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12.魔導技師への道

12.『魔導技師への道』


あれから学園の裏山を走って登り、頂上でずっと泣いていた。

私の為に私を知っている人達が沢山死んだ。

英雄と呼ばれた人達も、顔を知っている兵達も。

その事実が私の心を締め付ける。もしかしたら生き残っていて私の話を繋いでいたかもしれない。

そんな未来を私が潰したも同然。彼らの考えで起こした戦争かもしれないが原因は私にある。

被害妄想と呼ばれようが構わない。それが私の罪だから。

過去に起こってしまい、もう取り返しがつかないのも分かる。それでも私は知ってしまった。

知ってしまったのなら背負わないといけない。彼らの記憶を。

忘れてはいけない、彼らとの繋がりを。



「あぁ、もう朝だ……」


ひとしきり泣いて呆然としていたら朝陽が顔を出し始めていた。

色々と後悔して、ぐちゃぐちゃの頭で考えたが結局私にできることなどあまりない。

彼らのことを私だけが記憶しておかないといけない。

いいことも悪いことも全部まとめて。


「帰ろう。リジェネやリーネさん、ミーシャさんに何か言われるかも」


無断外泊だからね。散々に混乱していたのは否めない。

気持ちを切り替えていこう。今のまま暗い気持ちで接してもいらぬ心配を掛けるだけ。

しかし身体強化をしていたとはいえ、よく一息でこの山を登ってきたね。

降りるのも一苦労だよ。


「冬休みで良かった」


現在、学園は冬季休業中となっている。新年を迎えるにあたって家族と過ごすための期間だと聞いている。

私達の寮でも殆どが実家へと帰っている。おかげで新年は大いに騒いだ。

リジェネにリーネさん、ミーシャさんまで巻き込んで盛大に騒ぎ、唯一残っていたリーリエが凄い困っていた。

そりゃ学園長とその秘書がいきなり乗り込んできて酒盛りを始め、寮母が盛大に料理を奮っていれば困惑するだろう。

ちなみに事前通知はなかった。サプライズパーティらしいが、来た時点で私は気づき呆れていた。


「ただいま」


「お帰りなさいませ。お風呂の方は沸かしておきましたからどうぞお入りください」


気遣いが痛い。というかよく私が戻ってくるのが分かるね。以前にも同じ事があったから直接聞いてみたのだが勘ですと。

メイド恐るべし。本当に何でここまで出来る人が学園の寮母なんてやっているんだろう。

それが一番の謎だと思うんだけど。


「はぁぁ、サッパリした。ありがとうね、ミーシャさん」


「いえ、それと軽食を用意しましたのでお召し上がりください。それといつまでも髪をそのままというわけにはいきません」


風呂上がりでタオルで拭いただけの髪が重いのは分かる。このままにしていると髪が傷んでしまうというのも聞いた。

だが面倒くさい。自分で伸ばしている癖に愚痴るのも違うが、それでも面倒なのだ。

私の髪は今だと腰くらいまで伸びたかな。これ以上伸ばす気はないからここを定位置に決めようかと考えている。

しかしこの長さでも乾かすのに時間は掛かるし、櫛で解かすのも一苦労。


「別にこのままでも勝手に乾くからいいよ」


「そういうわけにはいきません。折角の綺麗な髪が勿体ないです。朝食を頂いている間に私がやります」


白髪だからあまり目立たないと思うんだけど。ただ髪質でいえば皆が綺麗だと言ってくれる。

私には全く自覚がないんだけど。髪の毛ってそんなに重要なものかな。


「ミーシャさんもあまり甘やかさない方がいい。アリアは一度痛い目を見るべき」


「リーリエ、おはよう。痛い目というとあの髪の毛が爆発したような前衛的な髪形かな」


「あれは酷かった。酷過ぎて笑い死にするかと思った」


以前に風呂上がりに髪をまとめたまま魔導具の研究の為に遅くまで起きていて、その後に寝たのだが髪の毛が意味が分からない状態になっていた。

そのまま階下に降りたら見た人全員が笑い転げたのは印象深い。その後にミーシャさんに洗面所に強制連行されたけど。

あの時のミーシャさんの顔は怖かったなぁ。


