第五話 種を植えたはいいが
種植まで終わってしまうとあとは、水槍と雑草処理だけに成ってしまい、芽吹くまではのんびりと暮らしていた。
芽吹き暫くは雑草処理と生育具合を見て間引き、一部の作物は状況を見て軽く踏みつける。
そう言った日々を過ごしていると、特にやることもなくなってしまい、余りの時間はほとんどが街中を散策していた。
国としての建物に関しては、気付くとあらかた終わっており、内装もしっかりとしたものと成って居た。
二月ほども経つと農地の方も落ち着き、街中もだいたい見終わったところでユーリカが、弟たちの様子を見てみたいと言い出したので、出来上がった建物を訪ねると、応接室へと通された。
暫く待って居ると、扉がノックされ四天王残りの三人が入ってくるとその後ろからメイヤに連れられてアーレルがやってきた。
「お久しぶりですねお嬢様、最近はどうでしょうか」
「ね、ねーちゃおはよう」
まだ寝起きらしく眠そうな顔で目をこすりながら挨拶をしてきた。
椅子から立ち上がり、優しく頭を撫でて上げ、おはようと言うと嬉しそうにしていた。
「こちらは特に問題もなく、頂いた資料よりもやや育成が早い程度で問題は有りませんわ」
「順調順調、問題は特になしだ。このままいけば農地の方は問題なくやって行けそうだな」
「それは何よりです、ところで本日のご用は何でしょうか」
「特にないですわ、しいて言うならアーレルは元気かと見に来ましたわ」
「さあさ、でしたら立ち話も何ですから椅子にでもお座りに成りごゆるりと」
そう案内され、カロンと向かい合わせに成るようにアーレルとユーリカが座った。
まだ幼いアーレルは席に着くとじっとカロンを見つめながらも、手はしっかりとユーリカの服を掴みもう片方は隣に立つメイヤを掴んでいたいた。
「こうやって見ると、年の近い弟をあやす姉みたいだな」
「ええ、確かに実際にはかなり離れているのですが」
そう言いながら、アーレルの頭を撫でているユーリカは満足そうだった。
「ねーちゃと…う?」
「ああ、俺はカロンだ、好きに呼んでいいぞ」
「うー、にーちゃ!」
「そうかにーちゃか、弟が出来たみたいでそれも良いな」
メイドがノックして入ってくると、皆にお茶と茶菓子を振舞った。
ユーリカは、かいがいしく弟に食べさせてやると、嬉しそうにしていた。
そのまま暫く、お茶をしながら雑談をすると夕方に成りそろそろお暇する事に成った。
帰ろうとすると、アーレルが駄々をこねたが、これからはちょくちょく来ることを約束すると満足して解放して貰えた。
商会の進捗はどうなっているのかと、買い物ついでに顔を出してみたが、技術的な問題は解決したが、職工となる者の育成が芳しくなく、一度しっかりとした教育が必要になるとの案が上がっていた。
国の方が主導で、学校を作り、基本的な知識や、専門を目指す者たちへの知識を与えた方が良いと言う話が上がってはいるのだが、どうも一部の者たちが反対しており、下手に学を持たせると反感を買うのではと危惧している者たちもいるようだ。
後は子供達も、貧しい者たちにとっては大事な労働力となるため、学びに行かせないのではなどと言う話も上がっていた。
いっそのこと、宿舎を用意しそこで養う事も一緒に行い、もし家族で動けない者、職が無く苦しんでいる者が居れば、その宿舎内の仕事を斡旋し、共に暮らして貰えばいいのではと言う案も追加されていた。
案を上げていたのはカンゴロウであったが、悪くはない話だと賛同する者もおりこちらもなんとか方向性が見えてきたようだ。
実行に移すにはしばらくの期間がかかりそうな案件ではあるが、どれもが悪くない案として徐々にではあるが街中も活気が戻ってきている。
魔道具関連の流通に関しては、やはり土地柄か素材の質が高いため予想よりもいいものが作られ、価格も高く評価されている。
結果的に資金はかなり入ってきており、そのおかげで食糧問題は今のところ何とか持ちこたえている。
異界化した元城跡に関しては、土壌の土を採取し調べてみた所、魔界の土地に同僚程度の土を混ぜ作物を育ててみた所、一応は育つようでそこから何度か繰り返せば使える土壌に成りそうではあるという研究成果が有った。
そして採取した土なのだが、異界内から失われた分が、徐々にではあるが元に戻っているようで、このまま農地として使い、刈り入れをし新しい作物を育てる際に、大量に土を持ち出してみようと言う計画が上がっている。
上手く行けば、異界以外の土地でも農作物を育てる事が出来るかもしれないとの事で、収穫はまだかとせっつかれているがこれもまだ一年近くは帰還が有るため、いましばらくは様子見となりそうだ。
それから何年かが経過し、ようやく学校も出来上がり、農業問題もなんとか落ち着いた。
街の外周には、たくさんの畑や田んぼが出来上がり、川から引き込まれた用水路がその周囲を走っている。
今では、異界部分では主力となる麦と大豆と米が皆により生産され、レシピに有った調味料や酒と言った物が名物と成って居る。
ユーリカとカロンは、農業をする立場から教える立場へと変わっていた。




