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02.これからの指針

02.『これからの指針』


落ちた場所からぐるりと周りを見渡せば後ろは落ちてきた山。

眼前は鬱蒼と茂る森。後ろに戻ることは出来ないから前進あるのみ。

ただ森の中にまでは月明かりも入り込まない。


「光源展開」


頭上に光の球体を発生させて周りを照らす。

これによって半径10m程度の視界の確保ができる。

仮にこの光で寄ってくる敵がいたとしても撃退させるだけの自信はある。


「まずはどこかの街に寄りたいけど、この格好は不味いかな」


全身は包帯まみれで、服装は布に穴を空けた程度のみすぼらしいもの。

街に入っても乞食にしか見られないだろう。

せめてまともな服を確保したいが如何せん手持ちが全くない状態。

工面しようにもやっぱり格好の問題が出てくる。見た目がやはり第一印象を決めるのだから。


「とにかく進むしかないかな」


地理も何もないのだから真っ直ぐに突き進んでいくしかない。

あとのことは無事に街に着いたら考えればいい。

ただ歩くのにもすぐに限界が来た。原因は分かり切っている。


「やっぱり靴がないと厳しいか」


素足で歩くのはやっぱり痛い。森の中といっても小石が落ちていて刺さる。

木の根に足を引っ掛ければ痛いどころか打撲するだろう。

衣食住での衣のところですでに躓いてしまっている。


「倉庫が前世のままだったら良かったのに」


異空間収納魔法、通称『倉庫』各種アイテム等を的確に選り分け格納する便利魔法。

前世からの引き継ぎのままなら衣服、食材、武器、防具、素材など網羅されている。

ただそんな都合のいい話があるはずがないと思っている。

今使えば何も入っていない空のはず。


「一応使えるかどうか確認してみようかな……はぁ?」


使えるかどうかは倉庫の中身をチェックできるリスト表を表示させればすぐに分かる。

だけど表示したリスト表にはあり得ない物が格納されていた。

それは前世からの素材など。


「何で?」


あまりにもご都合主義すぎる。

確かにこれで衣食住の衣食が確保できた。それは結構、大いに結構。

だけど納得はできない。

相続手続きなんてしていないし、転生で全てを引き継いでいる時点でおかしい。

転生しましたといった人を見たことも聞いたこともないが明らかに異常じゃないかな。

でもこれも今考えても分かることじゃないし、永遠に分からないかもしれない。

なら早々に諦めるのも最善。はい、次。


「今まで来ていたのはサイズ的にやっぱり無理か。孤児院に納める予定のものが入っていて助かったかな」


黒のTシャツ、ジーンズ、スニーカーを装備。今の文化形態がどうなっているか分からないけど見た目は何とかなった。

あとは素材とか売れば問題ないけど。


「下手に売って大騒ぎになっても嫌だなぁ」


武器は大体魔法改造しているために通常の武器とは規格が違いすぎる。

防具もやっぱり同じ。色々と実験的な意味合いでやっていたのが痛い。

素材も魔石とか高純度のものが揃っているがこれも不味い気がする。

純度が低いものは大体捨てていた。当時は持っていても邪魔だったから。


「五級以上のものは珍品扱いかもしれない。となるとやっぱり現地調達して市場動向を把握しておくしかないか」


魔石は基本的に10段階で分かれている。混合魔石は属性が混ざり合っていてレアものだからその限りではない。

ただ今の時代にどこまでのものがどれだけ出回っているのかが分からないから売れない。

無用な混乱は避けたい。というか目立ちたくない。

やっぱりあれから何年経っているのかが一番の問題かな。


「取り敢えず適当に狩って魔石集めでもしよ」


倉庫から一番目立たない装飾の短剣を取り出す。扱いは得意ではないが仮に誰かに見られた時に言い訳に使えるだろう。

魔法がどういった扱いになっているかも分からない。

本当に何が珍しいのか何が当たり前なのか分からない。凄いやり辛い。


