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第一話 魔王と勇者のラストバトル

 周囲を見渡すとかなりボロボロではあるが王城の謁見室のような場所には、無数の砕け散った竹やりが散らばり、さらに壁際には数本の竹やりが床に突き立てられていた。

 一人の男は肩で息をしながらも立ち、もう一人の男は襤褸切れの様になった状態で地面に伏していた。


「はぁはぁ…魔王って言うからには強いとは思っていたがここまでとは」


 彼が魔王との戦いに持ち込んだものは竹やり二百本、世界では勇者などと呼ばれているのだが、彼には問題が有った、力が強すぎて本来伝承に残っていた勇者が使ったとされる神器ですら耐えられず、一振りで壊すのも勿体ないのでずっと腰にぶら下げたままと言う状態なのだ。

 ならば素手で戦えばいいとお思いであろうが、魔王とは魔法の扱いに長けた者なので、近接戦を挑もうにも障壁に阻まれるその為、少しでも長さが欲しく思い最終的に落ち着いたのが竹やりであった。


 そもそもこの世界の魔王と勇者は、普段は戦う必要すらなかったりする。

 魔族は魔界の気候以外の環境で生活すると、本来の寿命より短い時間しか生きられず、長いものだと五千年ほどの寿命を持つが、何故か魔界以外だと全ての魔族が大体百年ほどしか生きられなくなる。

 そして問題はもう一つあり、魔界の環境は農業などには向いておらず、食生活がほぼ肉食に偏り、その結果色々な生活習慣病に成るものが多発した。

 ゆえに、魔界以外で暮らす者たちと、取引を行っていたのだが、魔界から出せる物は魔界で生活する人、魔人しかないのだ。

 結果、魔界では定期的に魔界以外に奴隷として魔人を送らねばならなくなった。

 しかし、魔人は身体能力はそれなりだが、魔力の扱いに長けているのと学習能力がかなり高いおかげで、色々な魔法などを使う分野で重宝され、結果魔界以外から徐々に魔人の要求数が上がった。

 断れば昔の様に生活習慣病などが発生し、せっかく安定した状況がまた覆されてしまう。

 なので受け入れ続けていたのだが、今代の魔王はその状況を受け入れられず、一部の民たちの反発はあったものの、一部の者たちが魔王の命により魔界以外へと侵攻を始めてしまった。


 その結果が、現在魔界の魔王上の謁見室の状況と成って居る。

 魔人たちも、魔界以外の種族たちも、戦争自体には乗り気でなかった結果、裏側で密約が交わされ、今後は希望者のみが、他種族の元へ行き働き、その稼ぎから自分たちの国への仕送りを行ったり、魔界にある今までは塵として無視されていた資源が、本来は魔道具などを作るのに必要な資源であり、それの加工技術を学んだ魔人たちが生産すれば、高品質の物が作れると分かっていたので、既にこちらで技術を身につけた魔人の技術者を本国へ戻し、指導して生産したものを交易品として扱おうと決められていた。

 要するにわがままを言っていたのは魔王一人だけという事にして、討伐ないし排斥し新たな秩序を築いてしまおうという事が裏で決まっていたのだ。

 魔王に心酔していた四人の魔人たちと、二人いる魔王の子供の娘以外は、その話を聞かされており(実際には、魔王以外を集めた会議でそういった話をしたが、娘は居眠り他は魔王様が気に成り全く聞いていなかった)魔王には隠居又は討滅されてもらい、子供の弟の方を新たな魔王として擁立する予定に成って居る。


