋がるのです」
「何で?」
「ですから…魔王を倒したのは100年前の勇者様だけ!その勇者様はとてつもない力を持っていたそうです、ならばジンさんにも!期待せずになんて居られません!」
「勝手な都合を押し付けるのは迷惑だろ…勇者ってだけで世界を救うなんてよ」
「なに言ってるんだよセイラ君、当然じゃないか!」
「まぁジンが納得して何よりその気だし俺は良いけど」
「熱いですねぇ」
「話を続けましょう、それでジンさんいつ頃旅立つご予定ですか?」
「そうですね…」
「最低三日は残れよ」
「ん?どうしてだい?」
「セイラが言うだから何か訳があるんだな?」
「あんま深い意味はないよ、今のままじゃ弱すぎだから最低限戦える様になるまでの目安の期間だ、そのくらいの応援はしてやるよ」
「本当かい!?セイラ君が居れば心強いよ!」
「セイラと仲間になれて本当に良かったよな!」
「まぁ一応責任が無い訳じゃねーしな」
「それはどう言う…?」
「気にしないでくれ」
「はぁ…それではジンさん…4日後には式典の準備を終わらせるので後日ギルドへお越しください」
「分かりました!」
「祭もあるだろうな!」
話は終わりの様だ。
「んじゃとりあえず」
「おっ?だな」
「うーん、やるの?」
「当然ですよぉ」
「当たり前だろ」
『ですね!』
「では…」
最後にフレアが言い、皆立ち上がる。
「「「「『魔王よ!勇者の誕生に震えて待て!!』」」」」
「クエスト完了の証明とマウントエイプの査定だな!」
「「「「『えっ』」」」」
「えぇ…何だそれ…」
皆が皆驚きを隠そうとせず注目してくる中、ヤトだけが優しく頬擦りをしてくれた。
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「はぁ…退屈だわー」
広い部屋に玉座が置かれている。
その玉座に少女とも成人女性とも言えない見た目の女が座っている。髪は黒く肩まで真っ直ぐに伸びる。その瞳は赤く、誰もが美しいとも可愛いとも言う容姿をしている。
整った肢体には何も纏っておらず惜しげも無く全てをさらけ出している。
豪華な両開きの扉からノックが聞こえ金髪のウェーブ掛かった髪の美しい女が入ってくる。その女が黒い髪の女の前まで行き片膝を付く。
「魔王様」
「なによ?」
「勇者が現れたとの噂が流れて来ました」
「へぇ…あの時の勇者みたいに良い遊び相手になってくれるかしら?」
「既にキングを送り出したので魔王様の手を煩わせる事は無いかと」
「アンタ何してんのよ…勝手な事しないでよ!!」
魔王と呼ばれた女からどす黒いモノが溢れ出る。
「も、申し訳ありません!ですが!キングに殺される相手では魔王様の遊び相手にもならないかと!」
「そうね…まぁ許してあげるわ」
「慈悲深き魔王様に感謝を…」
少し憂鬱気な女が赤い瞳を閉じ口を開く。
「はぁ…キングが出たならその勇者もダメでしょうね…あーあ、退屈だわー」
ほぼ同時刻、灰色の竜が巨大な城から飛び立っていた。
拙い文章ですがなにとぞ宜しくお願いします




