表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
70/91

第七十話

 あれから、さらに2日がたった。歩いていくうちに、木々の密度は薄くなり、街道も以前よりは広くなっていく。そして、足跡や馬車の車輪跡など、人間の痕跡が道の上に残っている。

 

「なんというか……もうそろそろ、って感じですかね」


 ミリスが周囲を見回しながら言った。


「多分、そんな感じだ」

「王都が近いんじゃろ」


 そして、その時――

 前方から、がたごとと木が軋む音が聞こえてきた。少しすると、荷台に木箱をたくさん積んだ、一台の馬車が見えてくる。


「商人か」


 リンネが呟くと、向こうもこちらに気づいたらしく、馬車の男が軽く手を上げた。


「おう」


 三人も立ち止まる。


 男は馬の速度を少し緩めながら、近づいてきた。


「珍しいな。こんなところで徒歩か?」

「まあな」


 リンネが答える。


 男は三人を見回した。


「王都行きか?」


「ああ」


 その言葉を聞いて、ミリスが少し前に出た。


「あ、あの……!」

「ん? なんだ?」

「王都まで、あとどれくらいかわかりますか?」


 男は少し考えたあとに、馬車の来た方向を見て答える。


「普通なら三日くらいだな」

「三日、ですか……」


 ミリスが思わず呟く。


「急いだり、馬車とかなら、二日で着くかもしれねぇ」


 男は荷台を軽く叩きながら言う。


「……二日」


 リンネが頭を抱えているのを見て、男が首を傾げる。


「なんだ? 急いでるのか?」


 リンネはそのまま黙り込んで考える。


「……」


 王都まで2、3日。徒歩や馬車の換算で、その程度。


 ならば

 ――届く。


 リンネは静かに息を吐いた。


「……そのくらいなら」

「ん?」


 リンネは片手を前へ出すと、空気が揺れ、淡い光が集まり、次の瞬間――

 蒼と白が混ざったが混ざったような色のバイクが地面に現れ、さっきと同じように、鈍いエンジンを空間に響かせた。


 その一部始終を見た商人は、表情が固まる。


「…………は?」


 数秒は誰も動かず、バイクの音だけが鳴り響いた、そして――


「てっ、鉄の魔物だぁぁぁぁっ!!」


 商人が叫ぶと、馬まで驚いて後ろへ下がる。


「低い声で鳴いているぞ!?」

「違います!」


 大声を聞き、ミリスも驚いて小さく飛ぶように一歩下がってから、慌てて否定する。


「それ、魔物どころか生き物でもないみたいなんです!」

「生き物じゃないって、なんなんだそれは!?」

「そ、そんなのぼくにもわかりませんよ!」

「わからんのか!?」


 そんなやりとり横で聞いていたシズクが腕を組んだ。


「まあ無理はない。妾も最初は魔物かと思ったの」

「お前もかよ」


 呆れたように言う。そして、商人はまだ警戒していたが、リンネは気にせず機体へ手を置く。


「乗れ」

「え?」

「王都まで行く」

「ダメなんじゃないんですか?」

「このくらいの距離なら、限界はこない」

「そうなんですか……時間は、どれくらいかかるんです?」


 リンネは少し考えてから答えた。


「三十分くらいだな」


 空間に風だけが吹いた。

 そして、商人が瞬きをした。


「はぁ?」

「え?」

「……はっ?」


 三人とも同じ反応だった。でも、リンネだけが当然のような顔をしている。


「だから乗れ」

「いやいやいや!」


 ミリスが叫ぶ。


「三日が三十分になるわけないじゃないですか!」

「なる」

「ならんじゃろ」

「絶対に、なる」


 リンネは真顔だった。その顔を見ていると、冗談には見えない。

 ミリスとシズクは顔を見合わせ、再びバイクを見る。


 得体の知れない鉄の乗り物。

 だが、リンネは本気らしい。


 王都まであと三日。

  その距離を、たった三十分で駆け抜けるというのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