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18.罪に対する意識

18.『罪に対する意識』



さて本当にどうしたものか。今の時代、魔王や世界的な危機的な状態が発生しているわけでもないのに異世界から人を呼ぶような状態を作り出された。

正直いい迷惑だけど起こってしまったことを防ぐことは出来ない。なら今後の指針を考えた方がいい。それが問題なんだけど。

目下の問題は私の自室で寝ているこの子のことだけど。流石に巻き込まれてこちらに来てしまったのに国に利用されるのだけは防いであげたい。

下手したら我が国の勇者とか勝手に呼ばれるかもしれないからね。


「それにしても本当にどうしよう」


窓の外を見ながらため息を吐いてしまう。現状では情報が足りなすぎる。何人の転移者が呼ばれたのかも、どこの国が呼んだのかも、目的さえも分からない。

対策を立てようにも身動きが取れない。一番簡単なのは各国に諜報活動を行うのが常道だろうけど、それはやっているだろう。ただ召喚騒動からまだ一日も経っていないから情報なんて入ってきていない。

シーフィリアも結局戻ってこなかったからこの国への連絡は確実にないだろうと予測もできる。そうなると世界的な危機という条件は必然的に無くなる。

なら一番確率が高い理由は自国の強化だろう。そして次に繋がるのが戦争という行為だろうね。


「全くくだらない」


前世であれだけ頑張ったというのに今度は人間同士の戦争を行うなんて本当にどうかしているとしか思えない。歴史的にここ数百年は平和な時が続いていたみたいだけど何でそれに満足しないのだろう。

確かに戦争が起これば技術の発展に繋がるかもしれないけど、そのために何人の人達が死んでいくと思っているのか。学んでいるようで何も学んでいない。

本当に戦争になれば多種族達の反応も考えないといけない。参戦するのか静観するのか。獣人や竜人は参戦するだろうなぁ。血の気多いから。


「んっ」


「おや」


やっと起きたかな。時間的には日付が変わった位だから深夜だけど今日は天気がいいから月明かりで部屋の中はそれなりに明るい。カーテンは私が外を見る為に開け放っているからね。

さて、何と声を掛けよう。異世界にようこそとかいってもただの冗談だと思うだろう。それに現状を正しく理解するだけの冷静さがあるのかも分からない。

無難な所でいきますか。


「おはよう。といっても夜だけど、気分はどう?」


「おはようございます。何だかボォーとします」


どうやらまだ寝ぼけているようだね。目の焦点が合っていないようだし、取り敢えず水でも飲ませて落ち着かせますか。


「はい、どうぞ」


「ありがとうございます。……誰ですか?」


漸く気づいたみたいね。目の焦点もあったけど、何だろう暗いな。部屋の中が暗いのではなく彼女の雰囲気が暗い。瞳も淀んでいるというか生きる気力がないような。

面倒事の匂いがする。いや、異世界の面倒事なら今は関係ないか。ただこの子をこの状態のまま放置するのは気が引ける。


「私はアリア。簡潔に言っておくけどここは貴方のいた世界じゃない。異世界よ」


「天国とか地獄とか死者の世界ですか?」


「そうじゃないわよ。というか貴方、死のうとしていたの?」


転移者や漂流者はそういった人間が多いというのは文献から知っていた。主に投身自殺が多いみたいで、落ちている最中に穴が開いてこちらの世界に来るらしい。

もちろん普通に生活している人間もいるが、どちらかというと自殺しようとしていた人間が多いのも事実。


「いえ、どちらかというと事故でしょうか。どちらにせよ私なんて死んで当然です」


「簡単に命を投げ出すんじゃないよ。私が人のことを言えた義理じゃないけど」


抵抗せずに死を受け入れた私じゃ説得力なんてない。私が死んだことで戦争が起こったのも事実だけど、もう後悔しかない。死ななければ無駄に命が散ることもなかったんだから。