「それにしても朝から何をやっているの?それは魔導具だよね」


「えぇ、2年からの専攻は魔導技師にしようかと」


「何でまた」


新年会の出来事からリーリエとは普通に会話をするようになった。あの惨事から救ったのが効いたかな。

それにしても魔術師としていい腕をしているのに、なぜ魔導技師になろうとしているのか。

何か事情でもあるのかな。


「興味がある。それだけじゃダメなの?」


「駄目ではないけど皆も同じ質問をすると思うよ」


魔術師として修行を続ければ王国の魔術師団に入るのも夢ではない。それだけの可能性を持っている。

でもそれだけの可能性を捨てて全く知らない魔導技師へと向かうのならば誰しも疑問に思うだろう。

興味があるだけでは誰も納得しないと思う。でも私は賛成するけどね。


「私は応援するけどね。やりたいようにやって何が悪い!」


「そうよね。まだ母にもいっていないけど」


それはどうだろう。リーリエの母は魔術師団に入っているのだから反対される可能性が高い。

家族の承認を得ているのであれば応援するのだが、こうなっては話が違ってくる。

でも今更発言を撤回するわけにもいかないし。


「それで先輩から授業内容について教えてもらったんだけど、どうやればいいのか分からない」


「術式を解明するだけじゃないの?」


取り敢えず言ってしまったことの撤回は後回し。その授業内容の方が気になってしまう。

目の前にあるのは簡単な湯沸かし器。もちろん火の系統術式で駆動している。

なら魔力の流れを読み解き、術式をどのように組み込み、起動実験をするのではないだろうか。

というかこの流れ、昨日もやったような気がする。


「それができれば苦労しない。これだけじゃ足りない」


今の時代だと魔導具だけから流れや術式を読み取ることは出来ないようだ。

設計図が必要で、それを理解して魔導具を作っていくのが常識らしい。先駆者はどうやって作ったんだろう。

やっぱり一から設計図を作って試して、駄目ならまた設計図から作り直しとかやっていたのだろうか。

効率悪そう。私なら原因を突き止めてその部分を直すのに。


「ちょっと借りていいかな?」


「どうぞ」


兎に角、外見から把握していく。四角い箱型だけど高さはない。あとは摘みが付いていてそれによって熱さを調整する。

鍋やヤカンを上に乗せれば中に入っている水が熱せられて最終的に沸騰すると。

あとは流れとどんな術式を使っていて、どこに配置しているかの把握だね。

ということで昨日と同じことをやろう。


「使っている術式は3種類だね。火系統はもちろん、ON/OFFと魔力供給の強弱を担当している術式」


「今の自分の魔力を魔導具に流したの?」


「そうだよ。自分の魔力だから把握するのは簡単だからね」


「そんなやり方聞いたことがない。参考書にも載っていないやり方」


「同じやり方をやっていてもどこかで詰まるよ。なら自分なりのやり方を探したり、現在の状況を打破することを考えないと」


同じやり方をずっと続けていたところで技術の進歩なんてあり得ない。ただ変な道に入って歪んでしまうこともあるけど。

非人道的な研究とか人のコピー体を作ったりとか、駄目だ考えが悪い方向に行ってしまっている。

今は目の前の将来ある子を導かないと。


「物は試しとやってみれば。この方法は結構便利だから重宝するはずだよ」


「いえ、簡単にやってみればと言うけど今までやったことがないことをすぐには出来ない」


口で説明するのは難しい。私は感覚で魔法を扱っていたり、魔法具を創り出していたから。

理論派みたいに書き留めたりとかもしていないから私のやり方はあまり広まらなかった。

賢者みたいに手記でも残しておけばよかったかな。


「えっと、まずは……」


というわけで私も悩みながら説明を始めた。魔力を取り込むとか、その魔力を魔導具に放出しつつ制御を放さないとか。

やろうとしていることが今の魔術と離れているために理解するのも一苦労。何かリジェネに教えていた頃を思い出すな。

軽食を食べながら説明している内に髪の手入れも終わっていたようだ。だけど何でポニーテール?

