第六話 それから…
朝の学校の教務員室はいつもと同じでざわざわと騒がしかった。
「ユーリカ先生今日の授業予定は何処までの予定ですか」
「ああサトラ先生、今日はこの辺りまでの予定で」
ユーリカは生徒たちに魔法を教える教師と成って居た。
声をかけたサトラと言う教師は魔界の外から派遣された人間で、魔道具開発を教える教師でもある。
ユーリカが教える範囲を想定したうえで、事前に教えた内容からの応用で作れる魔道具の作り方と、基礎を教えていく方針でやっている。
その為大体朝のうちにこう言った打ち合わせと、授業が終了後に実際にはどこまで教えられたか、生徒がどの程度までなら全員が出来るかなどを話し合っている。
「カロン先生!今年の生徒の中では誰が候補者に成りそうですか」
「ああ~ミーシャ先生か。そうだな、三組のカルナべス君と一組のアリーシャちゃんですかね」
カロンは教師としては、体育会系に属し農業とそれに必要な体力づくりを教えている。
魔族は体力は一般人程度だが身体強化で補い肉体労働もこなす。
だが、それだけではどうしても長い時間はこなせないため、体力づくりを行い魔力総量を上げる訓練も行い、それらの成長が良い生徒の事を聞いてきているのだ。
子供に戻されてから数年が経ち、漸く十五歳程度まで成長した二人は今では教師をやっている。
子供に成ってからは、ずっと二人で暮らしてきたせいもあり、二人とも満更では無いようだがお互いに一歩を踏み出せないままでいた。
授業も終わりしべての仕事は終わると二人は一緒に帰って行く。
街並みも以前と比べると完全に別物となっており、街の外周では今ではたくさんの作物が育てられている。
先日ついに元魔王が戻ってきた、もともとボロボロになっていた服は今では、僅かに下半身をひざ上まで隠せる程度のズボンだけとなっており、前よりもさらにいかつい体躯の野生児のような出で立ちで戻ってきたため、戻って来た時は化け物がやってきたなどと騒ぎに成り、衛兵たちが取り押さえようとしたが、元魔王は暴れ出し『魔王に対し何たる態度であるかー』等と吠えた。
それを聞きつけた、ユーリカとカロンにより即座に対応がなされ捕えられ、今は警備所の牢屋の中に居る。
「お父様はいい加減に大人しくしてください、この街を見てわからないのですか、皆幸せそうに楽しく生活しているのですよ」
捕えた後に現場に来た成長したアーレルにそう言われたことがショックだったのか、シュンとなり自ら牢屋へと入っていき反省すると言って引篭った。
アーレルがたまに顔を出して、今まであったこと、今後どうやって行くのかなどを話しているらしい。
二人は今日は久々にという事でアーレルに招待され、家へと尋ねている。
「兄さん、姉さん、ご無沙汰しております。学校の方はいかがですか」
「良くも悪くもなく、順調ではあるわね」
「にーちゃ、ねーちゃって言ってすそ掴んで、くれてたのが懐かしいな。今年は期待できそうなのが二人ほどいるな」
「そんな数年前のことをおっしゃられても、しかし期待できそうなと言うとやはり」
「ああ、一人は純潔種もう一人はカルテットだな」
カルテットとは、魔族、獣人族、人族、亜人族すべての血を引いたものをいう、異種族であろうとも子供は出来るそしてその子供は両方の特徴を引き継ぐため、運が良く行くと全ての種族の良い特徴の身を継承して生まれてくる。
逆もありけりでそこら辺は運が悪いとマイナス面だけが突出してしまい、長生きできないで死んでしまう場合もあるので危険だとは言われている。
見た目的な特徴はすべて魔族に準じている場合もあれば完全な混ざりものな場合もある。
「カルテットの子と言うとアリーシャちゃんですか。見た目は完全に魔族だけど凄いわよね」
「そうだな、鍛えれば鍛えるほど成長しそうだし、物の覚えも良い好奇心が強すぎるのが問題だが」
「なるほど、一度会ってみたいですね。そして場合によっては卒業後はこちらに」
そのような話を交わし、それからは三人で家族の団欒とでもいうべきか楽しく食事をした。
二人は今日初めて、お酒を飲み日本酒の辛口の透明感につられ飲み過ぎてしまったようだがそのまま帰って行った。
もともとの体力のおかげか、千鳥足にはならずゆっくりと人も殆ど居なくなった道をのんびりと星空を見ながら帰っていく。
「ここにきて魔王を倒してから数年、まさかこうなるとは思わなかったが良い生活できてるな」
「ええ、そうですわね。ですが私は最初からこうなるのではと思っていましたわ」
カロンの腕にそっと抱き着き、くっつくようにして歩き始める。
「ん、酔って歩きにくいか、おぶさってやろうか」
「んもう、いけずですわね、良いじゃないですのこういうのも」
「まあ、確かにうれしくはあるな」
女性としてはまだ成長途中ではあっても、十分に魅力的な成長を遂げているユーリカを感じ、少し頬を赤らめるカロン。
「でもまあ、願望と言うなら、俺はあの時から望んでいたかもしれないな」
「何がですの、でもそうですわね。きっとこうおっしゃるのでしょう」
「「全力を出しあえるこいつとなら、ずっと一緒に楽しくやって行ける」」
