第二十二話 ロミオとジュリエット(前編)
今週は一挙二話投稿です。
ロミオとジュリエットの部分を厳選してお送りしますので、ちゃんと話の脈絡が繋がればいいかな、と思います。
キャストはこんな感じです。
ロミオ:相川
ジュリエット:夏菜
ベンヴォーリオ:大倉隆平
マキューシオ:斉藤
ティボルト:和田甚爾
エスカラス大公:桜田
パリス伯爵:友川哲人
キャピュレット夫人:流川
乳母:渡辺
バルサザー:石川穣
ロレンス神父兼ナレーター:沢城
文化祭当日になった。
淀みなく祭りは進み、俺たちの番だ。
やるべきことは全てやった。
あとは全力を尽くすのみだ。
一年5組、「ロミオとジュリエット」が今始まろうとしていた。
時は中世イタリア。
まだ「教皇派」と「教会派」の争いが絶えなかった時代だ。
その中でも「モンタギュー家」と「キャピュレット家」の仲は最悪に等しく、喧嘩など日常茶飯事だった。
この日もある出来事を機に、諍いが起こっていたのだが、それをモンタギュー家のベンヴォーリオが、間に割って入って止めようとしたところから物語が始まる。
「オイ、バカ!! 剣を納めろ!! こんなところで争っていて何の利益がお互いにあるというのだ!!」
「ああ? モンタギューのヤツがしゃしゃりでてくんじゃねえよ!! 元はと言えばテメエらが起こした問題だろうが!!」
キャピュレットの人間がベンヴォーリオを罵ったところで、そこからまた罵倒がお互い続く。
と、そこに、キャピュレット家の乱暴者・ティボルトが現れた。
「ティボルト、この争いを止めてくれよ。」
ベンヴォーリオがティボルトもこの制止に加わるよう要請したが、ティボルトは逆だった。
「おい、ベンヴォーリオ。ロミオはどうした? まさか、俺様にビビって腰抜かしてんじゃねえだろうな?」
「ロミオがこの場にいたら……お前瞬殺だぞ、ティボルト。」
「あ!? テメエ舐めてんのか、ゴラァ!!」
ティボルトが剣を抜く。
ベンヴォーリオはやるしかない、と思って剣の柄に手を掛ける。
と、そこに、この地を収める大公・エスカラスがやってきた。
「何事だ、両家の者よ。このワシが話を聞いてしんぜよう。」
ベンヴォーリオがこれにすかさず、エスカラスの前に行き、事情を話した。
キャピュレット家サイドから罵声が飛び交う中、ベンヴォーリオが話したのはロミオの事だった。
時は遡る。
いつものように、ベンヴォーリオがロミオと森で話し込んでいる時のことだった。
「なあ、ロミオ、お前はさ、気になっている女性はいないのか?」
「そうだな……ロザライン、という女性だな。」
「は?? あの地味女が?? 冗談だろ? 仮にもお前、モンタギューの跡取りなんだぜ? もっとマシな女性をだな……」
「俺はロザライン以上の美女を見たことがない。それは事実じゃないか。」
「いや、それはお前がそう思っているってだけでだな……まあいいわ。ホラ。これをやる。」
ベンヴォーリオは、一枚の便箋をロミオに手渡した。
「……これは?」
「キャピュレット家の『仮面舞踏会』の招待状だとよ。マキューシオから教えてもらった。……ってゆーことで、アイツの手引きで入れるようになってるから行こうぜ? ロミオ。そんで、ロザライン以上の美女を見つけてこい。1人かそこらはいるだろ。」
ロミオは興味無さげな感じではあったが、親友の頼みとあらば断るわけにもいかない。
「まあ……ベンヴォーリオが言うなら行くが。」
「決まりだな、それじゃ、行こうぜ。」
マキューシオの手引きで2人は無事、仮面舞踏会に潜入することに成功した。
「よう、ベンヴォーリオ。よく来たな。」
「マキューシオ、お陰で助かったぜ。お前がいなきゃあ、俺らは入れもしなかったからな。」
