第8話:ニューゲーム
お約束
視界を覆っていた白い景色が変わる。
対人専用施設前に到着、しなかった。
゛闘争者達の宴゛で見たことのあるような、だが確実に知らないありふれた風景。
眼前に広がるのは広大な平原、自分は道のように舗装された場所に立っている。爽やかな風を感じる。緑の匂いを感じる。少し暑いと気温を感じる。土の感触を、大地を踏みしめる感触を感じる。確かにこの場所に存在するのだと感じる。
「俺は…ゲームのし過ぎであ、頭がおかしくなったのか?」
混乱する。思考が全く追い付かない。感じる、確かに今、ここに俺と云う存在が立っている。感じる。感触を、五感全てで、否定が出来ない、現実として、VR体感としてではなく、現実として体感してしまっている。
「キャアアアアアーーッ」
混乱を無視し悲鳴が聞こえた。同時に体が動く、走りだす、流れるように、自分ではあるが自分では無い感覚。3年間、毎日操作してきたゲームそのものの感覚で。
走りだす、同時にメニューを表示。そこで驚愕する。
:セイラ・アズミ
LV1 職業【村人】HP640/640 TP69/69
STR54 攻撃力81
VIT54 防御力81
DEX54
AGI54
INT54
MND54
CHR54
「レベル1!?しかも村人!いやとんでもないステだけど!マジで意味がわかんねえ!頭がどうかなりそうだ…」
思わず叫んでしまった、ダッシュは続けていたので目に見える距離で悲鳴の上がった人物を確認、念のためアイテム欄からレベル1~50の間だけ使える強力な剣装備【新人への祝福】を選択、これで攻撃力に+100されるはず。
悲鳴の持ち主の近くには小鬼型のモンスター。
ステップで一気に近付く。恐怖は全く無かった。そこには確かに怪物が居るのに。心臓の脈打つ感覚が速くなるのを感じる。興奮でアドレナリンが出ているのだろうか、気分が高揚する。自然と笑みが溢れる。意味が分からない、混乱も収まらない、ただ、今は格好付けよう、誰も見ちゃいない。自分自身に格好良い所を見せつけよう。ニヒルに嘲笑う。
「さぁ、冒険を始めよう」
ステップ行動によりその場に突如現れたの如くセイラは表れる。
モンスターは4体、後ろに悲鳴を上げていた女の子を庇う形で戦闘開始。3体のゴブリンが手に持つ錆び付いた鉈らしき得物を振り上げながら飛び掛かって来る。弱弱弱。いつもと同じ操作感覚で剣を振るう。その弱攻撃 を受けたモンスターは何の抵抗も無く宙で真っ二つになる。ドスッ、ドスッ、ドスッ。
3体のモンスターだったモノは今生命が終わったかのように遅れてその体からどす黒い血を流し始める。残った1体のゴブリン。
断末魔の叫びも得物を振りかざす間もなく、冷徹な刃での弱攻撃によって命を終わらせる。
どうして、どうして、どうして、どうして!なんでこんなへんぴな村の近くに怪物が!只のお散歩。意味も無い暇潰し。この辺りじゃ珍しくもない綺麗なお花を眺めていると突然地面がブクブクと黒く泡立つ。少し怖かったけど何だろう?と注目しているとそれは現れた。気持ち悪く醜い外見、その異形は産声を上げるようにギギギギギィッと口から音の様なナニかを発した後、私を見つめて来た。思わず叫ぶ。
「キャアアアアアーーッ」
するといつ表れたのかも分からない、普通の麻で出来たような服装の珍しい黒髪の男の人が私を庇うようにそこに居た。
右手には高級そうな金色の武器が握られている。私を心配したのか一瞬だけその格好良い顔を見る事が出来た。そしてモンスターが飛び掛かってくる、私は恐怖で目を閉じる事すらも出来ない。男の人が何かした。次の瞬間、地面にナニか落ちてくる。そのナニかは完全に死んだと分かるように真っ二つになっていた。
