第二話 子供に成った二人は
ひとまず、どうしたら良いかを話し合いを始めた。
「そう言えば、お金とか持ってるか」
「そちらの国と同じ通貨が使えますわ。多少は持っていますが」
「うーむ、実はな三日分の宿代ぐらいしか持ってないんだ」
「バカですの、そこまで使い切るとか普通有り得ませんわ」
「いや、普段の資金は仲間のカンゴロウが管理しててさそっちから全て出てたから、小遣いしか持たされてないんだ」
「勇者が小遣い制ですの、有り得ませんわね」
二人はやり取りをしながら、先ほどの皆を映し出した水晶を瓦礫の山から探し出し、皆の場所を突き止めた。
この魔道具は、あの四天王を中心とした周囲の映像を映し出せる魔道具との事で、早速それを使い誰か一人でもいいから見つけ出して状況を伝えて何とかしようと言う話に成った。
一人目のレイミアは、宿の一室らしいベッドで寝ており、体を洗って下半身をバスタオルに覆われたトマチという勇者の仲間の一人がそちらへ向かっている所だった。
慌てて映像を止め、二人目のカズラを映し出すと、酒が抜けて現実に帰って来たのか、眼鏡をかけ対峙したときはぼさぼさだった長髪を後ろでお団子にまとめ、何やら必死に机に向かい書き物をしており、その横ではカンゴロウが同じように青ざめ必死になりながら算盤を弾き出た結果を書きとめていた。
これも触れてはまずいかもしれないと思い、三人目のガーレに切り替えると、未だに四人で大宴会を繰り広げていた。
「この状況では酒場にも入れませんし、もう片方はアレですし、仕方ないですがカズラの所に行きますか」
「だなあ、あの宴会にこれで行ったら弄られつくして(キレた俺たちのせいで店が)危険だな」
そうと決まれば早いもので、早速カズラが居るであろう場所へと向かっていった。
そこは、城下町の町役場で昼ならば誰でも入れる建物であった。
だが現在は夜であり、言うまでもなく入り口に警備の者たちが立っていた。
「子供がこんな時間に街を歩いていたら危ないぞ、家まで連れていくから家は何処かな」
そう言われてしまい、如何したもんかと悩む前にユーリカが発言した。
「ふむ、妾の顔を忘れたと申すか、コルドバよ」
「妾って、ユーリカ様みたいな言葉遣いをする子供だなあ」
「まだ気づかぬのか、妾じゃよ妾」
「って、ええ、ユーリカ様でも子供?ユーリカ様の隠し子ですか」
「違うわたわけが」
そう言ってコルドバと呼んだ男の頭をはたく。
「先ほどの事は聞いておるかえ」
「そりゃまあ、魔王城が崩壊したとか、更地に成ったとか情報が錯誤しておりますが」
「うむ、このカロンと全力でやりあってな、そしたら崩壊して、気付いたら埋まっていたのでどかしただけじゃ」
「ユーリカお前さっきまでと口調が違うぞ」
「うるさいですわ、普段は今の様にしないと舐められてしまいますの」
「ユーリカ様そうだったんですか、大丈夫ですから楽に話してください」
「そうですの?大丈夫でしたらこちらの方が楽ですしそうさせてもらいますわ」
そのままやり取りをして、何とかユーリカと俺は、カズラたちの部屋の前へと案内されることが出来た。
ひとまず扉をたたく前に、中の状況を探るために聞き耳してみる事にした。
「カズラはんどうしましょ、あの城更地に成ってましたで」
「ええ、もうお城とか無かった事にして、城下町だけで運営した方がよさそうですよね」
「後あそこだけ、物凄い力のぶつかり合いのせいか、魔界じゃ無くて異界化してましたで」
「ふーむそう成りますともしかして、普通の植生が生まれる確率も」
「試してみんと分からんけど、いけるんちゃいますか」
そのやり取りを聞いたところで、扉を豪快に開く。
「話は聞かせてもらった、ならばあの一帯を俺が農場として運営しようか」
「わたくしも手伝いますので問題は有りませんわ」
二人はきょとんとし、誰だこんな所に子供を連れてきたのはという表情を浮かべるも、暫くよく見ると気付いたらしく、慌てた表情に成りながら声をかけてくる。
「ユーリカ様なぜ子供に!」
「カロンはん若返るとか羨ましいでんなあ」
お互いに全力込めて殴り合ったら、城崩壊して気付いたら瓦礫の下で吹き飛ばしてみてみたら子供に成って居たことを説明した。