「いーんだよ、こういう時は俺を頼れよ、大公の甥っ子である俺にさ。……ところで、ロミオはどうしたよ。」
「ああ、アイツなら……って、マジか!! 消えてるじゃないか!!」
「ベンヴォーリオ、俺はお前らにばかり話していると怪しまれる、だからロミオはお前が探して来い。」
「分かった!」
ベンヴォーリオは、人混みの中をすり抜けていきながら、ロミオを探して行った。
一方、ロミオは。
何やら落ち着かない様子だった。
それもそうだ、普段こういうところには行かないのだから。
「ん……?? アレは……」
ロミオは、仮面越しでも分かる綺麗な女性がバルコニーへ出ていくのを目撃し、後を追っていった。
その女性が、キャピュレット家の一人娘である「ジュリエット」だとも知らずに。
バルコニーを出たジュリエットは、何やら物思いに耽っていた。
「ハァ……なんでパリス伯爵なんかに結婚を申し込まれて……こんな出たくもない舞踏会に参加しているのかしら……」
幼少からおてんば娘だったジュリエットは、自由な恋をしてみたいと思っていた。
「何処かに素敵な御方が居ないかしらね……ま、そう簡単にはいかないか。」
と、ここで、植木の方からガサガサと音が聴こえてきた。
「!? 誰!?」
現れたのはロミオだった。
「探しましたよ……素敵なお嬢様。」
「貴方は……」
「申し遅れました、私はロミオ、と申します。」
「ジュリエットです。よろしくね。ところで……貴方は何故……この仮面舞踏会に?」
「意中の女性は一応いるにはいるのですが……友人にもっといい女性がいるだろうから探して来い、と言われまして……所謂成り行きですよ。」
「私も似たような事情よ。勝手に婚約者を決められてこのパーティーに参加しろ、だなんて……ウンザリと言ったらありゃしないわ。」
「似た者同士、ですね。私の目に狂いは無かった。」
「フフッ、そうね。そうとも言えるわね。」
こうして意気投した2人だったが、快く思わない人物が約1名。
ベンヴォーリオだった。
「おい、マキューシオ……これ最悪だぞ。」
「ん? ロミオを見つけたのか?」
「いや、ロミオを見つけたし、アイツが意中の女性を見つけてくれたのは嬉しいのだが……相手が最悪すぎるんだ、俺たちにとって。」
「え……まさかそれって……」
「そのまさかだ、マキューシオ。……キャピュレット家の一人娘、ジュリエットだ。」
「は……!? アイツ何してんだよ!!」
「俺だって分かんねえよ! と、とにかく、俺はアイツを連れて帰るから!」
ベンヴォーリオは、ロミオをジュリエットから引き剥がすため、バルコニーの出入り口を探して行った。
その頃ロミオとジュリエットは。
「貴方に会えて良かったです。……私は貴方が好きになってしまいました、ジュリエット殿。どうか、私の妻になっていただけないでしょうか。」
「私も……そう思っていたところです。貴方とならどこへでも行けますわ。」
「ありがとうございます! それでは……」
「お嬢様ー!! どこにいらっしゃるのですかー!!」
「あ……乳母様が来てしまいましたわ……それでは、私はこれで。お手紙でお会いしましょう、ロミオ。」
ジュリエットはそう言って立ち去ってしまった。
あまりの幸せなひとときにボーッとした状態になったロミオ。
そこにベンヴォーリオが現れた。
「オイ!! ロミオ!! 何してんだよ! いいから帰るぞ!!」
ベンヴォーリオはロミオの手を引っ張って、モンタギュー家へと帰って行ったのだった。
「……というのが事の顛末でございます。」
「……そうか。」
と、ベンヴォーリオの報告を受けたエスカラスは、納得したような表情を浮かべ、両家に解散を命じた。
だが、問題はそのあとだった。
