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第四十三話 よくできたカノジョ

なんだかんだで女性陣に愛される沢城くん。


「残響散歌」、マジでカッコいい。(クッソどうでもいいw)

 さて、時は流れて2月14日。


学校でバレンタインチョコを貰えるのか、と行きたいところだが……生憎休日、俺はバイトである。


無論バレンタインなので、いつにも増してチョコの在庫が多い。


本当に何処から説明すればいいのかが分からないくらいにチョコの種類はあるわ、それでいてチョコの消費量は激しいわ……で、まー、それはそれはてんやわんやでありまして。


俺もリア充になっちまったから、人のことは言えねえんだけど、友チョコなのか本命チョコなのか、はたまた義理チョコなのか……とにかく女性客、女学生は割と多かった。


大方月曜日に渡すんだろうな……という感じで市販のチョコを買う奴は大勢である。


まあそんなこんなで俺のシフト時間が終わり、着替えて上がろうとした時だった。


桐ヶ谷さんが俺を机の上から手招きで誘う。


「沢城くん、お疲れさん。」


「お疲れ様です、桐ヶ谷さん。」


俺は誘われるがままに座ると、桐ヶ谷さんはニヤニヤしながらチョコを取り出した。


「ハイ、これ。私からの気持ち。」


綺麗にパッケージがされているそれは、一目見ただけで手作りだと分かる精巧さである。


「……いいんすか? 俺……彼女いるんすけど……」


「いーよいーよ。これでも気にかけてるんだよ、君を。なんだかんだで助けられてるしね?」


それはこっちのセリフだ。


桐ヶ谷さんになんぼ迷惑をかけた事か……仕事はだいぶ熟せるようにはなったし、レジもやっと慣れてきたところだ。


どう思っているかは知らないけれど、こう言われたら受け取らないわけにはいかない。


「……ありがとうございます。美味しく、いただくんで。」


「はっはっはっ、それは嬉しいね! ……実は……さ、沢城くん、もし君が夏菜と付き合ってなかったらさ、私は君に気持ちを伝えようって思ってたんだよ……好きだ、ってね?」


………え? ちょっと待て、急に何を言い出すんだこの人は……。


待て、夏菜以外に好意を持たれていたのか、俺は……。


意図はまったくもって分からないが、俺は思考が停止した。


「……ど、どういう事っすか……??」


「そのままの意味だよ、沢城くん。君には……男性としての魅力が多いんだよ。ひねくれてるようで実は真っ直ぐで不器用なところだったり……何事にも真摯に向き合うところ、とかね? 最初は可愛い弟みたいな感じだったけど……接していくうちに段々と好きになってたんだ。でも君が夏菜が好きだー……って知ってからさ、ちゃんと見守ろうって思ってね? 夏菜も、沢城くんも……お互いを知ってる側だから。」


「……悪い気はしないっすね……俺も……色々相談に乗ってもらってたんで……夏菜と同じクラスになってなかったら多分……付き合ってたかもしれないっすね……そう考えると有難いですよ。」


俺は桐ヶ谷さん同様、素直な気持ちを吐露をする。


なんだろうか……正直に評価をしてもらって嬉しいからな、桐ヶ谷さんは嘘を吐くような人ではない事を俺はよく知っているから。


……揶揄うけどな、たまに。


「まー、これからも応援してるよ? それじゃ、お疲れさん。」


「……失礼します。」


俺は桐ヶ谷さんに頭を下げて、夏菜との待ち合わせ場所に向かっていった。


勿論、いつものあの場所に。




 俺はゲーセンに到着した。


そこで俺は夏菜を探した。


で、やっぱりいた。


いつもの格ゲーの椅子に。


「あ、やっと来た!! かっちゃーーーーん!!!」


「ああ、悪いな、夏菜……待たせちまって……」


俺を見た途端、夏菜は飛びついてきた。


まあ、よほど俺にチョコを渡すのが楽しみだったのだろうな、といった感じではあるのが分かったけど。


「は〜〜〜〜………やっぱかっちゃんの体が落ち着くよ〜〜〜……」


「なんだよ、人を枕みてーな言い方だな、オイ………」


「いーじゃん、好きなんだから!! それより……ハイ!! 頑張って作ったんだ!!」


ニコニコと笑いながら柄付きアルミで包んだ物を渡してきた。


ホントに、最初のオドオドは何処へやら、という感じだ。


ドキドキ感という、少年心をくすぐられる。


俺は恐る恐る開けてみる。


そこに入っていたのは……。


「……クッキー? まあ、見た目はチョコ味……だとは思うけど……」


「いいから! 食べてみて?」


俺は一口食べてみた。


甘ったるくなく、苦味も仄かに来ている。


正直好きな味だった。


「……美味い。」


俺はそう、ボソッと呟いた。


だって一発で味が美味いって分かるから。


「ホント!? よかった!!」


夏菜の満更でもなさそうな反応がまた、より美味しさが増す。


後でまた食べようと、包みの先を俺は縛る。


と、すると。


夏菜が俺にキスをしてきた。


一瞬面食らった俺だが、スッと、頭をポン、と叩く。


5秒後、夏菜が唇を離した。


「……ちょっとココアの味がする♡」


ペロッと舌で唇を舐めて夏菜はそう言った。


「……んじゃ、どうする? この後。」


「私ん家!!」


……俺は察した。


()()をするのだと。


……まあ、その後は予想通りの展開過ぎたのだけどな。


俺のバレンタインは、甘露に終えたのである。

次回はゴタゴタ回。

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