お互いに顔を見合わせ、そして楽しそうに笑いはじめる。
そして落ち着いた後に見つめ合うと、どちらからでもなく口づけを交わした。
「なあ…」
「いいですわよ」
「いやまだ何も言ってないんだが」
「いう事なんてわかりますから。ですからいいですわよ」
「そうか…」
「そうですわ」
「なら、お義父さんにでも挨拶に行こうか」
「そうですわね」
酔った勢いと言うのは怖いもので、本当にそのまま詰所の牢屋に行き報告し、元魔王がブチ切れ暴れ出し、脱獄をし広場で二人に鎮圧され、それを騒ぎを聞きつけた住人に見られ、元魔王の『娘をよろしく頼む』と言う一言を聞いた住人達に祝福され、元魔王はまた牢屋へと連れていかれ、二人はそのままのんびりと帰宅し翌朝を迎えた。
「「ふぁ~あ、よく寝た」」
「そういや昨日俺たちどうやって帰ったんだ。初めて酒飲んで旨さに飲み過ぎたのは覚えているんだが」
「ええ、確かに。何か重要な事が有った気はしますが、まあいいですわね」
二人は昨日の記憶がまったくなく、休暇の今日は毎度の様に元魔王との面会へと向かった。
移動している間に、そこかしこからお幸せに、頑張れよなどと声を掛けられ、全く覚えのない二人は、何の事だと思いながらも牢屋へと到着した。
到着すると、昨日いた筈の牢が壊れており、隣の牢の壁の隅を見ながら体育座りでいじけている魔王が居た。
「お父様何をいじけてらっしゃるの」
「おっす、元魔王元気か」
そう声を掛けられて振り向くと、泣きながら此方へとやってきて牢に掴んで話しかけてきた。
「ぐぬぬぬぬ、昨日は認めたがやはりお父さんは絶対にお前たちを認めないぞ!」
「「?」」
二人はそのまま首をかしげると、何の事だか思い出せずじっと元魔王を見つめる。
「昨日の夜にいきなり来たかと思えば、そこの勇者は娘さんをくださいと言い出すわ、ユーリカはユーリカでそこの勇者と結婚させろと言い出すわ、ブチ切れて襲い掛かったら撃退されるわ、流石にどうしようもないから認めて、この牢で拗ねていればまたやってくるわ、そんなに儂を苛めたいのかお前たちは」
「「えっ」」
お互いに見合わせて、どういった事かを思い出そうと頑張るも思い出せず悩む。
「まあ元気そうで何より、又来るわ」
「元気そうですし又来ますわね」
そう言って二人は牢を去ったが、結局何の事か思い出せなかった。
顔見世も済んだのでそのまま街中を歩いていると、そこら中から自分たちの噂をされているのが気に成り、丁度見かけた街中で販売されている新聞を買ってみてようやく納得がいった。
「「何で結婚するって事に成った(のでしょうか)」」
ひたすら悩みながら歩いていると、前方からカズラとカンゴロウがやってきた。
軽く会釈をしてすれ違おうとしたら、声を掛けられ足止めをされた。
「やーカロンはん昨日は素晴らしい物を見せてもらいました」
「うむ、とてもそのなんだ、羨ましかったです。そしてお二人ともお幸せに」
「あーカンゴロウ悪いんだが、昨日何が有ったのか思い出せなくてな」
「そうなのですわ、何やら皆さんの話などを聞いていたら結婚することに成って居るらしいのですが」
「覚えてないと、お嬢様では此方についてきてもらいアレをご覧くだされば」
そう言って、二人の新居に案内され、客間でくつろいで待って居ると水晶を持ってきた。
「昨日の一部始終が記録されておりますゆえ、此方を見れば一目瞭然かと」
そう言って水晶に記録されている状況を映し出し始めた。
見始めて間もなく、理解しその後の元魔王とのバトルを見て余りの恥ずかしいセリフのオンパレードに段々と二人は真っ赤になっていた。
そしてその状況を街の人々のかなりの人数が野次馬としてみていたようで、そこかしこで野次馬が見ている状況も映し出されていた。
「まあ、良いけどさ。ユーリカ次第と言った感じで」
「私は構いませんわ。カロンが良いのであれば」
それを聞いたカズラ達は、算盤を取り出しながら大々的に行い、復興との足しにしていこうと言い出し、二人はもうどうにでもなれと言った気分でそれらすべてを受け入れた。
一月後、世界中に勇者と元魔王の娘が婚姻すると言うお触れが流れ、世界中の有力者たちがそれを一目見ようと、そして世話になった物たちもそれを見ようとし、街はかなりの賑わいを見せていた。
二人の結婚の儀式は、厳かにしずしずとおこなわれていたが、最後の最後でやはり認められるかと言い出した元魔王の襲撃が有り、二人がそれに対処するとそのまま最後まで進めて結婚式を終わらせた。
発展した魔族の街を見た、他の領域の者たちは、これからは全ての種族で協力し共に歩み進んで行こうと言う盟約を結び、後に起こった異世界からの侵略も彼らの子孫たちが協力し合い何とか解決していった。
ようやくその平和へのスタートラインに到達できたと言ったところである。
ラストはダイジェストのように成って居ますが、細かく書こうとして挫折してしまいました。
数こなしていくしかない事なので、又のんびりと書ける時間が有る際に書いて投稿していきたいと思います。
ここまでお読みくださりありがとうございました。




