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21.魔女、宣誓する

21.『魔女、宣誓する』



捕縛の陣、その名の通り陣の中にいる者達の自由を奪うもの。ただ足が陣に触れていることが効果範囲になっているので外から手を伸ばすなりして相手に触れることは出来る。

つまり私達は王の御前で捕まっているという事。相手にしてみればね。


「アリア、何とかなる?」


「余裕。というか何処が精緻に刻んでいるのか分からないよ」


私から見たら意味のない式が散見している。これとこれは全く関係ないだろうしお互いに干渉して効果を落としている。中身が理解できるのだから解除する方法だって分かっている。

ただ今回は相手が見て簡単に陣が解かれたと分かり易い方法を取るよ。いつまでもあの優越の表情を見ているのは不快だからね。


少し足を上げて陣に踏みつける。ただそれだけでカンと軽い音と共に陣が砕け散った。


「は?」


全員が呆然としている。そりゃそうよね。本来なら陣の魔力が切れるまで機能し続けるのにそれが突如として破壊されたのだから。でもこの程度の稚拙な陣なんて魔力を少々流し込めば自壊のだから。

流し方にコツはあるけどね。


「さてこれで私達の拘束は無くなったのけど、次は何をするのかな?」


「こ、近衛兵よ!その者達を捕えよ!」


騎士団総長の言葉を受けて控えていた兵達が私達に殺到してきた。数は12人だから私達の3倍、更にこちらは王城に入る際に武器を預けていて丸腰。あとは守るべき人物が2人と不利な点ばかり。

近衛兵が名前の通り有能であったのなら苦戦は必至だろうけど、こちらに殺到してきている時点でお察しかな。


「普通なら魔術援護とか考えるんだけどね」


全員前衛とか馬鹿なのかな。あぁ、馬鹿な貴族が地位を買ったのか。それに私に対する情報が不足してないかな。武器を取られた程度で私の戦闘能力が減るわけないじゃない。

取り敢えず遠隔剣を12本生成。この時点で馬鹿兵の突撃が止まった。丸腰だと思って調子に乗っていたんだろうね。うん、駄目だこれは。


「サーフィリア可哀そうに。中の立て直しが凄い大変そうだね」


「お姉様、心中お察し致します」


私とオーフィリアが未来を想像して多忙を極めそうな姫様に同情する。悪性の腫瘍の排除に法案の見直し、兵の再編とやることは目白押し。下手すれば寝ている暇すら無さそう。

溜息と同時に剣を放てば馬鹿共が悲鳴を上げて逃げ出していく。王様を守る気が全くない行動に私達は呆れ、騎士団総長は怒声を喚き散らす。


「ならば私が直接相手をしてくれる。貴様も戦士ならば己が身のみで正々堂々と勝負致せ!」


つまり魔法を使わずに武器と鎧で完全武装している相手に素手で挑めと言いますか。そっちの都合に合わせる理由なんてこちらはこれっぽちもないんだけど。

戦争の時もそんなことを言うのかな?いや、戦争になれば真っ先に逃げ出すだろうね。


「知らん。吹っ飛べ」


指を鳴らすと駆けてきた騎士団総長の足元が爆ぜた。空中に投げ出されて私の方に突っ込んできた騎士団総長をその場から動かずに顔面を蹴り飛ばし、更に吹っ飛ばす。

いい感じに入ったね。何か血とか歯とかが飛んでたけどきっと気のせいだね。もっと酷くないとこっちは満足しないというのに。


「動くな!動けばここにいる全員がお前たちに魔術を放つぞ!」


今度は魔術師総長か。ちゃっかりこの場の人達を協力させるとは先程の騎士団総長よりも考えているかな。ちなみにその中には王様の姿もあるのだからお前何をしているのと思ってしまった。

