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第3話 『見えない嵐、届かない拳』

ご覧いただきありがとうございます!




本作は、名前と使命以外の何もかもを忘れたの電脳戦士と普通の高校生が「二人で一つ」になって戦う、王道特撮リスペクトのSFバトルアクションです!




巨大化変身、武装、合体など、僕たちがあの頃夢見たロマンをこれでもかと詰め込んでお届けします。




それでは、第3話『見えない嵐、届かない拳』お楽しみください!


 世界は本当に、何事もなかったかのように元通りになっていた。

 あの激闘から数日が経ち、訪れたある日の放課後。夕日の代わりにどんよりとした曇り空が窓の外に広がる中、先生の退屈な朗読を聞き流していた、その時だった。



 ピロリロリン~♪ピロリロリ〜ン♪


 

 まり返った教室に、やたらと陽気でクリアな電子音が響き渡る。

 音の発生源は、間違いなく俺の制服のポケットからだった。


「――ッ!?」


 心臓がドクンと跳ね上がる。慌てて上からポケットを押さえるが、無慈悲で軽快な電子音は止まらない。


「西川ぁ。授業中にスマホゲームとはいい度胸だ。 没収されたいのか」

「す、すみません! 違います、これはその……! 本気で違うんです!」


 壇上から先生のニマニマ視線が俺の羞恥心によく突き刺さる。

 冷や汗を全身から流しながら引き抜いた画面には、案の定、極彩色の幾何学的なノイズと共に、満面の笑みを浮かべるユナイトが映っていた。


『よぉ勇樹! 暇だからちょっと通信してみたんだが、いま何をしてい――』


 俺はユナイトの声を遮るように、親指がぶっ壊れるほどの勢いで音量ボタンを連打し、マナーモードに叩き込んだ。

 そのままスマホを机の奥深くへと押し込む。周囲の奴らのクスクス笑う声と、先生の重い溜息が頭上に響く。


 ――そこからの約一時間。

 机の奥の暗闇で、ユナイトは自分がミュート(消音)されていることに全く気づいていなかったらしい。


『おーい勇樹、聞いてるか? なんで急に無口になったんだ?』

『あっ!もしかして電波が悪いのか? よし、ちょっとジェスチャーで伝えるぞ!』


 マナーモードの画面の向こうで、彼は一生懸命に身振り手振りで語りかけ、一人で寂しく通信を繋げ続けていた。

 ……あいつ、後で絶対にこの世界の、いや、現代の『学校のルール』というやつを骨の髄まで叩き込んでやる。




 *




『ははは! 災難だったね相棒! でもまさか『授業』なんて教育システムがあるとは思わなかったんだ、許しておくれよ』


 放課後。ようやく解放され、しっかりと通信が繋がったスマホの画面の中で、ユナイトはいつもの気さくなノリで頭を掻いていた。


「笑い事じゃねえよ! いいかユナイト、学校の授業中ってのは、スマホの電源を切るか、絶対に音を鳴らしちゃいけない、日本人いや!全・人・類共通の絶対ルールなんだ!」


 中学からの腐れ縁である木下(きのした) 真守(まもる)と一緒に下校しながら、俺は周囲に怪しまれないよう小声でスマホに怒りをぶつける。真守は隣で高身長を少し屈め、メガネのブリッジを押し上げながら、クスクスと肩を揺らしていた。


「でも勇樹、ユナイトの言う『未来』には、そんな平和な学び舎は残ってないのかもしれないぞ?」

「真守までそっちの味方すんなよ……。ん、雨か?」


 ぽつり、と鼻の頭に冷たいものが当たった。

 見上げると、昼間からどんよりとしていた曇り空が、いつの間にか夜のように重く真っ黒な雨雲に覆い尽くされている。

『ムムム…この感じ。』



 ゴォォォォォォ……ッ!!!



「うおっ!? なんだこの風、突風か!?」


 突由として、街路樹がへし折れんばかりの暴風が吹き荒れた。

 湿った生ぬるい風じゃない。まるでカミソリのように冷たく、鋭い、大気そのものが意思を持って牙を剥いてきたかのような、不自然な旋風だ。


『――勇樹、真守君! 冗談はここまでだ、敵が来ている!』


 スマホの画面から、ユナイトの軽快さが一瞬で消え去った。

 俺が弾かれたようにスマホのカメラを空に向けると、液晶画面の向こう、黒雲が渦巻く空の中心に『そ(・)れ(・)』がいた。

 巨大な半透明の翼を持ち、メタリックな鱗に身を包んでいる。周囲の空気を乱暴に歪ませ猛烈な竜巻を引き起こしながら、プテラノドンのような翼竜型の電脳怪獣(バグ)は脳を震わす程の高音で威嚇してきた。



―― ギィ”ィィィィィッ!



「飛行能力のある怪獣……! あの風、奴が操ってるのか!?」

『侵食が始まった! 奴は空間の気流データをハッキングして暴風を現実化させている。このままじゃ街がメルトダウンを起こすぞ、合体(ユナイト)だ!』

「わかった! 真守、スマホを見ててくれ!」


 俺は真守の前にスマホを掲げ、吹き荒れる暴風に立ち向かうように両腕を突き出した。


 両手を胸の前で――激しくX字にクロス!

そこから一気に、右手を天へと大きく伸ばす!


