10.第二騎士団と第2姫
10.『第二騎士団と第2姫』
第1姫との接触から1か月。私は依頼で王城に訪れていた。
依頼者は第2姫。何でもあの屑のことで相談があるとか。依頼という形にしたのは連絡を取りやすかったからだろう。
まさか学園経由で生徒を呼び出すわけにもいかない。
「それにしても貴方が魔導技師とは思わなかったわ」
「それはどうも。私も案内役が姫様だと思わなかった」
やっぱり一般人が王城にすんなり入れるわけがなかった。その案内ととして第1姫から遣わされたのが第3姫。
理由は魔導具の修復ということにしてあるらしい。言ったことはちゃんと実行したみたい。
さてそれで目的の第2姫がどこにいるかというと訓練場で第二騎士団と模擬戦を行っているらしい。
「それでどうやって姉上に気に入られたのですか?」
「逆に聞くけど姫様はどうして私を気に入らないの?」
此処に来る途中でも色々と会話してみたのだが所々に棘があり、会話という感じがしない。
嫌われることはしていないはずだけど、私の何がいけないのだろう。
だから今回は直接聞いてみることにした。
「能力のない人間が嫌いなだけです」
「それはそれは」
節穴だと自爆しているようなものだけどね。多分本質を見抜くことが出来ずに見た目と周囲の話で決めているのだろう。
それで今回は姑息にも第1姫に取り入ったと思い込んで私のことを殊更に嫌いになったのだろう。
どちらかというと第1姫の方が私に取り入ってきているんだけど。
「ここが訓練場です、あそこで模擬戦を行っているのが私の姉と第二騎士団です」
片や黒い鎧で身を固めた男たち。片や動き易い軽鎧を纏った女性。
摺り足からの加速、その切り替えに対応できない騎士団が次々と打ち据えられていく。
あの足捌きは剣聖がよく使っていた。確か遅い動きから最速の動きには対応が遅れるらしい。
何より地面から足を離さない位の歩法で瞬時に状況への対応ができる。
「本当にあの屑の後継者となりえるか」
「よくも屑の後継者と私の姉を愚弄してくれますね」
「いや、そういうつもりでいったわけじゃないんだけど」
勘違いされてしまった。私が屑と呼ぶのはあの変態だけ。第2姫は全く関係ない。
さてどうしようかと考えていたら第2姫の方がこちらに気づいてくれた。助かった。
「オーフィリア久しぶり。そちらが姉上から紹介された魔導技師か?」
「お久しぶりです、シーフィリアお姉さま。この方が私の学友であり、魔導技師のアリアさんです」
姉妹の前でも猫を被りますか。それにしてもこの3姉妹は全員美形だね。金髪は光輝き、長女は長い髪をそのままに。
次女は短く切りそろえ、三女は姉達とかぶらないようにセミロングとしている。
でその次女が私のことを見ているけど、探るよう様子なのは否めない。長女はどこまで話しているかな。
「悪いね、この屑の為に来てもらって。ただ私達や王宮の者達でも対処が取れなくてな」
「その屑関連だと私も乗り気ではないけど、依頼として来たのなら仕方ないよ」
正直なところ王城自体にも入りたくはなかった。自分でも意外だったけどこの国を私はかなり嫌っている。
国というよりも王城かな。この国で生きている人達はあの時代の人達とは完璧に違う。
だから人に対して恨みとかはないけど、王城という形あるものにはどうも苦手意識が先行してしまう。
「確かに教え方と技術は凄いのだが、この性格のせいで全てが台無しだ」
「全くね。それ以外の部分は優秀なんだけど」
第2姫とは気が合いそう。長女は政治的な面も気にしているために裏を読んでしまう。
でもシーフィリアは直情的に物事をいうので裏を考える必要もない。
「それでその屑なんだが、これはどういう状態になっている?」
鞘に入ったままの屑を渡されたが、鞘から抜かずとも状態は把握できた。問題も分かった。
ここまで女性にボロクソに言われているのに屑が反応しないのは単純に魔力切れだろう。
私以外からこいつは魔力を吸収しなかったのか。
「準備はしてきた。まずは柄頭を交換して、ここに魔石を嵌め込むと」
『うぇ、何だよこの不味い魔力は』
それは全く精錬されていない5級魔石だからね。直接吸収する分には不味いのは当たり前。
それよりも剣が喋っている状況に三女がついてきていないけど、いいのかな。
説明するのも面倒だし放置でいいか。
「何でお前は私以外の魔力を吸収しない。この人からも魔力は吸えるだろ」
『愛する女性の魔力が一番美味いからに決まっているだろ!」
「死ね、この屑!」
『照るなよ、マイハニー。待て、その力は不味いって!崩壊する!」
分子結合を崩壊させる光を見せると流石にこの屑でも焦るようだ。この屑相手に我慢してはいけない。
我慢すれば調子に乗るのが目に見える。そうだ、こういった方法もあるんだった。
「5級魔石じゃ全然足りないでしょ。8級もプレゼントしよう」
