第十九話 「恥も外聞も全部捨てる」
今回から新章となります。
夏菜のため、沢城が動きます。
どうにかして失敗のないようにクラス演劇を成功させたい俺は、最重要課題に和吹の演技を100%正常に発揮させなければいけなかった。
渡辺と考えて考えて、脚本が出来上がった。
「ロミオとジュリエット」だ。
ジュリエット役に和吹が務めるという形なのだが、肝心の本人がなかなかセリフが言えなくて苦戦。
やっぱりか……と思ったが、かといって一度決めたものを降板させるのも本人のためにもならない。
本音は頼りたくなかった、だが、それしか方法がなかった。
俺は美空に相談する事にした。
恥を偲んで、と言ってしまえばそれまでではあるのだが、和吹のためと思えば何ともない。
本人の家を訪ねて、俺は美空と久しぶりに話す事にしたのだった。
「……ってゆーわけで……美空を頼ってきたんだけどよ……」
「なるほどね……それで私に相談? 勝樹も変わってるね、和吹さんのためにそこまでするなんて。」
事情は飲み込んでくれたようだったが、正直俺は顔も見たくない、だが余計なプライドはこの際要らない。
「俺は副委員長として……脚本を書いてる側として、どうしてもアイツの力になりたいってだけだ。……だから俺に教授してくれねえか? 演技に対する心構えを。」
「演技に対する心構え……? そうだなあ……私ならまあ……去年はホントに楽しんでやってたよ? 勝樹も悪役で出てた時覚えてるもん。味のある演技だったから私も助かってたよ? みんな私しか褒めてなかったけどね。」
確かに楽しんでやるのは演技に大切なものだが、やる役目が違う。
悲恋の話だからこそ、悲劇のヒロインっぽく演じさせたいだけだから、楽しんでやるのは少し違うだろうな、といった感じだった。
「まあ確かにそうかもしれないけどよ、アイツの役どころが『ジュリエット』だからな。だからちょっと違うんだよな……」
「うーん、でも根本は変わらないと思うよ? ジュリエットって元々おてんばだから。……ってゆーか、アンタさ……なんで和吹さんのためにそこまで身体張れるの? 嫌じゃないの? アンタの性格的に。」
「……アイツの、和吹のためだったら……というか、クラスのためだったら、この際恥も外聞も全部捨ててでも成功させたいんだよ。……それに……アイツには去年のトラウマを払拭させてやりたいんだ。」
「あー、あの大ポカしちゃったやつか。……それで今年も無理矢理主役張らせちゃったからそれでか。成る程成る程。それだったら簡単だべさ、勝樹。」
「は? 簡単??」
「去年は去年、今年は今年……って考えれればいいんじゃない? そもそも演じる役どころ違うわけでしょ? 気持ちの切り替えだよ。で、勝樹はもし失敗しても、全責任は自分で負うくらいの覚悟で行かないとダメっしょ? ただ勝樹も結構気にしちゃうところあるじゃん。アンタはアンタで下手に気を張らないかってだけだよ、あとは。」
確かに一理ある。
けれども和吹がそういう性質には見えないし、それだったら俺が全責任を背負うって感じでいかないと本気度が伝わらないっていうのはある。
心配は尽きないが、今は美空のアドバイスを信じるしかない。
たとえ、嫌いな奴だったとしても、アドバイスは聞いておいて損はないから。
「……確かにお前の言ってることも一理あるな。……分かった。助かった。アイツにもそう言っておく。それじゃ。」
そう言って、俺は美空の家を後にした。
翌日。
俺は教室で和吹に声を掛けた。
「……あのよ。」
「う、うん……何? 沢城君。」
「……俺と特訓しよう! 演技の!」
「え……? ええっ!?」
……こうして俺と和吹は演技の特訓をするために校庭へ足を運んで行ったのだった。
次回、特訓回。
美空のアドバイスは効果があるのか、それは僕の判断で書きたいと思いますw




