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09.聖剣と変態

09.『聖剣と変態』



エリスと友達となったがアリアは今まで通り接してほしいと願った。

すぐに友達として付き合ってしまったらエリスに要らぬ疑いが掛かってしまうかもしれないと危惧したから。

特にこの寮の中でアリアという存在は居ても居なくても変わらない存在となっている。

その中でエリスだけが態度を変えてしまったら彼女にまで迷惑を掛けると思う。

でもエリスもこの程度のことと全く気にしない感じがする。修行とかいって。

だから付き合いは夜の練武場だけにした。魔力操作を覚えさせて、身体強化へと発展させる。

それが今のエリスとの付き合い。


「アリア様。リジェネ様がお呼びです」


「何で帰ってきてから」


「リジェネ様にとっても唐突な来客だとか。それとアリア様でしたか分からないことがあると申していました」


「了解、それじゃ行ってきます」


「お荷物はいつも通り運んでおきます。いってらっしゃいませ」


やっぱりミーシャは優秀だ。一家に1人は欲しいと思うほど。それにしても放課後すぐに呼ばれるなんて何だろう。

成績に関してはリジェネも本来の私を知っているから口出しはして来ないから、冒険者としてかな。

でもそれならリーネの方が話を持ってくるはず。まぁ会えば分かるか。


「アリア・ハートネットです。入っても宜しいでしょうか」


「大丈夫だ。とっとと入ってこい」


いつも通りのリジェネだね。リーネさんも傍にいるし、特に変わった様子はないね。

応接用のソファに座っている人を除けば。それに私でも見たことがあるほどの有名人。

厄介ごとじゃないよね。


「流石のお前でも知っていると思うがこの国の第1姫サーフィリア・ファイナリアだ」


「お初にお目に掛かります。アリア・ハートネットと申します」


「お師匠様。彼女が本当に?」


疑わしそうな目を迎えられた。リジェネ、一体どういう風な説明を行った。

テーブルの上の物を確認したから呼ばれた理由も分かるけど、何で私が姫様の相手をしないといけない。

面倒なのはもう嫌だよ。それにしてもリジェネを師匠と呼びますか。そういう関係ですか。


「私でも分からない魔導具なら、私よりも詳しいものに聞けばいい。それがアリアだ」


「ですが、まだ学生ですよ。それに彼女のことは妹から聞いています。本人を前に失礼ですが落ちこぼれと」


「確かに魔術の才能は私に似ないで全然ないからな」


本当に本人を目の前にして失礼だね。帰るよ全く。

それにこの国での魔術トップクラスの2人相手だと大体の人が才能無しの烙印を押される。

自分のことをちゃんと理解しているのかな。


「帰るな。お前に頼みたいのはこの剣を分析してほしいんだ」


「見た目からしてボロボロだけど何処から持ってきたの?」


「城の宝物庫からです」


また偉いところから持ってきたね。それにしても宝物庫か。経年劣化に痛みが目立つから相当に古いね。

それに錆で読み取り辛いけど術式が書き込まれている。となると魔導具か、もしかしたら魔法具。


「砥いでいいですか?」


「構いません。宝物庫の整理で出てきたものですから」


哀れゴミとして扱われているのか。確かに知らない人から見たらゴミだろうね、見た目が。