私がその物体を見ていると声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
その優しい瞳に安心した私はそこで意識を無くしてしまう。
「こ、困った、初めてのコミュニケーション相手が…完全に第一村人発見だったのに…取り敢えず起きるまで待つか」
少女が起きるまでの間に現在のステータス、装備、アイテム、アビリティ、覚醒を確認。
先ずはステータス。
:セイラ・アズミ
LV2 職業【村人】 HP650/650 TP70/70
STR55 攻撃力82+100
VIT55 防御力82
DEX55
AGI55
INT55
MND55
CHR55
レベルが上がってる…そして俺の知っているステータスの上がり方、更に今分かる情報として、最初のレベル1の状態のステータス、これは俺の知っている限り村人の成長限界時の値。戦士、騎士、闘士、狩人、魔術士、神官、召喚士の各初期職業の確認もしたがALLレベル1、マスタリーの値だった。熟練度の差か闘士だけ異常な攻撃力だったけど今は問題じゃない。
次に所持保有効果の確認。
【加速】【察知】【不屈】【闘志】【逆境】【反心】
【体術】【極回避】。
減っている…でも重要なのは全部残っていた。
覚醒の確認も。
【解放】【臨界集中】【闘神術】こっちも全部残ってる…良かった…。
アイテム欄をチェック、ここに来る前の物は全て収まって居た。
装備品も新人シリーズを初め、俺のメイン装備からお洒落装備まで持ちはこんでた物は全部有った、だが不思議な事にレア度が一段階、もしくは二段階上がっていた。
単純に嬉しいだけなので気にしない。
通貨はバグってるようで0ネルとだけ表示、貧乏はイヤなんだが…。
気付くと落ち着いているのが分かった、自分の強さと心強い装備とアイテムに安心したんだろう。そして考える。思考の渦に身を任せる。
『本当の冒険を』『出来る限りの事を』『阿澄星楽』『君の気持ちも』『答えれる範囲は決めている』『往かせよう』『参加』
『ゲーム』『質問も受け付ける』『伝説』『冒険譚』
答えれる範囲は『決めている』
君も『参加』したいようだし
『出来る限りの事を』させて戴こう
深く、深く思考を落とす。
決めている…何を?範囲を。何の範囲を?答えれる『内容』の範囲を。
参加…誰が?俺が。何に?分からない。あの時何に参加するつもりだった?参加…約束。最強を決める戦いへの参加。最強を決める『ゲーム』への参加を。
出来る限りの事を…出来ない事もある。例えば?アビリティの一部を移せなかったり。どこへ?この世界へ。何故?万能では無いから。出来る事は?ゲームに往かせる事。誰を?選んだ相手を。
それは誰?『セイラ阿澄星楽アズミ』
途切れるな。集中しろ。考えるのを止めるな。
あの男、神サマ?白い以外は普通の人間っぽかったが…神サマの使い?なんで俺みたいな普通の高校生に?分からない、だが一つだけ分かる、この世界は慣れしたしんだ世界、同時に全く知らない異世界であると。原因はあの男。嘘の様に白いあの男だ。
「あ、あの!」
渦を抜け出し目を開ける。そこには眩しいくらいに目を輝かせた少女がこちらを見つめていた。
「もう大丈夫ですか?」
正直いまは自分のほうが心配だ。
「大丈夫です!先程はありがとうございました!良ければ私の住んでいる村でお礼をさせていただけないでしょうか?」
なんだこのテンプレ通りの流れは…まぁでも命助かったらこんな感じになっちゃうんだろうなぁ…なんて呑気に考える。
深く考えるのは止めよう。どうせなら、だ。こんな事普通じゃ体感出来ない。割りきって楽しもう。この新たな人生を!全部、遊んでやる‼
「それではお言葉に甘えて…」
゛時代は流れ、動き始める゛
女性の気持ちちゃんと描けていけるだろうか……




