第10話:下地作り
刹那。
朝日が射し込んでくる。向こうじゃあまり無かった心地良い目覚めだ。窓を開け、新鮮な空気を吸う。
現状把握。
頭 装備無し
武器 新人への祝福
上半身 布の服
下半身 布のズボン
足 皮の靴
首 装備無し
右手 装備無し
左手 装備無し
新人以外は゛闘争者たちの宴゛での開始直後、なんの効果も得られない物だ。
「取り敢えず周辺探索から始めますかっ」
与えられた自室を出てリビングへ。ララさんに挨拶、ロンさんは畑仕事に出掛けているとの事。俺は探索の棟を伝える
「お兄ちゃんおはよう!私も付いていく!」
「ハナ!セイラさんの邪魔になるでしょう!」
土地勘の無い俺には調度良い申しで、だが流石に何も知らない土地で少女と一緒に冒険は出来ない。
「ごめんなハナ、いつモンスターが出るか分からないから連れていけない」
「お兄ちゃんは強いから大丈夫だよっ」
そんな事は無い。弱すぎてストレスを感じる程に。
「んー、お兄ちゃんはまだまだ強くないんだゴメンな」
「…わかった」
素直そうな少女だ。勝手に付いてきて危険な状況になるような事も無いだろう。そうだ、と所持アイテム欄から譲渡を選択。
「ほら、これをあげるから良い子にしてるんだよ?」
「キレイなお花!お兄ちゃんありがとう!」
「珍しい…セイラさんは魔法の箱持ちなんですね…」
ララさんが驚いた表情で呟く。
普通の機能として使ってるからなぁ。不味かったかな?
珍しいって言ってただけだし他にも使ってる奴は居るか…。
「たまたまです」
何がたまたまなのか自分でも分からないがふわっと誤魔化しておく。
「んじゃ、取り敢えず出掛けますんでー」
「行ってらっしゃい!お兄ちゃん!」
「行ってくるぜ妹よー!」
するとララさんが微笑みながらお昼にと包みを渡してくれた。
朝食兼昼食かな?朝ごはんの習慣は無いっぽいかな?
なんて考えながら村を出る。
「さくさくっとクリアして次のステップ行きますかー」
目的は決めていない。それでも目標に向かって。
村を出て道なりに進む。昨日ハナと出会った場所へと。
雑魚発見。普通に湧いてる。今までモンスターが表れた事なんて無いって言ってたけど…。敵は1体。
「検証は要るよなー」
ゆっくりとゴブリンに向かう。すぐ近くまで行くとやっと気付いたのか、ギギギッと音を発しながら得物を振りかざす。
不恰好に攻撃をするゴブリン。その一撃を受ける。
「痛ッ…たくない…」
HP確認、649/650
ダメージ1、それにしても全く痛くない。まぁこれだとダメージ無しと変わらないか…。一応攻撃された衝撃、感覚みたいなのもあるのでちゃんと削られる攻撃を受ければ痛みが来ると予想しておく。
続いて回避。反撃準備では無く、完璧で。刹那、ゴブリンの動きが鈍る。
【極回避】完全なる回避行動。攻撃を加えた者の時間を刈り取る。攻撃を加えた者自身の行動を著しく鈍らせる。効果時間2秒
思わずニヤける。苦労して取得した保有所持効果の発動に。たかが2秒。だがそれは戦闘…こと゛対人戦゛において相当な有利を得ることが出来る。
「オッケー、お前はもう用済みだ」
弱攻撃の一閃。少し遅れるように真っ二つの醜い胴体から血が滲み出る。するとその死体から光の粒子が放出される。その粒子が固まり、球状に纏まる。
「おっ、ドロップ演出」
その光に触れるとアイテム取得の概念が直接的に理解出来る。
「土の魔石の欠片…換金出来れば良いけど…」
ふと視線を死体へ。
「消えない…うーん、多分素材とかは剥ぎ取る感じなんだろうけど…今は良いか」