もう何度目かの溜息を吐きながら指で撃ってこいと合図しても、勝利の笑みを浮かべている奴らは1人たりとも意味を理解していない。頭、痛いなぁ。


「さっさと撃ってこい。お前たちの魔術なんて脅威じゃないんだから」


もうきっちり完璧に防ぎきってやるからさっさと撃ってこいというのに。ちなみにオーフィリアとカスミは私の後ろから動いていないというか私を率先として盾にしている。

その行動に問題も文句もないんだけど何かを言いたくなってくる。


「いいのか!?撃つぞ!降伏するのならば今なのだぞ!撃てばお前どころか後ろの奴らも只では済まないんだぞ!」


「別に遠慮せずにどうぞどうぞ。手加減など一切不要で全力全開でぶっ放してください」


「いえ、アリア。仮にもここに集まったのは上に立つ者達。中にはそれなりの腕前の方もいるのですよ。幾ら貴方でも全部を防ぎきるなんて」


流石に私の発言にオーフィリアが顔を蒼くして諌めてくる。といっても今更発言を撤回しても格好悪いしこんな有象無象の輩共の全力を防げなくては発破をかけた意味がない。

こいつらの無駄に高いプライドと自尊心を砕かないと私の腹の虫が納まらないのだから。


「皆の者、撃て!」


いえーい、王様がノリノリに号令を掛けてくれた。といっても上機嫌ではなく今にも頭の血管が切れそうなほど顔を真っ赤にして激怒しているといった方が正しいね。

近衛兵も攻撃に参加しているから総勢21名から同時に爆炎系魔術が私達に殺到してきた。一応ここは室内なんだからそんなもの使っていたら火事どころの騒ぎじゃないのね。

取り敢えず完璧に防ぎますか。燃えたりしたら後々面倒だしね。


「防壁展開。冷却による燃焼の被害拡大を同時に処理」


魔法による対魔力障壁によって魔術が私達に届くことはなかった。防壁に当たって飛び散った炎は同時に展開していた冷却によって燃え移る前に沈下して見せたのだから放った本人達は度肝を抜かれていた。

私相手に魔力による力比べなんて、私のことを知っている者達にとっては愚の骨頂だと言うだろう。それだけ桁違いの力を持っているのだから。


「証明終了っと。オーフィリア、これで納得したかな。私の言葉の意味を」


「何をしても無駄というのがよく分かったわ」


納得はしていないね、絶対に。展開速度が異常で同時展開にしても広範囲をカバーしたことになるから今の技術しか知らない人達にとっては化け物にしか見えないだろうね。

私も久しぶりに結構力を使っているから力加減が難しいね。


「それにアリア。その瞳は何ですの?金色に変わっていますが」


「魔力の使用量が一定以上になると変わるんだよね。予測だと過去に使われた魔導書が関係あるとは思うんだけど」


「また凄い物が出てきたわね。というか待って。貴方、今までその一定量にすら届いてすらいなかったというの!?」


「意外とこの剣とか燃費がいいんだよねぇ。省エネ省エネ」


愕然としている所悪いんだけど、まだ状況は落ち着いていないよ。魔術を防ぎはしたけどこれからの動きがどちらに転ぶか不明だしね。場内に轟くだけの爆音が鳴ったのだから誰かしら駆けつける可能性がある。

敵なのか味方なのか分からないけど、今すぐに愚王をぶっ飛ばすと明らかにこちらが不利になりそう。とにかく今は警戒することしか出来ないけど。

というかその愚王が私のことをガン見しているんだけど何でだろう?


「金色の瞳に先程の魔術。いや、魔法か。貴様!災厄の魔女の末裔か!?」


「おぉ、流石に王家には私に関する伝承位残っていたか。姫様達が知らなかったのは秘匿されていたか、やっぱり歴史の表舞台に出すことが出来なかったかということかな」


「末裔までも我が王国を滅ぼすつもりか!?」


「いや王国を滅ぼしたことなんてないから。それにこの国はお前の物じゃないと何回言えば分かるかな?」


ワザとらしく一歩踏み出す際に魔力が波紋のように広がるように使ってみせると立っている者達が一歩後ずさった。王様に至っては玉座に座っていて後ろに下がれないのに仰け反っていた。

あはは、災厄の魔女の名は伊達じゃないね。思いっきり風評被害だけど。


「何事ですか!?」


むっ、意外と早い登場だね。騎士団団長様の登場だ。第一騎士団長に第二騎士団長、あとは魔術師ぽい人が入ってきたけど、さてどうしようか。流石に問答無用でぶっ飛ばすわけにもいかない。

何せこの人達は愚王と直接的な関係はないんだから。


「魔女だ!反逆者だ!何としてでも殺せ!」


愚王の慌てぷりが滑稽だね。ザッカスとアレスは私の姿と瞳を見て動きを止めていているけど魔術師の人は臨戦態勢を整えているね。二人が動きを止めたのは見知った人物だからだろう。

全く知らない人間だったのならすぐにでも斬りかかってきただろうね。


「二人とも久しぶり。それで愚王の言葉通りに私を殺す?」


「いや、だが」


「それが王命であるのならば騎士として従うのが道理だ」


ザッカスは慌てたように否定しようとしているけど、アレスはやっぱり真面目なようで剣を抜いて構えた。後ろにいる魔術師もアレスに賛成のようですでにいつでも魔術を放てる状態を保っている。

