第十七話 夏菜が見たかった景色
夏菜との二人っきりは前編と後編に分かれると思う、というか分かれますw
札幌駅に到着した俺たちは、駅の中を探索することにした。
俺は別に物欲がないので、まあそんな買うものはないんだけども。
和吹の予定に付き合うってだけだから俺がワガママを言うわけにはいかないな、と思いつつ買い物に付き合うことになった。
だけどまあ……姉貴もそうなんだけど、女子の買い物って長えし多いしで……数分しか経ってないのにめちゃくちゃ長く感じた。
ま、俺は荷物持ちだから文句は言えねえんですけど。
どうやら靴とかアクセサリーとかが欲しかったようで、服じゃなくてよかった……と内心思っている。
駅の外を出ると、蒸し風呂のような暑さが俺たちに襲いかかった。
手稲は札幌とはいえど、一軒家は多いし高い建物もそこまでないので、暑さ自体は開放的なんだけど、中心街はビルが聳え立っているからが故、ムワッ……とした暑さがする。
俺はマスクを取らざるを得ない。
息がしづらいからな。
そうこうしている間に和吹が声を掛けてきた。
「ねね、アレ食べよ?」
「あ、ああ……」
俺は変な反応になる。
まさかクレープを食うことになるとはな……。
別に付き合ってるわけじゃないんだ、違うんだ……と言い聞かせながらキッチンカーで売られているクレープ屋に並んだ。
やっぱり女の子って、甘いものに目がないのか……女性客が多い……外の熱気で和らいではいるものの、柔軟剤の香りがすげえ……。
勿論、和吹ではない、他の方だ。
俺は変な意味で鼻がいいので、この手の柔軟剤は本当にダメなのだ。
匂いがキツすぎる。
和吹は標準量の柔軟剤の量なのでそこまで不快感はないが、柔軟剤を規定料以上使ってる人の奴を嗅ぐとマジで頭が痛くなる……。
実際中学時代はそれに悩まされたものだ……俺は匂いの吸引を軽減するためにマスクを再び装着した。
そんなこんなで俺たちはクレープを購入し、金のコーティングが施されているオブジェの付近で食べることにした。
この辺は意外にも歩行客が少ないので、人目を気にせずに食べられるから、言っちゃえば結構楽。
で、肝心のクレープの味は、甘ったるさはそこまでなくて、スッと胃の中に入っていった。
「で……次、どこ行く?」
俺は次の予定を和吹に聞いた。
和吹も答える。
「古本屋さん!」
この辺も割と本屋は多いがよりにもよって何故古本屋……? と思ったりもしたが、どうやら隠れ名作が眠っているとのことらしい。
俺も気になるので行ってみることにした。
どうせなら女性の口説き方とかもあれば買おうかな……とかいう不純な想いを抱えていたのだが。
まあなんだかんだで入ってみると、昔の名作がワンコインで買える値段で売られていたりしていたので、時代だな、とも思いつつ探索していく。
昭和の奴とかもいっぱいあるんだな、とも思いながら。
和吹の顔をチラッとみると、顔に出てしまっていた。
ウキウキしている様子が。
ま、いいか、本人が楽しそうだから。
と、買い物カゴを手に取った和吹は、手当たり次第に本を取っていく。
そしてカゴにバンバン入れていった。
和吹の爆買いという行動に衝撃を受けた俺は、女性の心理学の本を探すことにし、一冊だけ購入したのだった。
荷物が更に増えた。
数十冊の本を爆買いするとは思ってもいなかった俺の肩は凝りそうだった。
和吹はそんな俺にも間髪入れずに俺を市電の止まる駅にまで誘った。
「……市電……??」
どういうことか分からずに俺は呆然としていたが、和吹にはある目的があった。
それは。
「ロープウェイ、乗りたいなーって思ってさ? ね、いこ?」
マジか、と俺は思った。
高いところあんまり行かねえんだよな……と思うと同時に恐怖心が湧いた。
だが、それをお首に出して仕舞えばせっかく休みを取った理由がない。
意を決した。
「そうだな……行くか。俺がお前の行きたいところに行くって約束したからな。とことん付き合ってやる。」
そうして俺たちは市電に乗って、ロープウェイ乗り場まで行くことになった。
ロープウェイまでたどり着いて、俺たちはロープウェイに乗った。
乗った俺の感想はというと。
怖すぎワロタの大冒険。
思った以上に高かったので、膝が笑っているのがよくわかった。
一方の和吹の顔はキラキラしている。
同じところに乗っているのになんでこうも反応が違うんだろうな、と思わざるを得なかった。
と、ふとここで、和吹が俺のところに座る。
「……今日さ、ありがとね。……遊びに誘ってくれて。」
「なんだよ急に……照れ臭いべや……」
「その……さ、このままずっと……二人っきりのままなら……いいのにね……」
「お……おう……そ、そうだな。」
正直高いところじゃなきゃどこでもいいよ……って思ってた俺は失礼なんだろうか。
「だってさ……私が見たかった景色って……男の子とさ、二人っきりで……高い景色を見ることだったんだよ? だから……沢城君と、見れて良かったと思う。」
こんな可愛い女の子と二人っきりになれるなんて、確かに夢のような時間ではあるが、パートナーの俺がそんな顔が良くなければ本末転倒じゃないのか、と思っていたりもした。
でも和吹の気持ちは素直に嬉しいし、そういうことを言ってもらえると俺も誘った身として和吹が嬉しそうで何よりだ、って思える。
「……これぐらいだったらいつでも言えよ。いくらでも連れてってやるからさ。」
「ありがと……やっぱり……優しいね、沢城君って……」
「そうか?」
「うん……だからさ、その……今度乗るときはさ、どうせなら……」
和吹が急に紅潮しだした顔に戸惑いを覚えた俺だったが、意味はよくわからない。
「え…?」
「ううん、やっぱり……何でもない。」
困った顔で、はにかむ笑顔を見せる和吹。
ここまで表情がコロコロ変わる和吹は、俺も初めて見た。
でもこういう時にどう返せばいいのかを、俺は分からない。
「……また、来ようぜ、ここに。」
俺はそう返すのが精一杯だった。
そんなこんなでロープウェイを降りた俺たちは、また市電に乗って中心街に戻っていったのだった。
次回、夏菜とのデート後編です。