術式を読める人でもここまで錆ていちゃ読み取れないか。


「勿体ない。折角の魔導具が、でもこうすれば分かるかな」


魔法を行使して一気に錆を落とす。この程度の作業なら魔法だと気づかれることはない。

それに錆取りによって出てきた刀身の方に注目が集まる。というかこの金属を使っていて何で錆びた。


「刀身はオリハルコン。術式は光属性による威力上昇と防護結界を自動発動。結果から言って聖剣だね」


「えっ?」


そりゃ驚くね。ゴミだと思ったものがまさかの聖剣なんだから。しかしこの術式どこかで見たような。

私の記憶に引っ掛かるとなると3000年前のものだと思う。でもこれは私の術式じゃないし。


「本当にこれが聖剣なのですか、何かの間違いでは?」


「他にも機能は色々。光属性の魔術ならイメージ通りに撃てる補助機能、刀身を光で伸ばすこともできるね。

でもこれを扱える人なんているのかな。身体強化が無茶なレベルで設定されているけど」


「それはどれ位なんだ?」


「鍛えている人でも走った瞬間に筋肉断裂するレベル」


「負荷が凄まじいな。魔力耐性を上げていても何ともならないのか?」


「うーん、軽減は出来るけどそれでも身体が悲鳴を上げる程度かな」


「扱えないだろ、それは」


リジェネの言う通り常人には無理だ。偉人という人を超えた存在でもないと扱えない。

でもこれで誰がこの剣を使っていたか思い出した。あの変態だ。

それに気になるのは刀身じゃなく、鍔より下にあるコアの部分。

本来なら魔石を此処に嵌めて動力源とするんだけど、これは違う。魔石じゃない。


「ここだけ分からないな」


「珍しいな。アリアでも分からないことがあるとは」


「私だって万能じゃないよ。コアを保護するように金属で覆われているから術式が見え難い」


「いえ、そもそも私には見えないのですが。お師匠様、彼女は何者ですか?」


「冒険者時代の相棒だ」


姫様固まった。それなりに名を隠しながら旅をしていたけど、リジェネの相棒が小さな子供だったのは有名な話。

それが足手纏いではなくリジェネ並みかそれ以上の実力者であったのも色々な人たちが目撃していた。

だから私も結構な有名人なのだ。本人像がぼやけ過ぎていて全く判別できなくなっているが。


「魔力切れで機能停止しているから。流してみよう。リジェネは結界の展開、姫様とリーネは彼女の近くに」


何が起こるか予測がつかない。私一人なら咄嗟の判断で色々とできるけど、周りに影響を及ぼすとなると違う。

でも今回は信頼できる人が近くにいるから多少の無茶ができる。さて、やってみますか。


「よいしょっと、……げっ」


周りの魔素を剣に集めるだけのはずが、私の魔力まで吸い込み始めた。不味い、非常に不味い。

リジェネとリーネはまだいい。姫様は不味すぎる。あとで何を言われるか分からないじゃないか。

というか剣から手が離れないんだけど。このクソ変態が!。


「コアを引き抜くぞ、変態野郎!」


『それは待った!』


聖剣が喋った。私は魔力を吸い取られている間に大体理解したが他の3人は目を丸くしている。

まさか人格模写をコアに施しているなんて思わなかった。それによりによって変態だし。

何でこいつの性格を模写した。責任者出てこーい!