「今考えても仕方ないんだけどね。さて生体感知拡大、浮遊魔法構築」


ソナーみたいな感じで魔力を放出して帰ってきた魔力反応で頭の中に地図を構築していく。

その中でも獣、魔獣を点として記し把握。ついでに村や街がどのあたりにあるのかも検索する。


「勘のいい人なら違和感感じたかな。まぁ今は関係ないか」


魔力を放出したのだから魔法に適性があり、ある程度の練度で扱える人なら何かあると感じたかもしれない。

ただ場所がこんな森の中だから疑問に思う程度だろう。

取り敢えず一番近い魔物の反応があった場所へ向かうとしよう。

地面から30㎝ほど浮かんだ状態から一気に加速する。

木々の間を縫うように進み、目標を補足。


「熊型か。魔刃構築」


体長3m位の魔獣を発見と同時に魔力による刃を練り上げる。長さは大体1m位。

魔力で作ったから重さがない。今の身体でも容易に扱える。

速度そのままに気づかれる前に通り過ぎながら胴体を一刀両断。

急停止からの反転で状態を確認。血飛沫が凄いことになっている。


「魔法の構築はやっぱり問題なしか。ただ浮遊系での疲労度が無視できないかな」


農奴だったからかある程度の体力はある。だけど成長が小学生並であるのは変わらない。

加速による身体への負担、高速移動による神経の疲れ。

そういったのが疲労となって身体へと押し寄せてくる。


「文化把握、稼ぐ方法、あとは体力づくり、武道も習得しようかな」


最初の把握が最重要だけど、残り二つも重要。

前世は武道関係でかなり後れを取っていた自覚がある。

体力づくりと同時進行できる点もメリットかな。


「さて血飛沫も収まったし魔石は……、そういえば自動回収になってた」


倉庫機能の自動回収。倒した魔物の魔石を強制的に回収してくれる。

大規模魔法を使った時には便利だけど、周りから凄い目で見られるのが。

パーティ組んでいる時は特にだったかな。あとで機能を切っておこう。


「血の匂いでやっぱり集まってきたか」


反応は6つ。半径100m位で感知系術式を展開していたからすぐに把握できる。

大きさとか個体の強さとかは判別できないけど、かなり便利な魔法の一つ。

鼻のいい魔物だとしたら狼系統だと思うけど。


「面倒だからさっさと終わらせますか。風刃待機、……発動」


熊の魔獣に群がってきたところを複数の風の刃で散らしていく。もちろん即死。

まだ自動回収は切っていないので魔石はすぐに倉庫に収まっている。

純度は熊が8級、狼が9級と低純度魔石だった。


「やっぱり一般的な所はこの程度か。あとはこれを持って街に行こうかな」


だけど街まではここから結構と遠い。歩いてだと5日くらい掛かるだろうか。

浮遊を強化して飛行にすれば1日以内で着くであろうが身体が持たないだろう。

面倒であるが道があるところまで浮遊で移動して、そこからは地道に歩いていくしかない。

その際に通り掛かった人達の観察を行って服装のチェック。

今の格好が今の時代に合っている自信はハッキリ言って無い。


「何事もやっぱり情報が大切。常識を身に着けないとただの変人だよね」


そういった巣窟で育ったのだから一番身に染みている。

ただ自分自身も大概常識外れだったのを自覚している。何よりあの戦争で一番の規格外だったのだから。

あの戦争、私がいなかったら負けていたんじゃないかな。

その報酬が死刑だったのだから割に合わないにもほどがある。


「取り敢えず出発!」


殺害現場から浮遊魔法で離れる。目的地は街の方角。

不安もあるが、知らない場所への好奇心もある。

知らないことへの探求心は魔女にとって娯楽である。

ちなみに魔力放出により国からこの森への調査任務が下ったのは魔女は知らない。

常識外れの行動がたった一晩で影響を与えた一幕といえる。


一人称なのか、三人称なのか分からなくなってきた。

以前書いていた時は全部三人称だった影響かもしれないけど。

やっぱり難しい。

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