周りを確認。視認範囲に小鬼を加える。
「さて、経験値になってもらいますかっ」
哀れな怪物は気付かない。圧倒的な存在に。
歩みよる終わりに。
3体の小鬼に向かう途中、所持アイテム欄から装備を変更する。右手と左手に【駆け出しの指輪】、首には【後押しする首輪】を。
どれも村人と基本職時に取得経験値を上げる効果の付く運営からの支援品だ。
村人も基本職も通過点、初心者ですら無いと言われる段階。
二次職に早くなれるよう全員に配布された物だ。
「焦る必要は無い、でも日本人らしく」
装備を整えると同時に弱弱弱。そして次を探す。
暫く繰り返し、何体か纏まって居るゴブリンを発見。その後方に巨大な、見るからに怪しい空洞が見える岩を捉える。
「The、ナニか潜んでますって感じかな」
一瞬で周りの小鬼を殲滅。
ここでひと息、ララさんに貰った包みを開け、昼食にする。
少し硬いパンに緑の野菜とトマトが挟まったサンドイッチだった、新鮮なのか甘味を感じられ、味付けは無かったが普通に美味しいと感じる。素材の美味しさってやつかな。
「休憩終わりっ、さくっと依頼達成しちゃいますかー」
そして侵入する。怪しげな、岩窟へと。
岩窟内のなだらかな下り坂を進む。迷宮ではなく環境の一部だろうか、何度かゴブリンを相手にしながら進んで行く。すると少し広い場所が確認出来る。
「おっ!ラッキー、祭主居るじゃん」
複数のゴブリン、広場の一番奥に杖を持った小鬼を視認。
【ゴブリンシャーマン】低級小鬼を召喚する。
「さて、作業始めようかねー 」
ザシュッザシュッザシュッ。本来であればレベル20前後から行うレベリング方法。モンスターを呼び寄せるモンスターを残しての戦闘。
危険行為に当てはまる行動だが現在、セイラのステータスは村人の成長限界の状態。危険等皆無であり、只効率的なだけであった。成長、成長、成長…。
「おっ、もう30か…流石村人、レベル上がるのが早い早い」
職業変更可能になりました。教会、又は冒険者組合で職業変更が可能です。
直接脳裏に流れる。
「あと20、このまま基礎中の基礎を終わらせますかっ」
殺戮は続く。恐ろしい早さで死を生みながら。
「流石に40超えたら上がりづらいか…なら…」
所持アイテム欄から【経験値2倍の薬】を使用。取得経験値のボーナス%が爆発的に上がる中、称号取得のメッセージが過る。
【小鬼殺し】小鬼型へ与えるダメージ10%UP。
メニュー表示から称号をセット。その際他の称号を確認するが未取得状態だった。
「だあーーーっ、称号全部消えてるのかああっ!」
落胆する声が岩窟内に響く中、小鬼の死への音だけがその声に色どりを加える。
そこから20、30とゴブリンを倒し、何体、何十、何百と作業を重ねたか分からなくなってきた頃。
成長限界へ到達しました。成長限界の証として【村人の心得】が所持保有効果へ加わります。
【村人の心得】二次職以降の職業で効果適用。レベルアップ時、各職種ボーナスと別にHP+10、TP+2、STR+1、VIT+1、DEX+1、AGI+1、INT+1、MND+1、CHR+1のボーナスを得られる。
「っしゃあーーー!ビンゴ!゛異世界゛でも゛闘争者たちの宴゛の知識は充分通じる!」
喜びの咆哮と伴に、祭主の命も終わる。
「おぉ…」
自分で殺った光景に少し驚きつつ、大量の戦過を回収していく。
「依頼達成、んじゃ報告に戻りますかー」
呑気にその場を離れる。誰がどう見ても異常な戦場を…。
使いたかっただけです。
アンチェインもいつか…!




