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第三話 悪戯も程々に

 役場が開くよりもかなり前から、二人は美味しそうな香りにつられて目覚める。

 朝だと気付き、そのまま香りにつられて食堂へと向かうと、夜勤だった者(警備の二人とカズラとカンゴロウ)が朝食をとっていた。


「あら、坊ちゃん嬢ちゃん、こんな時間からここに来るなんて、誰かの子供かしら」

「いや、そうでh」

「うん、あそこの二人がそうだよ」


 ユーリカの口を押え、カズラとカンゴロウの居るテーブルを指さす。

 それを理解したのか、ユーリカもカロンにだけ判るように頷き、手を離させると話を続ける。


「昨日帰ってこなかったんで心配で見に来たの」

「あら~偉いねえ、じゃあまだ朝食食べてないんだね」

「「うん」」

「子供はしっかり食べないと駄目だよ」


 そう言っておばちゃんは大盛の朝定食を与えてくれた。

 それを持って二人と合流し朝食をとっていると、食べ終わり食器を返しに行ったカズラが真っ赤になりながら戻ってきた。


「ユーリカ様と勇者!ふざけるのはやめてください。何で、わた、わた、わたしが、か、かかか、カンゴロウ殿と夫婦などとおっしゃられたのですか、そしてお二人は私たちの、こ、こここここ子供などと」


 それを聞いたカンゴロウは、思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまった。

 既に予測していた二人は、前もってトレーをかからないであろう隣の机に移動させてあり、凄い勢いでむせ返っているカンゴロウを放置しこう返した。


「「だってこの方が楽に食事を貰えそうだったから(ですわ)」」


 食事が終わった後小一時間ほど説教された挙句、食堂のおばチャンにも事情を説明して謝罪した。


「あれまあ、ユーリカ様だったのかい、それと勇者ねえ。ただのいたずら好きな子供の兄妹と言われた方が信じやすいわ」


 おばちゃんはそう言っていたが、お城もあんな事に成って大変かもしれないけど頑張るんだよと言い、二人にお弁当を渡してくれた。


 説教も終わり、早速城跡地に行こうかと思ったが、それよりもまずはこの街に来て一度も観光すらしてない事に気付き、ユーリカもまた城以外はほとんど回ったことが無かったため、折角だから色々見て回ろうという事に落ち着きまずはどうするかと話し合った。


 魔界は土壌が痩せ気味で、育てられたり生えてくる草木は魔族や人が食べるには適しておらず、魔物にしか食べる事が出来ない。

 以前、土壌を改善しようと、魔界以外で土壌を浄化すると言われているウォーム系の魔物を捕獲し放つという事を試みたが、土壌は改善されず、ウォーム系魔物の方が変化してしまい、魔界の環境に合った魔物へと変貌を遂げてしまった。

 それ以来、土壌改善を諦め、痩せた土地の中で唯一育ち続ける魔物を食し、辛うじて食べる事の出来る魔物化した植物をとり生活して居る。

 魔界以外から持ち込まれる野菜類はやはり高価な品となり、配給分以外は、一部の金持ちや飲食店が仕入れて使用するほかは、病人に配給されるのみの生活を強いられており、魔物化した植物などを摂る食生活の影響で魔界の者たちは、寿命が異常に伸びているのかもしれないが、その辺りはいまだ調査中である。


 魔王城が消失して、いざ出かけようと思ったが、どこに行って良いかも判らないのでまずは町役場に有った観光案内を読んでみると上記のようなことが書いてあり、街の地図とどこにどんなお店が有るかなどが書いてあった。


「この街、大きい割に、飯屋と医者以外は異様に少ないな」

「そのようですわ。もうちょっと小物屋とか衣装屋とか鍛冶屋とか道具屋も欲しいですわね」


 どのようなルートをとるかなどを話し合っていると、何やら入口の方から大量の貴族かと思える出で立ちの者やメイドが入って来ようとして騒がしくなる。


「んん?先頭に居るのは、弟とメイヤですわ」

「挨拶しておけば何かわかるんじゃないか」


 では失礼してと言って、そちらの方へ向かっていった。


「おはようございます。アーレルにメイヤさん」

「アーレル様を呼び捨てとは無礼にもほどがあるぞ小娘」


 急に声を掛けられたアーレルと呼ばれた弟の方は、メイヤの後ろに隠れスカートに捕まり、メイヤの方は無礼な態度に怒りをあらわにしていた。


「まあ、この姿じゃ気付きませんわよね。ユーリカですわ」

「お嬢、様?確かに、小さい頃にそっくりですが、何がどうなって」

「事故であそこに居るカロン共々子供に成ってしまいましたの」

「ね、ねーちゃ?とーちゃは?」

「あまりに騒がしかったので気絶させて掘りに捨てたら流されて行きましたわ」

「ああ、間違いなくユーリカ様ですね」


 後ろに居た家臣団からは、ユーリカ様だと、生きてらっしゃると、あの会議の時寝てたからもしかして知らないんじゃないだろうかなどと聞こえてきた。


「どういうことか詳しく説明をしてもらう必要が有りそうですわね」

「城が無くなっておりましたが、そちらも詳しく聞きたくございます」


 仕方ないので観光は諦め、カンゴロウとカズラに大会議室を用意してもらいカロンを連れてそちらへと移動した、家臣団と弟たちも一緒にである。


 会議室にてまずはこちらの状況と何が有ったのかを説明、その後居眠りしていて聞いていなかった話を聞かされ、最初から知って居れば、戦う必要もなかったと、カロンとユーリカが叫んだ。