 結果魔王が討伐される日の朝に城に残っていたのは娘と四天王のみであった。

 他の者たちは前日にすでに勇者たちが街に来たことを知っており、各自実家帰り弟に関しては側付きのメイドの実家に訪問している。


 最初城に訪れた勇者のお供が、もぬけの殻ではないか皆我らに恐れをなして逃げおったなどと言っていたが、知らないとは幸せな話であった。

 途中で現れた四天王に対し、ここは俺たちで何とかするからお前は魔王をなどと言うテンプレ的な事を言われ、先に行った勇者は謁見室で魔王と対峙、収納から取り出すと時間がかかってしまうので一気に収納から竹やりを周囲に放出し、魔王と対峙し先ほどの状況に至るのであった。



「ほう、お父様に打ち勝つか、獲物が竹やりなのは何かのネタか」


 そう言って、赤い髪に金色の瞳をし、動きやすそうなドレスを纏った女性が声をかけてきた。


「お前魔王の娘か、竹やりなのはこいつですら一振りで壊しちまうから、資金的な問題でな」


 そう言って、腰にぶら下げた剣をポンポンと叩く。


「ふん、神の加護で神剣となっても、所詮は鉄か、もっと頑丈なもので作ればよかろうに」

「頑丈な物でつくりゃそれだけ重くて持てる奴がいないだろ」

「ふん、おぬしなら持てるのではないか、ほれこれなんぞどうだ」


 収納を勇者の前に開き何かをそこから落とした。

 鈍い音と共に床にめり込んだそれを見て、勇者は拾ってもいいかと目配せをする。

 それに対しご自由にといった態度をとる魔王の娘。

 確かに重いが問題なく扱える程度の重さに感心し、ひとまず抜いて全力で振ってみる勇者。


「素晴らしいな、これなら全力で扱い続けても壊れそうにない」

「ふむ、これで問題はないよな勇者よ」

「勇者勇者言うな、俺にもカロンって名前が有るんだ、魔王の娘」

「私にも、ユーリカと言う名前が有るわけだが、では殺りあおうかねカロン」


 構えをとるユーリカ、魔王以上の魔力の奔流が発生したかと思うと、瞬間的にそれも鳴りを潜め、静寂が訪れる。


「ああ良いぜ、但し俺はお前を殺しはしない、いや多分出来ないだろうがなユーリカ」


 剣を構えそのまままっすぐに向かっていく。

 受け取った剣は鈍ではなく相当な切れ味を持っていたはずだが、それをいとも簡単に左手一本かつ素手で止める。

 先ほど放出した魔力はすべて、身体強化と物凄く圧縮された障壁へと成って居たようだ。

 受け止めはしたが、余波は出ていたようで、止めた後ろの空間が衝撃で破壊されていく。

 ユーリカの長い髪がたなびき、フッと軽い笑みを浮かべた表情は、戦闘時でなければ見とれていたであろう美しさを醸し出していた。


「なんじゃ、気は使わぬのか、もしかして先程ので使い切ったとかではないだろうな」

「そんなわけではないんだが、こう今までと違う物は、どうも通しにくくてな」

「ふむ、詰まらんなぁ。それでは私が楽しめないではないか」

「手加減してくれてもいいんだぜ」


 何をバカなと言わんばかりに剣を掴まれたまま、右手の拳が飛んできた。

 辛うじてそれを躱し、何とか剣から手を離させ距離をとる。

 何とか気を通すことを成そうとしてみるが、上手く行かずそのまま距離を詰めてきたユーリカの拳を剣の腹をつかい両手で受け止めた。

 頑丈さだけはかなりの物らしく、衝撃は凄かったものの、両手までは届いていた気のおかげで何とかダメージはなくすことが出来た。


「本当に魔王の娘か、お前が魔王ですと言った方が信じられるんだが」

「まあ確かに、お父様は手加減していても倒せるがの、結局魔王を譲ってはくれなんだ」

「じゃあこれが本当の最後ってわけか、あいつら大丈夫かな」

「共の者が気に成るのか、気が散るならふむ…ふははははは」

「何が可笑しい」


 収納から何かを取り出し覗き込んだユーリカが笑ったのに腹を立てカロンが声をかけると、ああそうかと言い、水晶から映像を映し出した音声付きで。