「アリア、どういうことだ?」


「どうもこうも過去の遺物。亡くなる前に自分自身の人格をコピーしてコアに刻んだ。あとは術式の力を借りて疑似的な脳として役割を担った。

喋れるのも声帯の代わりに空気の振動を操っている感じ。私疲れたので帰る」


『いや、嬢ちゃんに帰られると俺の説明が』


「嫌だ、面倒、生理的に触りたくない」


『俺の知っている人物にそっくりなんだが、本人か?』


「何千年前の人物よ。取り敢えず自己紹介でもしたら、周り人達が全然分かってないよ」


『そうかい。名前はシリウス、これでも剣の腕には自信があるぜ。こうなった経緯は俺の技を後世に残したいためだ」


この変態、私の知っている人物。前世での繋がりは確かにある、否定したいけど。

それに剣の腕は私が知る限りでは超える者はいないだろう。伊達に剣聖の名を所持しているだけのことはある。

そしてどうして私が変態と呼んでいるかというと、彼の性格が物語っているから。


『エルフの姉ちゃん俺を使ってみないか。というか使ってください!』


エルフ大好きなこの男は所構わずエルフの女性をナンパするのだ。それが例え戦場だったとしても。

ついでにいえば私も告白されたことがある。理由はエルフ以上に私の魔法が素晴らしいとか。

結構しつこく付き纏われたから魔法で吹っ飛ばしてやったけど。それでも付き纏うから本気で殺しに掛かった。

半死半生の所で周りが気づいて止めに入られたけど。この男、かなり頑丈だったのが痛い。


「話を聞く限り私には無理だと思うけど」


『大丈夫だ。俺を所持してくれているだけでいいから』


後世に技を残すという目的はどうした。剣になってもダメなところは治らないか。

誰かに押し付けたいけどリーネは駄目だ。こんなろくでなしの相手なんてさせられない。

リジェネも剣なんて扱えないし、となると姫様か。


「第2姫なんてどうだ。彼女なら剣の腕に関しては大丈夫だろう」


「確かに妹なら技の継承となると大丈夫だと思いますが、剣の性格がこれですか」


第2姫ね、確かに彼女なら剣聖の技を引き継ぐという点で言えば大丈夫だろう。

私もこの学園に入ってから国のことを調べたが今の姫は大変優秀なんだとか。

第1姫は魔術師として優秀であり在学中にリジェネに魔術を教わったことにより更に魔術の制御が上がったとか。

第2姫は剣士として才能があり、リジェネ曰く私でも単純な剣術なら負けるらしい。

第3姫は2人ほどではないが、武術と魔術両方を扱える点からバランスがいいタイプとなっている。

この国の姫達は偉人候補かな。この国が将来安泰と言われる所以であると最近の雑誌に載っていた。


「また宝物庫にでも放り込んでおけば。こんなゴミ屑同然の剣なんて封印した方がいい」


「アリアちゃん、何か恨みでもあるの?」


「恨み?その程度じゃないけどね」


リーネが怖がりながら聞いてくるけど、恨み程度じゃ収まらないよ。人の着替え、入浴を覗くし唐突に抱き着こうとしてくる。

エルフ達も自分達に被害が来ないように私の周りに集まってくるから猶更こいつとの接触の機会が増えてしまう。

その都度、私が魔法でぶっ飛ばしているのにこいつは諦めないから性質が悪い。


『お前やっぱり魔女だろ。ここまで俺をこき下ろす奴なんて魔女以外いないぞ』


「よし、砕こう」


何を人の秘密をアッサリとバラしているんだこの屑は。姫様なんて私の顔を凝視しているよ。

分子レベルまで砕いてやる。この世に残す理由はない。


「あの、お師匠様。剣が言ったことは本当ですか?」


「こうなっちゃ無理だ。私でも上手い言い訳が思いつかん。アリア、ご愁傷様」


「それでは本当に彼女はあの伝説の魔女なのですか!?」


「そうらしい。本人かどうかは別として実力や技術は常識を逸しているからな」


国の偉い人にバレたよ。どうするのさ、この先。私は登用される気はさらさら無いよ。

もし無理矢理私を国のお抱えにしようとするなら滅ぶ覚悟で来ることだね。

誰が私を処刑した国に仕えるか。今の時代の人には関係ないことだけど私にとっては重要なことだ。


「もうどうでもいいから、この剣を持ってさっさと行って」


「いえ、そういう訳にも。……分かりました、私の方で色々と誤魔化しておきます。それでいいでしょうか」


一睨みで黙らせる。これで私を利用できると思ったら大間違いだ。来るなら来い、全力で追い払ってやる。

でもこれからシリウスと付き合うと考えると姫様にも同情する。マジでこいつの相手は疲れるから。


「それでいいよ、あと第3姫にも適当に言っておいて。私と貴方の関係について問題ない程度に」


「類ない魔導技師と説明しておきます。そうすれば今までの成績とも関係ないでしょうから」


1年では武術、魔術、一般教養しか授業では取り扱っていない。2年から魔導技師としての授業もあるから問題はない。

確かに魔導技師なら何かしら持ってこられても説明は出来るし、力を使うわけでもない。

うん、いい言い訳だね。


「それじゃ私は帰る。もう本当に疲れた」


「お疲れ」


「お疲れ様、アリアちゃん」


何というか最悪な日だった。変態と邂逅するわ、この国の姫様に正体がバレるわ。

次に何かいらないことを喋ったら本気ですり潰してやる、あの変態。

エリスには悪いけど、今日の修行はシビアに行こう。私のストレス発散のために。



姫様の話を書こうとしたのに、何故か変態の話になった。

どうしてこうなったか分からないけど姫様無念。

サブタイトルまで変える始末、本当に分からない。

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