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19.異世界交流、風呂で

19.『異世界交流、風呂で』



結局昨日は軽食を食べてカスミが再び眠ったから話はあれで終わった。私はミーシャさんからの忠告について考えていて眠らずに色々と対策を講じていた。

対策といっても考えた内容は殆ど力技ばかりだから何とも言えないんだけどね。私が一番疑っているは王、次点でその側近達。

王城からの招集がカスミに届いた時点で確定になるだろうけど、カスミ一人だけを行かせる気はない。もちろん私も同行する。

異世界の住人を権力者の元に一人で行かせたら碌なことにならないのは簡単に想像できる。幾ら警戒していても知らないことに対して対抗できるはずがない。


「あっ、おはようございます。アリアさん」


「おはようカスミ。取り敢えず顔でも洗ってこようか」


寝起きはいいようだね。起きて早々に混乱していないのも良いかな。今日はある意味で私にとってもイベントといっても過言ではないことが起こるだろう。

国に喧嘩を売る。恐らく早かれ遅かれ王との面談はあり得たことだろうから構わないけど愚王だった場合は国を出ることも考えている。姫達が何かしら言ってきそうだけど知ったことじゃない。


「浴槽の準備は整っております」


一階に降りたらミーシャさんに声を掛けられた。そういえば私は兎も角カスミは昨日身体を洗っていなかったことを忘れていた。一応王城に赴くかもしれないのにこれは不味いだろう。

それにカスミも気づいたのか顔を赤くしているから恥ずかしく感じたんだろうね。そこはやっぱり女の子か。でも着替えはどうしようか。


「下着の類も準備はしておりますが、申し訳ありませんが衣類の方はそのままでお願い致します」


サイズはどうやって図ったんだろう。そこが凄い気になるんだけど、ミーシャさんだからで納得できてしまう自分もおかしい。衣類は多分好みが分からなかっただけだと思うけど。

適当で構わないのだったからこの人はそこまで準備できるだろうね。何か昨日からミーシャさんのスペックが凄いことに気づかされてしまう。本当にメイドとしては達人レベルだね。

さて、折角用意してくれたんだから入らないと失礼だよね。というわけで私も入ろう。


「さぁ、さっさと脱ごう」


「アリアさんも一緒に入るんですか!?」


「折角だからね。ここは裸の付き合いと行こうじゃないか」


「いえ、でも」


「はいはい、私は何も気にしないから早くしようね」


昨日の話から大体予想できている。だからその確認も込めて一緒に入ろうとしているんだよ。私の意図に気づいたのだろう。カスミはゆっくりと衣服を脱いでいくとそれが露わとなっていく。

全身に刻まれた殴打の数々。やっぱりこういうのは見ていて不快でしかない。最近付けられたであろう青痣や消えない火傷の痕。よくこれだけのことをされていて今まで我慢できていたのか不思議でならない。

前世の私も相当に変な道徳観念を持っていたが、この子の我慢強さもある意味で異常だね。


「あの、そんなにじっと見られていると恥ずかしいんですけど」


「いやぁ、スタイルいいなぁと見惚れていたんだよ」


私がお道化てみせるとクスリと笑ってくれた。慣れているというよりも諦めている感じかな。最近のものならちゃんとした治療をすれば消えるかもしれないけど昔の物は無理だろう。

恐らくこちらの魔術でも跡形もなく消すことは出来ないだろう。やれるとしたら聖女クラスの破格の能力を要求されるだろうね。それだけ完全回復という分野は人間を辞めていないとできない。

その人間を辞めていると自覚している私だけど。


「ちょっとこっちに来て。それ全部消すから」


「じゃあお願いします」


普通に見ていても気分が悪くなってくる。実の娘を意味もなく殴るとか私は理解できないし、こちらの世界でなら要らない子ならさっさと殺してしまう。

確かに暴力を快楽と感じている人種はこの世界にもいるけど、そういった者達の末路は決まっている。もし許されているのなら私が許さない。


「引き攣りとか気持ち悪いさがあるかもしれないけどちょっと我慢してね」


「分かりました」


「それじゃ始めるよ。治療開始」


まずは身体をくまなくスキャン。見た目以外にも中身にも異常がないか見逃すことの無いように調べていく。そしてやはりというべきか内臓系にもダメージがある。

これだけ殴られているのだから当然だと思うけど、もし気づくことが無ければこの子の命なんて長くはなかっただろう。本当にその男を殴りたいと思える。

まずは中から治そう。次に外傷を治していって、古傷は最後だね。


「何をしているんだ!」


エリスが脱衣所に乱入してきた。そういえば魔力ダダ漏れの状態だから寮内にいる人達からしたら唐突にあり得ない魔力が脱衣所から発生したと感じただろうね。

寮外には結界を構築しているから察知されることはないだろうけど、異常事態に起きてきた人達が集まりだしたよ。


「治療中。あと男子は近づけさせないでよ」


私もカスミも現在真っ裸だからとてもじゃないけど男子などに見せれる状態じゃない。それでも見ようとしてくるなら有無を言わさず吹っ飛ばすか目つぶしを食らわせてやる。

私とエリスがいてそれをやろうとする根性のある男子がこの寮にいるはずもいないだろうが。以前はやろうとしてその前にミーシャさんが潰していた。


「もうちょっとで終わるから」


「もうちょっとというかそれだけの魔力で何をしようとしているんだ?」


「傷の治療よ。それと望まぬ傷跡の消去だよ」


「古傷すらも治すとか本当にアリアは何者なんだ?」


「ちょっとね。はい、治療完了。それじゃ入ろうか」


カスミの身体も綺麗になった。色白で日焼けの痕もないほどに綺麗さっぱり消してしまったからやりすぎた感があるけどカスミも信じられない顔をしつつも嬉しそうだから万事OKだろう。