 そこにはボロボロになった仲間たちと、四天王と自称していた者たちが、肩を組み楽しそうに会話しながら酒を酌み交わしている映像だった。


「俺が真面目にやっているのにあいつらは一体何やっているんだ」


 怒りがちょうどいい具合にはまったのか、剣に気を通すことが出来た。


「お、おお」

「ふむ、これでようやく本気が出せるの」

「それはこっちのセリフだがな」


 そう言った瞬間、お互いの体がぶれる。

 戦っている本人同士以外が見ると、何もない空間のあちこちで、音がしたり破壊が行われ、姿を現したかと思えば、そのまま立っているだけかのような状況しか見えず、だが周囲だけはどんどんと破壊されていく。

 実際には高速で移動し、斬りかかりそれを弾き捌き、殴りかかりそれを蹴りで止めたり、剣で防いだりしているわけなのだが、お互いに段々と楽しくなったのか、移動もせずにその場にとどまり、高速で拳と斬撃を繰り出しあっていた。

 それだけのことをすれば流石にお互い徐々に傷ついていき、最後には両者とも体のあちこちから血を滴らせ、服もボロボロに成っていった。


「はぁはぁはぁ、ここまで全力を出せるのは楽しいのう」

「おま…ま、まだそんな事言えるのか…よ」


 二人とも傍から見れば満身創痍と言った感じではあるが、まだまだ余力自体は有るらしく、構えを解いていない。

 ユーリカが突如今まで抑え込んでいた魔力を解放し拳に一点集中し始める。

 それを理解したカロンも同じように気を解放し、全身に渡らせ漲らせる。


「さてこれ以上やって引き分けも面白くないし、この一撃でどうじゃ」

「良いだろう、立っていた方が勝ちだな」

「「こういう時はシンプルなのが一番いい」」


 そう言って二人は全力の一撃を放つ、それにより魔王城は完全崩壊した。

 今までさんざん衝撃を与え続けていたせいもあり、城全体が古かったのも影響したのであろう。



 四天王と仲間たちは意気投合し丁度城ではなく城下町で飲もうなどと言う話に成り、城を出た瞬間後ろから大爆発のような衝撃が走り、振り向くと城が完全崩壊した状況と成って居た。


「おいこれ、カロン生きてるのか」

「あああえええええ、ディーハルト様とユーリカ様は、大丈夫でしょうか」


 八人は慌てたものの、見なかった事にしようと言ってそのまま酒場へと移動していってしまった。


 数時間後、瓦礫の中で目を覚ました二人は、又も全力を出し自分の周囲の物を破砕し吹き飛ばした。

 結果魔王城は跡形もなくほぼ更地へとなった。

 隅の方に押しやられた砂利などの山から、気を失っていた魔王が目を覚まし唐突に叫んだ。


「ふはははは、やるではないか勇者よ、だがわしはまだ負けておrンゴォ」


 ユーリカがつかつかとそちらへ高速で移動し、かなり強めに殴りつけた。


「お父様は手加減されて負けておりますゆえ、いい加減諦めなさいませ」


 気を失っているようであったことに気付き、そのまま掘りへと投げ捨てた。

 ドポンと言ういい音がしたので心配してカロンも見に行ったが、綺麗に上向きに浮かび上がっており、流されて行ったが溺死することはなさそうなので一安心した。


「良いのかアレ、父親じゃないのか」

「いいんです、そのうち気が付いて戻ってきますから」

「それよりもさ」


 言葉づかいからして、ユーリカだとは分かる少女にカロンは戸惑っていた、自分の視線から考えるに同い年ぐらいだとは思うのだが、大体目の前に居る少女は五歳位である。


「ええ、この状況ですわよね」

「「なんで、子供時代まで若返っているん(ですの)だー」」


 そう、二人揃って五歳程まで若返ってしまっているのだった。

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