01.転生後でもやっぱり
01.『転生後でもやっぱり』
意識が沈んで、また浮かび上がってきた。
火刑によって焼死したはずなのに、なんで意識が戻ってきているのか。
身体の感覚もどこか違和感を感じる。焼けたんだから当たり前だと思うけど。
「おい、今動かなかったか?」
「本当に?」
何処となく残念そうに聞こえる男女の声。
罪人が生き返ったのであれば残念ではなく恐怖ではないだろうか。
魔女として復讐されると考えれば辻褄が合うのだがどうもそうではないらしい。
「・・・此処は?」
目に飛び込んできたのは木の板。
家自体が木製だろう、天井はさほど高さがあるわけでもない。
周りを見渡しても必要最低限の生活用品があるだけ。
庶民というより農奴といったほうがしっくり来る生活レベルだろう。
「何で生きているんだよ・・・」
「あのまま死んでくれれば良かったのに」
酷い言われようだ。だけど本音なのだろう。
明らかにその表情は残念そうに歪められている。
何かしら理由があって私を殺そうとしたのだろうか。
(「じゃあ何で治療なんてしてあるんだろう」)
身体には包帯が所狭しと巻かれ、一種のミイラ状態となっている。
動かしにくくて仕方ないが、治療されている意味が分からない。
死んでほしいのなら治療せずにほったらかしていれば良かったはず。
風聞でも気にしているのだろうか。
あと気になった点なのだが。
(「身体が縮んでいる?」)
身体の状態を確かめたときに本来の身長よりかなり小さくなっている。
仮にも20代後半までの人生を生きてきたのだから小学校低学年まで縮んでいるのはおかしい。
何より死んだ感覚があるのに、生きている時点で矛盾がある。
(「まさか本当に輪廻転生したとでもいうの・・・」)
可能性の話ならば一番あり得る仮説。これは魔法によるものでないのだから検知もできない。
魔法で来世まで操作できるのであればそれは奇跡でなくなる。
奇跡を起こすための魔法だが、そこまでできる可能性するら確立されてはいないはずなのだから。
「もう一度捨ててくるか」
「今度は戻って来れないほどの谷に落としてきなさいよ」
「近場は駄目だな、少し山の方に入るか」
物騒な話だ。推測だが一度私を谷に落としたが自力で帰ってきたのだろう。
この二人にとっては予想外だったからこそ風聞を気にして治療を行った。
ただ窓から見える今の時間は夜。
周りに気づかれないで再度殺す算段を組める。
「今日は月も出ている。これなら山まで明かりはいらないだろう」
ランタン片手に私を肩に担ぐ男。また死ぬのは勘弁してほしい。
かといって今の私の体格で暴れても勝てるはずもないから抵抗しても無駄だろう。
魔法が使えるかどうかチェックするためにも今は大人しくしていよう。
(「魔力循環チェック、・・・オールクリア。貯蔵魔力は生前と同じ。使用に関しては何も問題なし」)
あの化け物スペックが転生しても健在とはこれ如何に。
でもあまり大きな術式を行使すると今の未熟な身体に悪影響を与える可能性が高すぎる。
使った時の反動が大きくて、最悪身体が弾けてしまうかもしれない。
魔法の反動で死ぬなんて、一度死んでいるとしても魔法使いとしてのプライドが許さない。
というか魔法を使えるのならば簡単に逃げれる。
(「治癒術式展開して傷を治して、何でこうなっているのか理由でも聞いてみよう」)
身体を慣らしていくためにもゆっくりと回復させていく。
急速な回復でもいいにだが、身体の感覚が以前と違うために確認の意味も込められている。
包帯の下だからこそ男には気づかれないし、気づかれるミスも犯さない。
「何で私は捨てられるのでしょう?」
「養うだけの食糧が確保できないからだ。だから許せ」
つまり余計な食い扶持を養うだけの生活能力はないということか。
確かに担がれながら見た村は一般的な村よりも疲弊していると思える。
畑にも元気はないし、夜とはいえあまりにも寂しい雰囲気に包まれていた。
