お前は俺で俺はお前 ふぅ ペルソナかよ
その夜。
俺は夢を見ていた。
気がつくと、いつもの場所に立っている。
目の前には、もう一人の俺――いや、昔の俺がいた。
「久しぶり」
「……また会ったな」
「うん」
僕は嬉しそうに笑っている。
その顔を見ていると、何となく分かる。
今の俺がマリアンヌとの生活を楽しんでいることが、こいつにも伝わっているんだろう。
「最近、楽しそうだね」
「ああ。まあな」
「マリアンヌと一緒に食事したり、服を作ったり、散歩したり。前よりずっと楽しそうだ」
「……お前も嬉しいんだろ?」
「もちろん」
僕は素直に頷いた。
「僕も嬉しいよ。マリアンヌが笑ってくれるようになったし、君もマリアンヌとちゃんと話せるようになった。それに……僕がずっと言えなかったことも、君が伝えてくれたから」
「そうか」
なんとなく照れくさくなって、俺は視線を逸らした。
すると、僕が少し考えるような顔をする。
「ねえ」
「ん?」
「たまには、変わってみない?」
「……は?」
思わず聞き返した。
「変わるって、何を?」
「僕と君で、少しだけ入れ替わってみるんだよ」
「いや……」
俺は思わず眉をひそめた。
「できるのか、それ?」
「たぶん」
「たぶんって……」
一番信用できない言葉だ。
「もし戻れなくなったらどうするんだよ」
「大丈夫だよ」
僕は笑った。
「僕はもう君と混ざってるんだから」
「…………」
「それに、起きていてもテレパシーで話すことくらいできるんだよ?」
「マジかよ」
「うん」
さらっと言われたが、俺としてはそれどころではない。
「それはそれで困るな……」
「どうして?」
「日常的に雑談されたら、マリアンヌに怪しまれるだろ」
「……ああ」
僕も納得したように頷いた。
「確かに、それは困るね」
「だろ?」
「じゃあ、普段は黙ってるよ」
「そうしてくれ」
俺は胸を撫で下ろした。
しかし、そこで僕が少しだけ真剣な顔をする。
「じゃあ、一つだけお願いしてもいい?」
「何だ?」
「僕の気持ちで、マリアンヌに伝えたいことがある時は……変わってくれるかい?」
「…………」
俺は少し考えた。
僕がマリアンヌをどれだけ大切に思っていたのか。
今まで何も言えなかったこと。
伝えたいと思っていたのに、言葉にできなかったこと。
それを考えれば、断る理由なんてなかった。
「……分かった」
「本当?」
「ああ。ただし、勝手に出てくるなよ」
「もちろん」
僕は嬉しそうに笑った。
「ありがとう」
「こっちこそ」
そう言って、俺たちは向かい合った。
もう、どちらが本物なのかなんて考える必要はない。
俺もルードリッヒ。
僕もルードリッヒ。
違う人生の記憶を持っていても、マリアンヌを大切に思う気持ちは同じだ。
そして今は――その全部が、一人の俺の中にある。
「じゃあ、またね」
「おう」
夢の中の俺が笑う。
次の瞬間、俺は目を覚ました。
隣では、マリアンヌが静かな寝息を立てている。
「……おやすみ、マリアンヌ」
そう呟いて、俺はもう一度目を閉じた。




