第十五話 格ゲーは修行、恋も修行
「あ〜〜〜〜!! また負けた〜〜〜!!」
俺は部屋で格ゲーをやっていたのだが、和吹を相手にしてなかなか勝てないでいた。
お互いバイトで予定が擦り合わず、今日俺がたまたま仕事のシフトが入っていないので対戦していたのだが……
どうしたものか、俺は負けていた。
これで六連敗。
和吹が強くなっているのもあるし、未だに競っているのではあるのだが、あと一歩、勝てない。
しかも功を奏さなかったパターンで、和吹とテレワークアプリで会話しながらやっているので行動も声も筒抜けなのだ。
画面越しから和吹が笑っているのが見える。
俺と和吹はお互い同じゲームでフレンドコードを交換しているのでまあ、いつでも対戦できるといえば出来るんだけども。
「ちくしょ〜〜〜………もうちょっとなのにな……」
俺が嘆いていると、和吹のはにかんだような笑い声が聞こえる。
『アハハ……負けず嫌いだね、沢城君。……もう一回、やる?』
「ったりめえだろ。……なまら悔しいな、マジで……絶対勝つからな。」
しかし、俺はまた負ける。
また嘆きの大声を出すが、まさかのここでノックが来た。
「ちょっとー、勝樹? もうちょっと静かに出来ない?」
……姉貴の奈美だった……。
完全な放送事故だ、早く収めなければ完全な修羅場と化してしまう。
「しゃーねえだろ、姉貴! 今ダチとビデ通してんだからよ!!」
俺は思わず大声を挙げてしまった。
姉貴もドア越しで俺にこう言った。
「まあなんでもいいけどさ、あんまりうるさくしたらお隣さんとか迷惑かかるからほどほどにしなよ? 母さん達、説明すんの面倒くさいだろうからさ?」
「なんで親まで巻き込むんだよオイ! ……まあいいや、俺は集中すっからさっさと行けよマジで。」
「ハイハイ、お楽しみくださいなー。」
……なんとか場は納めたが、和吹に迷惑がかかっていなければいいのだが。
「悪いな……ウチの姉貴がよ。」
俺は素直に謝罪した。
だがしかし、和吹は気にしている素振りはない。
『え〜? いいよ、そんなのさ〜。仲良さそうでいいじゃん、お姉さんと。』
「別に仲良くはねえよ……あっちが一方的に言ってくるだけだからさ。……ったく、人の楽しみを奪うなっつの。」
なんで俺はいつもこうなのだろうか……折角和吹が神対応をして返してくれたのに、俺のその返しは塩対応そのものなのだから。
ハッキリ言っちまうのも考えものだし、最悪それで和吹に嫌われる可能性もあるから尚更だ。
『……沢城君……今日のビデオ通話さ……楽しみにしてたの……?』
「ま……まあ、な……特訓も兼ねて、だけどよ。」
すっげえ照れ臭い。
桐ヶ谷さんと和吹が近所同士だと知ってから余計和吹のことを意識してしまっている。
しかも当の本人がこの神対応だ、恋心が爆発しそうでしょうがない。
『そっか……私も……その……すっごい、楽しみにしてたから……』
……まあ、この一件も、ラ○ンを通じてやりとりした結果そうなったのだが、俺も通話しててすっごい楽しいし、和吹も頬を赤めらせているからやっぱり意識してしまっているのかもしれない。
「ま……まあいい、か……もうちょっとやろうぜ。」
『うん、いくらでも付き合うよ、沢城君。』
こうして、時間は流れていったのだった。
が、この日俺は、和吹に一勝することもできなかったのだった………。
何せ動きが毎回変わるので対応しきれない。
対して俺はワンパターンすぎていて回数をやればやるほど和吹に対応されてしまっていたのだった。
新しいパターンを編み出すという課題を残して和吹とのビデオ通話と特訓は終わったのだった。