恐らくこの方法も一般的。だからこそ男にも罪の意識はあまりないのだろう。
ただ戦時中にしてもまだマシな生活レベルだったはず。違和感がある。
「他に子供でも?」
「お前は自分の姉妹のことも覚えていないのか?」
この身体の持ち主の記憶になるだろう。それに関して一切持ち合わせていない。
もしかしたら家に辿り着いた時に持ち主は力尽き、そこに私が入り込んだ。
理屈とかはさっぱり分からないが、そうなのだろうと納得しておく。
考えても無駄なことは時間を無駄にすることと同じだ。
「すみません。前回ので記憶が飛んでるみたいです」
「嘘をついて同情を引こうとしても無駄だからな」
確かに嘘といえば嘘になるが。本当のことをいっても嘘になるだろう。
最初から信じようとしない人に何を言ったところで全部嘘になるのだから。
後は特に会話もなく男、いや父親によって山を登っていく。
空を見上げれば満点の星空が空を埋め尽くしている。
(「星の位置は記憶と相違なし。つまり異世界に転生とかはあり得ない」)
だが何年経っているのかは分からない。転生してから数時間しか経っておらず今の状況では調べることもできない。
過去という可能性もあるが、それは考えても意味はない。
なら未来と考えた方がまだ建設的かもしれない。
「さて到着だ。最後に何か親に言うことはあるか?」
山頂というわけではないが、中腹あたりまでは来ただろうか。
休みなしでここまで登ってきたのだから、農奴として体力はあるのだろう。
担がれたままなのだから、このまま投げ捨てるつもりか。
「取り敢えず下ろしてください。自分の足で立てるから」
「逃げても無駄だぞ」
土地勘があるわけでないのだから、逃げるなんて選択肢はない。
何より重症の振りもしないといけないのだから逃げるつもりはない。今は。
「別に貴方の元に戻らなければいいだけでは?」
「あ、あぁ。そうだが、何を信じろというんだ」
ふらつきながらも立っている私の姿を見て少しは動揺しているのだろう。
怪我の状態を知っていたのだから不気味に感じてるというところかな。
すでに全快しているんだけど。
「なら行動で示してあげます。それではさようなら」
「おい!」
落とされる前に自分から崖先へと走り、盛大にジャンプする。
意外な行動に父親だった男も焦ったのだろう。
だけど私が後ろ髪を引かれることはない。言ってしまえば赤の他人なのだから。
また殺されるのも勘弁願いたいしね。
「術式展開、重力減衰、風量調整」
高さは100m前後、助走をつけてのジャンプだったから障害物に当たることもなく地面に真っ逆さま。
だけど重力を少なくしているので地面に叩き付けられることもなく、軽やかに地面に着地。
あとはカモフラージュに少しばかり砂煙を上げておいた。
あの村に帰らなければ生きているとも思われないだろう。常識的に考えれば。
「さてと、この後はどうするかな」
まずはこの世界について知らないといけない。
何をするにしても情報が無ければ何もできない。
言語体系も分からない、文字も知らない、数字についてもどうなっているのか。
一般常識が全くない状態なのだから、まずはそこからだろう。
「色々とやらないといけないことは多いかな」
頭を抱えるような状態だけど笑みが零れる。
何物にも縛られず、自分の考えで物事は進んでいく。
以前の自分には考えられないこと。縛られ、戦い、挙句は殺される。
あの時は抵抗しても結末が変わらないと考えていたから、全て受け入れてしまった。
だけど今は違う。今世は自分を通してみようと思う。
それで世界を敵に回してしまっても自分のせいなのだからいいだろう。
あるがままに、自分らしく生きてみよう。
「人生の再出発。悪くはないかな」
一歩踏み出し、新たな門出とする。
自分の為に、自分の矜持のために、進む。
魔女として、1人の人間として新たに歩む。