二人を援護する気だろうけど、私だってそう簡単に殺されるつもりはない。


「何をしているザッカス。いかに彼女でも我々が勝てぬはずが無かろう。仮にも私は彼女に勝っているのだぞ」


「馬鹿言うな!お前と戦った時、あいつは全く本気じゃなかったんだぞ!あいつの本領は魔術戦だぞ!」


そういえばザッカスには私の戦いを間近で見られた時があったっけ。包囲されている騎士団を救うために私とリジェネが本気で魔物を駆逐していった幼少の頃の話だけど。

如何に彼らが魔剣を所持していたとしても負ける気はしない。竜王とバトルしていたから近接に持って来られる前に叩く術は知っている。あとは最低限の近接も今世では培ったから最悪の状況にも対応してみせる。


「こっちにだってサリーがいるんだ!なら人数的にもこちらが有利なのは変わらん!行くぞ!」


「だぁぁ、ちくしょう!アリア、手加減しろよ!」


「無理。あっ、二人は私の横に移動してね。巻き込んだら大変だから」


ザッカスの願いを無情に切り捨ててカスミとオーフィリアを横に誘導しておく。これで射線の確保はOK、愚王達に関してはまだ防壁を展開しているから大丈夫だろう。

それじゃ第二戦といきますか。速攻で無効化する!


「雷、奔れ」


電流を地面に流して感電を狙ったけど2人は跳んで避けた。魔術師は咄嗟に障壁を展開して防いで見せたのだから後ろで見ている馬鹿共よりよっぽど優秀だよ。

だけど上に逃げたんじゃ魔術を使わない限り次は避けれないでしょ。


「魔よ、撃ち落とせ」


魔弾による斉射を二人にまとめて叩き込む。


「氷の礫よ、避けえぬ弾丸となりて敵を撃ち倒せ。アイスブリット!」


「おぉ、流石は王城にいる魔術師だね。二重駆動を使えるなんて」


魔弾を全部とはいえないけど殆ど相殺させたんだから本当に優秀だね。でもこちらの強みは展開の速さ。一々溜めの必要がないから魔法の連射が可能なんだ。魔術とはその点が違いすぎる。


「風よ、吹き荒れよ」


「なっ、早すぎる!?」


魔術師が驚きの声を上げているけどこれを防ぐ術はない。魔術は呼吸と同じで一度に取り込める魔素が決まっているために一度放ったら息継ぎが必要となる。

だから同時起動以外に魔術を連射することが不可能となっている。二重駆動を遅延させて連射みたいなことが出来るけど所詮はその程度までが限界。

突風によってまだ空中にいる二人を吹っ飛ばして魔術師の所まで後退させる。でもこれだけだと二人はまた向かってくるだろう。だからもう一手。


「地よ、絡み付け」


王城を構成している石材を変化させて三人の身体に纏わりつかせる。三人が慌てて絡みつく石材を弾こうとしているけど弾いた端から石材が来るものだから終いには顔以外を石材で埋め尽くされてしまう。

これでザッカスとアレスは無効化完了。魔術師は顔を出しているからまだ魔術を放つことが出来るだろうけど今までの攻防で力量差を理解したのだから早々手を打っては来ないだろう。


「無力化完了っと。まっ、こんなものだろうね」


「この役立たず共が!」


あらぁ、愚王がブチ切れ状態だよ。本当に不快だね、自分じゃ何もしないのに人のことだけを貶してくる。苛々する、あぁ、苛々する。本当にどうしようもない。

これじゃ私のような人物が増えてしまう。自分の意に従わない者は罪を作り上げて処分する。そんなどうしようもないことが再び起きてしまう。それだけは駄目だ。

前世のようにもう我慢する必要はない。何せあの誓いは前世のもの。今世の誓いは別にある。


だから私は宣言する。前世での後悔を込めて、二度と魔女の名を悪用させないために。


「魔女ジャンヌ・ダルクが宣言する!理不尽な罪を、理不尽なる暴力を私は許さない!お前がそこに座っている限り私はお前の脅威となり続ける!」


権力を使っての横暴、民衆を煽っての迫害、賢者の手記を読んで私が死んでからの出来事を知った。魔女裁判という名の迫害が起こり、魔女の疑いがあるものは処刑されていた。

少し魔法が使えるだけで死んでいった者もいたし、全く関係ないのに罪を着せられて殺された者もいた。人間も多種族も関係なく続いてた迫害は多種族の各国が大暴れするまで続いていたらしい。

