↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/10

第8話 『獅子に焦がれよ』

ご覧いただきありがとうございます!




本作は、名前と使命以外の何もかもを忘れたの電脳戦士と普通の高校生が「二人で一つ」になって戦う、王道特撮リスペクトのSFバトルアクションです!




巨大化変身、武装、合体など、僕たちがあの頃夢見たロマンをこれでもかと詰め込んでお届けします。




それでは、第8話 『獅子に焦がれる』お楽しみください!



 グルァァァァァッ!!!

 鼓膜を震わせる咆哮と共に、夕闇の迫る学校の校舎が激しく揺れた。

 見上げれば、夕焼け空を背に、誰もいない放課後の屋上に君臨する巨大な獅子の影――

『ライオン型電脳怪獣:ブレイズ』。その全身から吹き出すのは、ただの炎ではない。周囲のフェンスを、コンクリートの壁を、まるで飴細工のように赤黒くドロドロに融解させていく、圧倒的なバグの高熱エネルギーだった。熱風がグラウンドにまで吹き下ろし、大気が蜃気楼のように歪んでいる。



『WARNING:侵食率32%を確認しました。空間構造の融解が始まります。』



 勇樹のポケットから、ユナイトの警告音が悲鳴のように鳴り響く。


「ダメだ、放っておいたら今度こそ学校が丸ごと消えちゃう……!行くぞ、ユナイト!」

『あぁッ!連戦の激闘だ、気張っていくぞ!』


勇樹はグラウンドの真ん中で両手を胸の前でX字にクロスし、天へと右手をまっすぐに伸ばした。


「――コード:ユナイトッ!!!!」



 ドォン!



エメラルドグリーンの光の柱が夕闇を切り裂いて立ち上り、銀の重装甲を纏った絆の戦士ユナイトが大地へと力強く立ち上がる。その隙のない構えは、夕陽を受けて神々しく輝いていた。


「最初から全力で行く!ユナイト、一撃で決めるよ!」

『合点承知!まずは挨拶代わりにこいつを喰らわせる!』


 その直後、二人の足元――校舎の影から、レトロな一眼レフカメラを抱えた吉良彗香がひょっこりと姿を現した。彼女は怯えたように目を丸くし、大きく崩落を始めた校舎を見上げている。だが、そのすぐ隣で、真守たちには見えない死角で、彼女の指先は携帯端末の画面を優雅にタップしていた。


「――行っておいで、ライオンちゃん」


 育ちのいい女の子らしい、丁寧で優しいタメ口。その呟きと同時に、端末からブレイズのコアへ強制駆動プログラムがジャックインされる。彗香の瞳の奥で、冷酷な未来のエージェントとしての光がギラリと蠢いた。

 命令を受けたブレイズが、屋上から猛然とグラウンドへ飛び降りてくる。


「足場は俺が作る!気にせず突っ込め!!」

『ハァッ!!』


 ユナイトは身軽な素体状態から引き継いだ圧倒的な俊敏性を活かし、空中のハニカム足場を連続で蹴り上げながら超高度へと跳躍した。

 ブレイズの脳天へ向けて、流れるような美しい空中右回し蹴りから、そのまま急降下する鋭い踵落としの連撃を叩き込む。


 ブワァァァン――…


激しい電子音が響く。しかし、怪獣の全身を覆う紅蓮の炎が強固な盾となり、ユナイトの渾身の蹴り技の衝撃をすべて熱量として相殺してしまったのだ。


『BATTERY:30%』


『チッ、ただの格闘じゃ炎の障壁を貫通できないか!ユウキ、システムを最大加速させるぞ!』

「おう!一瞬でケリをつける!」



『ACTION CHORD:P-L-A-S-M-A-DASH』


『BOOT: The Lightning Arrow of Our Trust』



 一瞬にして周囲の色彩が完全に反転し、緑色の文字列とデジタルグリッドが無限に走るマトリックス空間へと変化する。ユナイトは自らの質量を純粋な『水色の光の矢(プラズマ粒子)』へと相転移させ、音速を超える速度でブレイズの燃え盛る胸のデータコアへと突撃した。世界の物理法則を置き去りにした超音速の突撃。勝負は決まった、そう思われた。

 だが、ブレイズは獰猛に牙を剥き、爆発的な紅蓮の爆炎を前方に放射した。ケタ違いの出力を持つ超高熱の炎が、音速の光の矢を正面から真っ向から押し返し、その軌道を強引に捻じ曲げる。


『なぁっ!? プラズマダッシュが……出力で押し負けるだと!?』


 光の矢の形態を強制解除され、データ空間から弾き出されたユナイトの隙を、ブレイズは見逃さなかった。紅蓮の炎を纏った巨大な前足が、無防備なユナイトの胸元へと容赦なく叩き込まれる。



 ドガァァァァァン!!!!