ついでにエリスも一緒に入るよう勧めたら朝練帰りだから丁度良かったと了承してくれた。無駄に広いから三人でも余裕では入れるからね。


「しかし異世界とはいっても私達と姿は変わらないのだな」


「そうじゃないと交流どころじゃないからね。私にとってはあまり動揺しているように見えないのが不思議かな」


「私の世界ではこういった異世界への召喚とかの物語が豊富にありますのでそのおかげですね。元の世界への未練もあまりないですから」


これでおどろおどろしい姿だったら私でも救おうかどうか悩むよ。見た目は人間で、綺麗な少女となっていたからこそ救う価値がある、というわけではないよ。

実際性格の悪い者は己を過信している者だったら流石に救わないよ。勝手にしてください。


「不思議な世界だな。それに全く知らない世界を題材に物語を描くなど想像力が豊かというか何というか」


「あはは、私のいた国だとそういった想像力が世界有数で高いと思います。それが産業になっていますからね」


「想像できないな」


私にも想像できないな。想像力でお金を稼ぐとかこっちの世界だと不可能なのに、よその世界は随分と変わった文化形態だな。凄い行ってみたいと思うよ。

だってそういった場所なら色々と刺激的で創作意欲が枠というもの。技術発展はそういった発想力がものをいうからね。


「でも私はまだこちらの文化とか知らないのですが、どの世程度なのでしょうか?」


「王政で生活的には不自由しない程度かな。魔導具とかで生活レベルが上昇するね」


「私の世界での機械みたいなものなんですね。機械についての説明は勘弁してください、私も詳しくは分からないので」


それは残念。違う世界の技術に興味は尽きないけど、無理に聞くことは本人の為にならないし中途半端に聞いたところで役に立たない可能性だってある。

専門知識がある人がいたとしても確実に実現できるかも分からない。だって技術があっても材料が根本的に違うのだから同じものが出来るかどうか分からないんだから。


「私的にはやっぱり何事もテンプレ通りではないのだと思いました。でも感謝はしています」


「人生なんてそんなものよ。予想通り、想像通りに進んでいたら逆に怖いわ。ちなみにテンプレ通りだとどうなるの?」


「王城に召喚されて魔王討伐のために協力してくれとか、特別待遇とか異世界の知識で順風満帆な人生を送ったりとかですね」


「あぁ、最初のは合っているかも。別に魔王討伐の動きとかないけど、そんなので動いたら魔王軍に国ごと吹っ飛ばされるよ」


「魔王は特に世界滅亡とか望んでいないという事ですか?そうなると最初のは合っていない気がするんですが」


「ただの建前という事。そうすれば頭の悪い召喚者とかはコロッと騙される可能だってあるでしょ。あとは魔王に騙されている各国を撃破するかとの話になればどうなるかな?」


「召喚者は率先して国盗りに協力するか」


エリス正解。今の所、召喚した各国の状況が不明だから何とも言えないけどその可能性だって否定できる根拠が全くない。むしろ普通ならそう考えるだろうね。

そうなれば血みどろの戦争が開始される。そうならないように私が動くことになるだろうけど、まずはこの国の状況を見極めないといけない。

いきなり他国に行って色々とやっている間にここが馬鹿なことをしないとも限らないからね。まずは一番近いところから何とかしていかないと。

あとは各種族への協力を取り付けたりと色々とやることは多い。


「必然的に私自身のことも話さないといけないか」


「まだ何か隠しているのか?」


「女は秘密が多いものでしょ」


どうやらまだ最初の頃のランクの隠し事がお気に召していないようだね。でもあの呆けていた顔は笑えたね。今ではいい思い出だよ。

ただまだエリスに話す段階ではないと思う。私のことを知っているのはまだ少ない方がいい。王族に知られたのは想定外だけど協力的だから結果オーライとしている。

何より今回の件は王族が絡んでくるから協力関係は必須となってしまった。


「さて、そろそろ上がろうか。朝食も出来ているだろうから」


「そうだな。アリアの秘密にも興味があるが、いつかは話してくれるんだろ?」


「そうね、近い内に話すかもしれないね。そんなに面白い話でもないけど」


「アリアの場合は突拍子もない話が出てくるから油断が出来ないぞ」


「あの、アリアさんて何者なんですか。話を聞いている限り他の方々と違うような気がするんですが」


「ただの高ランク冒険者よ。あとは学生」


「ただのとはいえない実力者だが、確かにそういう説明しか出来ないか」


「はぁ」


何かカスミが納得してくれない。まぁ昨日の夜に話したから私自身が何かしらの重要人物なのかもと思っているのかな。確かに事実だけど。でもまだ私は動いていないからそこまで重要じゃないかな。

