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国なんて知ったこっちゃない、俺に大事なのは嫁だけだ  作者: 七風


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27/33

マリアンヌが喜ぶなら 育てるのが常識だろ?

翌朝。


俺たちは高級宿で朝食を済ませ、王都の庭園へ向かった。


「王都の庭園か……」


昨日は服を見たり、劇を見たりした。


今日はもう少し、ゆっくりした観光だ。


「セバス、庭園って結構広いのか?」


「はい。王都でも有数の名所でございます」


「へえ」


馬車を降りると、目の前には大きな庭園が広がっていた。

整えられた花壇、噴水、石造りの遊歩道に、色とりどの花が咲いている。


「わあ……」


マリアンヌが目を輝かせる。


「綺麗ですね」


「…………」


俺は庭園を見る。

確かに綺麗で、花の配置も悪くなく、手入れも行き届いている。


「そうだな」


マリアンヌは嬉しそうに庭を眺めている。

俺は少し考えたのち、セバスに向き直った。


「よし」


「はい?」


「セバス」


「はい、旦那様」


「この庭にある花、うちでも育てられそうか?」


「……」


セバスが一瞬だけ黙る。


「種を揃えれば可能かと」


「じゃあ、頼む」


「かしこまりました」


マリアンヌが俺を見る。


「ルー様……」


「ん?」


「また、持って帰るんですか?」


「だって綺麗だろ?」


「ふふっ」


マリアンヌが笑う。


「はい。綺麗です」


「じゃあ決まりだ」


セバスが小さく頷いた。


「では、庭師にも手配をしておきましょう」


「よろしく」


王都まで来て、結局また領地のことを考えている。

まあ、こういうのも悪くない。


その後も庭園をゆっくり歩き、マリアンヌが気に入った花を見つければ俺も足を止める。


「これも綺麗ですね」


「じゃあ、これも」


「まあ」


「こっちは?」


「……そちらも素敵です」


「じゃあ、それも」


気づけば、持ち帰る花の候補がかなり増えていた。


「旦那様」


セバスが静かに声をかける。


「何だ?」


「種を買う量が、当初の予定よりかなり増えております」


「……まあ、綺麗なんだからいいだろ」


「かしこまりました」


セバスは何も言わなかった。

たぶん、もう慣れているのだろう。


庭園を出たあと、俺たちは王都の街を歩いた。


「そういえば」


俺はふと思い出した。


「カマーセに何か土産買っていくか」


「カマーセ様ですか?」


「ああ」


隣領の領主は色々とうるさいけど、別に嫌いじゃない。むしろ、いい奴だと思っている。


「何がいいかな」


店を眺めながら歩いていると、店先に犬、猫、鳥など様々な小さな編みぐるみが並んでいるのが目に入った。

俺はその中から犬の編みぐるみを手に取る。


「これでいいか」


「可愛らしいですね」


マリアンヌが笑う。


「カマーセ、犬好きだろ」


「はい」


「じゃあ、これでいいな」


値段を見る。


「……安いな」


「よろしいのですか?」


「十分だろ」


俺は犬の編みぐるみを買った。

高価なものでも特製品でもない、ただの土産だ。


「カマーセなら喜ぶだろ」


「きっと喜ばれますよ」


マリアンヌが笑い、セバスも微笑んでいる。


「カマーセ様には、何よりのお品かと存じます」


「そうだな」


これでよし。王都での目的はだいたい終わった。

あとは帰るだけ……と思ったのだが。


「旦那様」


「ん?」


「お昼はどうなさいますか?」


「……そういえば、まだ食べてないな」


時計を見ると、昼を少し過ぎている。


「せっかくだし、何か食べてから帰るか」


「はい」


俺たちは王都の街を歩いて適当な店を探し、一軒の店に入った。

店内はそこそこ賑わっている。


「いらっしゃいませ!」


「三人なんだけど」


「はい、こちらへどうぞ!」


席へ案内され、メニューを受け取った俺は何となく眺めて、ふと目を止めた。


「……お好み焼き?」


メニューにそう書いてある。


「ルー様?」


マリアンヌが首を傾げる。


「いや……」


見覚えがあるというか、どう見ても前世の料理だ。


「まあ、異世界だしな」


俺は特に深く考えず、「これ、頼んでみよう」と言った。


「お好み焼きですか?」


「ああ」


料理を注文すると、しばらくして鉄板の上に生地が運ばれてきた。


「おお……」


見た目もかなりそれっぽい。

俺は一口食べる。


「…………」


うん、完全にお好み焼きだ。


「これ、美味しいな」


「本当ですか?」


「ああ。食べてみる?」


「はい」


マリアンヌも一口食べる。


「……美味しいです」


「だろ?」


セバスも興味深そうに食べる。


「本当に美味しいですね」


「だよな」


俺は満足した。

昨日の王都料理より、こっちのほうが好きかもしれない。


食べ終わったあと、俺は店主に声をかけた。


「なあ」


「はい?」


「これ、最近始めたのか?」


「ええ。まあ、色々ありまして」


店主が苦笑する。


「最近、冒険者の白髪のガキとやかましい妖精からダメ出し食らっちまいましてね」


「……白髪のガキ?」


「ええ」


店主は頷く。


「料理の味がどうとか、焼き方がどうとか、いろいろ言われまして」


「へえ」


「最初は何だこいつらと思ったんですがね。言われた通りにやってみたら、これが結構評判になりまして」


「なるほどな」


俺は少し考える。

「(転生者が俺以外にもいてこの王都で活動してるってことか?)」


「そのガキの名前、知ってるか?」


「えーっと……」


店主が腕を組む。


「マドカ、とか言ってたかな?」


「…………」


マドカ。

聞いたことのない名前だが、まあ、覚えておくか。


「ふむ。覚えておこう」


それだけだった。

別に、それ以上気になることもない。

異世界なんだから、まぁ日本人っぽい名前の転生者くらいいるだろう。知らんけど


「ごちそうさま」


「ありがとうございました!」


俺たちは店を出て、そのまま帰路につく。

馬車の中。


「王都、楽しかったですね」


マリアンヌが笑う。


「ああ」


服を見た。劇を見た。庭園も見た。美味しいものも食べた。


「悪くなかったな」


俺は窓の外を見る。

王都は大きくて店も人も多く、色々なものがある。


それでも。


「……やっぱ地元が楽でいいわ」


「ふふっ」


マリアンヌが笑う。


「私も、そう思います」


「だろ?」


「はい」


俺は背もたれに身体を預ける。

フェルネ領には俺たちの屋敷があり、服を作って猫カフェを作り、最近は料理や錬金術まで始めている。セバスがいて、領民がいて、エリザベスもいる。

何より。


「ああ、エリザベスに土産でも買ってくればよかったな」


「通り道の領で何か買いましょう。ふふ。きっと喜びますよ」


「そうするか」


そんな話をしながら、俺たちはフェルネ領へ戻っていった。


王都観光は思ったより楽しかった。

でも、やっぱり、自分の家が一番落ち着く。

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