↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/10

第7話 『永遠なジレンマ』

ご覧いただきありがとうございます!




本作は、名前と使命以外の何もかもを忘れたの電脳戦士と普通の高校生が「二人で一つ」になって戦う、王道特撮リスペクトのSFバトルアクションです!




巨大化変身、武装、合体など、僕たちがあの頃夢見たロマンをこれでもかと詰め込んでお届けします。




それでは、第7話 『永遠なジレンマ』お楽しみください!


「西川くん、木下くん。……あなたたちは、どうしてそこまでして、その怪獣を倒すの?」


 静かな声が、自動復元プログラムによって平穏を取り戻した建設現場に冷たく響いた。

 つい数十秒前まで空間を引き裂き、ビルを噛み砕いていた巨大怪獣『アンキローダー』の姿は影も形もない。折れた鉄骨も飛び散った破片も元の位置へ収まり、夕暮れの街並みが戻っている。だが、勇樹の胸に刻まれた不穏なノイズだけは消せなかった。

 勇樹は、手の中で熱を帯びているスマートフォンを握り直したまま絶句していた。


「どうしてって……そんなの、決まってるじゃないか」


 日常では目立たない勇樹だが、目の前で誰かが傷つくのを放っておけない正義感だけは強い。彼は自分の真っ直ぐな想いをぶつける。


「ユナイトが俺たちや、この街を守ってくれるからだよ。放っておいたら街が丸ごと消滅する『都市崩壊』が起きちゃうんだ。だから俺たちは戦うんだよ」


 だが、彗香の唇に浮かんだ『含みのある笑顔』は消えない。彼女は首を少し傾げ、レトロな一眼レフカメラのレンズを細い指先で撫でながら、素朴な、それでいて逃げ場のない鋭い疑問を突きつけてくる。


「世界が崩壊する、ね。……でも、それって本当に悪いことなのかな? だって、その『ユナイト』っていうエメラルドグリーンに光る守護者も、さっき暴れていた怪獣たちと同じで、普通の人には見えない『ただの電磁データ』なんでしょ?」

「っ……!」

「何も知らない私達一般人からすれば、突然現れて街を侵食する怪獣も、それを超パワーで叩き潰して空間にひびを入れるユナイトも、どっちも同じくらい正体不明で、どっちも同じくらい恐ろしい存在なんだよね。西川くんたちが『正義』って呼んでいるその力は、本当に私達を守るためのものなのかな? ただの見えないデータ同士の縄張り争いに、私達が巻き込まれているだけじゃないのかな、なんて思ったりもしちゃうわけです」


 育ちのいい女の子を思わせる、丁寧な、それでいてどこか親しみやすさの残るタメ口。だからこそ、その言葉に込められた純粋な疑問のナイフは、勇樹の真っ直ぐな正義感を内側からガタガタと揺さぶりにかかる。

 一般人にはネットワークの裏で進行する未来からの侵略も認知できない。そんな人々の視点に立てば、ユナイトの存在すらも怪獣と同等か、それ以上に不気味な不審物として映る。その絶対的な矛盾を、彗香はただのクラスメイトのフリをしながら、冷酷に突いてみせた。


『……おいおい、お嬢ちゃん。俺をあいつらバグ野郎と一緒に並べるのは、流石に傷つくなぁ』


 勇樹のポケットの中でスマホの画面が明滅し、ユナイトが声を出す。しかし、その声にはいつもの呑気さは一切なく、プロの戦士としての鋭い警戒感が張り詰めていた。ユナイトは記憶を失っているとはいえ、彗香の言葉の裏にある「何か」を敏感に察知していた。

 その時、真守が眼鏡を静かに押し上げながら勇樹の前に一歩踏み出した。琴線に触れた彼の長身が、夕暮れの影を長く引き延ばす。


「吉良。お前、さっきから随分と物分かりが良いな。普通の高校生なら腰を抜かしてパニックを起こす局面で怖がりもせず、ハックサックの稼働原理に異常な好奇心を示し、ユナイトの本質がデータであることまで正確に見抜いている。ただの偶然にしちゃあ出来過ぎだろ。……お前、本当にただの写真部か?」


 真守の冷徹な追及。だが、それは敵組織だと見抜いたわけではなく、秘密を知ってしまった一般人のクラスメイトに対する純粋な「怪しさ」への不審感だった。

 彗香は動じる素振りすら見せなかった。彼女はふふ、と小さく微笑むとレンズキャップをカメラにはめ込み、ゆっくりと二人に背を向けた。


「ふふ、どうでしょう。私、ただの写真部の幽霊部員。誰も知らない真実にちょっとだけ興味があるだけだよ。……じゃあ、お腹も空いちゃったしこれで失礼しますね。また明日、学校でね、西川くん、木下くん」


 メタリックシルバーのメッシュを揺らしながら彗香は足早に去っていく。残された勇樹は、彼女の言葉の毒が胸に深く突き刺さったまま立ち尽くすしかなかった。




*




「怪獣も、ユナイトも、どっちも同じくらい怪しい、か……」

「気にするな勇樹。吉良の言ったことは、現実の裏側を知らない外側の人間からの勝手な暴論だ。俺たちがやらなきゃ今頃この街は消滅していた。その事実だけを見ればいい。あいつの不自然な態度については……まぁ、俺が裏で少し調べておく」


 真守は人差し指の『ハックサック』を消灯させながら勇樹の肩を叩いた。

 だが、その言葉を遮るように勇樹のポケットでスマホが異常な音を立てて震え出し、液晶画面が不規則な赤と緑のデジタルノイズで激しく点滅を始めた。



う、あ……っ!