ただ私がまた死ぬと各種族との交渉が結構面倒なことになるのは確実かも。各種族の特徴とか好みとか何が嫌いなのかをこの国の人達が把握しているのなら問題はないけどね。


「アリアいる!?」


「オーフィリアお帰り。やっぱり連れて行かないといけない感じかな?」


「そうなってしまったわ。悪いんだけど彼女の準備をお願いできないかしら。出来れば貴方の同伴もあれば助かるのだけれど」


「そのつもりだったから問題ないよ。その前に朝食食べさせてくれないかな」


「私も食べるから問題ないわ。時間の指定はあるけど食べる位の余裕はあるもの」


問答無用で来いと言われても遅刻する気は満々だったから別に構わないけど。そこら辺の良識も持っていない人に敬意を払う気もないから。多分姫様達の気遣いだと思うんだけど。

さてあとはこの後どうするかというのが課題かな。話が通る気が全くしないのは多分気のせいじゃない。それはオーフィリアが私の同伴を願ったことから想像できる。


「オーフィリア、悪いんだけど私の判断で行動させてもらうよ。例え陛下の御前であろうとも」


「構わないわ。貴方が敵に回った方がこの国の未来は終わったしまいそうだから」


「過大評価をありがとう。冒険者としてはそこまでじゃないけどね」


「ならもう一つの名を使う?そうすれば私達姉妹は貴方の判断を優先するわ。ハッキリ言って最近の父上は頼りにならないから」


「それはそれは心中お察しするよ。そういうことなら状況次第で使おうかな。希望の魔女として」


名乗った瞬間、食器の割れる音が部屋に響いた。そちらをミーシャさんが食器を落として驚いた表情で私のことを見ていた。珍しいね、ミーシャさんが食器を落とすなんて。ここに来て初めてじゃないかな。

はて、そういえばミーシャさんは何処の国に所属している諜報員なんだろう。見た目が私達人間と一緒だから他の大国の人かもしれないけど、今までここから離れている姿を見たことがない。

私達が授業を受けている間も買い出しとか掃除とかで他の人と接触しているという話すら聞いたことがない。諜報員としては何か違和感があるんだよね。


「あの、アリア様が魔女というのは本当なのですか?」


高ランク冒険者という情報はあるだろうけど、魔女については話していない。でもそんなことを話しても与太話扱いで信じてもらえるなんて思っていなかったからね。

でも何で今その話で驚くんだろう。あぁ、姫様が言ったから信憑性が増したのかな。


「信じる信じないは自由だけど自称魔女だよ」


「でしたら魔王の名を言えますか?魔女は彼の者達とも交流があると伺ったことがありますので」


「今の魔王が誰かは知らないけど私が知っているのはシャーリー・オルトリアだよ」


「本当に魔女様だったのですね!あっ、失礼しました。私は魔王軍諜報部隊副長を務めています。あの、このことを魔王様にお伝えしてもよろしいでしょか?」


まさかの魔族だったよ!?いや、確かに魔族と人間て見た目が殆ど同じだから分からないけどまさかこちらの大陸に諜報員を派遣しているとは思わなかった。

というか目の前にこの国の姫様がいるのに堂々と宣言してもいいのかな。あっ、オーフィリアが固まっている。


「別に構わないけど今の魔王は何て名前なのかな?それと正体暴露していいの?」


「私はオーフィリア様を信じていますので構いません。それに諜報活動なんて殆どしていませんから。私が伝えているのは魔王討伐の動きがあるかどうかのみですから。それと魔王様は変わらずシャーリー様です」


「生きてんの!?ちょっと待って、あれから3000年は経っているんだよ。どう考えても不老じゃない限り無理じゃない」


「はい、魔王様は不老です。それと念話で報告しましたら魔王様直々に会いに来るそうです」


「相変らずフットワーク軽いね!というか今来ないで!これから王城で一悶着あるんだから魔王まで来たら混乱の坩堝に叩き込まれるよ」


「ご安心を、私の方でスケジュールの方を組んでおきます。それよりもそろそろお時間ではないでしょうか?」


「あっ、本当だ。ほら、オーフィリア、カスミ行くよ」


「こんな話聞いて行けるわけないでしょ!」


「うんうん!」


いや、本当に時間ないから行かないと大問題じゃないかな。えっ、こっちの方が大問題だって?大丈夫だよ、今すぐに魔王がここに来るわけじゃないんだから。

聞きたいことがあるんなら馬車の中で話すから今は向かうことを優先しよう。えっ、魔王のことも想定内のことじゃないかって?

んなわけあるかー!

軽く流して王城突入の予定だったのに何故か長くなってしまった。

元々戦略会議→王城突入と考えていたのにその前の方が書いていたら止まらなかったよ。

ちなみにアリアはすでに王城に潜入して色々と探っていた状態です。

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