『がはっ……!?』

「うわあああッ!」


 凄まじいカウンターの一撃。ユナイトの巨体は地響きを立ててグラウンドへと叩きつけられ、激しい砂煙が舞い上がった。胸のコアが危険を知らせるように赤く点滅し、火花が散る。


「勇樹! ユナイト!」


 グラウンドの端で『ハックサック』を展開していた真守が、眼鏡の奥の目を鋭く見開いた。ホログラムモニターに表示されるブレイズの出力波形は、今までの怪獣とは次元が違う。異常なまでに激しく、太く、真っ赤だった。


「クソ、だったらこれでどうだ! パワー勝負だ、受け取れ勇樹! コード・インジェクション!!」


 真守が【ジャックモード】に変形させた指先から放った紅蓮の光弾が、倒れ伏すユナイトへ正確にジャックインされる。



『FORM CHANGE:U-B-K-A(ユナイト・アグレッシブ)』



『おおおぉぉぉッ!!!赤色なら赤色で対抗だァ!』


 ベースの黒が内側からの高熱で燃えるような熱い紅へと染まり、マッシブな重装甲格闘型へと変貌した『ユナイト・アグレッシブ』が大地を割って覚醒する。


『炎のバグなら、こっちの超パワーで捩じ伏せるまでだ!』



『「」』



 ユナイトは地を蹴り、爆風を突き抜けてブレイズの懐へと肉薄。爆炎を宿した巨大な拳の超パワーを猛スピードで叩き込んだ。



ドゴォォォン、ドゴォォォン!



と拳が一撃ヒットするたびに大爆発が起き、さすがのブレイズの身体も大きくのけ反る。

 だが、ブレイズが再び激しく身体を震わせると、アグレッシブの強靭な装甲硬度をもってしても耐えきれないほどの、ケタ違いの超高熱が全方位へ放射された。



ウォオオオオン!!



「熱っ、つうううううッ!? 勇樹、これ以上はコアが溶ける!」

「う、嘘だろ……アグレッシブの装甲が焼き切られるなんて……!」


 触れているだけで装甲の表面がパチパチと不気味なバグノイズを上げて焼き焦げ、データが剥がれ落ちていく。格闘主体のパワー戦法すらも、触れることすら拒絶する圧倒的な高熱の前に完全に封じ込められる。完全に相性が悪すぎた。

 ブレイズの容赦のない追撃の爪がユナイトを無慈悲に切り裂き、再びグラウンドの端へと激しく吹き飛ばした。



『WARNING:変身維持限界。システムが強制終了します。』



「ハァ……ハァ……クソ、ここまで圧倒的なのかよ……!」


 ユナイトの紅の装甲が激しく点滅し、変身解除ギリギリまで追い詰められる勇樹。


エネルギー残量はほぼゼロに近く、地面に膝をついたまま立ち上がることすらできない。息を吸うたびに、胸の奥が焼けるように痛む。絶体絶命の窮地だった。

 その時だった。



 ――― カシャリ... ―――



 激しい爆音と荒れ狂うバグノイズに満ちた戦場に、場違いなほど静かで、どこか小気味いい『シャッターの音』が、遠く離れた校舎の影から響き渡った。



グルルッ……?



 その音に反応したかのように、それまで狂暴にユナイトを追い詰めていたブレイズが、ピタリと動きを止めた。怪獣は赤く燃える瞳を校舎の影へと向けた後、まるで用は済んだとでも言うように低く唸り声を上げる。

 次の瞬間、ブレイズの巨躯はドロドロとした赤黒いノイズへと還り、そのまま夕闇の空間へと溶けるようにして完全に姿を消した。



『AREA SAFETY:バグノイズの消失を確認。侵食率0%』



「消え、た……? 助かったの、か……?」


 変身が強制解除され、グラウンドに大の字に倒れ込んだ勇樹が、激しい呼吸の合間に呟く。世界の自動復元プログラムが作動し、ドロドロに溶けていた校舎の壁や鉄骨が、ビデオの逆再生のように瞬時に元の綺麗な姿へと修復されていく。


「勇樹、大丈夫か!」


 真守が駆け寄り、ボロボロになった勇樹の身体を抱き起こす。


 そのすぐ後ろから、息を少し切らした様子で彗香が小走りで歩み寄ってきた。首から下げた一眼レフカメラを両手で愛おしそうに抱え、育ちの良い現代の若者らしい丁寧なタメ口で、心配そうに二人に話しかけてくる。


「西川くん、すごい怪我……大丈夫ですか? あの赤いライオンみたいな怪物、急にいなくなっちゃったね……。本当に怖かったよ」


 眉をひそめ、本気で怯えているように見えるクラスメイトの姿。

 だが、真守の目は誤魔化されなかった。真守は、彗香に気づかれないように眼鏡の奥の目を鋭く細め、去っていったブレイズの残響ノイズのタイムスタンプと、彗香の手元にあるカメラを見比べる。


(あの怪獣、攻撃の手を緩める理由はどこにもなかった。ユナイトを完全にデリートできたはずだ。……シャッター音が鳴り響いた瞬間攻撃が停止した……吉良、お前は本当に――?いや、考え過ぎか?)


 味方のフリをして自分たちを監視する少女への、消えない疑惑の芽。

 圧倒的な敗北を喫した戦闘は一旦終了したものの、真守の胸には、拭いきれない強い不審感と、次なる戦いへの火種が静かに燻り始めるのだった。

第8話をお読みいただき、本当にありがとうございました!



彗香の「行っておいで、ライオンちゃん」という女幹部感溢れる指示、書いていて最高にゾクッとしました。



ユナイトの空中連撃やアグレッシブの猛攻すら通用しないブレイズの圧倒的な格上感、楽しんでいただけたでしょうか。




ラストは、彗香がシャッターを切った瞬間に怪獣が撤退するという、真守の鋭い疑惑の目が光る引きとなりました。



次回第9話、この拭いきれない不審感を胸に真守がどう動くのか...



「ブレイズ、カッコいい!」「格闘バトル熱い!」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】や【評価(☆マーク)】での応援をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。