『お、お前。うぉぉ、クソ不味い!胸焼けがする」
5級が不味いのなら、それよりも等級が低いのは尚更不味いだろう。こっちの方面で攻めよう。
交換した柄頭によって魔石から魔力吸収できるようにしたけど、これは強制的な吸収となる。
さぁ不味い飯をどんどん食わそうか。
「なるほどこういう方法で御せばいいのか」
「苦労していたみたいだね」
「侍女からも距離を置かれるほどだ。本当にどうにかならないか、こいつは」
「この性格だけはどうにもならないと諦めるしかない。それじゃ私の仕事は終わりということで」
私の仕事は聖剣を再起動させること。その為に魔力供給用のアタッチメントを作ってきたのだから。
ちゃんと再起動したみたいだから依頼は完遂。お仕事終了のはず。
「ちょっと待った」
はずなんだけどシーフィリアから待ったが掛かってしまった。
まだ何かこの屑に関して相談でもあるのだろうか。苦労しているのは分かる。
でも私に被害が来るのは止めてほしい。
「君の実力が知りたくなった。誰かと手合わせをしてくれないか?」
「お姉さま、ですが彼女の実力では騎士団の中でまともに相手をできる者はいません」
「そうなのか?なら私が直接相手をしようか」
「そういうわけではありません。彼女の実力が低いと言っているのです!」
確かに手を抜いている学園の武術の授業では騎士団を相手にすることは出来ない。
でもシーフィリアは気づいているみたい。私の実力について。
「お前は見た目で判断し過ぎだ。仮にも姉上が認めた人物だぞ。実力がないとは思えない」
「もう面倒だから戦うことは承諾するよ。それで相手は?」
いつまでも姉妹の口論を見ているわけにもいかない。私もそこまで暇じゃないのだから。
でも先程のシーフィリアとの模擬戦で大体の騎士が疲れ果てている。
まだ余力があるのは1人位かな。
「第二騎士団団長アレス。私が代表でお相手致しましょう」
「また偉い人物が出てきたね。それじゃ模造剣借りるよ」
知識によれば剣技に秀でた団長だったかな。第一騎士団は武装がバラバラだと聞いていたけど。
第二騎士団は剣を主体にしていると聞いた。私の実力でいけるかな。
身体強化を使う訳にもいかないだろうし。
「それでは、参る!」
あっ、先手取られた。ていうか速い!?
上段からの一撃を辛うじて避ける。あんな剛剣受けた時点で私の負けだ。
でも全部を避け続けるだけの自信はない。やっぱり伊達に騎士団団長じゃないね。
でも次は私から行くよ!
振り下ろした体勢のアレスへ踏み込みからの突き。体をずらして避けられたけど想定内。
軸足を回転させて薙ぎ払い。今度は剣で受け止められた。やっぱり反応が速い。
「はぁぁ!」
受け止められた状態で振り抜かれて私の身体が吹っ飛ばされる。剛剣ってここまで凄いの。
駄目だ、正攻法じゃ全然勝てる気がしない。あっ、追撃してきている。
「くっ!?」
身体が浮いているせいで踏ん張りが効かない。繰り出されるのは上段斬り。詰んだなこれ。
剣で受け止めたけど地面に叩き付けられて一瞬息が止まる。これで勝負ありだね。
私の負けだ。
「剣士として優秀だが、ただそれだけという感じだな」
『あれがあいつの本気とは違うからな。本気の殺し合いとなると化けるぞ、あいつは』
落胆していたシーフィリアだが、シリウスの言葉で思い直したんだろうね。
実際私は剣を使ったけど、今回はそういう勝負だったから。
あぁ、痛かった。そういえば第3姫は、目を見開いているね。授業じゃ全力を出していなかったのに気付いたか。
これからの態度が気になるけど、それよりも目の前のことかな。
「流石騎士団長、強いね」
「いや、剣同士の勝負では勝ったが君はまだ本気ではなかっただろう」
「剣では本気でしたと答えておくよ」
他の武器を織り交ぜて扱うのが私の本来の戦闘スタイルだからね。ザックスから勝負を挑まれた時もこっちの方でというが強かったはず。
しかし剣でここまで追い込まれるとなると私もまだまだ修行不足か。
「君ほどの才能があるのなら私の息子の嫁になってくれても構わないのだが」
「断固として拒否」
オーリンと結婚なんてあり得ない。いや、嫌いだというわけではないんだよ。
私自身が結婚するというのがあり得ないんだ。言ってしまえば私はこの時代で異端。
誰かと一緒になるなんて許されないと思っている。それが私の考え。
「さて、これで終わりかな」
「すまないな。次は姉上が呼んでいる」
「もう勘弁して……」
簡単な仕事のはずが長時間の拘束になっている。事前準備までしたのに。
追加報酬貰えるかな、もし貰えなかったら第1姫を訴えてやる。
さっさと王城から出たいよ。
モブキャラ生徒のエピソードを書くはずが何故か新キャラばかり出てくる。
結局思った通りに書いたの最初だけ、どうしてこうなる。
思うがままに書いていちゃやっぱり駄目か……。