 カンゴロウから、なぜそれがこちら側に通信石を使い伝えられていなかったかを聞いたところ、今試してみたら、通じなく成っているとの事だった。

 どうしたものかと悩んでいたところ、他の貴族の方からこれを使えば通じるはずだと何やら台座らしき物を渡され、その上に通信用の水晶球を乗せると、早速何か声が聞こえてきた。


『おーい、カンゴロウやー聞こえるかー、毎日二時間ごとにやってるが通じんなあ』

「聞こえてますよ、宰相様」

『おお、ようやく通じた。一応確認ではあるが、まさか魔王を既に亡き者にしてたりはしないだろうな』

「あ~たぶん生きているのじゃないでしょうか」

『偉い曖昧だが何が有った』


 暫くやり取りをした結果、話し合いで色々と解決したので、そのままそちらに渡した資金は自由に使って良い事と、仕事自体はもう終了で解雇に成る旨を伝えられた。

 そこまで聞いたところで、カンゴロウは通信機をしまい周りを見回した。

 聞いていた他の者たちは、気まずそうな顔をしながら二人の方を見やる。


「どうしましょうか俺、たったいま解雇されてなんの役目もなくなってしまいましたが」

「そんな事より俺は、あそこで農業をやってもいいのかそれが知りたい」


 城の跡地がもしかすると農業に適した場所に変質したかも知れない事を聞かされ、王女であるユーリカがそれに協力調査すると言い出していたこともあり、そのまま了承された。

 問題となったのはカンゴロウで、彼は勇者チームの会計役であり参謀である。

 紹介を聞いていたところ、大きな商会の会頭の次男坊であり、戻ってもそのまま商会を継ぐことは出来ず新たに商会を起こすか、どこかの支店長に収まるぐらいしかないので、此方に残って色々やらせてほしいと言い出した。


「せやから、わてがこの街の復興計画とかに協力しまっさかい、此方で商会を起こさせてくれへんか」

「うむむ、昨日手伝ってもらった感じからすれば、凄く有能なのは判っているのだが」


 流石に魔人以外が国の政治を担ったり商会を起こして仕切るのはと、貴族からの反対が多かった。


「なら、カズラ貴方カンゴロウと結婚して商会を起こせばいいのですわ」

「おお成ほ…ってお嬢様お待ちください!け、けけ結婚などカンゴロウ殿の気持ちはどうなるのですか」

「うーん、わてはカズラさんなら大歓迎やけど、カズラさん嫌なら諦めますわ」


 歓迎されたことにさらに真っ赤になるカズラ、ユーリカはやはりですわ等と言っており、他の貴族たちもカズラ様の夫であり補佐としてなら表に出ても問題は無い、カズラ様が起こせば民たちも協力するでしょうしいいのではなどと、反対意見は全く出てこなかった。

 結局、カズラとカンゴロウで話し合ってくればよいということになり、部屋から追い出しされ小会議室にて二人だけで話し合いになるようだ。


 次に問題となったのは、王城が無くなったのでその辺りはどうするかという事だった。


「ユーリカ様は、魔王となられるのですか」

「そのつもりはない、こいつと一緒にあの跡地で色々と実験を繰り返し、何時かはあそこから先ほど言っていた種を育てて、それによる生産品を世界へと広げられればいいのだが…………(ですわ)


 魔王と言われつい口調が変わってしまうユーリカ、最後に小さな声でですわをつけたのは、恥ずかしさだろうかわからない。


「ならばそちらへの資金援助などは、事前に国庫の中身を既に分配して運び出し、後で戻せるように此方で確保してありますので、そこから出すという事で宜しいでしょうか」

「おお、資金くれるのは助かるぜ、とはいってもあそこに住める家と、収穫までの生活費用と、農具さえありゃあとは要らないんだが」

「生活費用と家に関してはすぐに用意できますが、農具は鍛冶屋に依頼して作らせることに成りますので、暫くは代用品を使っていただく事に成りますな」

「なら、鍛冶屋に依頼するときは、どういった物を作るのかを詳しく伝えないといけないから同行させてくれ、出来るまでの代用品はロープと材木とピックとハンマーと大量のチャクラムが有ればそれでいい」


