第9話:依頼
だらだら
「さっきはありがとうございました、私の名前はハナです」
見た感じ小学校高学年くらいだろうか、赤毛の可愛らしい少女は言う。
「気にしなくて大丈夫ですよ、僕はセイラ・アズミです」
「き、貴族の方だったんですか!?け、敬語なんてやめて下さい!」
あーそういえば昔の人達って名字とかって無かったんだっけ?
敬語は初対面の人への最低限の礼儀だと思うけど…まぁ本人が止めてくれって言うなら良いか。
「いや、貴族じゃないよ、俺の故郷じゃ普通の事。あーあとハナも敬語なんて使わなくて良いからー」
子供らしくない。ぎこちない敬語だとすぐに分かったから。
「そんな…でも、わかり、分かった!」
「うんうん、所であそこで何をしてたの?1人じゃ危ない場所なんじゃないの?」
「ううん、ここら辺じゃモンスターなんて滅多にでないの。私も初めて見たし…びっくりしてたらセイラお兄ちゃんが助けてくれたの!」
「な!もう一度、もう一度良いかい?」
「えっ?えーっとここら辺じゃモンスターなんて見たこと無くて…」
「そこは重要じゃない」
「えーっと…びっくりしてたらセイラお兄ちゃんが助けてくれたの」
「素晴らしい」
「?」
意味が分からないという顔をしているが収穫が2つあった。
まず一つ、普通に会話が出来るという事。文化の違いもあるだろうが問題は無さそうだ。
そして2つ目。母子家庭の為、再婚くらいしかワンチャン無いと思っていた俺に、妹が出来た!
「俺の事はセイラお兄ちゃんじゃ無くてお兄ちゃんと呼んでくれ!」
「え、う、うん!分かったよお兄ちゃん!」
そんなやり取りをしていると村が見えて来た。のどかな光景に合う平和そうな村が。
「お父さんとお母さん呼んでくるからお兄ちゃんは少し待ってて!」
「オッケー任せろ、可愛い妹の頼みならなんでも聞くぜ!」
「おっけー?それに可愛いって…」
照れているのか少し顔を赤らめながらハナは村へ入って行った。
今何時くらいなんだろ…5時くらいかな?向こうと少し時間がずれているようだけど。
「お兄ちゃーーん!」
ハナがブンブンっと手を振りながら駆けてくる。その後ろに少し厳しそうな男と美人で温和そうな女の人が居るのが分かった。
どちらも少しだけ表情が暗い様に見えたが…。
「セイラ様、娘から話は聞きました。この度はハナを救っていただき有り難うございます。村長からも礼をしたいそうなのでご案内しても宜しいですか?」
お、やっぱ父ちゃんだったのか。
「いえいえ偶然ですよ、それに様付けは止めて下さい。貴族って訳でも無いので」
「分かりました、私の名はロン、こっちは妻のララと申します」
「ララです、この度は娘を…本当にありがとうございました」
綺麗なお辞儀をしてくれた。
「本当に偶然なので、怪我も無いようなんで良かったです」
「はい、それでは村長の所までご一緒して頂いても宜しいですか?」
「はい、付いていきます」
「では此方へ…」
「お兄ちゃん、ありがとうございました!」
左手を合図のようにヒラヒラと泳がせながらロンさんに付いていく。
村の中心部、周りより少し大きい家の一室。
「……以上が娘から聞いた話です」
「そうか…ふむ、セイラ様、この度は本当にありがとうございました」
深い皺の刻まれた顔、白髪で髭の伸びた厳しい顔つきの老人が言う。
「セイラ様は冒険者の方ですか?豊かな村では無いので報酬等は支払えませんが、後から食事の用意と寝床をご用意させていただきますので…」
「様付けは止めて下さい、今はまだ冒険者でもありません。そうですね…冒険者見習いの旅人ってとこですかね」
「そうだったのですか…冒険者では無い…」
村長の顔が暗くなる。
「どうかしたのですか?」
「いえ…実は…今までモンスターがこの村の付近に出没したことなど無く…モンスターが表れたということは近くに強力なモンスターが住み着いた、もしくは表れたということに…」
へー、こっちじゃそんな仕組みなんだ。ボス的存在が雑魚生み出す的な?ボスに引き寄せられてみたいな可能性もあるか。
「続きを」
「はい、ロンがハナから聞いた話によるとセイラ様…セイラさんは現れたモンスターを一瞬で倒したと、そんな凄腕であれば名の知れた冒険者様なのかと思い…」
なるほど、所謂討伐クエストの依頼か。
「ここから冒険者ギルドがある街までは少し距離がありまして…本来であればギルドに依頼、周辺の警護と調査、討伐等の流れになるのですが…」
「時間がかかる、と。うーん、その強力なモンスターを倒せば普通のモンスターは湧かなくなるんですか?」
「はい、詳しくは分かりませんが強力なモンスターを倒すとモンスターが現れなくなるようです…」
ここで考える。少し゛闘争者たちの歌゛とはモンスターPOPの仕組みが違うようだが、レベルアップの確認も出来た、恐らくあのゴブリンは序盤で出るような雑魚だと。
村人のレベルは2、先を考えると成長限界は必須、ならどのみちレベル上げの次いでだ。
「あー、この村で来たばかり、只の旅人で信用なんかも無いと思いますがそのモンスター討伐僕がしましょうか?」
「な、本当ですか!?いや、しかし…」
「あー報酬なんかは気にしなくて大丈夫です、どの位時間がかかるか分かりませんが…そうですね、僕も余裕が無いんで食事と寝床だけお願いできませんか?」
まぁ豊かな村じゃ無いって言ってたし俺は飯と泊まるとこさえあればそれで良い、レベル上げの次いでだしwinwinな条件だろ。
「なんとお優しい…旅のお方、セイラさん宜しくお願いします」
「寝泊まりはウチを使って下さい、娘を救っていただいたお礼もかねて」
「了解です、お世話になります」
辺りはもう暗くなっていた。村長の家で夕食。魚を野菜と一緒に煮込んだスープと少し硬いパンだった。正直そこまで美味しい訳でもなかったが腹は膨れたので良しとする。多分、恵まれた現代っ子はこういう素朴な料理じゃ満足出来ない。文句は言わないけど…。
少し談笑したあとロンさんの家へ。
「お兄ちゃん!」
「しばらくお世話になる事になったよ、宜しくね」
「うん!」
そしてロン家の皆とも少し雑談、お風呂は無いようで布と水の入った桶を渡してくれ案内された自室で汗を拭う。
「取り敢えず明日はボス探しか…武器は新人で良いとして…村人の防具が無いんだよなぁ」
まぁ何とかなるだろう。目を閉じると自分でも驚くほど早く深い眠りに落ちていった。
会話って難しいです




