第四十四話 美空の本音
ゴタゴタ……とは言いましたが、最終対決の場面なんで、キッチリとおさめたいと思う次第です。
新学期になり、俺たちは無事に進級を果たした。
なんの運命か、俺と夏菜はまた同じクラスになって、で、なぜか桜田も俺の前の席というのは相変わらずだ。
夏菜はバイトだというので早めに帰っていて、俺が1人で家まで帰ろうとした時だった。
これもなんの因果か、美空とバッタリと会ってしまった。
ちょうど俺のバイト先のスーパーからアイツが出てきたタイミングで。
「……美空……なんでお前、ここにいるんだよ……」
「……あのさ、勝樹……今……時間ある?」
「は? なんでだよ?」
脈絡が分からない。
こういうことを美空に言われるのも、随分と久しぶりだ。
ガキの頃は暇さえあったら美空と遊んでいたのはそうなのだが、明るいはずのアイツの声がどこか暗い。
「……着いてきて。」
「?? まあ、いいけどよ……?」
まあ、変な関係にならなきゃいいか……と俺は軽い気持ちで着いていくことにしたのであった。
言われるがまま着いて行った俺だが、着いたのは思い出したくもない思い出が詰まった場所・俺の母校の本町中だった。
「……なんで此処なんだよ……もっと他んところもあったじゃねえか……」
「此処じゃなきゃダメなの……別に、勝樹のためじゃないよ? 私のため……だから……」
「………は??? だったら尚更時間の無駄なだけだわ、それこそ。」
なんで嫌いなやつの予定に付き合わなきゃいけないのかが、俺にとっては全くもって意味不明だったが、顔から察するにアイツなりに考えがあるのだろうな、とは内心で思っていた。
同窓会、というわけでも無さそうだし、もしそうだとしたら俺は踵を返してとっとと帰っている。
理由が全く判らないが、とりあえず着いていくことにした。
「……此処でいい。やっと2人っきりになれたし……」
しまった、これが狙いか。
美空は俺を夏菜から奪う気だ。
だが俺も美空に言いたいことがある。
グッと、全てを堪える気持ちで聞くしかない、俺はそう覚悟を決めていた。
「……あのさ、勝樹……『約束』……覚えてる……?」
約束? ああ、ガキの頃の、か。
美空が俺の嫁になる! だかのアレか。
だけどもう、冗談半分で受け止めていたのはあるし、第一もう、俺には夏菜という彼女がいるわけだ。
覚えてないフリをするしか選択肢はない。
「……覚えてねえよ……してたんだとしたらガキの頃の約束だべ? そんなのよく覚えてる方が凄えっての。」
「……そうだよね……覚えてるわけ、ないか……」
俺も朧げにしか覚えてはいないけど、美空に対しての好意はもう、俺の中で消え失せている。
「……アレさ……本気だったんだよ? 私が恥ずかしくって……だからあんなことして、勝樹と会わなくなっちゃってさ……?」
もういい、辞めてくれ……詭弁にしか聞こえねえから。
「でもずっと気持ちは変わってないよ……? ずっと……勝樹のことが好きなの!! 最近ずっと……!! 勝樹のこと、考えちゃうの!!」
美空の目が真剣だ。
本音なのは目を見れば分かる。
だが夏菜がいる以上付き合うことは無理だし、第一俺は美空が嫌いだ。
「……バカヤロウ、彼女いんだぞ? 俺……付き合えるわけ……」
モヤモヤを晴らしたいのはあるが、早く終わってくれないか……そう思う次第だ。
「分かってるよ、そんなこと!! でも……!! でも………!!! 伝えなきゃダメだって思ったの!! だんだん離れてくのを見てたしさ、勝樹がみんなから……!! ホントはみんなアンタのこと嫌いじゃなかった!! 優しくて真っ直ぐなアンタをみんな羨ましく思ってただけなの!! そんな勝樹が……!! 私は大好きなの!!!」
俺は言葉が出なかった。
拒絶しようと思えば拒絶はできる、でも今の美空の言葉も強ち嘘には聞こえない。
苦味が込み上げてくる。
こんな感覚は久しぶりだった。
全てを拒絶したくなる、この感覚は。
どうせなら突き放さないと、美空は俺への執着から離れない、そんな気がする。
やんわり拒絶するか、本音を言って拒絶するか……俺は思考がグラつく。
「ねえ!! なんか言ってよ……!! このままじゃ私……!!」
俺の制服の胸ぐらを掴んで催促をしている美空。
俺だって言いたいことは山のようにある。
けれどもし言っても、スッキリなんてしないだろう。
俺は腹を決めた。
俺は悪くない、自分を正当化しないと美空とは縁を切れない気がしたから。
「……綺麗事並べてんじゃねえよ……」
「……え……?」
俺は歯を食いしばった。
感情的になるのが今なら分かる。
沸々と湧き上がる怒りが、俺を飲み込んでいった。
「綺麗事ばっか並べ立てんな、このクズ野郎!!!」
俺は衝動的に美空を突き飛ばしていた。
もう限界だった。
昔の嫌な思い出が一気に爆発したかのように。
「………勝………樹………?」
困惑の色を隠せないでいるのが、美空を見れば、発した言葉を聞けば分かる。
今なら分かる、俺は“キレている”と。
「何勝手なことばっか言ってんだよ……!! 人の気も知らねえで!! どんだけ苦しかったか……!! どんだけ悔しかったか!! 知らねえクセによぉ!!!」
目頭が熱くなった。
俺はもう、過去の因縁を断ち切るしかないんだな、と。
「……うんざりなんだよ、そんなのはよぉ……!! どんだけ悩んだと思ってんだ、コッチが!!!」
気付いたら俺は泣いていた。
それくらい、俺にも思うところがあったのだから。
俺は美空に本音を言うことにしたのだった。
過去の清算も、全て含めて。
予定より早く終わりそうだな、これ。
次回は直接対決パート2。