満足そうにしているから突っ込むのも憚られるけど。そんなに私の髪を触って嬉しいのかな。


「理解が追い付かない。凄い疲れる」


「私も教えていた人がいたけど同じこと言っていたよ。今じゃ大成しているけど」


リジェネも最初の頃は根本的に違う分野という魔法を理解しようとして頭を悩ませていた。結局魔術との相性で途中で止めたけど。

でもその過程から自分なりの答えを出して魔術に応用しようとする考え方を得たのだから知らないことを理解するのは意味のあること。

だからリーリエにも頑張ってほしい。


「毎日コツコツとやっていくしかないよ。誰だって最初は上手くいかないんだから」


「アリアも?」


「失敗して大怪我を負ったこともある。今だって武術の失敗で骨折位は普通にしているよ」


無理な体勢からの動きとか、無茶した動きで関節が外れたりとか色々とやらかしている。

誰だって最初から全部ができる人なんているとは思えない。

と授業をやっている内に夕方になっていることに気づいた。


「ただいま。珍しい組み合わせだな」


「おかえり、オーリン。アリアに色々と教えてもらっている」


帰ってきたのは実家に帰っていたオーリン。確か第2騎士団団長さんの息子だと言っていたから、将来有望なのは分かる。

でも私は相手にされていません。侮られるように行動しているからね。でもバレただろうね、昨日の件で。


「丁度良かった。アリアに確認したいことがあった」


「やっぱり。それでどういう内容かな?」


「アリアを攻めてものにしろと父が言っていたがどういうことだ?」


本当に息子に言うか!私は冗談だと思っていたのに。

というかこの内容をどう取り繕えばいいのだろう。上手い言い訳が思いつかない。

どう考えても父親と接触したと思われているだろう。


「昨日戦って私が負けただけだよ。それでその言葉の意味は私も分からない」


「昨日父は城で戦闘訓練をしていたはずなのだが。アリアもその場にいたのか?」


「ちょっと頼まれてね。姫様と一緒だったから王城には入れてもらえたんだよ」


「アリアいるかぁ!」


オーリンが信じられないような顔をしていて更に言葉を繋げようとしたら五月蠅いのがやってきた。

こちらも実家に帰っていたクロードが血相を変えて寮に戻ってきた。どうしたというのだろう。


「お前がAランクって本当か!?」


うわぁ、バレたし。やっぱり両親から何か聞いたのかな。

あの頃は小さかったし、名前もあまり公表していなかったから有名ではないと思ったんだけど。

リジェネと一緒にいたのが目立ったのだろうか。あっ、姫様とエリスも一緒に帰ってきたし。


「だから本当なのかって!」


「近い!」


顔を突き出してきたから反射的に殴ってしまった。いい感じに入ったから吹っ飛んだ。

大の男が錐揉みしながら飛んでいくのはシュールだね。


「何の騒ぎなんですか?」


「いや、クロードがいきなりアリアがAランクとか訳分からないことを叫んだのだが」


「本当ですよ」


「ちょ、姫様!?」


聞いたオーリンも隣にいるリーリエも立ち上がろうとしたクロードまで固まったじゃないか。

せめて誤魔化すとか、言い繕うとか色々と悪あがきさせてよ。


「今まで私に隠し事をしていた罰です。それとその姫様という呼び方は止めてください」


「呼び方なんて幾らでも変えるから、この状況の改善をお願いするよ!」


もう自分じゃ抑え込めないよ。知っていたエリスは手を合わせて離れているし、姫様は楽しそうだしね。

他の3人は私を取り囲んで質問攻めの体勢を取っている。誰か助けてほしい。


「皆様、お食事の準備が出来ました」


ミーシャさん、ありがとう!これで時間を稼げるよ。

その間に何かしらの言い訳を考えないと収拾がつかない状況になるところだったよ。


「ちなみに私は知っていました。寮に居ない時は依頼で留守なんですよ」


爆弾の投下とかいいから!何でミーシャさんまで敵に回っているの。

あぁ、朝の件か。全てを知っているから無断外泊で心配を掛けたのを根に持たれていられる。

もう隠し通すとか無理な状態だね。昨日泣いていたのが馬鹿らしくなってきた。

何をやっているんだろうね、私は……。



昨日は予定があって書けませんでした。

22時から書いても間に合わないよ……。

それと話数を後で変えます。

やっぱり予定と違ったから普通に区切った方がいいと思いますから。

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