第二十五話 「かっちゃん」
今回動くは恋の流れ。
夏菜が沢城に対する想いも聞けます。
ここで折り返し地点を迎えるので、僕としてはいい感じでターンを切れればいいかなー、と思ってます。
俺は和吹に好きだと言った。
それは友達としてではなく、「1人の女性」として見て、だ。
本当に正直な気持ちだ。
「え……す、好き? 私のことが??」
「……他に誰がいるんだよ……だから……」
お互いに固唾を飲む音が聞こえる。
俺は意を決して絞り出す。
「……俺と……付き合ってください!!! 友達としてじゃなくて……! 『恋人』として!!」
俺はこの時マスクを取っていた。
誠心誠意、和吹にこの想いを伝えるため。
一方的すぎるかもしれないとは思ったが、精一杯の気持ちを伝えるしか、不器用な俺ではダメだと思っていた。
暫しの沈黙が流れる。
数秒後、和吹から返答が来た。
「………ホントに……私でいいの?」
「俺の恋人は……お前以外で考えられねーんだ……だから……頼む。」
しばらく和吹は俯いていた。
まさかダメか……? 俺は胸騒ぎがした。
「……ちょっと……外行こ?」
「お、おう……」
というわけで、学校にある噴水の淵に俺たちが座ってから和吹は話し始めた。
「……沢城君……中学の時さ、同じ中学だったからわかると思うんだけど……」
「ああ。文化祭で失敗しちまって……ってやつか?」
「うん……その後さ、皆んなから責められて……そのあとグループの輪から外れるようになっちゃってさ……? 孤立しちゃったの。たった一回の失敗で。……それで……誰かを信じたり話しかけたり、っていうのが怖くなっちゃって……」
俺は大体を理解した。
あの日格ゲーを独りでやっていたのもその「恐怖心」が原因だったのか、と。
「俺も似たような感じだったからわかる。そんなお前だから俺は好きになったのかもしれねえな……」
「……あの日……沢城君にさ? ゲーセンで会ってなかったら……今もあの時のまんまだったかもしれない……正直に言っちゃうと……沢城君が私なんかに親身に話、聞いてくれなかったら……その……」
和吹の目から涙が溢れているのがわかる。
どういう感情かはわからないが、そのまま和吹は続けた。
「……沢城君じゃなかったら……文化祭で開き直って演技しよう、なんて思えなかった……沢城君があんなに頑張ってるのに私も頑張んなきゃって考えたらさ……? 去年のままだったかもしれない……」
「……いや……それは和吹が頑張ったからであって俺は別に何も……」
俺は本当に演技の心構えを教えただけだ、それ以外には本気で何もしていない。
やるべき事をやったから結果に繋がっただけだ。
「ホントに沢城君のお陰だよ? そうじゃなかったら頑張れなかった……だって私も……」
「お、おう……」
和吹は顔を赤らめて俺の方を見ている。
「沢城君の事、好きだもん……優しいところも……誰かのために頑張れるところも……」
「!! マジか……!!」
「だから……付き合お? お互い好きだったら……そうするでしょ?」
ここぞとばかりに俺にくっついてくる和吹。
「ちょ……待てって……! 落ち着けって!! ……そっか……和吹も俺のこと、好きだったんだな……悪りいな、気付けなくて。……一緒に帰ろうぜ……? 今日は。」
「うん!!」
というわけで、晴れて交際が成立したことで俺たちは一緒に手稲まで帰ることにしたのだった。
積極的になってくる和吹。
俺にベッタリとくっついてきていた。
……まあ、俺の彼女になったんだし、これくらいはいいか……と思って駅に入ったところ。
「あの……さ?」
「おう。」
「その……か、『かっちゃん』、って呼んじゃダメ、かな……?」
何年振りかに言われたその言葉、美空がガキの頃に俺のことをこう呼んでいた渾名だ。
なんか、凄く嬉しい気分になった。
「……おう、いいぞ。……じゃあ俺もお前のこと、『夏菜』って呼ぶわ……いいよな?」
「うん! もちろん!!」
どんな奴よりも眩しい笑顔を発する夏菜。
この笑顔を守っていきたいと俺は思っていた。
この幸せが続いていけばいいのに……俺たちはそんな事を言って電車に乗っていった。
さて、無事交際開始ということで、後半戦の予定を説明したいと思います。
まずバッサリと一言でいいます。
ヒロイン4人が沢城を巡ってドロドロの展開になります。
純愛物だからこそできるドロドロの恋模様を書いてみたいな、と思ってます。
そして後半戦は、沢城自身が葛藤することになります。
ああ……辞めてくれ……もう見たくない……と、読者の皆さんに思わせるような展開を作って書いていきたいと思ってますんで(ドS)宜しくお願いします。