『あ、頭が……コアの最深部が、熱い……っ!!』


 スピーカーから漏れ出すユナイトの声は苦痛に満ちていた。


「ユナイト!? おい、どうしたんだよ!」

「待て、過負荷じゃない……! 内部で強固に暗号化されていた最深部のプロテクトデータが、さっきの吉良の言葉に共鳴して強制的に自己融解(メルト)を始めているんだ!」


 真守がすかさずスマホの画面を掴み、ハックサックのモニターを展開してログを高速スキャンする。


「―― やべぇ…データが逆流して脳内に流れ込んでくるぞ!勇樹、意識を強く持て!」



う、うわあああああッ!!



 真守の警告が間に合うよりも早く勇樹の瞳がエメラルドグリーンに激しく明滅し、彼の脳裏へ直接、見たこともない破滅した未来の世界の光景が断片的に流れ込んできた。




*




 ――そこは、大地も海も大気も、あらゆる自然資源が完全に枯渇し、灰色に枯れ果てた絶望の未来の世界。

 人類が生き残るために選択した最後の生存戦略。それこそが生身の肉体を捨て去り、自らの魂や命の本質を『純粋なデジタルデータ』へと変換して仮想ネットワーク空間へ完全移住することだった。

 しかし、データの世界となっても人間の醜い争いは終わらなかった。限られたサーバー容量、存続のリソースを巡り、人類は二つの派閥に分かれ、血で血を洗うデータ戦争を始めてしまったのだ。


 一つは、人類のデータ化を『永久の保存』と定義し、現代の物理世界の構造データをインフラごと強奪し、書き換えることで、未来永劫に不変の命を保存する合理的な未来の派閥。

 もう一つは、終わりがあるからこそ命は眩しく輝くという『命の儚さ』を肯定し、データという形になっても人間としての心を保ち続けようとする派閥。

 その激しい戦争の渦中で、ただひたすらに、今も昔も変わらずに「人間の守護者」としての使命を全うするために戦い続ける戦士の姿があった。それこそが、電脳戦士ユナイトだった。


『俺は、おそらく...多分、いや、ゼッタイ世界を滅ぼすバグなんかじゃない……。俺の第一絶対命令は、今も、昔も変わらない。俺は人間を守るために生まれた『人間の守護者』だ……!』


 ユナイトの力強い戦士の声が脳内に響き渡る。

 同時に、荒廃した未来でボロボロになりながらシステムを調整している一人の科学者の姿が見えた。硝煙の向こうで必死に思考しているその男の顔立ちは、どこか見覚えのある顔だった。


『未来の戦場で、俺の製作者と一緒に、俺はあの永久保存派の奴らと戦っていたんだ……。だけど、奴らの圧倒的な物量作戦によって未来防衛戦線が崩壊しかけて、俺を歴史の改変を防ぐための最後の希望として現代へ跳躍させたんだ。その跳躍直後に記憶を奪われた……っ!』




*




 勇樹はハッと我に返り、激しい目眩に耐えながら息を呑んだ。吉良彗香が言っていた「縄張り争い」という言葉。それは図らずも、未来の資源枯渇問題を解決するために過去の豊かなインフラデータを強奪し、自分たちの『永久保存領域』を拡張しようとする未来の大きな戦争を言い当てていたのだ。だが勇樹たちはまだ、吉良彗香こそがその強奪を仕掛けている未来の張本人だとは露ほども知らない。


「そういうことか。未来のその永久保存派の奴らは、自分たちの正義のために現代の歴史を消去しにきている。そしてユナイトは、その改変を食い止めるために送られた『守護者』……。ユナイトが最初から俺たちの味方、人間のためのテクノロジーだと分かれば、もう迷う必要なんてどこにもないな」


 真守が冷徹に点と点を繋ぎ合わせる。その眼鏡の奥の瞳には、世界の裏に隠された巨大な真実に対する、ガチのマニアとしての鋭い興奮が宿っていた。


「落ち込んでいる暇はないぞ、勇樹。未来の侵略者は歴史を消しに来てる。だったら、俺たちがこの現代で全力で送り返してやるだけだ」

「真守……。うん、そうだね! ユナイトがどんな過去を背負っていても俺のやることは変わらない。俺たちの日常は、俺たちが守る!」


 勇樹はスマホと正義感それに、ほんの少しの『罪悪感』を胸に抱きしめた。怪獣とは違う、人間を守るための温かい絆のテクノロジー。自分を相棒に選んでくれた未来の信頼に応えるように、勇樹の瞳に再びエメラルドグリーンの光が宿る。

 だが、二人が新たな覚悟を固めたその瞬間――鼓膜をツンと刺すような、今までで最も凶悪な『超高周波のバグノイズ』が街中に響き渡った。


『――クソ、感傷に浸る時間は終わりのようだぜ、勇樹。奴ら、もう次の手を打ってきやがった!』


 ユナイトがプロの戦士の声を鋭く取り戻す。

 見上げれば、二人が通う学校の校舎の真上に、周囲のコンクリートをドロドロに溶かすほどの圧倒的な紅蓮の炎を纏った、凶悪なライオン型の電脳怪獣が咆咆を上げていた。


第7話をお読みいただき、本当にありがとうございました!



彗香の丁寧なタメ口から放たれる素朴な疑問は、勇樹の正義感を大きく揺さぶりましたね。そして、ユナイトが人間の守護者として未来の「データ戦争」を戦っていた記憶もほんの少し明かされました。



現代を蝕む未来の派閥の目的がうっすら見えたところで、ラストは学校の校舎の上に紅蓮のライオン『ブレイズ』が降臨します。



次回第8話、学校を襲う圧倒的な炎の脅威に勇樹たちはどう立ち向かうのか、どうぞお楽しみに!



「新フォームカッコいい!」「格闘バトル熱い!」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】や【評価(☆マーク)】での応援をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。