ロミオの行動がひとときの幸せを生んでいったのと同時に、両家の間柄を更に悪化させるものとなったのだった。
モンタギュー家に戻ったロミオは、というと。
ジュリエットに勢いで婚約を申し込んだ事で、どこか帰った後もボーッとしていた。
「オイ! ロミオ!! いいか、よく聞けよ!?」
「……ベンヴォーリオ? どうしたんだ、血相を変えて。」
「いいか!? あの娘はな……!! キャピュレット家の一人娘・ジュリエットだぞ!?」
「……は?」
「マキューシオから全部聞いた!! ジュリエットはパリス伯爵にも結婚を申し込まれているそうだ。お前またこれ以上……両家に争いを生む気か!!」
「いや……俺は……」
「本人の気持ちがどうかは知らないけどよ! 立場を弁えてくれ! ロミオ!!」
「……婚姻を申し込んだ以上、今更引き下がるわけにはいかない。その証拠に……恋文も書いてる。」
「ったく……お前ってやつは……! しゃあない! 俺が持っていく!! お前は一回待機だ。返事はマキューシオに持って行かせる!!」
「助かる。」
そうしてベンヴォーリオは、恋文を強奪し、キャピュレット家の裏口へと走って行ったのだった。
翌日、返事を貰い、石の欠けた裏門へと案内されたロミオは、ベランダにいるジュリエットを見つけた。
「ジュリエット……約束通り馳せ参じた!」
「……来てくれたのですね、ロミオ……!」
「触れたい距離なのに……何故会えないのだろうか……! 両家の仲が悪いのがこんなに憎いとは……」
「ロミオ……貴方は何故ロミオなの!? せめて……貴方のお父様の名を捨てて……! それが出来ないのであれば……せめて私を愛すると誓って!!」
「名前はとうに捨てている……! 俺は君の『恋人』なんだ!!」
「せめてモンタギューのロミオでなければ……楽に婚姻を結べるというのに……!!」
「俺だって気持ちは同じだ! だがこの事を……許す気のない奴らは多いだろう! だからこそ! 俺は今宵の月に誓おう!! 君への愛を!!」
「月なんかに誓わないで!! 欠けてしまうものに……誓うなんて……!!」
ロミオを演じる相川と、ジュリエットを演じる和吹の迫真の演技が会場を圧倒する。
「では……何にかけて誓えばいい!?」
「それは……貴方自身に誓って!! だから………明日の朝9時……! 駆け落ちしましょう!!」
「……もう、行くのか……? 俺は君を……こんなにも愛しているというのに……!」
「これ以上は時間が取れないの!!」
「分かった……俺自身に、君への愛を誓おう!!」
と、ここで、乳母のジュリエットを呼ぶ声が聞こえる。
「あ……もう時間ね、ロミオ、私は貴方への愛を誓うわ!! だから今日はお休みなさい!! 心変わりしないでよね!?」
といって、部屋に戻って行った。
ロミオは、ベンヴォーリオとマキューシオに連れられて帰って行った。
翌日、ロミオとジュリエットは、俺が神父役を務める、ロレンスの教会へと足を運んでいた。
所謂駆け落ちという奴だ。
「……事情は分かりました。どうしても……契りを結びたい、というわけだね?」
ロレンス神父が2人に愛を誓うかどうかを聞く。
「「誓います。」」
2人の解答に迷いは一切なかった。
「よろしい。それでは……永遠の愛を誓うキスを……」
……俺はこのキスシーンを目の当たりにして、相川に嫉妬してしまっていたのだが、あくまでも「エアキス」だ、唇と唇を重ね合わせるわけではない。
ロレンス神父は、この後両家に婚姻を認めたという旨の書状を送った。
だが、この事が(演劇の中で)最悪の事態を招くことになってしまうのだった。
次回は後編。
原本をそのまま書くわけにはいかなかったので、多少アレンジが加えられているのはご了承くださいwww
沢城の心情も多少加えております。