 そのぐらいならと、その場で貴族たちが収納から必要と言われたものを取り出し、カロンは受け取り収納に仕舞っていった。


「では次の議題として、此方の代表はアーレル様補佐にメイヤ殿を付けた形にしたいと思いますが、反対なさる方はおられますか」

「幼すぎるゆえ、メイヤ殿以外にも、宰相としてどなたかを付けた方がいいかと思われます」


 宰相を誰にするか、そして国の復興に関してはどうやって行くのかなどの話し合いへと移行していった。

 結局のところ、四天王の残り三人を護衛としてつけ、宰相はカズラ殿がどうなったか次第で、それによってはカズラ殿、無理なようならば他に誰か候補を上げてもらい、それ以外の者たちはその下で補佐をするという形に落ち着いた。


 王城に関してはもともと堀の周囲に固めてあった貴族たちの館、とはいえ普段は使われず、会議などの招集時のみに使われて居た建物を解体し、そちらに城ではなく会議や会談及び資金の保管や管理などを行うための専用の建物を作り、反対側に魔王専用の邸宅を建て、宴の際はそちらの邸宅で行うことで合意された。

 建築に関しては時間がかかるだろうという事で、それまではこの庁舎を使用する事に成る事が決定されたが、まずは建物の解体と言う話が出たところで、カロンとユーリカが声をかけた。


「そうなりますともう掘は要りませんわよね」

「埋め立てて良いならすぐにでもその土地を更地にできるが」

「問題は無いですが一体どうやって」

「「それは勿論これで(ですわ)」」


 そう言って二人は、力瘤を見せるかのごとく腕を曲げてそれを反対側の手でパンパンと叩き行ってくると伝え出ていった。


 暫くするとそちらの方から轟音が響き始め、それに伴って悲鳴が聞こえ始めた。

 部屋に居た貴族たちは頭を抱え始めるが、丁度カズラとカンゴロウが戻ってきたので、事情を説明したところ、自分がその役を受けると他の四天王がうるさそうなのでという事で、先ほどまで仕切って居た貴族を指名し、自分は相談を受ける立場として、カンゴロウと立ち上げる商会の方に相談しに来てほしいと伝えられた。


「ではお二人はやはり結婚なさるのですか」

「なさると言うか、ここで手続きできたからもうしてきたんや」

「「「「「「はいっ?!」」」」」」

「う、うむ、恥ずかしいのだが既にしてきたし、商会の立ち上げ申請も済ませた、商会自体は私の邸宅を本部とし、いくつかの空いていた店舗も既に押さえさせてもらった」

「「「「「「何その行動の速さ」」」」」」」

「ついでに言うが、人族の領から戻って来る者たちは、わが商会で受け入れる事もすでに合意させてある」

「更に言えば、既に材料を確保させる者は抑えたし、これから加工を学ばせる者も抑えさせてもらいま」

「「「「「「こんな所に居たよ内政の化け物が」」」」」」

「化け物などと酷いではないか」

「まあええやん、わてらが気にしなきゃええ、これから忙し成るで」


 そんなやり取りをしていると、外の方が静かになり二人が戻ってきた。

 二人が出て行ってから約一時間ほどは経過していたが、休憩に戻ってきたのだろうか。


「おう、ひとまず更地にしてきたぞ」

「つかれたのでわたくし達はこれから、食堂でティータイムでもしてきますわ」

「じゃあ後の建築は任せたから、堀は埋めちゃったけど、農地用に水路だけ貰ったんでよろしく」


 そう言って出ていった二人により、全員がフリーズしたまま動き出せず、暫くして復帰すると同時に全員が跡地へと向かったところ、ものも見事に更地に成って居た。


「相変わらずカロンはん規格外でんなあ」

「よし、ひひひひ、ひとまずは設計者と建築家を呼んでこ、こここ、ここに建てる建物を依頼する、だれぞ呼んで参れ」


 そう言われると、急いで貴族のうちの二人が走り出して手配をしに行った。

 他の者たちで、どの辺りを何の敷地にするかなどを話し合い、ひとまずの目印とばかりに棒を使い線を引き始めた。


 暫くして大まかな区分けが出来たところで、設計者と建築屋が連れてこられ、事情を説明し早速デザインなどを設計図に書き込んでいき、一階部分が完成すると基礎を構築し始めていった。

 土魔法の応用で家を建てる事が出来るのだが、あくまで大まかな作りしかできないので、それらが終わったところで、建築屋の方が詳細な内装をし始める。

 建てる家の規模により、基礎建築にかかる術式の構築時の人数が変わるのだが、魔力不足さえ補えれば一人でも可能なため、魔力面は貴族たちが協力しすぐさま基礎建築を終わらせた。

 結果その日のうちに外装と内装以外はひとまず二件とも完成し、異界化した畑予定地の方の建築へと向かわされた。

 外装や内装に関しては、どうしても日数がかかるとの事で、急ピッチで上げたとしても二週間ほどはかかるとの意見を頂いた。

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