もう後の祭りだけど。


「私は人を殺そうとしたんですよ!それも親を!そんな私が許されるはずがないじゃない!」


いきなり激高しちゃったよ。人を殺そうとしたことへの罪の意識か。それも今まで育ててくれた親に対してだからその意識も大きいんだろうね。

ただ疑問もある。それだけ意識しているなら何で殺すようなことをしたのか。そこに理由がないと殺そうなんて考えないはず。


「まずは落ち着きなさい。悪いと思うけど何で親を殺そうとしたの?」


「生活に耐えきれなかったから。もうあんな暴力が日常になる生活が嫌だったから。だから父を殴ったの」


「もしかして暴力だけじゃなくて犯されそうになった?」


「……」


多分それが一線を越えさせた原因だね。それに殴ったといったけど素手ではなく何かしらの物だろうね、幾ら何でもこの子が素手で人を殴り殺させるとは思えないし。

こちらの世界なら殴り殺すことだって簡単にできる。何より親を殺すことだって普通に起こり得る世界だからここまで罪の意識を持つのも珍しい。


「それで怖くなって逃げ出そうとしたら実は父が生きていて突き落とされたと」


「階段を降りようとしたら……」


それで落ちている最中に穴が開いてこちらに落ちてきたと。そりゃ絶望位するか。実際は殺していないといってもそれは結果だけ。殺そうとしたことは事実なんだから。

さてそれを考えるとどうしようか。一つとしてこのまま死なせるか。これに関しては却下。もちろん私がしたくないというのが理由。

二つ、取り敢えず保護してこれからのことを様子見していく。妥当な所ではこれだろうね。

三つめ、力を与える。そうすれば理不尽な暴力に悩むことはなくなるけど、それによってこの子が何処に進んでいくのかが分からなくなるからちょっと考え物かな。

ちゃんとした指導者によって管理されるのなら大丈夫かもしれないけど、この世界だと彼女の立場が悪い。前に考えた通り利用される可能性が高すぎる。

ようは彼女を守れるような立場の人じゃなきゃ意味がない。


「取り敢えずこちらの世界だと人殺しなんて当たり前のことなの。私だって人を殺したことはあるのよ」


「でも親を殺そうとしたんですよ。それに人殺しはどんな理由があろうと罪です」


「私なんて親から崖下に落とされたことがあるよ。それに殺さなければこっちが死ぬんじゃ仕方ないじゃない」


まずは意識を変えさせないと。こちらの世界で命のやり取りなんて日常茶飯事。一々戸惑っていたら命が幾つあっても足りない。彼女がいた世界とこちらの世界とでは倫理が違いすぎる。

人殺しが全て罪ならこの世界の殆どの人間が罪を犯していることになる。


「でも私はこの世界の人間じゃ」


「すでにこっちの人間よ。厳しい言い方だけど貴方はもう元の世界には戻れない。ならこっちの世界に染まるのがいいんじゃない」


「そんな簡単に割り切れません」


「そりゃそうね。ただ言っておくけど、殺すことが正当化されているわけじゃない。本当にその行為が必要だと思われるときじゃないとそっちと同じで罪だから」


そうでもないと文化として成り立たない。むかついたから殺した、何となく殺したじゃただの快楽殺人もいいところ。正当な理由があってこそ罪にならない。

だからといって作り出された理由で殺されるのも理不尽ではあるが、それを今言うのは違うだろう。


「それは分かります。それとつかぬ事を聞きますが、ここは異世界ですか?」


「今聞く!?さっき納得していたよね!?」


「話を合わせていただけです。私が寝ている間に運ばれただけかもしれませんから」


「まぁ確かに。ならどうすれば納得するのかな?」


「異世界なら魔法とかありますよね。それを私に教えてくれませんか」


「力を持ってどうするつもりかな。確認までにね」


どうせ私が魔法か魔術のことを教えなくても他の人が勝手に教えるだろうから無駄なんだけどね。ただ何故力を持とうと思ったのか確認だけはしないといけない。

それによって私にとって敵になり得る可能性だってあるのだから。過去の出来事から力に飢えている可能性だってある。ただそれによって力に飲まれる可能性だってある。

その場合、国に云いように使われるかもしれないのだからそれだけは私が防ぎたい。人は使い捨ての道具じゃないの。だから私がこの子の導き手になりたい。


「最低限身を守る手段を持っていたいのです。今のままだと一般人以下だと思いますので」


「確かに一般人以下だね。でも力を持ったらそれを意味もなく振り回す可能性だってあるんじゃないかな」


「そんなものは持ってみないと分かりません。今それを確約しても意味なんてないですから」


「そうね。うーん、魔術は適応もあるから今じゃどうにもならないし、魔法は適性云々以前の問題だからどうだろうねぇ」


「二つに分かれているんですか?」


「今の時代で一般的なのが魔術。一般的じゃないのが魔法だと思ってくれたらいいよ。ちなみに魔法については使える人がいないというのが一般的知識だね」


取り敢えず私が魔法を使えることは黙っていようと思う。正直まだ出会って間もなく過去の体験からすぐに教えるのは危険だと思う。問題ないと判断で来たら教えるけど。


「なるほど。なら魔術とはどういったものなのか見せてもらえないですか?」


「悪いんだけど私、魔術下手くそだから威力過多で部屋ごと吹っ飛ばしてもいいなら使うけど」


「あっ、いいです。無理に使わなくてもいいです」


あはは、表情が引き攣っているよ。どうやら表情や感情はちゃんと表すことが出来るみたいだからそこまで根が深いほど思い悩んでいるみたいじゃないかな。

恐らく一過性でその時があまりにも酷すぎたんだろうね。これなら対人関係については問題ない。そこまで気を遣うとなると結構大変だと思っていたから助かったかも。


「それでまだ名前聞いてないけど教えてくれないかな」


「あっ、すみません。中森 香澄です。カスミが名で、姓がナカモリです」


「了解。それじゃ早速だけどお腹減っていない?」


聞いた途端、クルルッと可愛らしい音が聞こえてきたからやっぱりと思った。時間的に夕飯を食べていないのだからお腹が減っていて当然だよね。

赤面して恥ずかしがっているけど空腹には誰も勝てないんだから仕方ないよ。私だって我慢をするときあるけどそんな必要性なんていらないからね。


「ミーシャさん、今の時間に何か出来る?」


「サンドイッチを用意しています」


本当にこの人は何者なんだろう。声を掛けたら軽食の乗ったお盆を持って入ってきたよ。声を掛けた私もどうかと思うけど、カスミなんて驚いて固まっているよ。

私ですら気配を読めないのだから何処かの諜報員とかの可能性だってあるかもしれない。


「明日はお気を付けください」


カスミに聞こえないように私にだけ小声で囁いてきた。やっぱりこの人、諜報員だ。


プロバイダ契約が切れるとかなんやねん!

2か月位ネットのない生活をしていました。

慣れている所為か結構きつかったです。

更新と滞った理由は他の作品も書いていた所為ですけどね。

取り敢えずネット復旧万歳!

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