その時に吹き飛ぶ前に起きたことを思い出し、カロンは慌ててユーリカに土下座をした。
「ユーリカすまないっ!あの剣最後の時に爆発消失させてしまった」
「そんなはずは、ああでももしかしたら、成程そう言う事でしたのね」
何やら一人で納得してしまったらしく、気に成ったので説明を聞いたところ、あの剣自体は古代に作られた物らしく、壊れないと言う概念が込められていたはずのものだった。
その概念を二人の全力が突破してしまいあの爆発が起き、崩れた概念の影響があの城の跡地に出て、異界化してしまったのだという事だった。
概念を籠めるとは言っても不完全なものでそれが破損した結果が、今の状況に当たると語った。
以前にも、盾と矛で最強と言う概念を持った装備が有ったらしいのだが、どこかの大陸のバカなものたちが、それらをぶつけたらどうなるかを実験した結果、それらが消失し、それに巻き込まれてその大陸のごくわずかを残して完全に消失したと言う。
その時の小規模な再現と成って居るのではないかと思い元城の有った場所の異界化と自分たちの若返りは、概念破損によって発生した影響ではないかという事も語った。
消失した大陸のあった海域は、肥沃な海域となり、漁獲量がものすごくよい場所として今も有名になっているが、それにつられて大量の魔物も発生しており、一部の者だけがそこで漁を行っていると言う話もあった。
「ですから、あそこは肥沃な大地と成って居ると思うのですわ」
「おお、なら俺の本業の出番だな、これでも農家の息子この位の頃は畑や田んぼで働いてたんだぜ」
それはいいですわねと、手を取り合い喜ぼうとするも、今の状況を思い出し表情が曇る。
「そうなると時間が経ったらそのうち元通りと言うわけにはいかないのか俺たち」
「そうですわね、最低でも数年はかかりましょう」
『そうだねー、最低でもそっちの男の子はその年から今の年に成るまでにかかった年数はかかるよ』
『そして君もそれと同じだけの期間はかかるだろうな』
ゴスロリの少女と、眼鏡にスーツの大人が唐突に現れそう語ると、『一寸概念の欠片回収しに来ただけだから気にしないでくれ』と言って去って行った。
部屋に居た全員が呆気に取られ、フリーズした状態から立ち直ると去って行った者たちを急いで追いかけたが、既に役場の中にはおらず外に出てコルドバに聞くと城の跡地に向かっていったとの事を確認した。
急ぎ現場へ行くと、更地の周囲にあった瓦礫がすべて消失しており、一枚の立て札があった。
『概念の欠片のみは回収するのが面倒なので、瓦礫ごと頂きました。代わりにこちらを置いていきます。』
その立て札に、小さな袋と紙の様なものがつけて有り、紙を取り出すと袋の中身の育て方と、それによって作れる加工品などの作り方も書いてあった。
「コメとコムギとダイズという物らしいな」
「ショウユとミソとニホンシュなるものの造り方も書いてありますわ」
二人はひとまず、立て札ごと回収し又町役場へと戻り、中の食堂で食事を作ってもらおうとしたが、悲しいかな今は既に深夜、残っている職員などはおらず、食材だけは自由に使っていいという事で、現在調理場に立っているのはカロンだった。
「まさかなあ、料理が出来ますわと言っておきながら、パイ生地作ったり、スポンジケーキを作りはじめようとするとは思わないよなあ」
「うぐ、仕方ないではないですか、私が出来る物は、ケーキクッキーパイぐらいなのですから、刃物を使った料理をしようとするたびに、危ないですからと止められるんですわよ」
「そこはお嬢ってことか、でこのパイ生地使っちゃっていいか」
「かまいませんわよ」
そう返事をもらい、甘みの無いパイ生地なので、そのまま魚のパイ包みを作り上げる。
それ以外に、旅人料理に成りはするがと、干し肉を薄くそぎ、野菜を多めに入れ胡椒のみで味を調えたスープ、その辺にあったパンの表面の硬い部分をそぎ落とし袋に詰めると、生活魔法の乾燥をかけて乾燥させ細かく砕き、それを塩コショウを振りかけた後に溶き卵に着けた肉にまぶし油で揚げていく。
残った卵に酢、塩、ミルク、油を注ぎ、こぼさないように高速でかつ均等にかき混ぜてくれとユーリカに頼む。
「それは何ですの、肉を揚げているようですが、それとこれ結構力仕事ですわね」
