第7話:逃げ場のない愛と、散らかったベッド
メリーナに背中を押され、俺は彼女の部屋でルディウスと対面することになった。
ドアを開けて中に入ると、そこには落ち着かない様子で立ち尽くしていたルディウスがいた。
「私はちょっとお茶でもしてくるわね。エミル、今度は殴っちゃダメよ!」
メリーナはそう言ってイタズラっぽく笑うと、二人だけを残して気を利かせて部屋を去っていった。
訪れる、重く長い沈黙……。
最初にその静寂を破ったのは、ルディウスだった。
「エミル……! まだ怒ってるよね? 本当にごめん! どんなに嫌われても、怒られても当然だと思ってる……。だけど、やっぱり僕は君が好きなんだ! どうしても諦められない……!」
耐えきれなくなったように駆け寄ってくると、ルディウスはすがりつくように俺に強く抱きついてきた。
俺は戸惑いながらも、もう自分の気持ちに嘘をつくのはやめようと、震える両手でルディウスの背中を抱き返した。
「俺も……ルディウスが…………す……きだ」
消え入るような声で本音を漏らすと、ルディウスはパァっと一気に顔を輝かせた。
「本当に!? あぁ、よかった……僕たち、両想いだね!」
狂喜乱舞したルディウスは、そのまま勢い任せに再び唇を重ねようとしてくる。
だが、俺は慌てて彼の胸を押し留めた。
「ま、待て! まだ前世のこともあって、気持ちの整理が完全についたわけじゃないんだ! もう少し待ってく——」
「やだね! もう絶対に逃がさないよ、エミル♡」
「な……っ!?」
次の瞬間、視界がぐらりと揺れた。
俺はそのまま力任せに、メリーナのふかふかのベッドの上へと押し倒されていた。
「ちょっ……ルディウス!?」
驚いて見上げる俺を、ルディウスはどこか狂気を孕んだ、うっとりとした甘い瞳で見下ろしていた。
「あぁ……本当に可愛いね、エミル。大丈夫だよ……優しくするからね」
(な、なんだこの展開!? ていうか……えっ、俺が『下』なのか!??)
剣術も体格も俺の方が上のはずなのに、覆いかぶさってくるルディウスの力は驚くほど強く、ビクともしない。
「こ、ここはメリーナの部屋だぞ! ベッドだぞ! やめろ!」
必死に抵抗する俺に、ルディウスはクスッと悪魔のような微笑みを浮かべた。
「だって、ここで君を逃がしたら、また僕の前から姿を消そうとするでしょ? メリーナには後で僕からたっぷり謝っておくから♡」
抵抗する暇さえ与えられず、再び深く激しいキスで塞がれる。
最初こそ焦って身を捩らせていた俺だったが、前世からずっとずっと欲しくてたまらなかったルディウスからの熱い愛を……最終的には拒むことなんて、できるはずもなかったのだった。
◇
……数時間後。
お茶から戻り、自分のベッドを容赦なくグチャグチャに荒らされた惨状を目にしたメリーナは、**「あんたたち……私の部屋で何やってんのよぁぁぁ!!!」**と烈火のごとくブチ切れた。
俺とルディウスは正座させられ、汗をかきながら必死に平謝りした。
しかし——説教される最中、ふと横目を向けると、ルディウスがイタズラっぽい笑みを浮かべながら、メリーナにバレないように『愛してるよ』と口パクで囁いてきた。
まったく、前世も今世も……俺はこの男に振り回されっぱなしだ。
俺は呆れつつも、愛おしさに耐えかねて、そっと笑みをこぼしてしまうのだった。
(完)
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