「コード:ユナイトッ!」


 閃光が奔り、俺の意識は夕闇の空へと昇華していった。

 黒のボディに赤と青のライン、銀の装甲を纏った『絆の戦士ユナイト』が、画面内の荒れ狂う嵐の街に立ち上がる。


『はあああぁぁッ!!』


俺たちは地面を蹴り、空中を不規則に舞う翼竜型怪獣へ向けて烈烈な飛び蹴りを放った。

 しかし――届かない。



 キィィィィン!



 怪獣が冷酷に翼を羽ばたかせると、ユナイトの巨体を上回る凄まじい上昇気流が壁となって激突し、俺たちの身体は虚しく押し戻されて地面へと叩きつけられた。アスファルトが激しく砕け散る。


「くそっ……! 攻撃の瞬間以外、完全に上空の気流に引きこもってやがる!」

『奴は風を盾にしているんだ。ラッシュが主体の私たちにとっては、近づくことすらできない…。最悪の相性だよ……!』


 空からの容赦ない風の刃が、ユナイトの銀の装甲をガリガリと削り、火花を散らす。ジリジリと防戦一方のまま、時間だけが残酷に過ぎていく。



 ピピピッ、ピピピッ――



 その時、ユナイトのコックピット内に非情な警告音が鳴り響いた。

 スマホの画面端のバッテリーログが、赤く激しく点滅している。

「勇樹、バッテリーがッ……!」



『BATTERY:0%』


『ALL SYSTEM:SHUTDOWN』



「しまっ……今日、一日中授業中もユナイトが通信を繋ぎっぱなしにしてたから、充電が……!」

『ここまでか……! 勇樹、強制離脱する! すまない!』



 プツン―――



強固だった絆(リンク)が限界を迎え、強制的に切断された。

 光の粒子となって身体が分解され、激しい雨の降る冷たい道路の上へと投げ出される。


「勇樹!!」


真守が駆け寄ってくる。

 頭上を見上げると、変身の解けた俺たちを見下ろすように、翼竜型怪獣がトドメと言わんばかりに鋭い急降下を始めていた。

 万事休す――そう覚悟して、俺が目を瞑った、次の瞬間だった。

 ぬっと、真っ黒な雲の隙間から、一筋の強い「太陽の光」が地上へと差し込んだ。

 


 ギィィィヤァァァアアアッ!?

 


 怪獣が、まるで強酸でも浴びたかのように激しくのたうち回り、ノイズ混じりの苦悶の咆哮を上げた。 操っていた暴風がピタリと止み、怪獣の半透明の肉体が激しくバグを起こしてブレ始める。


『……あ、あれ? 奴のエネルギーが急激に弱まって……電脳空間へ逃げていくぞ?』


 スマホの画面からユナイトの困惑した声が響く。予備電源が動作したようだ。

 怪獣は太陽の光を忌むように、そのまま空の割れ目へと消え去っていった。荒れ狂っていた嵐が、嘘のように晴れていく。


「助かった……のか?」


 泥だらけのまま座り込む俺の横で、真守がメガネの位置を直し、泥だらけのアスファルトにノートを広げた。ノートが汚れることなど気にもせず、恐ろしい速度で化学式やグラフを書き込み始めた。


「いや、勇樹。今のはただの偶然じゃない。あの怪獣、太陽の光が出た瞬間に風のコントロールを失った。……物理的な弱点じゃない。これは『システム的なエラー』だ。」

「システムのエラー?」


 真守のオタク…論理的分析の瞳が、メガネの奥でキラリとインテリジェンスに光る。


「電脳世界のバグや怪獣っていうのは、恐らく純粋な『電磁データ』で構成されている。一方で、太陽の光――つまり日光っていうのは、地球上で最も強力な『天然の電磁波』の塊だ。さらに、太陽光には無数の波長が含まれている。人工的なノイズやバグで空間データを上書きしようとしていたあの怪獣にとって、太陽から降り注ぐランダムな天然の電磁波は、自分のデータ構造を強制的に切断(シャットアウト)される。つまり最悪の『妨害電波(ジャミング)』なんだよ」

「ってことは……」

「ああ。雲で太陽光を遮らないと、奴は現代の現実世界(リアル)を侵食できない。だから最初から曇り空だったんだ。奴の弱点は、太陽の光そのものだ。――だけど、だからこそ奴は次は、確実に一瞬で街を書き換えるつもりだぞ」


 その言葉を裏付けるように、俺の手元で、ようやく再起動したスマホの液晶画面に冷酷な文字列が浮かび上がった。



『WARNING:侵食率上昇を確認。電脳怪獣が頻繁に出現します。』



 次の曇りの日、奴は間違いなく、現代の技術を嘲笑うような速度で街をメルトダウンへ陥れに来る。

 だが、俺は真っ暗になったスマホを強く握り締め、不敵に笑ってみせた。敵の生態と弱点が分かれば、もう恐れるものは何もない。


「なら、その瞬間に叩き落すだけだ!」


 俺の言葉に呼応するように、スマホの奥からユナイトの頼もしい笑い声が小さく響いた。


 「真守、ユナイト。作戦を練ろう。俺たちの、リベンジマッチだ」


第3話をお読みいただきありがとうございました!


勇樹とユナイト、さっそく大ピンチw!!現代人にとってスマホの充電は死活問題ですよね。

あと、ユナイトが可愛いw!お茶目でキュート(?)!!


次回の勇樹達はどうやってこのピンチを潜り抜けるのか見ものです!


「ユナイトが可愛い!」「格闘バトル熱い!」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】や【評価(☆マーク)】での応援をよろしくお願いいたします!

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