「出来上がってのお楽しみだ。それが上手く出来ないと台無しになるから注意してくれよ」
そう言われると、気を付けながらも高速でかき混ぜていく。
綺麗に中までほぼ火が通った瞬間を音で判断し、上げるとそのまま油きりの網に乗せておく。
残っているやや柔らかい部分のみとなったパンを二枚に切り分け、下側に成る部分に柔らかそうな葉野菜を敷き、ユーリカの方を見ると綺麗に完成していたので、かき混ぜるのをやめてもらい早速葉野菜に軽く塗る。
上から胡椒を軽く振りかけ、自分の収納から壺を取り出した、蓋を開けるとやや酸味の香る黒い液体がなみなみと入っており、油の切れた揚げ物をトングの様なもので掴み深々と漬け込みすぐに上に上げ滴る液体を切ってから、先ほどのパンの上に乗せ、残りのパンで挟み込んだ。
「完成だな」
「んんん、とてもいい香りがしますわ」
調理場から、テーブルへと運び、向かい合って食事を始めた。
調理中は背も低い事もあって、踏み台を使わせてもらっていたが、食べる場所は辛うじて使える程度の高さだったので問題は無かった。
パンが気に成るのかユーリカは早速パンを掴みかぶりついた。
「先ほどの黒い液体甘いですわねそれに酸味も辛みもあって、先ほど混ぜたものと相まっておいしいですわ」
「だろうな、さっきの壺は修業時代に入ったダンジョンの最奥で見つけた壺なんだが、名前がニドヅケキンシの壺っていってな、中の液体は使い方さえ間違えなければ痛むことなく、減ることもないらしくて、使うたびに味が良くなる。一度でも間違えると、一番最初の味に戻るらしいんだがその頃に比べたら天と地ほどの味の違いに成ってるんだぜ」
「それって、伝説級の宝具ではありませんこと?ちなみに使い方とは」
「一度漬け込んだ食べ物をもう一度つけちゃいけないみたいでな」
「たったそれだけですの」
「たったそれだけだが、この味を知るともっとつけたくなるだろそこが罠だ」
そう言われたユーリカは、確かにそれは事実かもしれませんと納得し唸っていた。
パンを食べ終えてから他のものにも手を出したが、パイ包みとスープも気に入ったらしく、作り方を色々と聞いてきた。
説明しながら食べていると、すべて食べ終わった辺りで、気付いたのだが机の両側に、カズラとカンゴロウの生首が有った。
生首と言ってもただ単に机の端に顎を乗せていて此方の食事を羨ましそうに見ていただけだったのだが、気付いた瞬間に驚き思わず変な悲鳴を二人してあげてしまう。
「お嬢様だけ美味しそうなものを、私達の分は無いのでしょうか」
「せやせや、わてらにもカツサンドくれんと納得いかんで」
そう言われてしまっては仕方がないが、残っていた材料だけでは足りないので、二人に協力してもらい、白ソースを作ってもらいつつカツを揚げ油を切っておく。
パイ包みをどうするかと思ったが、カツサンドとスープだけで良いという事なので、スープはまだ残っていたのでそれを二人分よそい、白ソースが完成したようなのでカツサンドの方も準備を済ませると、二人は調理場でそのまま食べ始めてしまった。
「相変わらずあの壺は万能でんなあ」
「確かに、二度付けに成らないようにと考えたスプーンで掬ってかければいい作戦もできるし」
「森で迷ったときなんか助かりましたなーただ食えるだけの草にかけたらご馳走でしたやん」
「む、確かに野菜ともあいそうですね」
「なぜそちらで食べていますの、行儀が悪いですわよ」
わざわざ先ほど食べ終わった食器を抱えて洗おうとしてか、自分たちが使った二人分の食器を持ってやってきたユーリカに注意をされた。
全く等と文句を言いつつも、綺麗に食器を洗い、使った調理器具まで洗い片付けると、二人の食べ終わらせた食器も洗い片付けてしまった。
因みに児童化したときに起きた事なのだが、ボロボロだった服が綺麗な子供サイズの服に切り替わっていた、埃塗れではあったが浄化をして汚れは落としてあるので、このままでも寝ようと思えば寝る事が出来る。
食事をとった影響と、戦いの疲れからか、二人は欠伸をしトロンとした眼差しに成って居た。
結局そのまま仮眠室を貸してもらい、細かい事は明日の朝から考えようと言う結論に至り眠りについた。