原因は王国が関係していたが私の名が使われていたのだから、私にも関係あること。だから私の罪でもある。


「さぁ、返事は!」


「わ、我は譲らぬ!」


「そう、じゃあ最初の私からのプレゼントよ。しっかり受け取りなさい」


遠隔剣を一本作り出し王の真上から突き落とす。本気で刺すつもりはない。これはあくまで脅しであり、これから馬鹿なことをやるごとに私は攻撃するという意思表示。

ただ王の反応は違った。慌てて玉座から転がり落ちて降ってきた剣を避けようと必死だ。本当なら寸止めするとつもりだったけど剣をそのまま玉座に突き刺してやった。


「そういえば愚王。私は多種族との親交もある程度あるんだけど、言いたいことは分かるね?」


「こ、この王国へ侵攻させるつもりか!?」


「別に滅ぼすつもりじゃない。ただ王城を占拠すること位は私一人でも出来るし、多種族から支援して貰えればその後も安泰だと言いたいだけよ。それでもまだ玉座にしがみついているつもり?」


「あ、あが」


遂に思考能力すらも破綻してきたかな。ただ明らかにこの愚王がこのままこの国を支配し続けるのは悪手だ。このまま殺すのもありだけどちょっと目撃者が増えすぎた。

このままだと私は国王暗殺の罪が付いてしまう。付いたところで旅にでも出ればいいだけなんだけど、リジェネにも迷惑を掛けてしまうのだけは困る。


「お前らも逃げようとするな。この場にいる時点で同罪なんだから大人しく動くな」


隙を見て逃げようとしている他の奴らに釘を刺しておく。どうせこの後、愚王と一緒に引っ張り回していくつもりだから再び集めるのが面倒になってしまう。

さて取り敢えずこいつら全員ふん縛って拘束しておこうか。その後はサーフィリアにでも預けよう。あとサーフィリアを説得して革命でも起こさせよう。


「アリア、待ってください」


「やっと来たのね、サーフィリア。もうちょっとでこいつら殺す所だったよ」


「そんな面倒なことを貴方がやらないと信じていました。それにこれでも急いできたんですよ」


実は王城に向かう前にサーフィリアに手紙を送っておいた。さっさと王城に戻ってこないと私が革命を起こすぞとね。どうやって送ったかというと魔法でちょちょいとね。

おかげで間に合ったというところかな。いや、愚王が恐慌状態だから間に合ったともいえないか。


「それじゃあとは任せた。罪状は選り取り見取りだし粛清はし易いでしょ」


「えぇ、お陰様で。いかに国王であろうとも閣僚を管理できていない時点で王座を追われます。ましてや国力を落とすような愚行を行っていたのですから猶更です」


「なら安心かな。そうだ、友人として支援してあげようか。各多種族との交渉とかも立ち会うよ。ちょっと野暮用で一国と対談することにもなったし」


「それは助かります。ですが良かったのですか?以前の名を使っても」


「宣誓する場合は魔女として確固たる名を使う覚悟だったから問題はないよ。何より他の国への牽制ともなるから」


魔女がこの王国にいる。それだけで他の国の対応は変わるはず。特にエルフ、獣人、竜人、ドワーフ、魔族にとっては牽制ではなく別の意味に取ってくれる可能性だってある。

魔族にはすでに伝わっているから友好の意味となるかもしれない。


「貴方の覚悟、確かに受け取りました。その覚悟に見合うだけの働きをすると誓いましょう、友人として」


「信じるよ、友人として。それじゃカスミ、帰ろうか」


国や姫として誓うのではなく、一個人として友人として誓ってくれるのだからサーフィリアも私のことを分かっている。国として誓うことは個人ではなく、あくまで地位での約束。

周りの反応次第でその誓いは容易に守れない状態に追い込まれることだってあるのだから。だけど個人としてなら無理矢理押し込むことだって出来る。

だからこそ私はこの場を任せることが出来る。


出来る事ならこの国が種族の壁さえも超えた自由国家となることを祈るよ。

これで取り敢えず一区切りといった所でしょうか。ストックも切れたし。

ストックが無いなら書けばいいじゃないかという話ですが、しょうもなく別作品書いて間に合わないと思います。

1話だけ書いて概要書いて位しかしていないのでそんなに時間かかることでもないんですけど思いついたらひとまず書きたくなるのです。ごめんなさい。

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